と苦笑いを浮かべ、カンニングペーパーの存在を明かす場面もあったが、熱のこもったそのスピーチに、本作にかける並々ならぬ意気込みを感じさせた。続けて「僕の人生は演劇がすべて。新しい場所に行きたいし、新しい人に出会いたいという演劇的な体験を一生続けていきたい。だからこそこれだけ野心的なプロジェクトに出合えたことに、心から感謝です」と語った。またサザーランドは、「この才能あふれる演出家の作品が、イギリスのお客さまの目にも触れる機会が出来て本当に嬉しい」と藤田を絶賛した。
そんな藤田は『タイタニック』の日本初演とイギリスでのツアー版を観劇しており、その時からサザーランドに強い尊敬の念を抱いていたという。「トムさんの演出って、シンプルに言うと観客がタイタニックと一緒に旅をしているということだと思うんです。ファーストシーンでは観客があたかもタイタニックを見送ったような視点をつくり、今度はいつの間にかタイタニックの乗客になっている。
タイタニックを通したさまざまな視点を体感出来るというか。観客が作品を体験することを導き出せる、数少ない演出家だと思います」
若き才能あふれるふたり。藤田演出の『VIOLET』イギリス公演は来年の1月に、サザーランド演出の『タイタニック』再演は、10月1日(月)東京・日本青年館ホールで開幕する。
取材・文:野上瑠美子