立派な髭ゆえに大嘗会の犀の鉾の役を任された夫だが、妻と夫婦喧嘩となり、怒った妻は近所の女たちに加勢を頼み、夫の髭を剃ってしまおうと計画する。人間国宝の山本東次郎演じる夫を中心に、おおらかな笑いが繰り広げられる。
そして最後は、文楽座特別出演による歌舞伎「義経千本桜・川連法眼館の場」で締めくくる。狐が親を思う情愛を描いた名作「川連法眼館の場」は、人形浄瑠璃文楽を先行作品として歌舞伎で繰り返し上演されているが、今回は一夜限りの豪華な舞台として、歌舞伎俳優と文楽座の共演が行われるのが、大きな話題だ。次々と大役を勤め、芸域を広げる尾上菊之助の忠信、立役・女方ともに芸を極める中村時蔵の義経に、文楽太夫の最高峰、豊竹咲太夫の浄瑠璃、華麗な撥さばきをみせる鶴澤燕三の三味線という配役が見どころだ。
取材・文:七海友信