後者は、弾きこなせるピアニストが数えるほどしかいないという超難曲だ。「若き日のリストがいかにとてつもない難曲を書いたか。技巧をクリアした先に見える風景があります。それを無理なくこなせる人が技巧を追求してこそ初めて、本質が聴こえてくる。そういう演奏をお届けするのが私の理想です」
有名な《ハンガリー狂詩曲第2番》の、任意に挿入が指定されているカデンツァ(即興的な自由な独奏部分)を自身のオリジナルで弾くのは、作曲家でもある阪田ならでは。「200年の時を超えて、リストと音楽で対話できるのが楽しみ」と語る。会場のみなとみらいホールのある横浜は、阪田の生まれ育った街でもある。「リストは音数も多いので、空間の大きさでかなり印象が違います。
みなとみらいホールは響きが良いので、すごく楽しみです」
阪田の音楽の懐の深さを示してくれそうなのが、先輩ピアニスト中野翔太と、ジャズ・ピアニストの松永貴志との共演で贈る「ピアノ・トリオ・スペクタクル」(3月8日(金)・東京オペラシティ)。「中野さんと松永さんは何度も共演しているから、僕は新参者(笑)。ビル・エヴァンスやアート・テイタム、キース・ジャレット。ジャズはよく聴くので、どんなことになるのか、自分でも楽しみにしています」