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長塚圭史が芸術監督に就任した2021年より、4月から8月をプレシーズン、9月から翌年3月をメインシーズンとするシーズン制を導入し、年間を通してさまざまなプログラムを届けている神奈川・KAAT神奈川芸術劇場。2025年度はプレシーズンの事業のひとつとして、劇場の出入口となる<アトリウム>を活用した新しいプロジェクト『KAATアトリウムプロジェクト』を2025年6月14日(土) まで実施している。開館以来、1階<アトリウム>では、さまざまなイベントが行われてきたが、長塚の芸術監督就任以降は、より一層あらゆる人々に「ひらかれた」劇場を目指し、舞台上演、映像上映、インスタレーション作品の展示、ダンスパフォーマンス、マルシェといった多岐にわたる企画を開催してきた。今回は、<アトリウム>を舞台美術家の視点でデザインし、その空間を用いたパフォーマンスを実施する。空間デザインは、読売演劇大賞優秀スタッフ賞を2年連続で受賞するなど、数多くの演出家から信頼をおかれる山本貴愛が担当。作品テーマを繊細かつ大胆に表現して観客の想像力を刺激するデザインを多く手がける山本が、いつもの劇場空間を飛び出し、<アトリウム>にメインシーズンへの架け橋となるテーマを据えたデザインを施す。そして、このあらかじめ設えられた空間を用いて、5組のアーティストによるさまざまなパフォーマンスが繰り広げられる。ジャグリングの目黒陽介は、生演奏を交えて独創的なパフォーマンスを、ダンスの浅川奏瑛、岡本優、山田暁は、それぞれソロパフォーマンスで空間と身体を対峙させる。ダンスや演劇表現を交えたパフォーマンスのAokid×リンノスケは、ルーツの違うふたりからどのような表現が生み出されるのか、期待が高まる。■空間デザイン:山本貴愛 コメント私は学生時代、横浜の学校に通っていたので、この地に思い入れがあります。KAATキッズ・プログラムの美術を担当させていただいた際に、長年横浜に在住する方でも思っていた以上にKAATにご来館されたことがないという事実を知ったことに驚きました。アトリウムを通じて舞台芸術や劇場という場が身近ではない方々にも気軽に来ていただける企画をやりたいという話をもらい、この企画を受けようと思いました。今回は、舞台美術というものをアトリウムに設えました。そして舞台美術の背景には欠かせない巨匠・松本邦彦さん(美術工房 拓人)に仕上げていただきました。普段は近くで見ることのできない匠の技を実際に見て触って実感してみてもらい、そしてこの場で行われる無料のパフォーマンスも観ていただくことで、劇場に舞台を観に行こうと思ってもらえるようなきっかけになるとうれしいです。撮影:木村雅章<開催概要>『KAATアトリウムプロジェクト』美術設営期間:2025年6月14日(土) まで10:00〜18:00(KAAT内他会場で夜公演がある場合は終演時刻まで)会場:神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<アトリウム>空間デザイン:山本貴愛【パフォーマンス】出演者(50音順):Aokid×リンノスケ(パフォーマンス)、浅川奏瑛(ダンス)、岡本優(ダンス)、目黒陽介(ジャグリング)、山田暁(ダンス)観覧料:無料・予約不要日程:2025年6月1日(日)、7日(土)、8日(日)、14日(土)2025年6月1日(日) 14:15 目黒陽介/17:00 岡本優2025年6月7日(土) 12:15 Aokid×リンノスケ/15:00 山田暁/17:15 目黒陽介2025年6月8日(日) 11:45 岡本優/12:15 山田暁/15:00 Aokid×リンノスケ2025年6月14日(土) 11:45 浅川奏瑛/12:15 目黒陽介/15:00 浅川奏瑛上演時間:各回30分程度KAAT神奈川芸術劇場 公式サイト:
2025年04月25日KAAT神奈川芸術劇場の2025年度ラインアップ発表会が3月18日に開催され、芸術監督を務める長塚圭史らが出席。デヴィッド・ボウイがプロデュースを務め、遺作となったミュージカル『LAZARUS』やケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』、岡田利規作・演出の『未練の幽霊と怪物』など多彩なラインアップが明らかに。また、新年度で芸術監督の任期最終年となる長塚だが、2026年度から5年間の再任が理事会において決議されていることも併せて発表された。長塚芸術監督は、ラインアップ発表に先立って2024年度をふり返り、『リア王の悲劇』でリア王を演じた木場勝己が読売演劇大賞の最優秀男優賞及び大賞を、演出の藤田俊太郎が芸術選奨演劇部門・文部科学大臣新人賞を受賞するなど、高い評価を得たことへの喜びを口にした。また、KAAT独自の取り組みにも言及。村上春樹の小説を原作に、KAATと劇団ヴァニシング・ポイントによる日英国際共同制作で3年の月日を費やして制作・上演された『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』が日本のみならず、スコットランドでも好評を博し、今後、世界中での上演の可能性があると明かした。また長塚の演出による『花と龍』で、芝居小屋の空気を再現させるべく、ステージに実際に飲食物を扱う屋台街を出現させ、飲食可の空間で上演を行うというこれまでにない試みに関しても、好評を得たと明かし、手応えを感じさせた。2025年度は、5月から7月にかけてのプレシーズンにおいて、デヴィッド・ボウイが最後にプロデュースしたミュージカルの日本初演となる『LAZARUS』を上演。D・ボウイの新曲を含む計17もの楽曲がオリジナルの歌詞のまま劇中で使用される。D・ボウイから直々に依頼されたエンダ・ウォルシュによる戯曲で、過去に『Medicine メディスン』、『バリーターク』などウォルシュ作品に携わってきた白井晃が演出を務める。4月下旬から6月中旬にかけては山本貴愛が空間デザインを手掛け、アトリウムにてパフォーマンスも行われる「KAATアトリウムプロジェクト」を実施。ビデオメッセージを寄せた山本も長塚芸術監督も、同劇場が周囲の住人や県民から“劇場”として認識されていないという問題点を指摘。長塚は「アトリウムという劇場の入口を活用して、人を惹きつける場所になっていけば」と期待を寄せる。また7月には、KAATとストラスブール・グランテスト国立演劇センター(TJP)による国際共同制作のダンスプログラムとして、TJPのディレクター(総芸術監督)を務める伊藤郁女を振付・演出に迎えた『ダンスマラソンエクスプレス(横浜⇔花巻)』を上演。現代から戦後の時代をポップシーンに乗せて、9人の日仏のダンサーたちの踊りによってさかのぼりつつ、やがて宮沢賢治の物語へと誘っていくという作品で、ドラマトゥルグの部分を長塚が担う。毎年好評のキッズプログラムでは、“宝探し”をテーマに、大池容子脚本・演出、小林顕作の音楽による『わたしたちをつなぐたび』、SPACの新作(台本・演出:寺内亜矢子)の2公演が行われる。「虹~RAINBOW~」をテーマに掲げたメインシーズン劇場でホッとできるものをメインシーズンの幕開けを飾るのは、6年ぶりのKAAT凱旋となるケラリーノ・サンドロヴィッチが、セルバンテスの名作を新たな視点で描く『最後のドン・キホーテTHE LAST REMAKE of Don Quixote』。ビデオメッセージを寄せたケラは「いつか『ドン・キホーテ』をやりたいと思っていた」と明かし「世間から“夢想狂”と呼ばれる男と世の中の関係、狂気と現実社会の対立というテーマに惹かれる。妄想と現実の境目がなくなっていくことへの興味もある」とこれまで映画や演劇で幾度も描かれてきた冒険譚の“読みかえ”への意気込みを口にした。『最後のドン・キホーテTHE LAST REMAKE of Don Quixote』出演者KAATの劇場空間と現代美術を融合させるKAAT EXHIBITION 2025では、循環していく生命をテーマにした作品を発表しているアートユニット「大小島真木」による個展 「あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?」(仮)を開催。ダンス海外招聘作品では、ポルトガル出身のマルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラの振付・演出による『CARCAÇA(カルカサ)』を上演する。11月には山内ケンジ率いる演劇プロデュースユニット「城山羊の会」の新作『アマンダ・Kの甘い生活』(仮)を上演。2026年2月には、<ひらかれた劇場>を目指して神奈川県内の各地を巡るKAATカナガワ・ツアー・プロジェクトの第3弾として、「西遊記」を原作にした『冒険者たち 〜JOURNEY TO THE WEST〜』(上演台本・演出:長塚圭史 共同演出:大澤遊)の再演、および『冒険者たち』シリーズ新作(作:長塚圭史 演出:大澤遊)の上演を実施する。キャストには長塚に加え、柄本時生、菅原永二、佐々木春香、成河を迎える同シリーズは、「西遊記」の三蔵法師一行が、天竺を目指す途上で神奈川県内のあちこちに迷い込むというもので、新作では長塚によると「神奈川県がメンタルに支障をきたし、バランスが狂ってしまうという問題が生じる」とのこと。そして2月から3月にかけては、岡田利規の作・演出による『未練の幽霊と怪物』(新作)を上演。岡田が能に触発されて執筆した音楽劇で2021年にKAATで上演された『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』に続く第2弾となる。なお、この日、発表された2025年度のメインシーズンのタイトルは「虹~RAINBOW~」。長塚就任以来、「冒」、「忘」、「貌」、「某」と“ボウ”という音で統一されてきたが、今年も一部に“ボウ”の音を含む形に。長塚はこのタイトルについて「いまの強者が勝つ社会の中で、劇場でホッとできるものつくれないか?困難のあとの幸福の光が見えないか?」と“虹”に込めた願いを明かすと同時に「それだけでなく、色が違うということは、何かの摩擦が生まれたりする可能性もある。一見、よく見えても何か起こる可能性があるのがいまの社会」とも語り「トップアーティストがどんな作品を作り、タイトルと呼応していくか楽しみです」と期待を口にした。質疑応答では、『花と龍』で行われた「やさしい鑑賞回」に関する質問も。「やさしい鑑賞回」は、より多くの人に演劇を楽しんでもらうための、鑑賞サポートとリラックスパフォーマンスの要素を盛り込んだ上映で、自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)などの発達障害のある人など、従来の劇場空間では芸術鑑賞に不安がある人たちも安心して鑑賞できるように配慮された公演形態のこと。専門部署とも連携した上で、照明や音響(銃声や大きな音など)の刺激を弱めたり、開演中の出入りを自由にするなど、サポート・配慮を整えて、上演が実施された。長塚は、『花と龍』でのこの試みの反響、手応えを口にし、2025年度以降も継続的に実施していくつもりであると語った。取材・文:黒豆直樹KAAT神奈川芸術劇場 2024年度主なラインアップ<プレシーズン>■ミュージカル『LAZARUS』伝説的なロック・スターで、1970年代以後のファッションやアート、カルチャーに多大な影響を及ぼした革新者、デヴィッド・ボウイ。彼の遺作ともなったミュージカル『LAZARUS』が日本初演音楽・脚本:デヴィッド・ボウイ脚本:エンダ・ウォルシュ演出:白井晃出演:松岡充豊原江理佳鈴木瑛美子小南満佑子崎山つばさ遠山裕介栁沢明璃咲渡来美友小形さくら渡部豪太上原理生ダンサー:Nami Monroe ANRI KANNA演奏:益田トッシュ [Bandmaster]フィリップ・ウー [Key.]松原”マツキチ”寛 [Dr.]Hank西山 [Gt.]三尾悠介 [Key.]フユミカワカミ(おふゆ) [Ba.]スウィング:塩顕治 加瀬友音2025年5月31日(土)~6月14日(土)<ホール>ツアー公演【大阪公演】2025年6月28日(土)・29日(日)フェスティバルホール◎KAATアトリウムプロジェクトKAATの<アトリウム>を活用した新しいプロジェクト空間デザイン:山本貴愛パフォーマンス:後日発表2025年4月下旬~6月中旬<アトリウム>■KAAT×TJP(ストラスブール・グランテスト国立演劇センター)『ダンスマラソンエクスプレス(横浜⇔花巻)』ポップダンスカルチャーの特急列車に乗って時代を駆け上り、いざ、宮沢賢治の織りなす幻想世界へ振付・演出:伊藤郁女ドラマトゥルグ:長塚圭史、Améla Alihodzic出演:湯浅永麻Aokid岡本優リンノスケ山田暁Noémie Ettlin、Louis Gillard、Issue Park、Léonore Zurflüh2025年7月11日(金)~7月13日(日)<大スタジオ>ツアー公演【フランス公演】10月TJP - Centre Dramatique National Strasbourg - Grand EstCDN de Normandie-Rouen – Les Anges au Plafond■KAATキッズ・プログラム2025『わたしたちをつなぐたび』劇団「うさぎストライプ」を主宰、気鋭の劇作家・演出家として注目を集める大池容子が、少女が自らの出生をめぐる旅に出るすがたを情感豊かに描く、イギリス人作家イリーナ・ブリヌルの傑作絵本を舞台化作:イリーナ・ブリヌル脚本・演出:大池容子音楽:小林顕作2025年7月下旬<大スタジオ>※7月26日(土)・27日(日)は『SPAC新作』との2演目同日上演■KAATキッズ・プログラム2025『SPAC新作』長年SPACで俳優として活動し、近年は演出家としても活躍目覚ましい寺内亜矢子を演出に起用し、子どもたちの自由で豊かな発想力を用いて物語を進めていくインタラクティブな演劇作品を創る台本・演出:寺内亜矢子出演:SPAC/大高浩一舘野百代榊原有美杉山賢2025年7月26日(土)・27日(日)<大スタジオ><メインシーズン「虹~RAINBOW~」>■KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『最後のドン・キホーテTHE LAST REMAKE of Don Quixote』あの名作のリメイク決定版⁉︎KERAが新たに読みかえる「ドン・キホーテ」作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:大倉孝二咲妃みゆ山西惇音尾琢真矢崎広須賀健太清水葉月土屋佑壱武谷公雄浅野千鶴王下貴司遠山悠介安井順平菅原永二犬山イヌコ緒川たまき高橋惠子2025年9月中旬~10月上旬<ホール>ツアー公演2025年10月〜11月【福岡公演】J:COM北九州芸術劇場中劇場【大阪公演】SkyシアターMBSほか予定◎KAAT EXHIBITION 2025大小島真木展「あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?」(仮)命が生まれ、育まれ、やがて自然に還り循環していく。そのすべてを包み込む胞衣。劇場に命が繋がっていくことへの祈りを捧げる場を生み出すインスタレーション作品作家:大小島真木2025年9月21日(日)~10月19日(日)<中スタジオ・アトリウム>■ダンス海外招聘作品『CARCAÇA(カルカサ)』パワフルなダンスが語るポルトガルの現在地振付:マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラ音楽:ジョアン・パイシュ・フィリプルイシュ・ピシュタナ出演:アンドレ・スピーディファビオ・クレイズレオ・ラモシュマルク・オリヴェラシュ・カーザシュマルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラマルコ・タバルシマリア・アントーヌシュマックス・マカウスキメラニー・フェレイラネルソン・テウニシュナラ・レヴロン2025年10月24日(金)・25日(土)<ホール>■KAAT×城山羊の会『アマンダ・Kの甘い生活』(仮)山内ケンジの新作、熱烈なリクエストに応え実現作・演出:山内ケンジ2025年11月<中スタジオ>■KAAT カナガワ・ツアー・プロジェクト 第三弾『冒険者たち〜JOURNEY TO THE WEST〜』上演台本・演出:長塚圭史(原作:呉承恩「西遊記」)共同演出:大澤遊音楽・演奏:角銅真実『冒険者たち』シリーズ新作作:長塚圭史演出:大澤遊音楽・演奏:角銅真実出演:柄本時生菅原永二佐々木春香長塚圭史成河KAAT神奈川芸術劇場が<ひらかれた劇場>を目指し、より多くの県民へ向けて、神奈川県内各地を巡演するプロジェクト第三弾2026年2月<中スタジオ>ツアー公演2026年2月~3月横須賀市、川崎市、鎌倉市、藤沢市ほか、神奈川県内を巡演予定■KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物』(新作)目に見えないもの、霊的な存在がその想いを語る「夢幻能」の構造を借り、岡田が問うものはー作・演出:岡田利規音楽:内橋和久謡手:里アンナ2026年2月~3月<大スタジオ>ツアー公演2026年3月【兵庫公演】兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール【新潟公演】りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館劇場【京都公演】ロームシアター京都サウスホール■YPAM ‒ 横浜国際舞台芸術ミーティング 20252025年12月上旬〜中旬<ホール>ほか【共催プログラム】■神奈川県芸術舞踊協会第41回芸術舞踊展「アートダンスカナガワ No.13」2025年11月1日(土)・2日(日)<ホール>■NDT2[Nederlands Dans Theater]『ネザーランド・ダンス・シアター 来日公演』2025年11月21日(金)・22日(土)<ホール>■かながわパフォーミングアーツアワード2026 ファイナル2026年3月<大スタジオ>【提携公演】■神奈川県演劇連盟TAK in KAAT Theater Company 夜明け 『Blue Moment』2025年5月29日(木)~6月1日(日)<大スタジオ>■Shake&Speare!!Stage 宮川彬良×木村龍之介 『ナツユメ』2025年6月6日(金)~8日(日)<大スタジオ>■OrganWorks2025-2026 『ショウメイコウ / show me a code - 未明詩 side -』2025年6月19日(木)~22日(日)<大スタジオ>■ナビロフト『りすん 2025edition』2025年8月7日(木)〜10日(日)<大スタジオ>■ブレラ美術館『こどもとおとなのオペラプロジェクト』2025年8月16日(土)・17日(日)<大スタジオ>1幕:オペラシネマ『ペレグリンと大きな魚』/2幕:オペラ『エマと青いバク』■神奈川県演劇連盟TAK in KAAT theater 045 syndicate 『真夏の夜の夢』2025年8月21日(木)~8月24日(日)<大スタジオ>■オペラシアターこんにゃく座 オペラ『変身』2025年9月20日(土)〜9月23日(火・祝)<大スタジオ>■CCCreation 『近松心中物語』2025年10月18日(土)~10月26日(日)<大スタジオ>■まつもと市民芸術館 『チェーホフを待ちながら』2025年11月13日(木)~16日(日)<大スタジオ>■ゆうめい 10周年全国ツアー公演『養生』2025年12月<大スタジオ>■ヨウ+『中村蓉 新作ダンス公演2026』2026年1月16日(金)〜1月18日(日)<大スタジオ>※その他取り組みについてや各公演の最新情報は、劇場公式サイトにてご確認ください。KAAT神奈川芸術劇場公式サイト
