北翔海莉と峯岸みなみが芸道にかける対照的な女性像を好演
大津城で戦いに巻き込まれた際には、一座の女衆やお丹を守りながら避難させるなど、孤高のカリスマというより、人間らしさを感じさせる阿国像を演じている。
その印象は後半、男装して踊る「かぶき踊り」を始め、放たれる光がさらに強くなってからも同様だ。お丹と、その一座のこふめ(雅原慶)を引き取るも、芸道のために残忍ともいえる行動を起こす阿国。だが自分が起こした結末に動揺する姿から、阿国自身もまたひとりの女性として、芸道と人生の模索中なのだと分かる。終盤では亡き夫を想い、弱った表情を見せる阿国が切ない。宝塚を退団して3年、元トップスターとして華やかな役柄が多かった北翔にとっても、女性の陰影を演じ切った本作は新境地となったに違いない。
対するお丹役の峯岸は、かたくななほどに芸道にこだわり、阿国を「阿国ねぇ」と慕う初々しい前半から、ある出来事をきっかけに、自分の身が汚れてものし上がろうとする後半への変化を鮮やかに演じる。売れっ子の芸人になってからは、ポップス風のメロディに乗せて、さすがのアイドル性を見せつけるシーンもあり。
だがその後、再会した阿国に“天に声を届けようとしていた、あの頃のお前はいなくなった”と言われたお丹は……。