エリアフ・インバル×都響、積み上げてきた28年の歴史!
また、インバルの指揮というのは演奏者側にとっても特別な体験だということを記しておきたい。筆者はインバル指揮によるマーラーの《復活》に合唱団のメンバーとして共演したことがあるのだが、そのあまりに圧倒的な統率力には唖然とさせられるばかりであった。自らの求める音楽世界へと聴衆・演奏者を問わず、ホールのなかにいる誰も彼もを惹きつけてやまないのだ。
1980年代に録音されたブルックナー、マーラーの交響曲全集で名を馳せたインバルだが、1990年代に入ると今度はウィーン交響楽団と組んでショスタコーヴィチの全集を完成させている。なかでも3月23日(土)・福岡、3月24日(日)・名古屋、3月26日(火)・東京文化会館で演奏される第5番については、既に3度も録音しているインバル自身にとっても思い入れのある作品。都響とも2011年の演奏会の模様がライヴ録音されており、こちらも名盤としてリスナーから高い評価を勝ち得ている。
インバルも80代に入り、近年ますます円熟の境地に磨きがかかるだけに、ひとつひとつの公演がより貴重な機会としてますます聴き逃がせない。文:音楽ライター 小室敬幸