2025年03月21日KAAT×新ロイヤル大衆舎 vol.2『花と龍』が、2025年2月8日に神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>で初日を迎えた。北九州・若松港を舞台に、ゴンゾと呼ばれる荷役労働者たちが独特の気風を誇りに活躍していた激動の時代を描く本作。脚本を齋藤雅文、演出を長塚圭史、音楽を山内圭哉が手がけるほか、出演者として福田転球、安藤玉恵、松田凌、村岡希美、稲荷卓央、北村優衣、山内、長塚、大堀こういちらが名を連ねた。本作について長塚は、「新しい時代がいよいよ幕を開けようという明治後期の北九州が舞台。猛スピードで新しい価値観が押し寄せる現代と重なります。理不尽な世界の中で美しく生きようと足掻く金五郎とマンの荒々しくも清らかな奮闘を是非劇場でご覧いただけたら嬉しいです」とコメント。また福田は「初日終わって疲れました。ただ、お客さんの拍手と楽しんでくれているんじゃないかな、というのが伝わってきまして、やれてよかったなと。そして、みんないろんな役をこなしておりますので、苦労も伝わっているんじゃないかと思います。まだまだ公演は続きますが、ぜひともこの劇場に来て体感していただきたいです」、安藤は「長塚さん演出のもと、あたたかい稽古場でみんなで作り上げてきた舞台なんだと改めて思います。お客様の前で言ってみると、齋藤先生が書かれたセリフの一言一言に『花と龍』という刻印が刻まれてるかのような錯覚になりました。山内さん作曲の音楽も心地よいです。そして、食べたり飲んだり出来る屋台もあります。芝居小屋体験をしにいらしてくださいね」、松田は「こんな祭りのような本作、見逃すとみなさま損をしてしまうと個人的に思っています。ぜひともこの劇場に明るい希望を探しに来てください」とそれぞれコメントを寄せた。神奈川公演は2025年2月22日(土) まで。その後、3月に富山・兵庫・福岡でツアー公演が行われる。■演出・出演:長塚圭史 コメント全文4年ぶりのKAAT神奈川芸術劇場と新ロイヤル大衆舎のコラボレーションがいよいよ幕を開けました。今回はとにかく劇場内がかなり特別なことになっていますので、この楽しさ、美味しさ、賑わいを体験しに来ていただきたいです。そしてもちろん日本の演劇を明るく照らそうと立ち上がった新ロイヤル大衆舎らしく、今回もお客様のイメージを最大活用して世界を立ち上げていきます。『花と龍』は新しい時代がいよいよ幕を開けようという明治後期の北九州が舞台。猛スピードで新しい価値観が押し寄せる現代と重なります。理不尽な世界の中で美しく生きようと足掻く金五郎とマンの荒々しくも清らかな奮闘を是非劇場でご覧いただけたら嬉しいです。いや、それにしても舞台上の屋台が楽しいですからとにかく劇場へ来てみてください!■出演:福田転球 コメント全文初日終わって疲れました。ただ、お客さんの拍手と楽しんでくれているんじゃないかな、というのが伝わってきまして、やれてよかったなと。そして、みんないろんな役をこなしておりますので、苦労も伝わっているんじゃないかと思います。まだまだ公演は続きますが、ぜひともこの劇場に来て体感していただきたいです。素晴らしいですから、屋台のお店の人たちも本当に頑張ってくれていますから、ぜひともKAAT神奈川芸術劇場にいらしてください。頼みます!僕も頑張りますので、皆さんも来てね。ありがとう!■出演:安藤玉恵 コメント全文『花と龍』の幕が開きました。長塚さん演出のもと、あたたかい稽古場でみんなで作り上げてきた舞台なんだと改めて思います。お客様の前で言ってみると、齋藤先生が書かれたセリフの一言一言に『花と龍』という刻印が刻まれてるかのような錯覚になりました。山内さん作曲の音楽も心地よいです。そして、食べたり飲んだり出来る屋台もあります。芝居小屋体験をしにいらしてくださいね。転球さん演じる金五郎を追いかけて、20ステージ一生懸命やろうと思います。■出演:松田凌 コメント全文舞台『花と龍』遂に開幕いたしまして、稽古期間からなんて演劇に愛がある場所なんだろうと僕自身思っていました。そんな新ロイヤル大衆舎のみなさま、そしてKAAT神奈川芸術劇場さんの下、賑わいが各都市に訪れると思います。こんな祭りのような本作、見逃すとみなさま損をしてしまうと個人的に思っています。ぜひともこの劇場に明るい希望を探しに来てください。その答えがきっと舞台にあるはずです。よろしくお願いします。撮影:宮川舞子<公演情報>KAAT×新ロイヤル大衆舎 vol.2『花と龍』原作:火野葦平脚本:齋藤雅文演出:長塚圭史音楽:山内圭哉【出演】福田転球安藤玉恵松田凌村岡希美稲荷卓央北村優衣森田涼花成松修新名基浩大鶴美仁音坂本慶介北川雅馬場煇平白倉基陽永真山内圭哉長塚圭史大堀こういち【神奈川公演】2025年2月8日(土)~22日(土)会場:KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>【富山公演】2025年3月1日(土)・2日(日)会場:オーバード・ホール 中ホール【兵庫公演】2025年3月8日(土)・9日(日)会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【福岡公演】2025年3月15日(土)・16日(日)会場:J:COM北九州芸術劇場 中劇場チケット情報:()公式サイト:
2025年02月10日福田転球、山内圭哉、長塚圭史、大堀こういちの4人が、2017年に結成した演劇ユニット・新ロイヤル大衆舎。2021年の『王将』─三部作─に続いて、KAAT神奈川芸術劇場との共同公演『花と龍』を立ち上げる。原作は、芥川賞作家・火野葦平が自身の両親をモデルに書いた長編小説。明治時代の終わりを舞台に、船の荷役労働を生業とする人々を描く芝居は、新ロイヤル大衆舎ならではの、そして演劇だからこその楽しみに満ちたものになりそうだ。たとえば、舞台上に屋台が出て、実際に買って食べられる席を用意しているのもそのひとつ。4人が作り出そうとしている世界を、たっぷり語り合ってもらった。花道に桟敷席も! 芝居小屋のような賑やかな空間で、力強く生きた明治の男と女を観る──まずは、KAATとの共同公演の第2弾に、『花と龍』をやろうと思われた経緯からお聞きできればと思います。長塚『王将』はそもそも、新ロイヤル大衆舎の旗揚げ公演として2017年に「楽園」で上演したもので、それが非常にハッピーな公演になったんです。小さな劇場だったので道路が舞台袖になり(笑)、結果街と融合して、道行く人たちがちょっとお芝居に出会える空間になった。それで、僕がKAATの芸術監督に就任した際に、劇場入口のアトリウムに特設劇場を作って屋台も出して公演をやろうとしたのですが、コロナ禍で賑わいまでは実現しませんでした。その再挑戦に『花と龍』がいいんじゃないか、もしかしたらみんなも惹かれるんじゃないかと思って、まず3人に、「どう?」と原作を渡したのが始まりでした。大堀読んで、めちゃくちゃ面白かったです。脚本の齋藤雅文さんがおっしゃっていたんですけど、人間として真っ当に生きるということがストレートに書かれていて。こんなヒーローみたいな男が活躍した時代を、現代の人に見せられたらいいなと惹かれましたね。山内真っ当に生きるということの尊さを、今はより濃く感じますからね。自分がどうやって得するかっていうことにエネルギーを注いでいる人が多い世の中で、この物語の主人公の玉井金五郎とその妻・マンの生き方を目の当たりにして、人ってこうやって生きていくべきやなと、自分のことも鑑みました。──その金五郎を演じられるのが福田転球さん。原作はどんな印象でしたか。福田『花と龍』というタイトルから男の話なのかなと思っていたら、原作は女性のマンのエピソードから始まったので、それがまず意外で。しかも、そのマンが、オッサンに水車小屋で乱暴されそうになったところ、下半身を攻撃してかわすんです。山内芝居には出てこない話なんですけどね。福田出てこないんですけど、僕はそこが大好きで(笑)。これ絶対面白いわと、そこからどんどん惹き込まれていきました。大堀ただ、原作の小説は上下巻ある長い話だったから、これをどう芝居にするのかなとは思いましたけど(笑)。長塚でも、新ロイヤル大衆舎には、“大堀さんの語り”という仕掛けがあるので。その仕掛けを使えば豊かにできる可能性があるなと。──具体的にはどう舞台化していかれたのでしょうか。長塚まず脚本を齋藤さんにお願いしました。自分が脚本に起こすことももちろん考えたんですけど、僕はメンバーを知りすぎているので、どうしても“新ロイヤル大衆舎風”に寄ってしまう。そうじゃなくて純粋にこの『花と龍』の魅力を舞台に書き起こすにはどうしたらいいだろうと考えたときに、KAATの『蜘蛛巣城』(23年)で戯曲を使用させていただいてましたし、劇団新派の作演出家であり、また商業演劇でも活躍していらっしゃるので、これはその様式のなかで書いてもらうのがいいかもしれないと思ったんです。だから、新ロイヤル大衆舎のことや、人数とか予算も含めた規模など関係なく書いていただいたもので、それが逆にハードルにもなって面白くなっているんですよね。山内新橋演舞場を想定して書いてあるよね。長塚だから、KAATに花道を作ります。桟敷席もあります。賑やかな芝居小屋みたいになったらいいなと思って、舞台に屋台を出すことにもしました。桟敷と1階席が飲食可能になるので、屋台で購入したものをそこで食べていただきながら観ていただけます。エネルギーが渦巻く明治時代を舞台に、「生きる」ことを問い直す──原作が上下巻の長い物語であるという点は、どのように考えられましたか。長塚新ロイヤル大衆舎だけの公演だったら、『王将』のように三部作にしても良かったのかもしれませんが、地方公演もできることになったので、まずは上巻だけで一本の作品にしようと決めて、齋藤さんと一緒に、この作品の時代背景や物語の魅力を語り合いながら作っていきました。KAAT×新ロイヤル大衆舎 vol.2『花と龍』チラシ日本がまだ駆け出しのようなこの明治時代ってやっぱり魅力的なんです。日清戦争に勝って日露戦争にまさに勝利せんとしていて、その後昭和にかけて悪い方向に進んでいくわけですが、この頃はまだ、小さな国でもこんなことができるんだと活気に湧いている。石炭というエネルギーができて、主人公たちもその荷役を生業としているわけですが、まさしくエネルギーが渦巻いている状態です。そして、まだ秩序みたいなものが形成されていないから、実際に力の強い者が権力を持っている時代。そのなかで、金五郎とマンという名もなきふたりが出会って、争いごとは嫌いなのに荒々しい権力者と渡り合って、労働環境改善に動いていく。それがまた実話で、ふたりの血がアフガニスタンで用水路を開いた中村哲さんにつながっていくというのが(中村さんは火野葦平の甥にあたる)。山内その事実を圭史から聞いたとき、俺、震えるくらい感動しましたから。長塚中村さんが劇中に出てくることはないですけど、その流れを持つことはこの物語の大きな力になっていると思います。──そんな時代を力強く生きた金五郎を、どう表現しようと稽古されていますか。福田正直、時代のことはよくわからないですけど、でも、金五郎が上へ上へ、前へ前へ行こうとするにあたって、マンや荷役の仲間が支えてくれているのを、稽古場で感じるんです。マンを演じる安藤玉恵さんも本当に支えて力になってくれていて、マンに対する思いが日に日に強くなっていく。稽古を重ねるって、こうやって気持ちが積み上がっていくことなんだなと、改めて思いますね。山内力強く生きている人を表現しようとすると形しか見えてこないけど、その世界で生きていることを稽古場で作っていくっていうことですよね。そもそも僕ら役者の面白さって、疑似体験ができることだと思うんですけど。荷役という仕事も、稽古で実際に自分の手でやっているから、仕事に対するプライドとかも感じるようになってくる。その結果、何かが匂い立って、力強さが見えてくればいいんじゃないかなと思うんですよ。長塚毎日毎日大変ですよ。朝早くからみんなで荷揚げして。山内家族と他人の境目も曖昧になっていくというか。長塚組があって、組のみんなで働いて飯食ってまた働く。もう家族以上の関係ですよ。山内だから、人とつながるって豊かなことで。人と関わることが面倒くさくなっている今の若い子たちが、人はひとりでは生きていけないんだなっていうことを、ひとつ感じてくれたらいいなと思うんですよね。長塚あと、上海コレラが流行してたくさん人が死ぬ話が出てくるけれども、金五郎と弟分の新之助(松田凌)は生き延びる。その死と生の狭間みたいなところを僕らもコロナ禍で経験しているから考えたと齋藤さんが仰っていて。今、演出しながら、一寸先に死があるなかで、じゃあ如何に生きるか問うことも、面白さのひとつになるなと思っています。福田金五郎が、夢か現実かわからないけど、生きるのはもういいかと思う瞬間があって。それこそそこは僕も、もうええかと思っても踏みとどまってもう一回前に行こう、強く生きていきたいと感じられる。そういうことも観る人に伝えられたらいいなと思います。70人規模の舞台を18人で嘘を本当にしていく演劇の醍醐味を味わって──大堀さんは稽古していてどんなことを感じておられますか。大堀さっき圭史くんが大堀の語りがあるから成立すると言ってましたけど、そもそもこれは、齋藤さんがキャストが70人いればできるとおっしゃっていた作品なんです。だから相当な無理をしてこの世界を作っているわけで、語りですべてを説明できるのかと……。山内でも、『王将』でもやったじゃないですか。あれも70人規模ですよ。長塚そのうちの40人分くらいを大堀さんが担っていた(笑)。大堀今回もいろいろやるんですけどね。猫とかまで。ま、でも、その無理をエンターテインメントにするというのが今回の醍醐味でもあるような気がするので。さっき出てきたヤツが違う役で出てきたみたいなことも、お客さんの想像力で補っていただいて。長塚キャストが18人しかいませんから、仲間だったヤツが次のシーンでは敵になっていたりする(笑)。でも、その大いなる嘘を本当にしていくのが醍醐味だとは思います。山内演劇って何でも成立するから面白いんですよね。とくに新ロイヤル大衆舎をやると、自分がなんで演劇を面白いと思ったかっていうことが再認識できるんですけど。男が女を演じたり、ないものをあるものとしてやったり、演劇の醍醐味がギュッと詰まっている。それをお客さんにも楽しんでもらえたらいいですよね。──さらに今回の公演では、2月19日(水) 14時の回で、鑑賞サポートとリラックスパフォーマンスの要素を盛り込んだ「やさしい鑑賞回」を実施されます。リラックスパフォーマンスというのは、発達障害のある方など、従来の劇場空間では不安がある人たちも安心して鑑賞できるように配慮された公演形態で、そのリラックスパフォーマンスと、これまでも取り組んできた鑑賞サポート、両方の要素を取り入れて、多くの方が一緒に楽しめる公演をKAATは目指しているそうですね。KAATでは初の試みになるそうですが、長塚さんからその取組みについてもお話しください。長塚新ロイヤル大衆舎ならフレキシブルに対応できるかなと思って、これを最初のトライアル公演にしました。もしかしたら、子ども向けの劇やもっと短い時間の劇のほうが、実施には向いているかもしれないんですけど、普通にお芝居を観たかった方たちにとっていい機会になればいいなと思っています。配慮としては、真っ暗にしない、音量を抑える、上演中に声が出たり体を動かしてもいい、寝て観ていい席もあるといったことがあります。出入りも自由で、苦しくなったら外に出て、モニターで鑑賞してもいいですし。視覚・聴覚に障害がある方は機器が使えます。今回は飲食可能な空間になっているので、その自由さともマッチすると思うんです。それと同時に、サポートを必要としない方も一緒に観ることがあればいいなと僕は思っていて。さっきもお客さんの想像力で大嘘が成立するという話がありましたけど、いろんな人が同じ空間で観ることで豊かなものが生まれて劇場のエネルギーを感じて、それが喜びになる気がするので。大堀あと、キャスティングについても若い人とやりたいんだけどって言ってたよね。山内そう。俺らもう先輩に頼るのではなく、若い子とやっていかないといけないんじゃないかって。それは俺もハッとした。先輩とやるほうが刺激をもらえるけど、もらうばかりでどうすんねんと。長塚それについては今日思ったんだけど、僕ら下は49歳上は61歳というメンバーですよ。それが毎日フル回転して、若い子たちと一緒に芝居をやれているというのは、中年の夢だなと(笑)。福田・山内・大堀(爆笑!)長塚これは幸福だなと感じた。こうやって若い世代の人たちと、演劇を面白がれて、それを共有できる時間を持てるっていうのが。若い世代にとってもこれが、これから自分たちもいろんなことやっていけるぞと思ってもらえる力になったらいいなと思うんです。山内結局、人のつながりなんです。『花と龍』もそういう話なんですよ。取材・文:大内弓子撮影:You Ishii<公演情報>KAAT×新ロイヤル大衆舎 vol.2『花と龍』原作:火野葦平脚本:齋藤雅文演出:長塚圭史音楽:山内圭哉出演:福田転球安藤玉恵松田凌村岡希美稲荷卓央北村優衣森田涼花成松修新名基浩大鶴美仁音坂本慶介北川雅馬場煇平白倉基陽永真山内圭哉長塚圭史大堀こういち2025年2月8日(土)~2025年2月22日(土)会場:神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール>(ツアー公演)【富山公演】2025年3月1日(土)・2日(日)会場:オーバード・ホール中ホールstyle="font-size:12pt;"【兵庫公演】3月8日(土)・9日(日)会場:兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール【福岡公演】3月15日(土)・16日(日)会場:J:COM北九州芸術劇場中劇場チケット情報()公式サイト
2025年01月30日『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の監督・吉田大八が筒井康隆の同名小説を映画化した『敵』から、主演の長塚京三、共演の瀧内公美、河合優実、黒沢あすかが、撮影をふり返り、本作への出演を決めた理由、そしてそれぞれの役作りについて語った。実は、30代の頃にCM撮影にて吉田監督との仕事の経験がある長塚以外は、全員が吉田監督作品への参加は初。長塚も映画では初のタッグとなるが、最初に吉田監督に会い、監督自ら手掛けた脚本を読んだ印象を「面白いだろうなと思いましたね」とふり返る。長塚演じる主人公・儀助の妻、信子を演じた黒沢も、脚本と原作を読み、その面白さに「絶対出たい!」と思ったという。ただ、最初に吉田監督と会った時点では、まだ出演が決まっていなかったという。それでも「とにかく悔いなく監督とお話できたから、私はもうどうなってもいいですと言ってその日はお別れしましたが、その後(出演の)お話をいただきました」と出演までの経緯と、熱い思いを明かした。儀助の教え子である鷹司靖子を演じた瀧内は、本作への参加について「決め手は京三さん、(吉田)大八さん、そして脚本。この3つですね」と話し、「大八さんの作品に出ることは、役者として夢でした」と、吉田監督作品への想いを明かす。さらに「脚本が本当に面白かったということもありました。作品を見ていただけるとわかると思うのですが、隙がない。こんなに面白い脚本の作品に出演できることは、ご褒美のような仕事という風に感じました」と脚本の面白さを絶賛する。一方、バーで出会う大学生・菅井歩美を演じた河合は、出演を決めた理由として、吉田監督の「敵」の映画化に対する思いに心動かされたという。「筒井康隆さんのこの小説を映画にしたいという(監督の)気持ち、自分からこの映画を動かしてみたいという気持ちが、熱量を持って企画書に書かれていて、そこがすごく素敵だなと思いました」と話した。■「みんなすごいな」長塚京三が女優陣の役作りを称賛また、それぞれの役作りについて問われると、瀧内は「私は(今まで)自分の主張が強い役が多かったのですが、今回の役は真逆。そういった意味では挑戦しがいがあって面白かったです。難しさというよりも、塩梅や間も含めて、大八さんの中に明確な画があり、そこに近づいていく作業の方が近かったかなという風に思っています」とコメント。河合は「本当にあることなのかないことなのかわからないという要素は、(演じた菅井歩美は)3人の女性の中では一番薄いかもしれないと思います。(演じるにあたって)この人にも何かしら純粋な動機があると思ったので、すごく怪しい気があったり、儀助を誘惑するような色気があったり、そういうものを強いベクトルとしてあまり出す必要はないかなと思っていました」と演じた役への考えを明かした。その点、黒沢は演じた信子についてあまり深く考えることはなかったと話し、その理由として「今まで家事、俳優業、家庭の中でもいくつもの顔を持って二十何年やってきて、その生活が儀助との関係では何かいい方向に作用するのではないかという、期待値の方が高まっていったという感じです」と自身の実生活での経験から役にも期待をもって臨んだという。そんな共演陣の役作り、そしてその演技に、長塚は「みんなすごいなと思って。本当にいいお芝居を見せてくださいました」と力を込めて称賛を贈った。本作は、第37回東京国際映画祭にて、東京グランプリ/最優秀男優賞/最優秀監督賞の3冠を達成。さらに、11月に行われた台北金馬映画祭の「Windows On Asia部門」にも選出、12月には上海国際映画祭の「Japanese Week」に招待されるなど、国内外で絶賛の渦を巻き起こしている。さらに、3月16日(日)に香港で開催されるアジア全域版アカデミー賞「第18回アジア・フィルム・アワード」においても作品賞・監督賞・主演男優賞(長塚京三)・助演女優賞(瀧内公美)など6部門でノミネートされている。『敵』はテアトル新宿ほか全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:敵 2025年1月17日よりテアトル新宿ほか全国にて公開ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
2025年01月18日第37回東京国際映画祭にて東京グランプリ・最優秀男優賞・最優秀監督賞の3冠を達成した映画『敵』。この度、主演の長塚京三が主人公・渡辺儀助と女性たちの関係性を紐解き、女性たちを演じた瀧内公美、河合優実、黒沢あすかが長塚、そして儀助の魅力を語った。本作の魅力の1つともいえるのが、妻を亡くして20年間ひとり暮らしの元大学教授・渡辺儀助(長塚京三)と、物語のキーとなる3人の女性たちとの関係性だ。物語が進むにつれて、亡き妻・信子(黒沢あすか)、大学時代の教え子・鷹司靖子(瀧内公美)、行きつけのバーでアルバイトをする大学生・菅井歩美(河合優実)によって儀助の内面がつまびらかにされていく。長塚は自身の演じる儀助について、3人の女性によって「インテリ特有の小心さや、狡猾さみたいなものが滲んでくる」と語る。亡き妻・信子と儀助の関係については「もうひとつ愛しきれていなかった部分があって、約束したパリに連れていかなったことは大きい」と、あるシーンに触れながら言及。「きっと(儀助は)相手を見て判断したところがある。どうせ真髄を味わえないだろうと。やっぱり思い上がっていますよ、儀助は!」と自身が演じた儀助を分析する。元教え子・鷹司やバーで働く菅井との関係については、「教え子の靖子の恋愛相談に乗って力になろうとしたり、歩美の滞納している授業料を心配したりと、懐の深いところを見せようとするけれど、相手のことを慮っていたのかは分からない」と言い、「観客の皆さんはどう受け止めてくださるのでしょうか」と儀助の行動の真意を想像しながら語った。本作の肝とも言うべきこの3人の女性たちのキャスティングについて、吉田大八監督は「瀧内さんは撮影初日に衣装でカメラ前に立ったときから、圧倒的な“靖子感”だった。河合さんも、彼女らしい聡明さで僕の想像を超えた歩美を軽やかに創ってくれた。黒沢さんは以前からそのスケールの大きさに日本人離れしたものを感じていて、信子の複雑な儚さを強烈に表現してくれたと思う」と太鼓判を押す。そんな魅力あふれる役柄を演じきった女性キャスト3人は、長塚との共演をどう感じたのか。夫婦という立場を演じた黒沢は、「横に座ったときに、なんて自分がクリアになってくんだろうという空気清浄機で浄化されていくような感覚。至福の時だった」と自身の感じた“長塚京三効果”を振り返った。また、瀧内は「皆さんへの接し方や立ち居振る舞いを拝見して、非常に勉強になるところがあった。本質をついていらっしゃるので、すごく胸に刺さる。日本の宝となる大先輩の俳優とご一緒させてもらったのだと感じた」と恐縮した様子も。河合も「長塚さんの表現を観に行くだけで、敵を観る喜びがあるんじゃないかっていうぐらい見惚れていた。お芝居させてもらった時も、台本に書いてあるセリフがもう終わったけど、少しの間カットはかからない時の儀助が強烈に印象に残っていて、そのときの目が忘れられない」と話し、「私がイメージしていた儀助という人と長塚さんを重ねて見てしまった」と語っている。『敵』は1月17日(金)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:敵 2025年1月17日よりテアトル新宿ほか全国にて公開ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
