「古典をやらせてもらう時に思うのは、“俺がいちから作ってるわけじゃない”ということ。その上で、少しでもおもしろくしたいと自分の色を加えているんですけど、じゃあ、志ん朝師匠の『明烏』がライバルかと聞かれても、そんなこと、おこがましくてよう言えません。僕が思うライバルの条件は、同じ時代を生きているということ。僕でいえば、所ジョージ、明石家さんま、ビートたけしとかね。うらやましいと感じる部分が、いっぱいあるすごい人たちですけど、勝ち負けよりも、あの人たちと一緒に同じ時代を生きられていることがうれしいんです。そういう意味では、落語界のライバルとして講談の神田松之丞が、同じ時代に現れたことはうれしいし、刺激になる。去年1度共演させてもらったんですけど……松之丞はすごい。化物です(笑)」
実は、神田松之丞との共演時に選んだ噺が『妾馬』だった。
江戸時代にもあったであろう講談と落語のぶつかりあい、その令和版。では、今年の大ネタ『明烏』はどのような噺に再構築され、育っていくのか。笑福亭鶴瓶は落語初心者にもおすすめな落語家ではあるが、点ではなく線で聴くべき表現者でもある。同じ時代を生きる観客として。
「笑福亭鶴瓶落語会」