そのロトが2月2日と3日に都響の指揮台に登場する。2016年振り2度目のことだ。2018年に手兵である古楽オーケストラのレ・シエクルと《春の祭典》をメインプログラムに据えた来日公演が大成功を収めたことで、口コミやSNSでもその驚異的なパフォーマンスが話題になった。この時の演奏の何が凄まじかったかといえば、もう充分に知ったつもりでいたピリオド・アプローチに、まだまだ未知の可能性が拓かれていることを提示してくれた点にあった。
そもそもロトは、単に作品が書かれた頃の楽器を使うのではなく、初演当時の楽器を復元しようと徹底したこだわりをみせるところが、それまでの古楽系指揮者と違っていた。また、複雑な楽曲ほど音程やリズムが甘くなったりすることも珍しくなかった古楽器でも、現代のモダン楽器と同等の正確さで演奏が可能なことを示してくれた。そして何より、その結果うまれてきたパフォーマンスが純粋に音楽として素晴らしく、ここまで語ってきたような小難しいことなしに、心震える音楽として我々聴衆の胸に突き刺さったのだ。私個人としてもあの日の興奮は、生涯決して忘れ得ぬ体験のひとつとなっている。
現在、ベルリン・フィルやコンセルトヘボウ管をはじめとする世界トップクラスのモダン・オーケストラからも引く手あまたのロト。