2025年01月03日アジア最大級の映画の祭典である第37回東京国際映画祭が11月6日に閉幕を迎え、東京グランプリ/東京都知事賞に吉田大八監督、長塚京三主演の『敵』が選出され、監督賞および主演男優賞を受賞する3冠となった。TOHOシネマズ 日比谷スクリーン12にて行われたクロージングセレモニーでは、各部門における審査委員からの受賞作品の発表・授与。主演男優賞(長塚京三)と最優秀監督賞(吉田大八)、【東京グランプリ/東京都知事賞】に吉田大八監督の『敵』が選出され3冠を達成し、審査委員長トニー・レオンよりトロフィーを授与。吉田大八監督、長塚京三日本映画がグランプリに輝くのは第18回の根岸吉太郎監督作『雪に願うこと』以来19年ぶりの快挙となった(当時の名称は東京サクラグランプリ)。また、長塚は東京国際映画祭主演男優賞の最高齢(79歳)。トニー・レオンから「スクリーンに登場したその瞬間から、その深みと迫真性で私たちを魅了しました」との講評を受けた。『敵』©1998 筒井康隆/新潮社 ©2023 TEKINOMIKATA主演女優賞は『トラフィック』のアナマリア・ヴァルトロメイ、審査員特別賞は『アディオス・アミーゴ』、最優秀芸術貢献賞は『わが友アンドレ』。『トラフィック』そして観客賞は脳性麻痺を患う青年と祖母との関わりを描いた『小さな私』がそれぞれ受賞した。『小さな私』「今回、審査委員長という立場に大変緊張しました」というトニー・レオンは総評として、「審査委員全員一致でこの素晴らしい作品を見つけることができました。近い将来、またこの東京国際映画祭に来ることが出来る日を楽しみにしています」と語った。第37回東京国際映画祭クロージングセレモニー©2024 TIFF第37回東京国際映画祭主な受賞作品コンペティション部門東京グランプリ/東京都知事賞『敵』(日本)審査員特別賞『アディオス・アミーゴ』(コロンビア)『アディオス・アミーゴ』最優秀監督賞吉田大八監督(『敵』、日本)最優秀女優賞アナマリア・ヴァルトロメイ(『トラフィック』、ルーマニア/ベルギー/オランダ)キアラ・マストロヤンニが最優秀女優賞受賞を授与(テオドラ・アナ・ミハイ監督が代理で受賞)最優秀男優賞長塚京三(『敵』、日本)最優秀芸術貢献賞『わが友アンドレ』(中国)『わが友アンドレ』©Huace Pictures & Nineteen Pictures観客賞『小さな私』(中国)『小さな私』ヤン・リーナー監督©2024 TIFFアジアの未来作品賞『昼のアポロン 夜のアテネ』(トルコ)『昼のアポロン 夜のアテネ』東京国際映画祭 エシカル・フィルム賞『ダホメ』(ベナン/セネガル/フランス)黒澤明賞三宅唱、フー・ティエンユー特別功労賞タル・ベーラ『トラフィック』© MINDSET PRODUCTIONS - LUNANIME - LES FILMS DU FLEUVE - BASTIDE FILMS - FILMGATE FILMS - FILM I VÄST - AVANPOST MEDIA - MOBRA FILMS(シネマカフェ編集部)■関連作品:敵 2025年1月17日よりテアトル新宿ほか全国にて公開ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
2024年11月07日筒井康隆の同名小説を映画化した『敵』よりポスタービジュアルと予告編が解禁された。『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の吉田大八監督が手掛け、長塚京三が12年ぶりの映画主演を務める本作は、第37回東京国際映画祭コンペティション部門正式出品も決定している注目作。長塚は元大学教授・渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かう人間の恐怖と喜びを表現。また共演には瀧内公美、黒沢あすか、河合優実らが名を連ねる。この度解禁された予告編では、妻に先立たれて20年間、ひとり余生を過ごす儀助の様子が映し出される。自ら米を研ぎ、魚を焼き、食事する。掃除をして買い出しに行き、自由で堅実な生活を送りながら「残高に見合わない長生きは悲惨だから」と話し、自ら定めたXデー(来たるべき日)に向けて淡々と人生を生きている。そんな儀助のもとに、ある日突然、“敵”が訪れる。不穏な音楽と共に映し出される、儀助の周囲の人々や亡くなったはずの妻・信子、そして皆が口々に言う“敵”。逃げ惑う儀助、そして繰り広げられる激しい銃撃戦。果たして、穏やかな日常や現実を脅かす“敵”とは一体…?併せて解禁されたのは、儀助が整然とした家の中で佇んでいる、モノクロのポスタービジュアル。真剣な表情と恍惚とした表情をみせる儀助の姿が重なっており、「私 そんな先生が みたかったんです」というコピーが添えられている。劇中では、亡くなった妻・信子(黒沢あすか)や大学の教え子の鷹司靖子(瀧内公美)、バーで出会う謎めいた大学生・菅井歩美(河合優実)が登場するが、果たしてこのコピーは誰による言葉なのか。本作の世界観が垣間見える意味深なビジュアルとなっている。『敵』は2025年1月17日(金)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:敵 2025年1月17日よりテアトル新宿ほか全国にて公開ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
2024年10月17日神奈川芸術劇場(KAAT)の2024年度ラインアップ発表会が2月14日に行われ、長塚圭史芸術監督らが出席。気鋭の作家・加藤拓也がキッズ・プログラムのために書き下ろす『らんぼうものめ』、日英共同制作で村上春樹の小説を原作とする『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』などのラインアップが明らかになった。長塚芸術監督が2024年度メインシーズンのテーマとして掲げたのは「某 -なにがし-」。ものや人の名前をあえてはっきりさせないための代名詞として使用される言葉だが、SNSなど発信者の“匿名性”が高まる中で「その言葉は誰の言葉でどの立場で語っているのか?」といったことなど「社会と個」の関係性について考えていく中で浮かんだとのことで、“某”が指すのは「あなたかもしれないし私かもしれない。“某”というレンズを通して何が見えてくるのか」と問いかける。気になる上演演目だが、プレシーズンでは沖縄返還50年の2022年に上演され、読売演劇大賞の優秀作品賞を受賞した兼島拓也作、田中麻衣子演出の『ライカムで待っとく』を再演。アメリカ統治下の沖縄で1964年に起こった米兵殺傷事件を基に書かれた伊佐千尋によるノンフィクション「逆転」に着想を得た物語で、6月以降、京都、久留米をまわり、さらに6月23日の「沖縄慰霊の日」には沖縄(那覇文化芸術劇場なはーと)でも上演される。『ライカムで待っとく』 2024年公演チラシ7月からのキッズ・プログラムでは、アンディ・マンリー作による、鳥のさえずりや歌をモチーフにしたノンバーバルパフォーマンス『ペック』を上演。同じくキッズ・プログラムとして、多彩な活躍を見せる加藤拓也作・演出による『らんぼうものめ』が上演される。わがままな少年が神々の世界に足を踏み入れる冒険物語とのことで、加藤は「少し不思議でちょっと怖い話になっている」と語る。長塚芸術監督は加藤について、「クールな視点で人間をグロテスクとも思える視点で描く作家ですが、キッズ・プログラムを手掛けたらどうなるのか? 子どもたちにどんなアプローチをしていくのか?」と期待を寄せる。9月のメインシーズンの幕開けを飾るのはシェイクスピアの『リア王の悲劇』。河合祥一郎翻訳によるフォーリオ版をシェイクスピア初挑戦となる藤田俊太郎が演出する。同じく9月のKAAT EXHIBITION 2024では「南条嘉毅展 | 地中の渦」を開催。美術家の南条嘉毅による、横浜に積み重なった地層に着目したインスタレーション作品を展示する。10月には、ダンサーで振付家の山田うんと人工生命の研究者として知られる池上高志による試みの第2弾となる『まだここ通ってない』(仮)を上演。コンテンポラリーダンスと最先端の科学のコラボレーションを通じて、人間とサイエンスの関係を、またアートとサイエンスの関係に光を当てる。そして11月から12月にかけては、日英共同制作として、長塚がイギリス留学中に出会い、感銘を受けたというアーティスト集団「Vanishing Point」とKAATのコラボレーションで村上春樹の短編「品川猿」「品川猿の告白」を舞台化した『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』を上演。Vanishing Pointの創設者で芸術監督であるマシュー・レントンが演出を務める。また気鋭のダンスカンパニー「ケダゴロ」を主宰する下島礼紗と韓国国立現代舞踊団の国際共同制作による『黙れ、子宮』(仮)を上演。2021年に発表された同名の作品を再創作した作品で、18歳の思春期に判明したという下島自身の身体にまつわるある出来事を背景にした物語がダンスで表現される。KAAT神奈川芸術劇場 2024年度ラインアップチラシ2025年2月には、長塚が福田転球、大堀こういち、山内圭哉と共に2017年に始めた「新ロイヤル大衆舎」による新作で、これまで幾度も映像化されてきた芥川賞作家・火野葦平の自伝小説を舞台化した『花と龍』(長塚演出)を上演する。さらに『バナナの花は食べられる』で岸田國士戯曲賞を受賞した、「範宙遊泳」の山本卓卓の書き下ろし新作が益山貴司の演出で上演される。長塚芸術監督の下、4シーズン目を迎えるが、新作に国際共同制作、大反響を呼んだ作品の再演など、充実のラインナップとなった。取材・文:黒豆直樹KAAT神奈川芸術劇場 2024年度主なラインアップ<プレシーズン>■KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ライカムで待っとく』誰も読もうとしなかった、読まれなかった沖縄(こっち側)の物語。2022年の話題作が、待望の再演&ツアーを経て沖縄での上演が実現。作:兼島拓也演出:田中麻衣子出演:中山祐一朗前田一世佐久本宝蔵下穂波小川ゲン神田青魏涼子あめくみちこ2024年5月24日(金)~6月2日(日) <中スタジオ><ツアー>【京都公演】6月7日(金)・8日(土) ロームシアター京都<サウスホール>【福岡・久留米公演】6月15日(土) 久留米シティプラザ<久留米座>【那覇公演】6月22日(土)~23日(日) 那覇文化芸術劇場なはーと<小劇場>※この事業は令和6年2月の那覇市議会で予算の議決が延期または否決された場合、事業を延期又は中止する可能性があります。■KAATキッズ・プログラム 2024『ペック』鳥のさえずりや歌をモチーフに、“とりのうたごえ”にさそわれて、見て、聞いて、楽しむ、こどもとおとなのためのノンバーバルパフォーマンス!作:アンディ ・マンリー、イアン・キャメロン、ショナ・レッペ音楽:ウィル・カルダーバンク/サウンドコラボレーター:荒木優光出演:アンディ・マンリー2024年7月上旬<大スタジオ>■KAATキッズ・プログラム 2024『らんぼうものめ』気鋭の劇作家・演出家 加藤拓也が初のキッズ・プログラムで描くのは、神さまたちの世界に迷い込んだ少年の、ちょっと怖くて不思議な物語。作・演出:加藤拓也2024年7月下旬<大スタジオ><ツアー(予定)>【福島県・いわき公演】8月4日(日) いわき芸術文化交流館アリオス【長野県・松本公演】8月17(土)・18日(日) まつもと市民芸術館<小ホール> ほか<メインシーズン「某(なにがし)」>■KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『リア王の悲劇』文学の最高峰に、実力あるキャストと魅力的なスタッフと共に新演出で挑む 。作:W.シェイクスピア翻訳:河合祥一郎演出:藤田俊太郎2024年9月<ホール内特設会場>■KAAT EXHIBITION 2024南条嘉毅展|地中の渦太古から現代にいたる自然と人間の記憶と記録。時間と空間の積層に宿る膨大な世界の軌跡を現代に呼び覚ます。美術家の南条嘉毅によるインスタレーション作品。2024年9月22日(日・祝)~10月20日(日)(予定)<中スタジオ>■KAAT×山田うん×池上高志『まだここ通ってない』(仮)いつも、新しいものや考え、動きを探してる。それはあるソフトウェアかもしれない。散歩の途中か、踊っているときかもしれない。でも未来は、きっとそこから一気に始まる。舞踊家と科学者の未知なる競演。身体とサイエンスは未来に共存できるのか。企画・構成:山田うん池上高志2024年10月中旬<ホール内特設会場>■日英共同制作KAAT × Vanishing Point『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』「カイハツ」プロジェクトを経て、国際的に活躍するアーティスト集団ヴァニシング・ポイントと日英共同制作で贈る、村上春樹原作のコミック・ミステリー原作:村上春樹(短編「品川猿」「品川猿の告白」より)演出:マシュー・レントン2024年11月29日(金)~12月8日(日)<大スタジオ>【英国公演】2025年2月下旬~ Tramway, グラスゴー■KAAT x ケダゴロ x 韓国国立現代舞踊団国際共同制作『黙れ、子宮』(仮)気鋭のダンスカンパニー・ケダゴロを率いる下島礼紗による、子宮とキンタマを巡る壮大なダンス作品!振付・演出・構成:下島礼紗2024年12月13日(金)~12月15日(日)<大スタジオ>■新ロイヤル大衆舎×KAAT vol.2『花と龍』新ロイヤル大衆舎とKAATが再びタッグを組んで贈る、激動の時代に繰り広げられる骨太で濃密な人間ドラマ。原作:火野葦平脚本:齋藤雅文演出:長塚圭史音楽:山内圭哉2025年2月中旬~下旬<ホール><ツアー(予定)>【富山公演】2025年3月初旬 オーバード・ホール<中ホール>【兵庫公演】2025年3月8日(土)・9日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急<中ホール>【福岡公演】2025年3月15日(土)・16日(日)J:COM北九州芸術劇場<中劇場>■KAAT神奈川芸術劇場プロデュース新作書き下ろし演劇作品(タイトル未定)岸田國士戯曲賞受賞劇作家・山本卓卓による新作書下ろし戯曲を、益山貴司演出で上演!作:山本卓卓演出:益山貴司2025年2月~3月<中スタジオ>■YPAM ‒ 横浜国際舞台芸術ミーティング 20242024年12月上旬<大スタジオ>等(予定)【提携公演】■Baobab:『DANCE×Scrum!!! 2024』4月27日(土)〜5月6日(月・休)<大スタジオ・アトリウム>■CCCreation:『白蟻』2024年6月 新作公演<大スタジオ>■KUNIO:KUNIO16『(Title未定)』2024年6月<中スタジオ>■横浜夢座:横浜夢座25周年・五大路子舞台生活50周年記念『ヨコハマの夜明け~富貴楼お倉の物語~』(仮)2024年9月13日(金)~16日(月・祝)<大スタジオ>■劇団た組:『ドードーが落下する』2025年1月上旬~<大スタジオ>■Co.山田うん:「新作」2025年1月24日(金)~26日(日)<大スタジオ>※各公演の最新情報は、 劇場公式サイト() にてご確認ください。
2024年02月19日本日2月3日(土) より、KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト第二弾『箱根山の美女と野獣』『三浦半島の人魚姫』が開幕。併せて、舞台写真と作・演出・出演の長塚圭史よりコメントが到着した。本作は、世界中で親しまれている『美女と野獣』『人魚姫』、二つの物語の舞台を神奈川県に移し、神奈川県内各地域の伝説やエピソードを盛り込んで書き下ろすオリジナル作品。シーズンタイトル「貌」をテーマに、ファンタジックな物語から美とは何か、大切なものは何かを浮かび上がらせる。音楽を担当するのは、NHK連続テレビ小説『らんまん』の他、KAATでも『夢の劇-ドリーム・プレイ-』(2016)、『星の王子さま―サン=テグジュペリからの手紙―』(2020、2023) で音楽を手掛けた阿部海太郎。振付はバットシェバ舞踊団在籍後世界各国で数々の賞を受賞している柿崎麻莉子、演奏にはジャンルを越境した独創的な音楽で無二の世界観を創り出すトウヤマタケオを迎える。左から)片岡正二郎、トウヤマタケオキャストは、出演者にも名を連ねた長塚と柿崎のほか、KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』で孫悟空や白輪園長を演じた菅原永二が再登場。また、ダンス集団TABATHAのメンバーとして活動しながら国内外の作品に出演する四戸由香、数々の舞台に出演し、昨年はドラマ『エルピス -希望、あるいは災い-』での演技が話題を呼んだ片岡正二郎が出演する。第二弾の今回も、KAAT神奈川芸術劇場で上演後、座間、川崎、小田原、逗子、茅ケ崎の県内5カ所を巡演。公演のほかにも、長塚が各地で街について語り合うトークイベントや、演劇の魅力を伝えるレクチャー/ワークショップ/バックステージツアーなどのアウトリーチ活動も予定している。■作・演出・出演 長塚圭史 コメントKAATカナガワ・ツアー・プロジェクト第二弾が開幕しました。このプロジェクトは舞台芸術に触れる愉しみをより身近に感じてもらおうと、神奈川県の劇場として県民の皆様にも気軽にご覧頂ける県域を舞台にした軽演劇を生み出し、さらにKAATを皮切りに県内ツアーもしようじゃないかという企画です。今回はなんと二本立て。神奈川県は海あり山あり見所が満載だよねということで、海と山にぐんと焦点を当て、西洋の名作と掛け合わせてみました。軽演劇と言っても、第一弾でも大活躍の俳優・菅原永二さんを中心とした県域ネタ満載の台詞劇というだけでなく、音楽はNHK連続テレビ小説『らんまん』を手掛けた阿部海太郎さん、演奏はトウヤマタケオさん、振付、出演には舞踊家の柿崎麻莉子さんなど、各分野のエキスパートが集まり、演劇と音楽と踊りが実にゆるやかに共存します。今回も毒っ気は健在ですが、このシリーズは本当にゆるやかです。なので神奈川県民の皆さまはもちろん、劇場を愛する皆さまにも、こんなゆるさも好きかもしれないとお楽しみ頂けるのではないかと思います。KAATだけではなく県内五カ所の劇場でも上演しております。肩の力を抜いて、のんびりと、ご来場頂けたら幸いです。ゆったりお待ちしております。<公演情報>KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト 第二弾『箱根山の美女と野獣』『三浦半島の人魚姫』作・演出:長塚圭史音楽:阿部海太郎振付:柿崎麻莉子出演:菅原永二柿崎麻莉子四戸由香長塚圭史片岡正二郎演奏:トウヤマタケオ会場:KAAT神奈川芸術劇場〈中スタジオ〉2月3日(土)~2月12日(月・休)【チケット料金】(入場整理番号付自由席・税込)一般:4,800円U24チケット(24歳以下):2,400円高校生以下割引:1,000円シルバー割引(満65歳以上):4,300円※車椅子でご来場の方は購入前にチケットかながわにお問い合わせください。※3歳以下のお子様はご入場できません。※公演中止の場合を除き、チケットの変更・払い戻しはいたしません。※入場は整理番号順にご案内いたします。※開演後のご入場はお待ちいただく場合があります。<神奈川県内ツアー 座間公演>会場:ハーモニーホール座間 小ホール2月17日(土) 16:00、18日(日) 13:00※2月17日(土) は終演後に、長塚圭史(KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督)によるアフタートークを行います。※開場は開演の30分前※両日託児サービスあり 公演一週間前までに要予約・有料※営利目的の転売禁止。※3歳以下のお子様はご入場いただけません。【チケット料金】(入場整理番号付自由席)一般:3,800円24チケット(24歳以下):1,900円高校生以下:1,000円シルバー割引(満65歳以上):3,300円<川崎公演>会場:川崎市アートセンター アルテリオ小劇場2月21日(水) 18:30※終演後に、長塚圭史(KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督)によるアフタートークを行います。※開場は開演の30分前※託児サービスあり 公演一週間前までに要予約・有料※営利目的の転売禁止。※3歳以下のお子様はご入場いただけません。【チケット料金】(入場整理番号付自由席)一般:4,800円U24チケット(24歳以下):2,400円高校生以下:1,000円シルバー割引(満65歳以上):4,300円<小田原公演>会場:小田原三の丸ホール 小ホール2月24日(土) 16:00、25日(日) 13:30※2月24日(土) は終演後に、長塚圭史(KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督)によるアフタートークを行います。【チケット料金】(全席指定)一般:4,000円U25(25歳以下):2,500円U18(18歳以下):1,000円子ども券(4・5歳):500円<逗子公演>会場:逗子文化プラザ なぎさホール2月28日(水) 18:30※終演後に、長塚圭史(KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督)によるアフタートークを行います。※開場は開演の30分前※託児サービスあり 公演一週間前までに要予約・有料※営利目的の転売禁止。※3歳以下のお子様はご入場いただけません。【チケット料金】(入場整理番号付自由席)一般:3,800円U24チケット(24歳以下):1,900円高校生以下:1,000円シルバー割引(満65歳以上):3,300円<茅ヶ崎公演>会場:茅ヶ崎市民文化会館 小ホール3月2日(土) 16:00、3日(日) 13:00※3月2日(土) は終演後に、長塚圭史(KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督)によるアフタートークを行います。【チケット料金】(全席自由)一般:3,500円ユース(中学生~24歳):1,000円子ども(4歳~小学生):500円チケットはこちら:
