宮崎秋人と木村了が正反対のランナーを演じる稽古に潜入
先ほどの君原&高橋コーチとは正反対とも言える素直で信頼に満たされたやり取り、宮崎と和田のまっすぐな球を投げ合うような芝居は温かく、芝居面でも各ペアでの違いを感じるのが面白い。ただ、「自分ひとりでは走れません!」と言う円谷、それを受け止め「ひとりにしない」と言う畠野コーチの関係性は理想的で美しいが、同時に、円谷の結末を知っているためにどこか不安な気持ちにもさせられるものであった。
次は、マラソンと距離を置いた君原のもとに宝田記者が訪ねてくるシーン。君原の言葉をすべて適当に返しているかと思えば、わずかな態度の変化を逃さずサッと懐に入る宝田の姿は観ていて楽しい。中村の芝居に自由さを感じるが、稽古中は例えばどのタイミングで君原の変化に気付くのかなど、かなり詳細に谷と話し合う姿が多く見られた。
観ていて常に感じさせられたのは“人の心”。ありとあらゆる関わりに見え隠れする感情は生々しく、人の心が丁寧に描かれているからこそ、我々とは違う時代・環境にいる登場人物たちに心が揺さぶられるのだと感じた。稽古場は活気があってこれからどんどん進化していきそうな雰囲気。
どのような作品になるのか期待して開幕を待ちたい。