革ジャンを着た松坂は汗だくになって取り組んだ。
ひととおり振りが決まると、休憩を挟んで、各シーンの返し稽古に。休憩の間も浜中はカウンターから離れず、ボトルやスナックを並べていた。その自然な様子は長いことここで働いているかのよう。
ヴィクターがおどおどするバーテンダーにいちゃもんをつけるシーンでは、松坂は歌い、叫び、時には嘲笑するように恫喝。小川は松坂に「本当は(テーブル席に座っている)アハーンに向かいたいのに、なぜお前とやりとりしなきゃいけない?と苛立っている」、小柳に「ヴィクターが何かやりそうだと気になっている」と、役の心情を説明した。小川の演出は、常に誰に対してどのように意識が向かっているのかが明快だ。ヴィクターがドラム缶を叩きエキサイトする様子に、小川は「アハーンはヴィクターの話に乗らない。
あまり聞いていなくていい。空気を感じて」と、指示した。
ペンダーが来て、3人の激しいやりとりが始まる。小川は「ペンダーとアハーンはハグしてから出て来てください。今日こそふたりでヴィクターに勝ちましょう!」と喝を入れた。丁々発止のやりとりが迫力を増し、見る者は手に汗握ってしまう。が、小川は台詞ひとつひとつを考査し、各自の沸点がどこで上がるのかを組み立ててゆく。