2024年02月03日主演・佐藤隆太、演出・長塚圭史で、ローレンス・オリヴィエ賞ベストリバイバル賞をはじめ4部門ノミネートを果たした舞台「『GOOD』-善き人-」が上演されることが決定した。本作はローレンス・オリヴィエ賞受賞演出家のドミニク・クックがC・P・テイラーの戯曲をリバイバル上演した話題作。ローレンス・オリヴィエ賞ベストリバイバル賞をはじめ4部門ノミネートされ、イギリス演劇界で話題となった。物語の舞台はヒトラー独裁が進む1930年代のドイツ。善良で知的なジョン・ハルダー教授は過去に書いた論文を読んだヒトラーに気に入られ、自身の意図とは関係なくナチスに取り込まれてしまい人生が一変してしまう…。自身が生き残るために、ユダヤ人の親友を裏切り、変わっていくハルダー。私たちは同じ立場に立ったとき、果たして“善き人”でいられるのか。いまを生きる私たちへの警告として、新たな解釈で再構築する。今回の演出は、1996年「阿佐ヶ谷スパイダース」を結成し、2004年・第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2006年・第14回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞など受賞歴多数、作・演出・出演の三役を担い、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任した長塚圭史。長塚圭史ジョン・ハルダー教授役を務めるのは、NHK大河ドラマ「どうする家康」や一人芝居「エブリ・ブリリアント・シング~ありとあらゆるステキなこと~」、映画『シャイロックの子供たち』などの作品に出演する傍ら、「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」などバラエティ番組のMCなど俳優業に留まらず多彩な活躍をみせ、2024年には俳優歴25年を迎える佐藤隆太。佐藤隆太共演には、多数の映画やドラマに出演し、映画『マークスの山』や『CURE』などでの演技で日本アカデミー賞をはじめとした数々の映画賞も受賞、圧倒的な演技力で声優、ナレーターなど幅広く活躍している萩原聖人。映画『愛を乞うひと』にて第22回日本アカデミー賞新人賞・助演女優賞を受賞し、ドラマ「警視庁アウトサイダー」、舞台「サメと泳ぐ」「After Life」などに出演し、今年2月には出演映画『身代わり忠臣蔵』の公開が控える野波麻帆。映画『ソロモンの偽証』で主演デビューし、第39回日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の映画賞を受賞、近年はNHK連続テレビ小説「ひよっこ」、NHK大河ドラマ「青天を衝け」などに出演し、ドラマ「グレイトギフト」への出演を控える藤野涼子。舞台「ドン・カルロス」、MUSICAL SHOW「日劇前で逢いましょう~昭和みたいな恋をしよう~」、ドラマ「ただ離婚してないだけ」などに出演し近年活躍の場を広げている「少年忍者」の北川拓実。舞台「リチャード二世」「ミセス・クライン」にて第28回読売演劇大賞と優秀女優賞受賞、「リチャード三世」「THAT FACE その顔」にて、第47回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し、近年では舞台「エンジェルス・イン・アメリカ」などに出演、2月には舞台「夜は昼の母」への出演を控える那須佐代子など、実力と人気を兼ね備えた俳優たちが結集した。演出・キャストよりコメント到着演出:長塚圭史善悪の見極めは難しい。時代や歴史によって更新されていくからです。それでも見誤ってはならないものがあります。けれどわかっていても、見誤ってしまうことがあります。抗い難き人間の弱さによるものかもしれませんし、それこそが身を守る手段なのかもしれません。ヒトラー政権下のドイツで、善良で理知的な中年男ハルダーと彼を取り囲む人々の行方を前に、私たちは「もしも自分ならどうしていただろう」と問い続けずにはいられません。独裁政権下の善良な市民たちの心理を生々しく描く追想劇を、素晴らしいキャスト・ミュージシャン、スタッフの皆様とお送りします。劇場でお待ちしております。佐藤隆太芝居を初めてから25年という月日が経とうとしています。昨年は一人芝居で全国各地を回り、沢山のお客様との出会いがありました。人との距離をとらざるを得なかったこの数年を経験した事もあり、みなさんと直接繋がることができる舞台に対して、今まで以上に豊かさを感じ、そこに立ち続けたいという欲が強くなっています。そんな中、本作のお話をいただきました。独裁政権下において、一人一人がそれぞれの状況で何を守ろうとして生きるのか。正義とは?そしてその先には何があるのか。自分にも問いながら台本を読みました。ひとつひとつの台詞を落とし込むことも一筋縄ではいかない難解な戯曲です。ですが、覚悟を持って飛び込みたいと思います。長塚さんの指揮のもと、素晴らしい共演者の皆さんと共に悩み、もがき、それ自体を楽しみながら作り上げていきたいです。重たいテーマを扱っている作品ですが、生バンドあり、歌ありと様々な要素が融合して織りなす舞台です。劇場で皆さんとお会いできることを楽しみにしています。萩原聖人人が人である限り繰り返される事。本当にそれは昔も今も何も変わらないように思います。変えたくても変えられない。変わりたくても変われない。この作品を通してカンパニーの皆様とそれぞれのGOODを探していけたらと思っています。野波麻帆いつか圭史さん演出の舞台に立ちたいと思い続けて20年。お声をかけて頂き飛び上がる気持ちの中送られてきた台本は、ナチス政権下のドイツが背景。人間の善悪を問うなんとも難解な戯曲作品でした。ああ大変だ。怖い。今の正直な気持ちです。でも私が舞台に立つ1つの理由は、作品と対話を重ねながら皆で掘り下げ深めていける時間が余りにも幸せであることです。隠していた無意識の悪意すらも丸裸にされる覚悟をもって全身全霊で挑みたいと思います。お稽古がとても楽しみです。藤野涼子ナショナル・シアター・ライブ2023「善き人」の上映を観に行こうと予定していたところに、この作品に出演しないかとお話を頂き、その偶然に驚きました。タイミングや選択には何かしら理由や意味があると!もし私自身がこの作品の世界の真ん中に放り込まれたら…果たして「善き人」でいられるのか?私が演じる「アン」の選択はこの世界にどう映るのか?先輩たちの胸をお借りして、思い切り楽しんで、この作品に参加したいと思います。北川拓実今回、事務官/伝令/ボック役を演じさせていただく北川拓実です。「GOOD」への出演が決まり豪華なキャストの皆さんと、この戯曲を一緒に作り上げること、新たな役柄でこの作品の中で生きられることに喜びを感じています。僕個人としては20歳になって初のお芝居となります。今までの舞台や演劇の経験を糧に、この作品を通して更に成長できるよう稽古から全力で向き合っていきたいと思っています。那須佐代子誰もが自分もこうなってしまう可能性を感じる。それがこの「GOOD」の恐ろしさだと思います。皆幸せに生きていきたいし、安心安全でいたい。そういう当たり前に思える保身から、悪気もないままに辿り着いてしまった惨禍。それは現在に至るまで連綿と続いている闘争であり、決して過去の話、他人事とは思えません。この作品は展開もスピーディーで目まぐるしくシーンが変わるのでチームワークが大切になってくると思います。長塚さんの演出、共演の皆様も初めましての方ばかりで緊張しますが、早く皆さんと仲良くなり、座組み一丸となってこの骨太な作品にガッツリ取り組んでいきたいと思っています。「『GOOD』-善き人-」は4月6日(土)~21日(日)世田谷パブリックシアターにて、4月27日(土)~28日(日)兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホールにて上演。(シネマカフェ編集部)
2024年01月09日4月6日(土) より世田谷パブリックシアターにて、『「GOOD」-善き人‐』が上演されることが決定した。『GOOD』は、ローレンス・オリヴィエ賞受賞演出家のドミニク・クックがC・P・テイラーの戯曲をリバイバル上演した話題作。ローレンス・オリヴィエ賞ベストリバイバル賞をはじめ4部門にノミネートされ、イギリス演劇界で話題となった。舞台はヒトラー独裁が進む1930年代のドイツ。善良で知的なジョン・ハルダー教授は過去に書いた論文を読んだヒトラーに気に入られ、自身の意図とは関係なくナチスに取り込まれてしまい人生が一変していく。自身が生き残るためにユダヤ人の親友を裏切り、変わっていくハルダー。人は同じ立場に立った時、果たして“善き人”でいられるのか。演出を務めるのは、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任した長塚圭史。ジョン・ハルダー教授役を務めるのはNHK大河ドラマ『どうする家康』、映画『シャイロックの子供たち』などの作品に出演する傍ら、『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』などバラエティ番組のMCも務める佐藤隆太。共演には、多数の映画やドラマに出演し、映画『マークスの山』や『CURE』などでの演技で日本アカデミー賞をはじめとした数々の映画賞を受賞している萩原聖人。映画『愛を乞うひと』で第22回日本アカデミー賞、新人賞・助演女優賞を受賞し、今年2月には出演映画『身代わり忠臣蔵』の公開が控える野波麻帆。映画『ソロモンの偽証』で主演デビューし、第39回日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の映画賞を受賞。今年放送のドラマ『グレイトギフト』への出演を控える藤野涼子。舞台『ドン・カルロス』、MUSICAL SHOW『日劇前で逢いましょう~昭和みたいな恋をしよう~』などに出演し近年活躍の場を広げている少年忍者の北川拓実。舞台『リチャード二世』『ミセス・クライン』にて第28回読売演劇大賞と優秀女優賞受賞、『リチャード三世』『THAT FACE その顔』にて、第47回紀伊國屋演劇賞受賞個人賞を受賞し、2月には舞台『夜は昼の母』への出演を控える那須佐代子など、実力と人気を兼ね備えた俳優たちが結集した。<コメント>■演出:長塚圭史善悪の見極めは難しい。時代や歴史によって更新されていくからです。それでも見誤ってはならないものがあります。けれどわかっていても、見誤ってしまうことがあります。抗い難き人間の弱さによるものかもしれませんし、それこそが身を守る手段なのかもしれません。ヒトラー政権下のドイツで、善良で理知的な中年男ハルダーと彼を取り囲む人々の行方を前に、私たちは「もしも自分ならどうしていただろう」と問い続けずにはいられません。独裁政権下の善良な市民たちの心理を生々しく描く追想劇を、素晴らしいキャスト、ミュージシャン、スタッフの皆様とお送りします。劇場でお待ちしております。■佐藤隆太芝居を初めてから25年という月日が経とうとしています。昨年は一人芝居で全国各地を回り、沢山のお客様との出会いがありました。人との距離をとらざるを得なかったこの数年を経験した事もあり、みなさんと直接繋がることができる舞台に対して、今まで以上に豊かさを感じ、そこに立ち続けたいという欲が強くなっています。そんな中、本作のお話をいただきました。独裁政権下において、一人一人がそれぞれの状況で何を守ろうとして生きるのか。正義とは?そしてその先には何があるのか。自分にも問いながら台本を読みました。ひとつひとつの台詞を落とし込むことも一筋縄ではいかない難解な戯曲です。ですが、覚悟を持って飛び込みたいと思います。長塚さんの指揮のもと、素晴らしい共演者の皆さんと共に悩み、もがき、それ自体を楽しみながら作り上げていきたいです。重たいテーマを扱っている作品ですが、生バンドあり、歌ありと様々な要素が融合して織りなす舞台です。劇場で皆さんとお会いできることを楽しみにしています。■萩原聖人人が人である限り繰り返される事。本当にそれは昔も今も何も変わらないように思います。変えたくても変えられない。変わりたくても変われない。この作品を通してカンパニーの皆様とそれぞれのGOODを探していけたらと思っています。■野波麻帆いつか圭史さん演出の舞台に立ちたいと思い続けて20年。お声をかけて頂き飛び上がる気持ちの中送られてきた台本は、ナチス政権下のドイツが背景。人間の善悪を問うなんとも難解な戯曲作品でした。ああ大変だ。怖い。今の正直な気持ちです。でも私が舞台に立つ1つの理由は、作品と対話を重ねながら皆で掘り下げ深めていける時間が余りにも幸せであることです。隠していた無意識の悪意すらも丸裸にされる覚悟をもって全身全霊で挑みたいと思います。お稽古がとても楽しみです。■藤野涼子ナショナル・シアター・ライブ2023『善き人』の上映を観に行こうと予定していたところに、この作品に出演しないかとお話を頂き、その偶然に驚きました。タイミングや選択には何かしら理由や意味があると!もし私自身がこの作品の世界の真ん中に放り込まれたら……果たして「善き人」でいられるのか?私が演じる「アン」の選択はこの世界にどう映るのか?先輩たちの胸をお借りして、思い切り楽しんで、この作品に参加したいと思います。■北川拓実今回、事務官/伝令/ボック役を演じさせていただく北川拓実です。『GOOD』への出演が決まり豪華なキャストの皆さんと、この戯曲を一緒に作り上げること、新たな役柄でこの作品の中で生きられることに喜びを感じています。僕個人としては20歳になって初のお芝居となります。今までの舞台や演劇の経験を糧に、この作品を通して更に成長できるよう稽古から全力で向き合っていきたいと思っています。■那須佐代子誰もが自分もこうなってしまう可能性を感じる。それがこの『GOOD』の恐ろしさだと思います。 皆幸せに生きていきたいし、安心安全でいたい。そういう当たり前に思える保身から、悪気もないままに辿り着いてしまった惨禍。それは現在に至るまで連綿と続いている闘争であり、決して過去の話、他人事とは思えません。 この作品は展開もスピーディーで目まぐるしくシーンが変わるのでチームワークが大切になってくると思います。長塚さんの演出、共演の皆様も初めましての方ばかりで緊張しますが、早く皆さんと仲良くなり、座組み一丸となってこの骨太な作品にガッツリ取り組んでいきたいと思っています。<公演情報>『「GOOD」-善き人-』4月6日(土)~21日(日) 東京・世田谷パブリックシアター4月27日(土)~28日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール作:C.P テイラー演出:長塚圭史出演:佐藤隆太萩原聖人野波麻帆藤野涼子北川拓実佐々木春香金子岳憲片岡正二郎大堀こういち那須佐代子【一般発売】東京公演:2月23日(金・祝)兵庫公演:3月31日(日)公式HP:
2024年01月09日KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アメリカの時計』が9月15日(金) に開幕し、演出・長塚圭史の初日コメントと舞台写真が到着した。アーサー・ミラー作となる本公演は、KAAT神奈川芸術劇場の2023年度メインシーズン「貌(かたち)」の開幕を飾る作品で、20世紀初頭、大恐慌によって未曽有の混乱に落ちたアメリカとある家族の年代記(クロニクル)を描く。■演出 長塚圭史 コメントカタチのないものを信じ、多くを託し、預け、委ねている現在にこの戯曲がどう響くのか。またこの終わりなき資本主義社会にこの劇が今何を語るのか。初日が開けた今もまだ確かなことは言えませんが、なぜ今この劇を上演するのかと日々問い続けながら歩みました。どちらかというとアーサー・ミラー作品の中でもあまり注目されてこなかった、どちらかというととっつきにくい史実を扱った、どちらかというと歪な構造のこの『アメリカの時計』ですが、過去と現在とを結びつけ肉付けしてゆく俳優陣、柔軟で迅速なスタッフと共に丁寧に紡ぎました。社会劇としての魅力もありますが、ボーム家のように、近くこのようなことが我が身に降りかかるのではないかと夢想しながらSF劇として観るのもまた一興、いやちょっと恐ろしいか。<公演情報>KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース 『アメリカの時計』作:アーサー・ミラー演出:長塚圭史翻訳:髙田曜子出演:矢崎広、シルビア・グラブ、中村まこと、河内大和、瑞木健太郎、武谷公雄、大久保祥太郎、関谷春子、田中佑弥、佐々木春香、斎藤瑠希、天宮良、大谷亮介9月15日(金)~10月1日(日)会場:KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオチケットはこちら:
2023年09月16日「幸せな演劇めぐりをさせてもらっている」と、矢崎広は言う。10代の頃に知り合った富岡晃一郎を通して「阿佐ヶ谷スパイダース」を知り、その作品を通して長塚圭史に憧れるようになった。だが長塚は自分よりも少し年長の俳優たちと組むことが多かったため、「先輩たちと作品創りをする方。自分たちは自分たちの世代で演劇を創っていくのかな」と、漠然と自分には縁のない、雲の上の人だと思っていたという。しかし、演劇が紡ぐ縁は矢崎と長塚を結びつけた。今回、『アメリカの時計』で初めて長塚演出作品に参加することになったのだ。これまで出演してきた作品を共に創りあげた演出家たちから得たものを、矢崎は稽古場で活かして芝居を創り、長塚に提示。それを長塚が自身の創造性を通してさらに練り上げ、矢崎にフィードバックする。その循環がすごく良いものになっていると実感する、と矢崎は笑顔で語る。そんな幸せな環境で稽古が進んでいる『アメリカの時計』は、20世紀アメリカを代表する劇作家のひとりである、アーサー・ミラーが1980年に発表した作品だ。1920年代、アメリカは史上空前の繁栄を遂げていた。しかしその繁栄はいつまでも続くものではないと気づいたアーサー・ロバートソン(河内大和)はいち早く株から手を引き、親しい者たちに警告。だが、誰も耳を貸さなかった。果たして彼が予見した通り、1929年に株が大暴落。裕福な実業家だったモウ・ボーム(中村まこと)も財産を失ってしまい、妻のローズ(シルビア・グラブ)が宝石を現金に換えて暮らしている。そして息子のリー(矢崎広)は飢え苦しむ人々を目の当たりにしながら、自身の生き方を探すのだった……。世界恐慌の時代のアメリカを生きる人々を描いた作品を上演するにあたって、キャスト陣には稽古開始前に長塚から課題が出されたという。第一次世界大戦後の情勢、ファシズム、株価など、各自が与えられたテーマについて調べ、皆の前で発表。キャスト・スタッフ共に知識を共有することによって、作品への理解を深めたという。「僕のテーマは、すごく範囲が広いですが『第一次世界大戦後の光景』。図書館に行って本に目を通したりインターネットで検索したりして、第一次世界大戦とその被害、大戦後にアメリカが好景気になったのは何故か、敗戦国のドイツがとんでもない条約によって払うことになった賠償金を2010年にようやく払い終えたことなどを調べました。他の人が調べたこともおもしろかったし、そういう時間があったおかげですごく(作品に)入りやすかった。僕の中でどんどん、1920年代後半以降のアメリカの光景が本当に目の前に広がっているかのように濃くなっていると感じる。本当に面白い時代だと思いました」話を聞くと、カンパニー各人が自身の知識と感性を総動員しているように感じる。実際、矢崎も稽古後の疲労が半端ないと打ち明ける。横浜の稽古場から都内に戻る時も、乗っていた電車の中で何度も寝過ごしてしまったそう。「『ここ、どこだ?』状態で、すごい所まで行っちゃったこともある」と思わず苦笑するのだった。そうした経過を経ているだけに、カンパニー全体がまとまり、とても仲が良いという。しかも、稽古の合間も特に雑談はしないのだとか。「この戯曲に関連して、今の自分たちと重ね合わせた話が多いですね。『ここで起きている通貨のインフレって、これと似てますよね』と、歴史や経済の話になっているんです。もともとシルビアさん、河内さんや関谷春子さんとは面識がありましたけど、その人たちに限らず皆と話しています。大谷亮介さんも、すごく素敵な方なんですよ。ちょっと言葉で表現するのは難しい、存在自体がなんとも言えないおもしろさでいらっしゃる」と、大先輩とも良い雰囲気であることが窺える。戯曲から受ける印象を遥かに超える舞台に今回、矢崎が演じるのはリー・ボーム。