内博貴が主演する『まさに世界の終わり』日本初演が開幕!
、愛情があるものの、ルイに嫉妬があり、日本の頑固親父のように頑なな兄のアントワーヌ(鍛治直人)、家族を懸命につなげようとするアントワーヌの妻カトリーヌ(大空ゆうひ)、肝っ玉母さんで、ルイに皆を励ましてほしいと頼む母親(那須佐代子)。登場人物のセリフによって、ルイの心臓の鼓動が効果音で客席に響き、彼の動揺が伝わってくる。ルイは、家族の前では物静かに微笑んでいるが、時々、織り込まれるモノローグでは、死への苦悩と、何故、家を出たのか、家族に対する葛藤を毒々しく吐露する。内の、静と動の対極の演技が印象的だ。
家族との関係はやっかいだ。遠慮がない分、血や涙が流れ、後悔もする。それと同時に、かけがえがない。ルイと家族の状況は、誰もが通過するであろう鋭い痛さや深い苦さを抱えている。
そう思わせてくれたキャスト全員の演技と、演出の石丸さち子の手腕が光る。映画版ではドランが脚本も手掛け、登場人物の表情や心象風景で、それぞれの心情を読み解く必要があったが、ラガルスの川の流れのような言葉を生かした舞台版(上演台本:石丸さち子)のほうが、私には分かりやすく物語に近づけた。ルイは家族に自分の死を伝えることができたのか。