《ジャンニ・スキッキ》より
4月7日に初日を迎えた新国立劇場の《フィレンツェの悲劇》(ツェムリンスキー)と《ジャンニ・スキッキ》(プッチーニ)の2本立て上演。劇場のレパートリー拡充を課題に掲げる大野和士芸術監督が提唱する「ダブルビル」(1幕ものの比較的短いオペラを2本組み合わせて上演するプログラム)の第1弾だ。新国立劇場の平成最後のオペラ公演は「ひと粒で2度美味しい」ダブルビルで幕を開けた。
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今回の2作品は悲劇と喜劇と対照的だが、どちらもフィレンツェを舞台とした物語という共通点がある。ともに20世紀初頭の作品という点も同じだ。《フィレンツェの悲劇》は1917年に初演された、上演機会の少ないレア作品。登場人物は3人だけで、妻を寝取られた亭主が浮気相手を殺してしまうという陰惨なストーリー。ひとりが時間を止めて朗々と歌う、いわゆるアリアはない。
ふたり以上が同時に歌う重唱もなく、各自の台詞が連綿とつながって物語が進むのはワーグナー風だし、耽美的な音楽はリヒャルト・シュトラウスを彷彿とさせる。3人が出ずっぱりで音楽を作っていくだけに、歌手たちが背負う役割は大きい。亭主シモーネ役の世界的バリトン、セルゲイ・レイフェルクスはさすがの貫禄で、ほぼ半分は彼の出番という重要な主役を余裕で歌い切っていた。