裕福な家に生まれたが、大恐慌によって大学進学を断念することになる。「この時代を生き抜いたひとりの男として描かれていますが、彼が物語の語り手となって始まるので、彼の目線が観客と共有される。『僕は今こう感じたけど、皆さんもそう思いますよね?』という、ある意味では観客に一番近い存在かもしれません。それに対して、河内さんが演じるロバートソンが歴史的なことやいろいろな背景を述べて、リーはそれに反論することもある、という感じ」複数の視点を観客に提供する、ある意味では象徴的な存在ともいえそうだ。だが、それでは終わらないところがこの戯曲のおもしろさだという。「物語の外にいて観客に語りかけていたはずのリーが、後半は物語の中に入っていく。どんどん感傷的になるとともに、語りの方は少なくなっていくんです。おもしろい造りだと思います」大学入学前、つまり20歳前であるリー。矢崎は最近出演した舞台では16歳の息子をもつ父親役だったので、役柄上ぐっと若返ったことになる。「そうなんですよ(笑)。それが今、僕に求められている特徴なのかもしれないって最近思います。20歳前後から40代くらいまで幅広く演じられる役者としてとらえられていることは、とてもありがたい。そこは自分の武器として頑張っていきたいと思います」1920~30年代のアメリカを舞台にしたシリアスな物語だけに、自然とメッセージ性も意識する。「世界恐慌を経てどんどん政策、つまり国が変わっていくなかで、彼らはどう生き抜いたのか。何を感じていたのか。まさに2023年の現在と置き換えて考えられるところが、この戯曲の魅力だと思います。『人の感情ってどう動くんだろう?』『いったい何が大切なんだろう?』と僕も考えていますし、観客の皆さんにも考えてもらいたい。リーたちはつらい瞬間もたくさん経験しているけど、同じくらい将来への夢もあった。そして必死に生き抜こうとしていた。その姿は、とても魅力的です」そうしたつらい時代を描き、13人のキャストで50名以上の人物を演じ分ける物語。ミュージカルのように歌の力でエンタテインメントにする舞台ではないので、もしかしたら難解に感じる人もいるかもしれない。だが、矢崎はそれは心配していないという。「僕と同世代、あるいは下の世代の人が観に来ても『おもしろい』と思ってもらえる自信はあります。この戯曲が描いていることを、長塚さんが細かく分けて、その一つひとつを素晴らしいキャストが本当に濃く、当時の人間の姿を浮かび上がらせるように突き詰めながら、パズルを組み立てていくかのように積み重ねている稽古です。これが完成したら、戯曲を読んだ印象の数十倍もの面白さをもつ舞台になるはず。稽古場で僕はそれを体感しているし、自信があります。ぜひ、現代の世界情勢をこれから生きていこうとしている20~30代も含めて、多くの人たちに観ていただきたいですね」カンパニーの挑戦は、どのような形で具現化するのか。ぜひ見届けたい公演は10月1日(日)まで、KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉にて。取材・文:金井まゆみ撮影:You Ishiiヘアメイク:ゆきや(SUNVALLEY)スタイリスト:田中トモコ(HIKORA)衣装協力:kujaku(03・6416・4109)ぴあアプリ限定!アプリで応募プレゼント★矢崎広さんのサイン入りポラを抽選で2名様にプレゼント!【応募方法】1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。こちら(OnelinkのURLを貼り付け) からもダウンロードできます2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!<公演情報>『アメリカの時計』作:アーサー・ミラー演出:長塚圭史翻訳:髙田曜子出演:矢崎広 / シルビア・グラブ/中村まこと/河内大和瑞木健太郎/武谷公雄/大久保祥太郎/関谷春子田中佑弥/佐々木春香/斎藤瑠希 /天宮良大谷亮介2023年9月15日(金)~2023年10月1日(日)会場:KAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>チケット情報公式サイト
2023年09月14日新国立劇場2022/2023シーズン演劇『モグラが三千あつまって』が開幕し、舞台写真と演出・長塚圭史よりコメントが到着した。本公演は、『音のいない世界で』『かがみのかなたはたなかのなかに』『イヌビト~犬人~』と、「こどもも大人も楽しめるシリーズ」として新国立劇場で作品を発表してきた長塚圭史の最新作。4作目となる今回は、武井博の児童文学『モグラが三千あつまって』を音楽劇として舞台化した。長塚圭史がこどもの頃に読み、衝撃を受け、いつか舞台化したいと長年あたためてきた企画に、トップクリエーターたちが集結。振付は、これまでの「こどもも大人も楽しめるシリーズ」すべての作品の振付を手掛けてきた近藤良平。音楽は『イヌビト~犬人~』に続き、阿部海太郎が担当する。キャストは、吉田美月喜、富山えり子、小日向星一、栗原類の4名がいくつもの役を演じ分け、歌あり、踊りあり、さらに楽器演奏まで披露する。左から)富山えり子、小日向星一■作:長塚圭史 コメント子供の頃読んだ私にとって特別なこの本を、凡そ40年後、これほど豪華なクリエーターと、可能性に満ち溢れた4人の魅力いっぱいの俳優と、全力で情熱を注いでくれるスタッフたちと共に立体化できるなんて!全くもって夢のようです。世界中の少年少女に伝えたいです。大人になるのも捨てたもんじゃないぞと。この気持ちは初めてです。非常に豊かな創作期間を与えてくれたこと、そして2012年よりこのシリーズを続けさせてくれたこと、新国立劇場に心より感謝致します。力強い作品になったと思います。是非劇場へいらしてください!<公演情報>『モグラが三千あつまって』7月14日(金)~30日(日)会場:新国立劇場小劇場チケットはこちら:原作:武井博上演台本・演出:長塚圭史振付:近藤良平音楽:阿部海太郎出演:吉田美月喜、富山えり子、小日向星一、栗原類【あらすじ】南の海に浮かぶ三つの島。北の島に住むモグラ族は自分たちで食べ物をつくることに成功したが、西の島に住むネコ族、東の島に住むイヌ族は毎年モグラ族からタロイモを盗んでいた。いつまでも負けてばかりはいられないモグラ族は知恵もののマチェックと度胸のあるバンゲラ親分を中心に、戦いに備えて大きな地下都市をつくり始める。ある日、やきいも隊長に率いられたイヌ族が攻め込んでくるが、モグラ族は知恵をふりしぼって見事にイヌ族を追い払う事に成功する。しかし、勝利に酔いしれ、すっかり眠り込んでいたモグラたちの島へ、今度はガンペッタ王率いるネコ族がタロイモを盗みに攻め込んでくる……。
2023年07月15日長塚圭史が上演台本・演出を手がけ、夏休みシーズンに東京・新国立劇場にて上演される「こどもも大人も楽しめるシリーズ」の最新作、『モグラが三千あつまって』。長塚はこれまでも同劇場で『音のいない世界で』(2012年)、『かがみのかなたはたなかのなかに』(2015年・17年)、『イヌビト ~犬人~』(2020年)などで子どもと大人に向けた作品を発表してきたが、今回は武井博の児童文学を原作に、振付を近藤良平、音楽を阿部海太郎に託した。劇中では南の海に浮かぶ3つの島を舞台に、食料のタロイモをめぐって争いを繰り広げるモグラ族、イヌ族、ネコ族の姿が描かれる。7月14日(金) の開幕を約20日後に控えた6月下旬、ぴあアプリ編集部は新国立劇場バレエ団プリンシパル・米沢唯による本作の稽古場訪問に同行した。『モグラ〜』と同じ7月に予定されている「新国立劇場 こどものためのバレエ劇場2023エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』」において主演のオデット(白鳥)・オディール(黒鳥)を務める米沢に、稽古からどんなインスピレーションを得たか尋ねてみると──。新国立劇場バレエ団プリンシパル・米沢唯長塚圭史・阿部海太郎が追求する、キャラクターとしての自然な反応左から)音楽の阿部海太郎、振付の近藤良平、上演台本・演出の長塚圭史撮影:田中亜紀モグラが3000匹も登場する物語ながら、出演者はたったの4人──。観客を劇世界へいざなうキャストには吉田美月喜、富山えり子、小日向星一、栗原類が名を連ねる。稽古前には、ストレッチやウォーミングアップ、スタッフとの小道具確認、台本を熱心に読む者など、それぞれに稽古へと備える。定刻になると、稽古は発声練習から始まった。唇を震わせながら行うリップロールや、動物の鳴き声を彷彿とさせる「ウォウウォウ」をはじめ、「フィー」「ぬぉんぬぉん」といった多様な音を用いる。表情筋を大きく動かしながら笑顔や泣き顔をつくったり、口の前に指を当て息の漏れ具合を確認したり、各自がそれぞれ「効果」を意識しながら基本動作を繰り返している様子が伝わってきた。次に行われたのは、音楽の阿部海太郎による歌稽古だ。阿部はまず「動きなし」で各ナンバーを確認し、調整後に「動きあり」で同じナンバーを繰り返し稽古した。こだわっていたのは、キャラクターとしての自然な動きと歌声を両立させること。キャストがそれぞれ修正点を反映すると魅力的なシーンに変貌を遂げ、阿部も「すごくいいですね!」と褒め称えた。イヌ族を退治しようとするモグラ族の知恵者マチェック役の吉田は、戦果を澄んだ声でひたむきに歌い上げる。富山は落ち着きのある低音で、度胸あるモグラ族のバンゲラ親分を体現した。新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀特筆すべきは、四方の客席が中央にある円形ステージを取り囲む美術セットだろう。円形ステージの下もアクティングエリアになっており、ウクレレや小さなドラムセットなど楽器を仕込んだセンターステージの中でキャストが演奏する場面も見受けられた。イヌ族やネコ族の襲来から身を守るために「地下都市をつくろう」と提案するモグラ役の小日向は、はじくと高い音が出るハープのような楽器、鈴、吹き戻し(笛)を次々と繰り出しながらセットの中をかがんで駆け回る。新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀その後に行われた芝居稽古(小返し)では、長塚の演出が光った。論点は、イヌ族が掘り起こしたタロイモが無防備に積み上げられているのを「モグラ族の罠ではないか」と訝しく感じているネコ族の様子をどのように表現するか。長塚は「目の前で起こっている事態が都合が良すぎて怪しすぎる、と反応すればいい」とアドバイス。ネコ族ガンス隊長役の栗原は真摯に耳を傾けていた。米沢唯「細部にこだわることで『白鳥の湖』にもリアリティを」キャストと同じくらい、長塚の言葉に熱心に耳を傾けていた米沢。もともと演劇が好きで、所属する新国立劇場で上演された『音のいない世界で』『かがみのかなたはたなかのなかに』『イヌビト~犬人~』を見届けている長塚作品ファンでもある。演劇の稽古を見学したのはこれが初めてらしく、「すごく楽しかったです!」「ずっと観ていられる」「一日中、稽古場にいられると思いました」と興奮しきりだった。新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古場を訪れた米沢唯「目線をどのタイミングでどのように動かすか、セリフをどんな間でどのように発するか、細部にこだわることでリアリティが生まれるのは、バレエにも通じます」と『モグラ〜』稽古見学を経ての気づきを口にする。今夏の『白鳥の湖』ではストーリーをまっすぐ受け止める子どもの観客やバレエ鑑賞初心者が多いぶん、「お客様を劇世界に没入させるだけのリアリティを追求しないと」と背筋を伸ばしていた。取材・文:岡山朋代■新国立劇場の演劇『モグラが三千あつまって』チケット情報■こどものためのバレエ劇場2023エデュケーショナル・プログラム「白鳥の湖」チケット情報
2023年07月06日トークイベント「芸術監督公開トークシリーズ」の第4弾が、7月16日(日) 新国立劇場で開催されることが決定した。本企画は、現役の公共劇場の芸術監督たちが芸術監督制度の在り方や課題等について自由に語り合う一般公開型のトークイベント。これまで、世田谷パブリックシアター、彩の国さいたま芸術劇場、KAAT神奈川芸術劇場で開催されており、今回が4回目となる。登壇するのは白井晃、近藤良平、長塚圭史、小川絵梨子。さらに、宮崎県立芸術劇場の演劇ディレクターを務める立山ひろみをゲストに迎えて、「舞台芸術の入口をつくる~開かれた公共劇場をめざして」をテーマに語り合う。イベントでは、各劇場が舞台芸術に触れるきっかけを作るために、社会・地域に向けて発信しているプロジェクトを紹介しつつ、その事業が各芸術監督のどのような想いからスタートしたのか、どのような劇場を目指しているのか、劇場の所在地のどのような特性を踏まえての企画なのか等を語ってもらう。進行役は、各芸術監督らを取材してきた編集者・ライターの大堀久美子が務める。<イベント情報><ギャラリープロジェクト>芸術監督公開トークシリーズ Vol.4―舞台芸術の入口をつくる~開かれた公共劇場をめざして―7月16日(日) 17:00~18:30(予定)会場:新国立劇場 小劇場定員:340名(入場無料・要予約・先着順)【登壇者】白井晃<世田谷パブリックシアター芸術監督>近藤良平<彩の国さいたま芸術劇場芸術監督>長塚圭史<KAAT神奈川芸術劇場芸術監督>小川絵梨子<新国立劇場演劇芸術監督>ゲスト:立山ひろみ<宮崎県立芸術劇場 演劇ディレクター>進行役:大堀久美子<編集者・ライター>募集期間:6月21日(水) 10:00~申込はこちら:【鑑賞サポート】本事業は舞台上での手話通訳付きです。手話通訳が必要な方は手話の見やすい席へご案内しますので、お申込みフォームの該当欄にご希望の旨をご記入ください。
2023年06月16日舞台『モグラが三千あつまって』が、7月14日(金) から30日(土) に新国立劇場 小劇場で上演される。長塚圭史による「こどもも大人も楽しめる」シリーズの最新作となる『モグラが三千あつまって』は、NHK『ひょっこりひょうたん島』の企画・演出を手がけた武井博の同名児童文学を原作とした音楽劇。1984年に出版された約40年前の児童向け小説ながらも、現在の世界情勢にも通ずる動物たちの攻防戦、そして平和への願いが物語を通して描かれている。長塚は子どもの頃に本作を読んだ際に衝撃を受け、いつか舞台化したいと長年あたためていたという。出演者は吉田美月喜、富山えり子、小日向星一、栗原類の4名。いくつもの役を演じ分け、歌あり、踊りありの音楽劇として上演される。振付はこれまでのシリーズすべての作品を手がけてきた近藤良平、音楽は、NHK連続テレビ小説『らんまん』の音楽も手がける阿部海太郎が務める。■長塚圭史(上演台本・演出)コメント作者の武井博氏はプロデューサーとしてNHK『ひょっこりひょうたん島』の企画・演出を手掛けていました。この童話は、武井さんがある朝、自宅の庭でモコモコと土中から現れた或るモグラから聞いたお話だそうです。とても不思議なことですが、そんなこともあるのかもしれません。私がこの本に出会ったのは9歳の頃。おそらくこの童話本に出会った少年少女は、少なからず衝撃を受けたのではないかと思います。少なくとも私はその一人です。知恵者モグラのマチェックが仲間たちと共に、大きな体のイヌやネコを相手に大活躍する冒険譚として読み進めていると、思いがけない展開に息を呑むことになりました。戦争が奪うものの恐ろしさは人間界も動物界でも変わりません。これは戦争を生で体験した作者の思いがぎっしりと詰まった、心揺さぶる童話です。出演者はモグラが三千匹も出てくるのに4人です。イヌ族ネコ族も出てくるのに4人。こんな途方もないようなことを成し遂げるには、やっぱりお客さまの力が必要です。舞台をぐるりと囲んで、一緒にこの物語を紡いでいただければと思います。音楽に阿部海太郎さん、振付は近藤良平さん。とにかく劇場を縦横無尽に駆け回り、私が子どもの頃から愛するこの隠れた名作に、新たな命を全力で吹き込みたいと思います。<公演情報>舞台『モグラが三千あつまって』7月14日(金) ~30日(日) 新国立劇場 小劇場※プレビュー公演:7月8日(土)・9日(日)舞台『モグラが三千あつまって』ビジュアル原作:武井博上演台本・演出:長塚圭史振付:近藤良平音楽:阿部海太郎キャスト:吉田美月喜 富山えり子 小日向星一 栗原類チケット情報はこちら:詳細はこちら:
2023年05月17日新国立劇場バレエ団プリンシパルの米沢唯と、演出家・長塚圭史の対談が実現した。4月29日(土・祝) から5月6日(土)、新国立劇場オペラパレスでの「シェイクスピア・ダブルビル」公演にて世界初演されるウィル・タケット振付『マクベス』でマクベス夫人を演じる米沢。また長塚は、7月14日(金) から30日(日) に同劇場の小劇場で上演される『モグラが三千あつまって』の上演台本・演出を手掛ける。長塚の数々の演出作品を観てきたという米沢は、長塚に直接尋ねてみたいことがいろいろとあったそう。バレエ、演劇のジャンルを飛び越えて、様々な話題が飛び交った。ダンサーならではの「言語」の魅力に気づいて米沢私にとって、お芝居を作られている方は雲の上の存在。『はたらくおとこ』(2004年初演、2016年再演)はもう恐ろしくて、息をするのもいやになってくるくらい怖くて衝撃的でした。お伺いしたかったのは、長塚さんの舞台では、いつも美術がそのお芝居の世界観を表していて、『近松心中物語』(2021年)も独特の世界観があって美しいなって思ったのですが、いつもそこにこだわりを持っていらっしゃるのですか。長塚舞台装置の世界観によってお芝居の方針がある程度固まってくるということはあります。『近松心中物語』は、以前に蜷川幸雄さんが100人くらいの人を使っていたのを、僕らは20人くらいでやったので、なんとか大勢に見えるように空間をめちゃくちゃ縮めているんです。さらに、場面ごとの印象を変えながら、セットが何もなくても何かの場面に見立てられる、可変的な空間にすることを意識していました。米沢現代的な部分と古典的な部分、両方を感じられてとても素敵でした。長塚僕は首藤康之(バレエダンサー/俳優)さんと知り合って、彼に勧められてモーリス・ベジャールのバレエ作品の映像を見たり、シルヴィ・ギエムさんの舞台に連れていってもらったりしていたのですが、バレエってすごく専門的な世界で、子供の頃から鍛錬していかないととてもかなわないし、トップの人しか残っていけない世界。米沢さんは、そんな中で新国立劇場のプリマとしてずっと続けてこられて、本当にすごいことだなと思っているんです。──米沢さんは長塚さんがこれまで新国立劇場で手がけられてきた子ども向けのシリーズ、『音のいない世界で』(2011年)、『かがみのかなたはたなかのなかに』(2015年、2017年)、さらに『イヌビト ~犬人~』(2020年)をご覧になっているそうですね。米沢ファンタジックで不思議な世界観のまま、作品がどんどんパワーアップしていっている感じがします。長塚僕はもっと先があるんじゃないかと思っています。このシリーズに出演していた首藤さんも近藤良平さん(ダンスカンパニー「コンドルズ」主宰、彩の国さいたま芸術劇場芸術監督。『モグラが三千あつまって』でも振付を担当する)もダンサーで、最初はセリフを発する事に慣れていなかった。けど、元々持っている身体から出てくる物語性がすごいから、段々段々、純粋無垢な言葉が身体と共に聞こえるようになってきた。これは、俳優の芝居とは別の言語の魅力だと気づいたんです。二作品目の『かがみのかなたはたなかのなかに』ではワークショップを幾度かやって、「かがみ」の表現の在り方について試行錯誤を繰り返してから、言い方はちょっと難しいですけど、「舞踊的」な台本を書きました。これがすごくよかった。その次の2020年は、コロナで舞台芸術は大変なことになったでしょう? だから演劇の楽しみ全部を入れようと『イヌビト』という作品を作りました。歌を取り入れたんです。これはすごい発見が多かった。もちろん松たか子さんという何者にも代えがたい俳優がいたからこそなんだけど、ダンサーたちが声を出すこと、身体を使うことの連携がうまくいくと、かなり面白いことができる。そうやってずっと、この劇場で試させてもらっているんです。今回は出演者をガラリと変えて、四人の若い俳優を迎え、また新たな挑戦をします。マクベス夫人の「抜け落ちた時間」をどう作る?米沢ビターな笑いに大人の色気を感じて、素敵だなって思います。「子どものため」と言いつつ、とても大人な色合いがある。長塚残酷だったりブラックだったりちょっと色っぽかったりすることって、世界にはあることだし、それを全部なくして子供たちに「こわい事は何もないよ、こんなに世界はキレイだよ」とするのは間違い。そんなフワフワとした世界は、ない!──次回作にもそんな思いを込められているわけですね。『モグラが三千あつまって』チラシ長塚武井博さんが書いた児童文学が原作なんですが、僕が子どものとき──9歳の頃に買った本で、一言で言うと戦争の話です。モグラとイヌ、ネコがいて、イヌとネコが、モグラの作っているタロイモを盗みに来てモグラを殺しちゃう──。これを子供の時に読んでもうびっくりしてしまって!絶対無事でいてって思う人(モグラ)は無事じゃなかったり。ずっと僕が心の中に携えていた本なんです。まだまだ上演台本を作っている途中ですが……。米沢さんはいま、『マクベス』をリハーサルしているんですよね。米沢そうです。マクベス夫人については、まだ自分の中で定まっていません。長塚さんは『マクベス』の演出をされていますよね(2013年)。本当に観ておくべきだったと、痛恨の極みです。長塚転落劇を観たいという人間、言い換えれば観客の欲望こそがおそろしいと思って、観客側にスポットを当てた『マクベス』を作りました。四方囲み舞台にして、最終的には客席にマクベスの首を大玉転がしのように転がして。これが非常に問題になりまして、すごく危ないと(笑)。米沢(笑)。──実は、腑に落ちないところがあるんです。マクベス夫人は最初マクベスに対してすごく強く出て、ダンカンを殺せと言いますよね。それはあなたのため、権力を手にするためだと言って。