など、直前まで台本に改訂を加えているからこその時事ネタも組み込まれている。かなり楽しい。
公演はWキャストで、この日は初日・3日目のキャストによる通し稽古。ヒロインのユリディスに愛もも胡。神々を虜にする色気と高音の鮮やかな超絶技巧は魅力たっぷり。持ち前の甘いテノールに、今回ばかりは相当な暑苦しさも全開の又吉秀樹のオルフェ。あらわな下心のもと、輝かしいバリトンの美声が最高神としての威厳を示す大川博。そして超高いテンションの上原正敏のプルートが、このプロダクションの喜劇の性格を象徴していた。
芸達者たちが多士済々。
1858年にパリで初演された『天国と地獄』(地獄のオルフェ)は、グルックのオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』(1762年)のパロディ。原作はギリシャ神話で、17世紀初めのオペラ誕生期から、何十人もの作曲家がオペラ化してきた人気の題材だ。オッフェンバックはこれを徹底的に茶化して喜劇に作り変え、命がけの美しい夫婦愛は、倦怠期の夫婦の化かしあいにすり替わった。地獄の王プルートと浮気して、全能の神ジュピターの誘惑にもなびく多情な妻ユリディス(エウリディーチェのフランス語よみ)。彼女を救いに行くオルフェも、世論に負けてしぶしぶ地獄へやってきただけなので、「いとしさのあまり彼女を振り向いて地獄へ逆戻り」