ダンスとしては既に揃っているように見えたが、伊藤は目線の持っていき方や間(ま)などを細かく細かく詰めていく。これによって梅棒ならではの、楽しいだけでなく感動するステージに研ぎ澄まされていくのだと感じた。
また、複数人が登場する舞台上でも、台詞があれば話している人に自然と視線が集まるが、梅棒の“ダンス×演劇×J-POP”という表現では、演出によって視線を集める必要がある。稽古場ではそのアイデアをキャストが提示することも。梅棒メンバーだけでなく、ダンサー、俳優みんなでアイデアを出し合い、各ジャンルの知恵がひとつの動きに集結するのはこのカンパニーの魅力だ。とはいえメイン以外のメンバーも魅力的な動きをしているのでそこもぜひ注目して。
次にキャストの前に立ったのは梅棒の鶴野輝一。梅棒では、曲ごとに振付と演出をメンバーで振り分けている。
鶴野はまずキャストに「この場面はこういう雰囲気」と話し、キャストはそれを理解した動きをみせる。身体能力と表現力がものをいう瞬間だ。ほんの20秒ほどのシーンを何度も繰り返し、ときに爆笑しながら、ときにディスカッションしながらシーンをつくっていく時間は誰もが楽しそう。