でも最終的には罪の意識に苛まれて自滅していく。その極端さは、「人間ってそういうものかな」と思ういっぽうで、あまりの変わりように違和感もある。そこをどう捉えていらっしゃるか、演出家の方に一度伺ってみたいと思っていました。とくにバレエでは、1回引っ込んで次に出てくるときにはもう狂気に取り憑かれていて、その間に何があったのかということをお客さまに想像させなければいけない。長塚台本にはない抜け落ちた時間、そこで何があったのかということをどれだけ作っていけるか、ということは課題でした。その時のマクベス夫人の心理と行動──血で汚れた手を洗う場面は、すごく時間を使いました。(『ハムレット』の)オフィーリアも難しい。何か保とうとするものがあるから人は壊れていくという部分があると思う。正気が折れて、正気が崩れていく──という部分が、何か頼りになりはしないかと思うんです。米沢……!早く次のリハーサルをしたいです。──言葉を使わずにシェイクスピア劇を演じる難しさについては、どのように感じていらっしゃいますか。シェイクスピア・ダブルビル『マクベス』チラシ米沢昔は、音楽を表現したいと思って踊っていたけれど、いまは語るように踊りたいと思うようになりました。言葉がないからこそ自由になれる部分が必ずあると思うので、それを信じて取り組んでいます。振付家が「ここはこう言っている」と指定したところ以外の場所にも、セリフに置き換えられる振付があるのではないか、と踊りながら考えています。ただ一歩踏み出したり、手を動かしたりするだけだとしても、からだの内側が変われば生まれるドラマはガラリと変わります。この振りがどんな言葉になるのか、常に探っています。長塚リハーサルでは、その場で振付が作られていくということですか?米沢今日のリハーサルでは、マクベス夫人が死んで、男性に担がれて出てきて、そこから何ができるか、ということをやっていました。振付家はある程度のイメージは持っていますが、それが本当に実現できるかどうかやってみて、最終的には音楽と合わせていきます。演劇の立ち方とバレエの立ち方長塚バレエにはいろんなルールがありそうですね。米沢ルール──。そうですね、いちばんは、ずっとトレーニングしているバレエダンサーの身体があるので、どうやっても「バレエ」になってしまう。長塚身体言語的に!米沢そこが強みでもあり弱みでもあり。演劇を観て面白いなと思うのは、人の身体の自然さのようなもの──立つ時にその人の本来の在りようで立っている。そこがとても好きなんです。でもバレエにはある部分、半自然的な「立ち方」がある。それはそれで美しいのですが。長塚もちろん、その人たちから発せられるものはあると思います。ジョルジュ・ドンが踊る『恋する兵士』(モーリス・ベジャール振付)の映像がとても好きで、素人の僕でも、見るたびにそのディテールに「うわ!今のは何だ!?」と驚かされる。同じ振りを別のダンサーが踊ったら全然違うし、そこの部分が美しさだったり、味だったりする世界だと思いますが、確かに、僕ら俳優の身体の在りようとは全然違いますね。米沢そうですね。ニュートラルが違います。バレエでもこう、身体を縮こませることはあるけれど、でも、一度開いた上で閉じることが必要で、最初から全部を閉じてしまうと、お客さまには何をやっているかわからなくなってしまう。閉じているんだけど開いている。そこが難しく、面白いところでもあります。長塚どんな『マクベス』になるのか、気になって仕方がないですね。いわゆるスタンダードなんてなくて、どなたが演じてもいろんな個性が出てくる。ストーリーラインはシンプルだし、テーマについてはそれぞれに持ち帰りやすいものがある。観る人の状態によっても全然変わると思いますが。米沢小さい頃、つかこうへいさんの『熱海殺人事件』や唐十郎さんの紅テントを観に行ったときに、何を言っているのかわからなかったけれど、それでもその熱量に惹かれて、子供ながら夢中で観ていたのを覚えています。『モグラが三千あつまって』は戦争の話で、「子どもに?」って思われる方もいるかもしれませんが、大人が集中して夢中で演じている空間というのはすごく刺激的で魅力的。とても楽しみです。長塚『モグラが三千~』といっているのにキャストが4人しかいない。もう頭が痛いんですけど(笑)、でも、それはもう凝縮して見せたいし、歌あり踊りありで全速力で駆け抜けて、終わったら演じ手はもう動けなくなるくらいのものにしたいねと話をしています。新しい舞台で、そこを目指していきたいですね。取材・文=加藤智子撮影=藤田亜弓■シェイクスピア・ダブルビル『マクベス』<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>/『夏の夜の夢』<新制作>チケット情報■『モグラが三千あつまって』チケット情報 ※5/21(日) AM10:00より発売
2023年04月11日芸術監督たちが芸術監督制度の在り方などを語り合うトークイベント『芸術監督公開トークシリーズVol.3 ー創作の場としての公共劇場ー』が、2023年1月12日(木)にKAAT 神奈川芸術劇場にて開催される。『芸術監督公開トークシリーズ』と銘打ち、現役の公共劇場の芸術監督たちが、芸術監督制度の在り方や課題等について自由に語り合う一般公開のトークイベントシリーズ。第3弾となる今回は、世田谷パブリックシアター、彩の国さいたま芸術劇場に続き、KAAT 神奈川芸術劇場にて開催となる。今回は小川絵梨子、近藤良平、長塚圭史が登壇し、オブザーバーに白井晃、また、穂の国とよはし芸術劇場・芸術文化アドバイザーである桑原裕子氏をゲストに迎え、「創作の場としての公共劇場」をテーマに語り合う。進行役には、第1弾に続き、各芸術監督からの信頼が厚い俳優の成河が務める。トークシリーズ第3弾によせて(KAAT 神奈川芸術劇場芸術監督 長塚圭史)2022年4月に世田谷パブリックシアターではじめて開催して以来、ご好評いただいている芸術監督公開トークシリーズ。彩の国さいたま芸術劇場での第2回に続き、第3回目はKAAT 神奈川芸術劇場で開催致します。公共劇場とはどんな場所で、芸術監督とはどんな仕事をしているのかということを、引き続き各館の芸術監督が一堂に会してざっくばらんに話し合います。今回は「創作の場としての公共劇場」という副題を添えました。それぞれの劇場がアーティストにどのような創作環境を提案し、実践しているのか、また如何なる理想や未来を思い描いているのかを語らいます。劇場は作品が上演されるだけではなく、さまざまな試行の場ともなっていることを少しでも皆様に知っていただければと思います。今回はゲストに穂の国とよはし芸術劇場文化アドバイザーである劇作家・演出家・俳優の桑原裕子さんをお招きします。また第1回でも司会進行を務めてくれました俳優の成河さんが再びマイクを握ります。聞きにくいけど聞いてみたいこともぐんぐん切り込む成河さんのMCにもご期待ください。それでは劇場でお待ちしております。『芸術監督公開トークシリーズVol.3 ー創作の場としての公共劇場ー』日時:2023年1月12日(木)19:00会場:KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>定員:200名(入場無料・要予約・先着順)登壇者:小川絵梨子(新国立劇場演劇芸術監督)近藤良平(彩の国さいたま芸術劇場芸術監督)長塚圭史(KAAT 神奈川芸術劇場芸術監督)ゲスト:桑原裕子(穂の国とよはし芸術劇場芸術文化アドバイザー)進行役:成河オブザーバー(オンライン参加):白井晃(世田谷パブリックシアター芸術監督)主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場お問合せ:KAAT神奈川芸術劇場 TEL 045-633-6500(代)(10:00~18:00、年末年始を除く)※鑑賞サポート:本事業は舞台上での手話通訳付きです。お申し込みはこちら:
2022年12月14日本日9月9日(金) よりKAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演されるミュージカル『夜の女たち』より、舞台写真とキャストコメントが到着した。『夜の女たち』は、溝口健二監督の映画『夜の女たち』の初舞台化作品。1948年に公開された映画では、戦後間もない大阪釜ヶ崎を舞台に生活苦から夜の闇に堕ちていった女性たちが、必死に生き抜こうとする姿が描かれた。上演台本・演出をを手掛けた長塚圭史は本作で初めてミュージカルに挑戦し、映画の脚本をもとに混沌とした時代を生きた日本人の生命力を描く。出演は、夫を戦争で失い「闇の女」へと堕ちていく主人公・大和田房子に江口のりこ。戦争で全てを失い、自暴自棄になり進駐軍が駐屯するホールでダンサーとして生きる房子の妹・君島夏子には、昨年『フェイクスピア』(2021年、作・演出:野田秀樹)出演など、舞台でもコンスタントに活動する前田敦子、女たちを夜の「闇」から救い出そうとする病院長・来生に北村有起哉。房子を雇い、また愛人とする栗山商会社長・栗山謙三には大東駿介。さらに時代に翻弄される若者、房子の義妹・久美子に『ロミオ&ジュリエット』(2021年、小池修一郎演出)のジュリエット役の新鮮な演技が記憶に新しい伊原六花、久美子を騙す学生・川北に『彼女が好きなものは』(2021年、草野翔吾監督)をはじめとする映画、舞台で活躍する前田旺志郎。そのほか、福田転球や劇団四季出身のベテラン北村岳子が名を連ねる。■長塚圭史(上演台本・演出)コメント劇場に入る直前にピアノの伴奏からバンド演奏になり、そこに照明・音響の調整が重なる、それは俳優にとっても特別な体験でしたし、思ってもみないエネルギーを要する時間でしたが、その分、全てがかみ合っていく瞬間を見るのはとても新鮮で、楽しいものでした。演劇は総合芸術と言われますが、ミュージカルはそれが際立つと思います。この作品は戦後間もない時代に書かれた作品をベースにしているので、作品から匂いたつものが多くあり、当時の時代背景を調べながら上演台本を書きました。当時の時代の匂いと、その時代に生きた人々が抱えた様々な事情や切実さ、それでも生きていくという生命力をお客様にお伝えしたい、と思っています。今の世界情勢を見ても、一つの国の中でも色々な考えがあり、一緒に歩むことの難しさを痛感します。人間性をもって共に協調しながら歩むことができればよいけれど、そうはならない。人間は愚かです。でも、だからこそ美しく、面白い。戦後の話を市井の人々にスポットを当てて描いた作品を手掛けた今、そのことを改めて思います。ある種、暗い時代を扱った戯曲ですが、荻野清子さんの音楽が素晴らしく、音楽と劇が相まって、とても華やかなエンターテインメント作品としてお届けすることができることを嬉しく思っています。■江口のりこ コメント今はもう、早く初日を迎えたい気持ちです。音楽がとても素晴らしく、振付もおもしろいですし、楽しいシーンもたくさんあります。お客様にぜひ楽しんでいただければと思います。■前田敦子 コメント贅沢に時間を使ってしっかり稽古もさせていただきました。観に来る方たちもどういう作品なんだろうと思っていらっしゃるでしょうし、予測ができないので、そこを楽しんでいただけたらいいなと思います。真っ直ぐな気持ちで初日を 迎えたいです。■伊原六花 コメントやっと初日を迎えられるという気持ちです。いい意味で緊張感をもったまま初日を迎えらますし、カンパニーの結束力も高まっています。出演者としてもKAATシーズンタイトル「忘」にふさわしい、今やるべき作品だと思っています。ミュージカルという一歩入りやすい形でお客さまにも感じていただけたら嬉しいです。■前田旺志郎 コメント初めてのミュージカルで、芝居の中で歌が流れるということが何度やっても新鮮です。自分の歌もみんなで歌っている歌も他のパートも、頭に残るフレーズ、刺さる歌詞の箇所が毎回毎回違うことが面白くて、いつまでたっても新鮮に音を聞いてお芝居ができることに、ストレートプレイとは違う魅力を感じています。そういう風に自分の曲も毎日、今日はこういうことをやってみようと試行錯誤しながら、本番が始まってからも届ける部分を変えて行けたら面白いと思っています。■大東駿介 コメントようやく幕が開いて皆さんにこの芝居を体験してもらえることが楽しみです。音楽が素晴らしく、映画が公開された1948年にぜひKAATでタイムスリップしてください。■北村有起哉 コメントこの作品がどんな流れになっているのか稽古場では分からなかったですが、いつもはあまり見たくない通し稽古の映像を初めて見て、そうしたら色々な予想外の発見があって、確信を持てた部分、ほっとした部分がたくさんありました。不安な部分もありましたが、長塚君や荻野清子さんがこういうことをやりたかったんだと、改めてチームの一人として誇らしく思えました。初日が延期になりましたが、無理やり慌ててやるよりもぎりぎりまで粘ってリハーサルができて、満を持して、延期した初日から皆さんの前でお披露目できるのはよかったと思っています。<公演情報>ミュージカル『夜の女たち』原作:久板栄二郎映画脚本:依田義賢上演台本・演出:長塚圭史音楽:荻野清子出演:江口のりこ 前田敦子/伊原六花 前田旺志郎 北村岳子 福田転球/大東駿介 北村有起哉石橋徹郎 中山義紘 入手杏奈 山根海音 篠崎未伶雅 山口ルツコ 小熊綸 加瀬友音演奏:岸徹至(バンドマスター・ベース) 近藤淳(リード) 奥村晶(トランペット) 阿部寛(ギター) BUN Imai(ドラム&パーカッション)2022年9月3日(土)~2022年9月19日(月・祝)会場:KAAT神奈川芸術劇場<大ホール>※9月3日(土)~8日(木)公演は中止となりました(8/26追記)【ツアー公演】■北九州公演2022年9月24日(土)・25日(日)会場:北九州芸術劇場 中劇場■豊橋公演2022年9月30日(金)~2022年10月2日(日)会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール■山口公演2022年10月6日(木)会場:山口市民会館 大ホール■松本公演2022年10月10日(月・祝)会場:まつもと市民芸術館 主ホール■兵庫公演2022年10月14日(金)~16日(日)会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2022年09月09日『芸術監督公開トークシリーズ Vol.2 -公共劇場と地域性を考える-』が、9月6日に埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 映像ホールで開催される。同イベントは、4月に行われた『世田谷パブリックシアター新芸術監督就任イベント-公共劇場における芸術監督の役割を考える-』をきっかけとして、現役の公共劇場の芸術監督たちが芸術監督制度の在り方や課題等についてざっくばらんに話す公開トークイベントの第2弾。前回に引き続き白井晃、長塚圭史、近藤良平が登壇し、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督である白神ももこをゲストに迎えて「公共劇場と地域性を考える」をテーマに語り合う。入場は無料で、参加希望者は彩の国さいたま芸術劇場ホームページで事前申し込みが必要となる。<公演情報>芸術監督公開トークシリーズ Vol.2 -公共劇場と地域性を考える-日時:9月6日(火) 19:00~20:30会場:埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 映像ホール定員:150名(入場無料・要事前申込・自由席)【登壇者】白井晃(世田谷パブリックシアター芸術監督)長塚圭史(KAAT 神奈川芸術劇場芸術監督)近藤良平(彩の国さいたま芸術劇場芸術監督)ゲスト:白神ももこ(富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督)オブザーバー:小川絵梨子(新国立劇場演劇芸術監督)※小川絵梨子氏はオブザーバーとしての参加を予定しているため、登壇はありません。【申し込み方法】彩の国さいたま芸術劇場ホームページからお申し込みください。定員に達し次第、締め切ります。※本公演では舞台上で手話通訳を行います。手話通訳が必要な方は手話の見やすい席へご案内しますので、公演の1週間前までに申込フォームからご希望をお知らせください。【お問い合わせ】彩の国さいたま芸術劇場TEL:0570-064-939(休館日を除く10:00~19:00)詳細はこちら:
2022年08月05日今年4月、彩の国さいたま芸術劇場芸術監督に就任した、近藤良平。就任後第1作となるのが、この「ジャンル・クロスⅠ 近藤良平 with 長塚圭史『新世界』」だ。かつては近藤が主宰する「コンドルズ」の舞台に立ったことがあり、近藤とは長年信頼を寄せ合う仲である長塚。昨年からは、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督を務める。そんな旧知の仲のふたりが作る、ジャンルを超えた“新世界”とは?まるでおもちゃ箱をひっくり返したような感覚――創作の起点となったことは?近藤芸術監督として今後のラインナップを考えた時、“クロッシング”って言葉をテーマにしたい、という思いがじわじわと湧いてきたんです。いろんなジャンルが混じった、クロスしたものを創作したいなと。そこで(長塚)圭史に声をかけた理由はふたつあって、まずはよく知った仲なので、なにか一緒にやれないかなってことと……。長塚使いやすさね(笑)。近藤そう(笑)。ふたつ目は、お互い芸術監督として、今後埼玉と神奈川でなにかやるためのきっかけになるかなと。まぁ理由としてはひとつ目のほうが大きいですけど(笑)。長塚良平さんから「オープニングやるよ」って連絡があって、やるよってなんだろう?と思いました(笑)。どういう関わり方かもまったくわからなかったですけど、良平さんとの関係上、僕としてはもちろんオッケーしました。なおかつ芸術監督同士、東京を挟んで埼玉と神奈川でキャッチボールをし合う。そういうことが少しずつ始められたら、なにか面白くなる可能性があるなと。あとはもう、長年のしがらみですよね(笑)。近藤しがらみってすごいね。取っても、取っても離れない(笑)。――稽古は順調に進んでいるそうですね。近藤サーカスにダンサーに音楽に切り絵と、今回本当にいろんな素材があるんですよね。今はそれをぶちまけた状態なので、結構バテバテです(笑)。長塚なんかおもちゃ箱をひっくり返した、みたいな感覚ですね。プラレールもぬいぐるみも全部が混じり合っている。近藤プラレールとぬいぐるみって相性悪いよね(笑)。長塚うん、悪い(笑)。だからといってそのふたつを離すとちょっと悲しい感じもするし、それでまた近づけると、もうぐっちゃぐちゃで。近藤圭史のことも、そのぐっちゃぐちゃの中に追い込んじゃっているのかもしれないですね。今回は“言葉”っていうのも大事なジャンルのひとつで、この遊びの中でどう同時に使えるのか。今はそこを探っている状態です。すべてを鮮やかにし、もう一度新たに発見する――近藤さんの身体的な表現に、言葉はどう絡んでいくのでしょうか?近藤ね?僕もそれを教えて欲しい(笑)。長塚シェイクスピアの『テンペスト』が、ひとつ起点にはなっています。一部の台詞を抜き出したりして、この物語を裏面に持ちつつ、近藤良平の“新世界”が進んでいく。それをどうやるかって言うと、やっぱり難しくて。ジャンルはないですし、僕が舞踊に寄せた思考で「言葉を削ろう」と提案すると、良平さんはぶんぶん頭を横に振る(笑)。言葉はなきゃダメだ!って。もうどうすればいいんだよ!みたいな(笑)。近藤ハハハ!長塚あと音楽もありますしね。近藤言葉と音楽が合わさると歌が生まれるんですけど、歌うわけでもなくて……。長塚僕は提案したんですけどね(笑)。でも出来ちゃうことはやりたくないみたいで。近藤そこで消化されちゃうからね。歌って踊ったら、完全にミュージカルだし(笑)。長塚とにかく良平さんは、言葉を発する、音楽を奏でる、切り絵で紙からなにかが生まれる、そういったものすべてを鮮やかにしたいんだと思います。しかも当たり前のことじゃなく、もう一回新たに発見したいと思っているんですよね。――長塚さんに言語化していただけると、非常にわかりやすいです。近藤本当にそう!長塚だいたいこういう取材の時、僕は通訳なんですよ(笑)。近藤やっぱり言葉って大事だよね。長塚でも言葉は直接的だから、もうちょっと体に響くようなものにしていかないといけないですよね。劇体験ってそういうものだから。普通に明るく生きることが、強く訴えるものに――これだけ多ジャンルの素材がある中で、近藤さんの中ではどんなことが指針になっているのですか?近藤指針?なんだろう、よくわかんないな。長塚近藤良平に指針とか聞いちゃダメですよ(笑)。指針というか、良平さんの頭の中にはすでに形があって。稽古初日、ひとり芝居として全部見せてくれましたから。で、これじゃないってところからスタートしている。つまり“リボーン”なんですよね。しかも今、世界がどんどん動いていっていて、そこからの“新世界”を作ろうとしているので。近藤2月以降、寝ても覚めてもプーチン、みたいな感じですからね。でもアーティストは今、みんなそうなんじゃないかな。3月にコンドルズの映像配信があったんですけど、『武器よさらば』ってタイトルに決まった途端、どんどんアイデアが出てきたんです。――それも“言葉”の力ですね。近藤うん、そう思う。長塚でも同時に言葉は、対立や揚げ足しか生まないこともありますからね。今の社会の状況を批判しようと、言葉を尽くしても尽くし切れない。言葉を失った世界でこそ訴えられるものがあって。でもそれは、言葉のある世界の中で起きなきゃいけないとも思うんです。――では最後、読者にメッセージをお願いします。長塚それでもやっぱり、今回の公演はある種祝祭的なものではあると思っています。良平さんの作り方って、すべてを鍋に入れてかき回しちゃうんですけど、そうでなければ生まれない色彩がある。そしてそれは本当に強くて、魅力的なものになると思います。近藤今って日常がすごく尊いものになってしまっただけに、普通に明るく生きるということが、ものすごく強く訴えると思うんです。