ステージの上でもステージを降りても人々を魅了する特別なオーラは、やはり大スターのものだ。
どのアングルから見ても完璧に美しい…何をやっても美しい…という共通点をもつのがパリ・オペラ座バレエ団の天然王子マチュー・ガニオ。デニス・ガニオとドミニク・カルフーニを両親に持つバレエ界のサラブレッドである彼は、19歳でエトワールに昇格したときから「立っているだけでも絵になる」と完璧な美を賞賛されてきた。華やかな経歴の裏ではケガも多く、葛藤の多い時代も経験してきたが、30代を超えてからのガニオには何か吹っ切れたような清々しさがある。技術はますます磨きこまれ、表現に深みが加わり、ノーブルで優しいオーラに包み込まれている34歳の彼は、間違いなく「今が旬」の踊り手であると思う。WBFではベストなパートナーシップを築いているドロテ・ジルベールとマクミランの『マノン』とヌレエフの『シンデレラ』を披露する。美しい男性しか舞台にいないこの世界でも、さらに眩しい美に恵まれた貴公子たちを見ていると「神に愛されし者」とはこういう人なのだなと思う。ボッレと同様、ガニオもとても性格がよく、彼を知る人々は人間としてのガニオを信頼し愛している。