ほかにも随所で、現実の世界において新型コロナウイルスがもたらした変化や浮き彫りになった人々の実像が巧みに反映されており、ディストピア的ムードを漂わせるが、その一方で登場人物たちのセリフのやりとりや身体表現はどこかコミカル――ゾクリとするような恐怖と笑いが交錯する。
稽古では、長塚が全体を演出しつつ、振付を担当する近藤が、演者たちの立ち位置や動きをどうすべきかを探っていく。ダンスの世界を主戦場とする演者が多く参加しており、彼らの豊かな身体表現も大きな見どころ。そして、圧巻は歌唱シーンでソロパートを担当する松の力強く響く歌声! 「どこだ犬コロ」「飼い主もまとめて処分しろ」「首に噛み付いてやる」など、“こどもが楽しめる演劇”としては過激で物騒にも思える歌詞が並ぶが、目で見て、耳で聴いてワクワクするようなパフォーマンスが繰り広げられる。
松が演じる“案内人”(※町の事情を理解していないタナカ一家のために様々な説明や手助けをしてくれるコンシェルジュのような役割)は、物語の冒頭、客席に向かい、本作は「愛の話」だと語りかける。いままさに世界が直面する厄介な問題に正面から向き合った、コロナの時代の愛の物語はこどもたちに、そして大人たちに何を問いかけるのか――?
「イヌビト~犬人~」は8月5日(水)、新国立劇場中劇場にて開幕。
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