とはいえ皆さんはあまり囚われず、なにか面白いことがありそう、くらいの気持ちで観に来て欲しいですね。取材・文:野上瑠美子撮影:塚田史香ジャンル・クロスⅠ<近藤良平 with 長塚圭史>『新世界』2022年4月29日(金・祝)~5月1日(日)各日15:00開演会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2022年04月23日長塚圭史が初めてミュージカルに挑んだ『夜の女たち』が9月3日(土)~19日(月・祝)にかけて、KAAT神奈川芸術劇場<ホール>で上演される。猛スピードで進む現在に立ちつつ、忘れてはならないことを見つめ、これまで日本人が歩んで来た歴史を見つめることで、生きている今を考える。KAATの2022年度メインシーズン「忘」の幕開けは、溝口健二監督映画『夜の女たち』の初の舞台化となる本作だ。1948年、戦後すぐに公開された『夜の女たち』は、戦後間もない大阪釜ヶ崎を舞台に、生活苦から夜の闇に堕ちていった女性たちが、必死に生き抜こうとした姿を描いた作品です。敗戦により価値観全てがひっくり返り、何が間違っていて何が正しいのかを見失ってしまった迷える人々。怒涛のように流れ込んできた自由の象徴であるアメリカ音楽と、心の奥底にだらりと横たわる勝利を確信したはずの軍歌…。思想を、家族を、生きていく術を、全てを失った日本人。長塚は、芸術監督2年目のシーズンタイトルを「忘」にしたことについて、「忘れてはならないことに思いをはせる、自分たちの国の歴史を見つめ、自分たちの歩みを知り、私たちは今、歴史のどこに立っているかを認識することができる」と語った。映画の脚本をもとに長塚が上演台本・作詞を手掛け、ミュージカルとして描くことで、混沌とした時代を生きた日本人の生命力を描く。私たちが忘れ去ろうとしている時代を生きた3人の女性の壮絶な人生。忘れてはならない時代に改めて向き合うことで、我々は何を思うのか。出演は、夫を戦争で失い「闇の女」へと堕ちていく主人公・大和田房子に、個性あふれる演技と存在感で長塚からの信頼も厚い江口のりこ。戦争で全てを失い、自暴自棄になり進駐軍が駐屯するホールでダンサーとして生きる房子の妹・君島夏子には、昨年『フェイクスピア』(2021年、作・演出:野田秀樹))出演など、舞台でもコンスタントに活動する前田敦子。女たちを夜の「闇」から救い出そうとする病院長・来生に個性あふれる実力派・北村有起哉。戦後の闇ブローカーのような仕事をし、行き場を失った房子を雇い、また愛人とする栗山商会社長・栗山謙三には映像、ドラマで幅広く活動する大東駿介。さらに時代に翻弄される若者、房子の義妹・久美子に『ロミオ&ジュリエット』(2021年、小池修一郎演出)のジュリエット役の新鮮な演技が記憶に新しい伊原六花、久美子を騙す学生・川北に『彼女が好きなものは』(2021年、草野翔吾監督)をはじめとする映画、舞台で活躍する前田旺志郎。ほかにも房子の戦死した夫、大和田健作に『王将』シリーズ(2021 年、構成台本・演出:長塚圭史)の坂田三吉役も好評を博した福田転球、古着屋の女主人・富田きくには劇団四季出身のベテラン北村岳子など、実力派俳優が揃った。音楽は日本のミュージカル界をけん引する荻野清子。長塚とは井上ひさし作『十一ぴきのネコ』(2012年)以来、多くの作品でタッグを組んでいる。振付はダンサーとしての活躍はもちろん『キレイ』、『キャバレー』、『業音』(松尾スズキ演出)、『幻蝶』(白井晃演出)など多くの舞台作品の振付を手がける康本雅子。この布陣でどんなミュージカルに仕上がるのか、上演に期待したい。長塚からのコメントは以下の通り。<上演にあたって (長塚圭史・コメント)>『夜の女たち』は溝口健二監督の1948年の映画です。戦後間もない大阪釜ヶ崎(今のあいりん地区)を舞台に、空腹と、全く新しい価値観の中で、必死に生き抜く女性たちとその時代を描いていました。この映画はまだ占領下にあった実際のその時その場所で撮影しています。まるでドキュメンタリーフィルムのようです。占領下。敗戦で一夜にして日本の価値観が真っ逆さまになった時代です。呆然とするもの、戦争孤児、身寄りが誰ひとりいなくなって生きる術がなくなったもの、自暴自棄になるものもいます。そういう中で連合軍、特に圧倒的多数だったアメリカ兵、いわゆる進駐軍が押し寄せてきます。禁止されていた音楽がなだれ込んでくる。敵性音楽が自由の象徴として聞こえてくる。それは、目を背けたくなるような貧困や孤独、欺瞞や憤りと矛盾に溢れた時代であると同時に、人間の権利が改めて問われる時代の始まりでもありました。戦後急増したパンパンと呼ばれた街娼は、社会現象として捉えられました。しかしこれは貧困からのみ生じただけではなかったと言われています。全体主義と封建制度から突然解放された自由の中、女性たちがその権利を掴み始めた時、あらぬ方向へ膨張して弾けた現象でもあったのではないでしょうか。今、また再び世界は戦時下におかれました。壊れゆく街をまざまざと目にするたびに、人間の恐ろしさを痛感します。未だにやめられずにいるのです。忘れてはいけない、知らなくてはいけないという思いで立ち上げるこの作品が、なぜ今我々はここにこうしてあるのかという近代を冷静に見つめる一助となると同時に、どんな悲惨の中でも生きていく人間のポジティブな底力を感じていただけたらと思います。初めてのミュージカルです。俳優陣も主にミュージカル界からではなく、ストレートプレイを中心に活動する方々に集まっていただきました。新しい時代を描く時、未開の領域へ触れるパワーが作品の核心に近づくものになるだろうと考えたからです。そして私が心より信頼する荻野清子さんが音楽・作曲、振付は以前からご一緒したいと切望しておりました康本雅子さん。他にもチャレンジ精神に満ちた素晴らしい仲間たちが集まってくれました。時代に真摯に向き合って、お客さまも共に歌い出したくなるようなミュージカルを(本当に初めてですが)作り上げていきたいと思います。長塚圭史■公演情報KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『夜の女たち』9月3日(土)~19日(月・祝)KAAT神奈川芸術劇場<ホール>で上演以降、全国ツアーあり
2022年04月01日KAAT 神奈川芸術劇場の2022年度ラインアップ発表会が2月28日、オンラインで開催され、芸術監督の長塚圭史が出席。溝口健二監督の同名映画を長塚がミュージカル化する『夜の女たち』、赤堀雅秋が黒澤明の名作の舞台化に挑む『蜘蛛巣城』、岡田利規がドイツのミュンヘンの劇場での上演のために書き下ろした戯曲を本谷有希子の演出で上演する『掃除機』など、多彩なクリエイターによる企画が発表された。昨年4月より芸術監督に就任した長塚は、「冒」をテーマに様々な作品を上演した昨年を「非常に充実した1年でした」と述懐。来るべき新年度に向けて「忘(ぼう)」を新たなテーマに掲げる。「僕らは日々、忘れていきます。ものすごい情報量の中で生き、大事なものも忘れていきますし、もはや覚えようともしなくなっている時代なのかもしれません。でも忘れちゃいけないことを思い出す動作は必要だと思います。いま僕らがどこに立ってるのか?なぜこうした社会にいるのか? そこにはいろんな時間が眠っています。忘れることで、強く生きられる部分もあります。『忘れる』という言葉は、非常に人間性を映しだす気がしています。『忘』という言葉は、人間そのものを照らし出すかもしれません」とテーマに込めた想いを語る。メインシーズンの開幕を飾るのは、長塚にとって初のミュージカルとなる『夜の女たち』。溝口健二の映画は敗戦後の大阪に生きる女たちの姿を描いているが、長塚は「占領下で、昨日まで信じたものが全てひっくり返った時代の物語」と人々の価値観が大きく転換した時代を描くことへの意欲を口にし「そこには音楽の力が必ずあったと思うので、ミュージカルにしたいと思いました。暗い時代ですが、ミュージカルの力でひらけた夜の女たちを作りたい」と意気込みを語った。また、今年は沖縄が本土に復帰して50年となるが、11月から12月にかけて、沖縄在住の兼島拓也の脚本で、沖縄出身の田中麻衣子が演出を担当しての新作(タイトル未定)が上演されることも明らかになった。このほか、串田和美が1994年から上演し、ライフワークともなっている『スカパン』、山内ケンジの作・演出による『温暖化の秋- hot autumn -』(仮)、2020年秋に上演された森山開次の作・演出・出演によるノンバーバル作品の再演となる『星の王子さま -サン=テグジュペリからの手紙-』の上演も決定。また、KAAT初登場となる赤堀雅秋は、黒澤明の同名映画を原作に、齋藤雅文の作・演出で2001年に新橋演舞場で上演された『蜘蛛巣城』に挑む。赤堀はビデオメッセージで「泥臭い作品にしたい。(映画を)踏襲するのではなく、もうちょっと若い、若さゆえの何かを視点として作品にできたらと思います。初めての時代劇ですが生々しい人間像を描けたら」と意気込みを語った。22年度ラインアップ演出家・作家(上段左より、鬼頭健吾北村明子松井周/中段左より串田和美山内ケンジ田中麻衣子/下段左より森山開次赤堀雅秋本谷有希子本谷有希子の演出による『掃除機』は、岡田利規の作・演出で2019年12月に『The Vacuum Cleaner』のタイトルでドイツのミュンヘンの劇場で上演された作品で、80代の父親、50代のひきこもりの子どもらの姿を、一家の掃除機の視点で描いた異色作。ビデオでメッセージを寄せた本谷は「(岡田の戯曲を)壊していかなきゃ! ということに頭が行ってたけど、岡田さんと偶然お会いして話をして、壊しながら育み、また壊して構築するという作業にどれだけ持っていけるかだなと思いました。いま、自分の劇団(劇団、本谷有希子)を休止している状態で、私は自分のことを演出家だと思ってない節があるんですが、そんな中で他人のアタマの中を舞台化するというのは未知のことで、興味があります。チャレンジになると思いますが頑張りたいです」と語り、長塚も「いわゆる“8050問題”を描いてますが、掃除機のキャラがチャーミングで、見事に社会を捉えている作品。岡田さんの描く強い世界を、同じく世界を持っている本谷さんが演出したらどうなるか楽しみです」と期待を寄せた。プレシーズンでは現代アーティスト・鬼頭健吾の作品とライブパフォーマンスをコラボレートした『鬼頭健吾展Lines』、キッズ・プログラムとして昨年、舞踊家の北村明子(振付・演出)と現代美術家の大小島真木(美術)のタッグで制作し好評を博した『ククノチ テクテク マナツノ ボウケン』、同じくキッズ・プログラムとしてコロナ禍で延期となっていた松井周の作・演出で白石加代子を迎えて制作する『さいごの1つ前』が上演されることも発表。ジャンルの垣根を超えたアーティストたちによる多彩な演目に期待が集まる。取材・文:黒豆直樹KAAT神奈川芸術劇場 2022年4月~2023年3月主なラインアップ<プレシーズン>■KAAT EXHIBITION 2022『鬼頭健吾 展 Lines 』+関連企画2022年5月1日(日)~2022年6月5日(日)・アトリウム■KAAT キッズ・プログラム2022『ククノチ テクテク マナツノ ボウケン』振付・演出:北村明子美術:大小島真木2022年7月下旬 ・大スタジオ■KAAT キッズ・プログラム2022『さいごの1つ前』作・演出:松井周2022年8月中旬・大スタジオ<メインシーズン『忘』>■KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『夜の女たち』原作:久板栄二郎映画脚本:依田義賢上演台本・演出:長塚圭史音楽:荻野清子2022年9月上旬下旬・ホール■『スカパン』原作:モリエール潤色・美術・演出:串田和美2022年10月下旬・大スタジオ■KAAT× 城山羊の会『温暖化の秋 hot autumn』(仮)作・演出:山内ケンジ2022年11月・大スタジオ■KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『タイトル未定(新作)』作:兼島拓也演出:田中麻衣子2022年11月下旬~12月上旬予定・中スタジオ■KAAT DANCE SERIES『星の王子さま サン=テグジュペリからの手紙』演出・振付・出演:森山開次美術:日比野克彦衣裳:ひびのこづえ音楽:阿部海太郎2023年1月下旬・ホール■KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』原脚本:黒澤明小国英雄橋本忍菊島隆三脚本:齋藤雅文演出:赤堀雅秋2023年2月中旬3月上旬・ホール■KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『掃除機』作:岡田利規演出:本谷有希子2023年3月上旬・中スタジオ■YPAM 横浜国際舞台芸術ミーティング 20222022年12月上旬・ホール / 大スタジオ / 中スタジオ(予定)【提携公演】ROTH BART BARON5月・大スタジオ小㞍健太+森永泰弘5 月・中スタジオ横浜夢座5月・大スタジオケダゴロ5月・大スタジオモメラス6月・大スタジオCATプロデュース『テーバスランド』6~7月・大スタジオ快快(FAIFAI)8~9月・大スタジオ劇団た組9~10月・大スタジオCo.山田うん10月・大スタジオ地点12月・ホール 、2月・大スタジオオペラシアターこんにゃく座3月・ホール※各公演の最新情報は、劇場公式サイト にてご確認ください。
2022年03月01日KAAT カナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾 『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』が2月8日にKAAT 神奈川芸術劇場 <中スタジオ>にて開幕した。この度、演出を担当する長塚圭史からのコメントと舞台写真が公開された。本作は、誰もが親しむアジアの古典『西遊記』をベースに、長塚が同劇場の芸術監督就任後初めて書き下ろす新作。天竺へ向けて旅を続ける三蔵法師と孫悟空の一行は、どういうわけか道を誤り、時空を超えて幕末の頃の横浜の港町に紛れ込んでしまう。さらに、猪八戒が行方不明となるが、どうやら県内各地で飲み食いに明け暮れているらしい。どうにか猪八戒を見つけ出し、天竺への道へ戻ろうと一行は県内の昔話や言い伝え、そして神々や魑魅魍魎を相手どりながら西へ西へと進んでいき……。この神奈川から天竺に戻る道を探すという奇想天外な冒険譚に、柄本時生、菅原永二、佐々木春香、長塚圭史、成河が出演。音楽・演奏を角銅真実、演出を長塚と、長塚からの信頼も厚い大澤遊が手掛けている。初日を迎え、長塚は「どの土地も普段は見過ごしている物語に満ちているということを再認識します。この作品をきっかけに伝承の足跡を確かめに出掛けてみたり、また新しい物語を発見するきっかけになったら愉快だなあと思います」とコメント。さらにこの作品は、県内6都市巡演するツアープロジェクトとなっているため、「KAAT神奈川芸術劇場を皮切りに、川崎、橋本、大和、厚木、小田原、横須賀とツアーします。底抜けに楽しい冒険譚を覗きに来てください」とこれまで劇場に足を運んだことのない人々と出会いたいという思いを語った。長塚圭史コメント全文天竺國への旅の途中、三蔵法師と孫悟空ら西遊記の一行が神奈川県内に紛れ込んでしまうという奇想天外の劇が幕を開けました。県内各地の故事・伝承、神社仏閣が祀る神々、また道々の道祖神などと出会いながら、どうにか天竺へと向かうそもそもの旅へ戻ろうと奔走します。神奈川県民の皆様は知っている土地がいっぱい出てくるので一行と共に存分に冒険出来ると思います。始まりの始まりは日の出町の映画館ジャック&ベティの前ですから!もちろん歌や演奏がいっぱいの西遊記外伝として、県外の皆様にも楽しんでいただける作品になったと思います。それにしてもどの土地も普段は見過ごしている物語に満ちているということを再認識します。この作品をきっかけに伝承の足跡を確かめに出掛けてみたり、また新しい物語を発見するきっかけになったら愉快だなあと思います。KAAT神奈川芸術劇場を皮切りに、川崎、橋本、大和、厚木、小田原、横須賀とツアーします。底抜けに楽しい冒険譚を覗きに来てください。KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』2月8日(火)~2月16日(水)会場:KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ以降、川崎、相模原、大和、厚木、小田原、横須賀に巡回上演時間:約100分(休憩なし)アフタートーク開催!◆KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ 日程:出演者(予定)2月13日(日) :長塚圭史(上演台本・演出)、柄本時生、佐々木春香◆川崎公演2月19日(土) 15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆相模原公演2月23日(水・祝) 15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆大和公演2月26日(土)16:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆厚木公演3月4日(金)15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆小田原公演3月12日(土)15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆横須賀公演3月19日(土) 15:00:長塚圭史(上演台本・演出)
2022年02月09日KAAT カナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾 『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』が2月8日(火)にKAAT 神奈川芸術劇場 <中スタジオ>にて開幕し、神奈川県内6都市(川崎、相模原、大和、厚木、小田原、横須賀)を巡演する。KAATの芸術監督・長塚圭史が書き下ろし演出する本作は、『西遊記』をベースに、神奈川県内に迷い込んだ三蔵法師一行が、神奈川七都市を巡る冒険譚。柄本時生、菅原永二、佐々木春香、長塚圭史、成河が出演し、音楽・演奏を角銅真実、長塚との共同演出を大澤遊が手掛ける。<ひらかれた劇場>を目指し、より多くの神奈川県民、これまで劇場に足を運んだことのない人々と出会うため、KAATで創作した作品を携え、神奈川県内6都市を巡演するという本作。果たしてどのような作品になるのか。柄本、成河、長塚に話を聞いた。まさに“冒険”。正解の書かれていない戯曲――お稽古が始まって4日目だそうですが、いかがですか?成河楽しいです。いろんな演劇をやってきましたし、いろんな戯曲があると思いますが、改めて、すごく変わった戯曲だなと感じています(笑)。長塚ははは!成河それがすごく面白くて。本当に“冒険”というか、正解の書かれていない戯曲なんですよ。今は、正解をどこにつくるのか、いい意味で知覚的にみんなで探り合っている感じです。でも素敵な戯曲だと思う。すごく面白い。長塚こういう戯曲、普通は書かないからね(笑)。『西遊記』のような原作をベースにして台本を書くことも僕は珍しいですし。地域を取り上げながらつくることもないですし。これ……どういうジャンルなんだろうね?成河・柄本(笑)長塚“軽演劇”っていうのが近いのかもしれない。まあ、かなりユニークなつくりになっています。『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』チラシ――台本を読ませていただいて、わたしはシンプルに楽しい気持ちになりました。長塚それはすごく大事なことです。今回は、演劇を観たことがない方々が「自分たちが住んでいる地域がこんなふうに見えてくるんだ」とか「あの場所であんなことがあったんだ」ということを演劇を通じて知ったり、「いろんな場所にこんな簡単に行けるんだ!」というような演劇的マジックを楽しんでいただくために、演劇に長けた人たちが集まって、アイデアを出し合って、面白いものを見つけていけたらいいなと思っています。「終わらないでほしい」と思うところまでいけたら――実際に出演者の皆さんが演じ始めてどう感じていますか?長塚そこはこれからかな。みんな台詞の持つ意味はすでに掴んでいるから。その先の、どう空間をつくり、どう飛躍し、どう面白がって、どう感動を呼ぶのかをこれからやっていきます。僕は感動を呼びたいんですよ。この奇妙な作品で、感動してもらいたいんです。成河でもなんか昨日、そんな気配がしましたよ。お祭りが終わる時の寂し気で賑やかな感動というか。長塚ストーリーは(『西遊記』なので)みんなわかっているわけじゃないですか。それが「わ、終わらないでほしい」と思うようなところにいけるといいなと思う。もうね、こんなやさしい気持ちで劇をつくることはないですよ。――そうなんですか!長塚そう。やさしいというか、おだやかな気持ちかな。今は「(ストーリーに)この地域を入れてないのはまずいかな」とかそういうプレッシャーはあるんだけど(笑)。「またやってほしい」とか「うちの地域も入れてよ」と思っていただければ成功だなと思っています。――柄本さんは台本を読まれて、どんなふうに思われましたか?柄本いや~……よくわからない(笑)。一同(笑)柄本言ったことのない台詞たちなので。もちろん脈略はあるんですけど、それ以上になにか「いいじゃん!」というような感じがある(笑)。だから、意味があるんですけど、意味がないんですよ。だけどなにかは進むんです。普段、お仕事でやらせていただく脚本って「あ、わかる」と思ってそのまま進めちゃうんですけど、今回は「わからん!」と思ってやれています。それは本当に嬉しいことです。わかんないなと思いながらやるって、こんなに楽しいんだなって。苦しいと同時に楽しいっていうのを勉強させていただいています。長塚すごくよくわかります。馬(佐々木春香が演じる馬[玉龍])の台詞なんてもうね、その土地の食べ物を説明したりしてね(笑)。演じる側は「これはどこにいけばいいんだ?」という部分が多分にあると思う。でも僕は何に感動するのかわからなくてもいいんだけど、光が溢れてくると面白いよなと思っています。音楽の角銅真実さんが詩情をとらえてくれる方なので。一緒に演奏したりしながらつくっていったらどうなるのかなって、そこへの期待もすごく高いです。より多くの、演劇を観たことのない人たちと出会うために――そもそもどうしてこの作品をやりたいと思われたのですか?長塚企画としては「神奈川県内をまわりたい」という思いから生まれました。KAATは神奈川県の劇場だから、より多くの神奈川県民、まだ演劇を観たことのない人たちと出会いたい、というところが始まりです。KAATのある横浜から見ると、神奈川県は西に大きく広がっている。ならば西を目指す『西遊記』はピッタリではないかと思いました。――そこから『西遊記』に。長塚それとなるべく、みんなで旅回りの一座みたいに、行く先々でワッと劇を立ち上げて、気軽に観てもらって、「あの奇妙な時間はなんだったんだろうね」「また観たいね」と思ってもらえるようなものをつくりたかった。「楽しかったからまた来年も来ないかな」みたいなものにできたらいいなと思いました。それを実現するためには優れた役者さんに参加してもらいたい、と思って声を掛けていったら、みんな受けてくれた(笑)。オーディションにも大勢来てくれました。成河僕はこのお話を聞いた時、この作品を、公共劇場で、長塚さんが芸術監督として最初の作・演出としてやる、ということにものすごく意味があると思いました。これは本気の人たちが本気でやる甲斐があるものだと思うし、僕は今すごく燃えてます。長塚出演者のことを知らないような人たちが、「この人たち、なんなんだ」と面白がってくれるものをつくりたいんですよね。今後、各地でこういう試みをしてくれたらいいなとも思います。そのためにはまず僕たちが、この不思議な劇を、とんでもないかたちに仕上げなきゃいけないんだけれど。ゴールを目指して明るく刺激的な稽古場になっています。柄本僕は、『冒険者たち』というタイトルで神奈川をまわる、と聞いた時、本当にいい意味でですけど、「変態なんだな」と思いました。一同(笑)柄本もし僕がなにかそういう企画を考えてくれと言われたら、もっと外の世界を見てしまうと思うんですよ。それをまさか、ここ(地域)を見ようとするという。成河たしかに。柄本そこを見ることができる精神性がすごいなと思います。成河めっちゃわかる。似たようなことを僕も考えていて。例えば演劇に限らず、多少なりとも長くやっていくと、どうやったって、業界であったり業界が好きな人たちの塊(かたまり)からは離れられなくなっていくし、そこは常に視界に入ってしまう。だからみんな逃げようとするんですよ。「業界のためにやっているんじゃない」「業界ファンのためにやってるんじゃない」って口では言って逃げようとするんだけど、逃げたってどこにも行き場はないんですよね。じゃあ逃げるんじゃなくて、別の具体的に何を提示すればいいのかという時に、それには必然性が必要で。それが圭史さんは、芸術監督になった神奈川だった。この圭史さんが持っている必然性が、僕たちに浸透して来たらいいなと思っています。まだ(稽古が始まったばかりの)僕たちには、神奈川である必然性がないんですよ。でも圭史さんはこの必然性とめちゃくちゃ向き合っていらっしゃるから。その熱は感じます。――チケット代もすごく安いですよね。長塚気軽に観に来ていただくために、公共劇場のやれることのひとつだと思うんです。簡単なことではないですが、いろいろとがんばって調整してもらいました。すごそうなことをやってる、よりも「楽しそうだな!」と思ってほしい――共演者の皆さんの雰囲気はいかがですか?長塚(柄本に)どう?オーディションで選ばれた佐々木春香さんは劇団東京乾電池ですからね。意識して選んだわけじゃないんだけど。(※「劇団東京乾電池」は柄本時生の父・柄本明が座長を務める劇団)柄本そうなんですよ。だから個人的にはすごく、(自分にとって)恥ずかしい子が一人いるなっていう(笑)。なんかちょっと恥ずかしいんですよ、乾電池の方は。長塚身内感がね。柄本ちょっと照れちゃう(笑)。でも、僕自身は乾電池の人間じゃないんですけど、親父から聞かされてることもあるからなのか、春香が言う台詞はなんとなく理解します。成河ああ~。柄本春香から聞こえてくる声に「ああ、わかるわかる」っていう自分がいて、今現在はそこが面白いです。こういうことが起きるんだなって。あと(菅原)永二さんは、たまたま飲みに行くお店が一緒で、昔からよくお話はさせていただいていたのですが、人柄がすごく好きで。だから永二さんが台詞を言う度に、僕はすごく楽しいです。成河さんはまず、この量(現状、11役を演じる予定)ですからね……すごいですよ。ひとりずつちゃんと違います。稽古後に春香と話していて、第一声がふたりとも「成河さん、すごいな!」でした。「俺らあんなに考えられるかな」って。成河いやいやいや。でも多分このメンバーって、例えばシェイクスピアやりましょうとか長塚さんの過去の作品をやりましょうとかなったら、割と「このメンバーじゃないかも」ってなるくらい、それぞれの得手不得手がバラバラですよね。多分みんな基本的には違う方向を向いてるし、違うものをやっている。今、これだけ違う人たちが楽しんで、真ん中に自分の得意なものを投げて、「それ投げるの!?」「それは俺できねえ」「やっぱ面白いな」「あいつすげーな」とかお互い思い合っているのは、こういう場所の特性だなと思います。劇団とは違うものだし、この場所ではこれが一番いい状態だと思う。圭史さんが舵を取られている以上、その方向にいくだろうなという気がしています。――「この作品が最終的にこうなったらいいな」と考えていることはありますか?柄本・成河・長塚………。柄本なんか今、3人とも上を見ましたけど、すごくよくわかります。一同(笑)成河楽しそうなことやっている、とは思ってほしいですね。「なんか楽しそうにやっているから人はそこに行く」っていうのがあるから。なんかすごそうなことをやってる、もいいかもしれないけど、(今作は)楽しそうだな!って思ってほしい。長塚もう楽しそうだよね。柄本僕、本当にこの脚本の台詞たちを喋れるのは子供たちだと思うんですよ。多分、学芸会とか小学生が言えば言うほどどんどん聞こえてくる台詞たちなんですよね。それを社会人の僕たちが言うわけで、そこでなにができるのかっていうのを問われているような感覚があります。だからなんでしょうね、いつか出会えるんじゃないかなって。その“いつか”を楽しみにしたいと思っている感じです。成河ああ、面白いな~!取材・文:中川實穗撮影:源賀津己『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』2022年2月8日(火)~2022年3月19日(土)KAAT 神奈川芸術劇場<中スタジオ>を皮切りに、神奈川県内6都市(川崎、相模原、大和、厚木、小田原、横須賀)を巡る
2022年01月28日新芸術監督・長塚圭史のもと2021年度よりシーズン制を導入したKAAT 神奈川芸術劇場。春から夏のプレシーズンを経て秋からスタートしたメインシーズンは“冒”をテーマにしたさまざまなプログラムを上演している。その掉尾を飾る作品は、来年2月に開幕する『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』だ。本作は、誰もが親しむアジアの古典『西遊記』をベースに、長塚が芸術監督就任後初めて書き下ろす新作。天竺へ向けて旅を続ける三蔵法師と孫悟空の一行は、どういうわけか道を誤り、時空を超えて幕末の頃の横浜の港町に紛れ込んでしまう。さらに、猪八戒が行方不明となるが、どうやら県内各地で飲み食いに明け暮れているらしい。どうにか猪八戒を見つけ出し、天竺への道へ戻ろうと一行は県内の昔話や言い伝え、そして神々や魑魅魍魎を相手どりながら西へ西へと進んでいき……。神奈川から天竺に戻る道を探すという奇想天外な冒険譚。キャストは、三蔵法師に柄本時生、孫悟空に菅原永二、敵役(プレスリリースによると、県内の人々・神々・妖怪という興味深い役どころに成河、そして馬役には佐々木春香という顔ぶれが集結。また、上演台本と演出を務める長塚も沙悟浄役で出演し、フリーの演出家として近年活動の場を広げる大澤遊が共同演出する。さらに、マリンバをはじめとする様々な打楽器や自身の声などあらゆるもので表現活動を展開する音楽家・打楽器奏者の角銅真実も参加。なお今作には“KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト第一弾”とのプロジェクト名が冠されるが、「KAATはこの10年の間にたくさんのお客様にご来場頂き、演劇界に於いてはもはや誰もが知る劇場のひとつとなりました。さらにここからは県の劇場として、もっともっとたくさんのお客様と出会いたい。まだ演劇と出会っていないお客様とも出会いたい。そういう強い思いを携えて県内各地にある劇場で上演を重ね、交流を深めていこうという、今年度より始まる目玉企画です。今回がこのプロジェクトの第一弾。今後も第二弾、第三弾と継続していきます」と長塚。KAAT神奈川芸術劇場での公演(2月8日~16日)以降は、川崎、相模原、大和、厚木、小田原、横須賀で上演。また、長塚と仲間たちによる演劇の魅力を伝えるワークショップや、各地の人々と街について語り合うトークイベント、レクチャーなどのアウトリーチ活動も行われる。文:伊藤由紀子『冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~』2022年2月8日(火)~2022年2月16日(水)会場:KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ以降、川崎、相模原、大和、厚木、小田原、横須賀に巡回アフタートーク開催!◆KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ日程:出演者(予定)2月8日(火) :長塚圭史(上演台本・演出)、大澤遊(共同演出)、角銅真実(音楽・演奏)2月9日(水) :長塚圭史(上演台本・演出)、菅原永二、成河2月13(日) :長塚圭史(上演台本・演出)、柄本時生、佐々木春香◆川崎公演2月19日(土) 15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆相模原公演2月23日(水・祝) 15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆大和公演2月26日(土)16:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆厚木公演3月4日(金)15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆小田原公演3月12日(土)15:00:長塚圭史(上演台本・演出)◆横須賀公演3.19(土) 15:00:長塚圭史(上演台本・演出)
2021年12月29日故・蜷川幸雄が千回を超える上演を重ねた名作『近松心中物語』がKAAT神奈川芸術劇場の新芸術監督に就任した長塚圭史の演出で上演される。開幕前日の9月3日にゲネプロの模様が取材陣に公開された。戦後を代表する劇作家・秋元松代の代表作であり近松門左衛門の『冥途の飛脚』をベースに他作品の要素を加えて作られた本作。元禄時代を舞台に、飛脚宿の養子・忠兵衛(田中哲司)と女郎の梅川(笹本玲奈)、古物商の若旦那・与兵衛(松田龍平)とその妻・お亀(石橋静河)の2組の男女の姿を描き出す。田中が演じる忠兵衛は、真面目が取り柄の飛脚宿の養子だが、親切心で拾ったお金を届けた先が廓で、そこで出会った笹本演じる梅川と深く愛し合うようになる。梅川には、さる金持ちから身請け話が持ち上がるが、忠兵衛は負けじと金策に奔り、やがて身を滅ぼしてゆくことに...…。生真面目であるがゆえに真っ直ぐに生き、愛し、自らを追い詰めていく忠兵衛を田中が好演!互いを運命の相手を想い定めるも、愛だけでは超えることのできない境遇の違い、“金”という現実に逃げ場を失っていくふたりの姿が切なく、そして美しい。一方、松田が演じる与兵衛はお人よしの心優しい男で、石橋演じる妻・お亀から深く深く愛されているが、大店の婿養子という立場に身の置き所のなさを感じている。そんな中、幼なじみである忠兵衛が、梅川の身請けの手付金のため、与兵衛に金を貸してくれと頼みに来る。そこで鍵付きのたんすにしまってあった50両を忠兵衛へ惜しげもなく差し出す与兵衛。そのことで姑の怒りを買い、自身は家を出ることになり、忠兵衛もさらに追い詰められていくことになるのだが…...。先のことを考えないのか? いや、考えた挙句に「まあいいか」と思ってしまうのか?常にのらりくらりとした様子で、他人の頼みに“NO”と言わず、ダメな男なのに目が離せない――そんな与兵衛を松田が魅力的に演じている。もうひとり、なんとも不思議な強い存在感を放っているのが、石橋が演じる与兵衛の妻・お亀である。与兵衛への愛情に一切の迷いも混じりっ気もなく、常に与兵衛にとっての“オンリーワン”であることを望む。古物商の娘という裕福な境遇にありながら、与兵衛が家を追い出され、さらには番所に追われる身になっても、愛は揺るがず、家を捨てても与兵衛と生死を共にしようとする凄まじいまでの“覚悟”を持っている。そんなふたりのやりとりは、いつもどこか噛み合わず、コミカルですらある。2組の男女の間に共通して横たわるのは、善意とけがれなき愛情、そして生まれ育った境遇の違い――“格差”である。愛を成就させるために途方もない金が必要となり、破滅へと追い込まれていく忠兵衛と梅川。婿として身の置きどころのなさを感じ、そんな自らの代わりに“自由”を与えるがごとく、ポンっと忠兵衛に大金を差し出す与兵衛。裕福な暮らしなどあっさりと捨てて、与兵衛について行くことに何よりの幸福を見出すお亀。“格差社会”が叫ばれる現代の人々の心に、2組の恋はどのように響くのか? 長塚の演出、繊細で美しい美術、そしてスチャダラパーによる和楽器を巧みに取り入れた音楽にも注目してほしい。公演は9月20(月・祝) までKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。ほか、福岡、愛知、兵庫、大阪、長野公演あり。取材・撮影・文:黒豆直樹【スタッフ・キャストコメント全文】●長塚圭史(演出)肉体が純粋渇望するもの。『近松心中物語』は大阪新町の見世女郎梅川と飛脚宿の養子忠兵衛の叶わぬ恋を発端に描くドラマです。ふたりは出会い、恋の炎が燃え上がりますが、金に行き詰まり、とうとう身分を捨て、社会の枠組みから飛び出します。秋元さんは身分制度のあった江戸時代の社会を、味わい深い台詞で紡ぎます。見世女郎よりも更に身分の低い、河原で客を取る辻君にも今夜帰る家があること。丁稚の長松や久作は幼いながらも親元を離れ、仕事をして、ご飯を食べていること。不機嫌な小役人にも女房が待っていること。皆、生きる為に、働いて、眠り、暮らしています。そんな当たり前の日常からはみ出していく忠兵衛と梅川。例えどんな地位であれ境遇であれ、私たちは人間であることを求める。心中とありますが、死は生を鮮やかに照らします。このエネルギーが現在の皆様に届けばと思います。KAAT神奈川芸術劇場でお待ちしております。●スチャダラパー(音楽)最初に長塚圭史氏から聞いた構想(近松心中物語を、セットも極力シンプルに、少ない役者達で最後はスチャダラのラップがかかって終わる)が、本当に言った通りの形になったのだから感無量です。●田中哲司(亀屋忠兵衛役)もう少しで舞台初日です。でも、いつ中止になっても悔いの無いよう、舞台稽古の一回一回を本番のつもりでやっています。なので、これまでの舞台とは恐らく本番の重みが違います。今回、完成しつつある長塚圭史君の作り上げた『近松心中物語』はシンプルな装置の上で、個々の役者がさらけ出される舞台です。誰一人として気を抜けない舞台で、それに負けないよう皆頑張っています。今回の舞台、僕は好きです。こういう状況なので、大手を振って観に来てくださいとは言えませんが……大変な中、観に来てくださった方の心を少しでも揺さぶる事が出来るよう頑張ります。●松田龍平(傘屋与兵衛役)明日(9/4)から近松心中物語を公演します。現代から江戸時代へ、心を重ねて観てもらえる作品だと思います。その時代を生きる人々と、その中で、心中することでしか結ばれることができなかった男女の物語をぜひ劇場でご覧ください。長塚さんをはじめスタッフ、役者一同、力を合わせて舞台を盛り上げていきますので、お楽しみに。●笹本玲奈(遊女梅川役)稽古では、忠兵衛、与兵衛、梅川、お亀をはじめとする登場人物たちが、いまよりも自由が制限されている時代背景、生活環境、身分制度の中で、それぞれが一生懸命に生き抜く姿に心動かされ、愛おしさが増す毎日です。時代が違えば良かった事、時代が違っても変わらない事、シンプルなストーリーですが、さまざまな視点から見て楽しむことができる作品です。現代では日常で使われない美しい日本語と、梅川の芯にある強さと愛情深さを大切に、心を込めて演じたいと思います。●石橋静河(傘屋お亀役)日々の稽古でお亀という女性に向き合いながら、何か果てしない可能性のようなものを感じています。毎日新しい発見があり、幕が開いてからもきっとたくさんの気づきがあるだろうと思います。改めて、素敵な役と出会えたことを有り難く感じています。廓の街の華やかさ、儚さを目で耳で、楽しんでいただきたいです。また、お亀・与兵衛の可笑しくも切ない恋のゆくえを見守っていただけたら嬉しいです!●朝海ひかる(傘屋お今、遊女役)長塚さんの演出による新しい『近松心中物語』が、皆様にどの様に届くのか、とてもワクワクしております。現代から元禄へのタイムトリップをどうぞお楽しみください。●石倉三郎(丹波屋八右衛門役)ホントにこの忌ま忌ましいコロナのせいで、徹底的に検査、予防、何を触るにもアルコール消毒! マスク絶対着用、不安感だらけの稽古がやっと明けて、扨漸く無事初日を迎えられる運びと相成りました。この文化の殿堂、横浜のKAATで、嬉しい限りであります。秋元松代作・長塚圭史演出『近松心中物語』。演劇に余り関心のない方でも、充分に楽しめること請け合いです! スタッフ・キャスト、皆懸命に頑張りました。何卒御高覧の程、伏して宜しくお願いお願い申し上げます。
2021年09月04日舞台『近松心中物語』が2021年9月4日(土)から9月20日(月・祝)までKAAT神奈川芸術劇場で、その後、福岡・北九州、愛知・豊橋、兵庫、大阪・枚方で上演される。田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河らが出演し、演出は長塚圭史が務める。“演劇界の金字塔”『近松心中物語』『近松心中物語』は、近松門左衛門の「冥土の飛脚」をベースに他作品の要素を盛り込みながら完成させた、作家・秋元松代の戯曲。初演の演出は蜷川幸雄が担当し、これまでに1000回以上も上演されてきた。“演劇界の金字塔”と称される作品でもある。『近松心中物語』で描かれるのは、元禄時代に生きる男女二組の恋物語。はじめは純粋な恋心と親切心だったはずが、そのために金に追い詰められ、世間から逃げ出さざるを得なくなる忠兵衛と梅川、与兵衛とお亀の恋の行く末を描く。田中哲司や松田龍平が出演キャストには個性豊かな俳優が勢揃い。真面目な飛脚宿亀屋の養子・忠兵衛には田中哲司を、古道具商傘屋の婿養子・与兵衛には松田龍平を起用。遊女・梅川は数々のミュージカル作品のヒロインを演じてきた笹本玲奈が、与兵衛の妻・お亀は『あのこは貴族』など話題作に出演する若手実力派女優・石橋静河が演じる。また、石倉三郎や朝海ひかるといったベテラン俳優も参戦。『近松心中物語』は、これまで50人規模のキャストで上演されてきた戯曲だが、今回は19人の出演者が複数の役を演じ分けて上演する。演出はKAAT神奈川芸術劇場芸術監督の長塚圭史演出は、2021年にKAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任した長塚圭史が担当。音楽は、2020年にデビュー30周年を迎えたラップグループ・スチャダラパーが手掛ける。ラップと現代演劇の金字塔『近松心中物語』という異色の組み合わせにも高い期待が募る。『近松心中物語』<あらすじ>元禄時代、大阪・新町(遊郭街)。真面目な飛脚宿亀屋の養子・忠兵衛は、新町の遊女・梅川に出会い、互いに一目で恋に落ちる。梅川に、さるお大尽からの身請け話が持ち上がる。金に困った忠兵衛は、幼馴染みの古道具商傘屋の婿養子・与兵衛に金を借りにいく。与兵衛が快く貸してくれた50両で、梅川の身請けの手付金を払い安堵する忠兵衛と梅川の元に、大尽からの身請けの後金300両が届いてしまう。一方お人よしで心優しい与兵衛は、与兵衛に恋い焦がれる女房のお亀、舅姑とともに、大店の婿養子として身の置き所のない想いを抱いて暮らしていたのだった。忠兵衛と梅川/与兵衛とお亀。華やかな元禄の世に生きる境遇の違う男女二組。恋い焦がれる人と共にいるために心中を選ぶ、それぞれの恋を描く・・・。作品詳細KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『近松心中物語』作:秋元松代演出:長塚圭史音楽:スチャダラパー出演:田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河、綾田俊樹、石橋亜希子、山口雅義、清水葉月、章平、青山美郷、辻本耕志、益山寛司、延増静美、松田洋治、蔵下穂波、藤戸野絵、福長里恩/藤野蒼生(Wキャスト)、朝海ひかる、石倉三郎美術:石原敬、照明:齋藤茂男、音響:武田安記、衣裳:宮本宣子、ヘアメイク:赤松絵利、振付:平原慎太郎、所作指導:花柳寿楽、音楽アドバイザー:友吉鶴心、演出助手:大澤遊、舞台監督:横澤紅太郎■神奈川公演会場:KAAT神奈川芸術劇場<大ホール>日程:2021年9月4日(土)~9月20日(月・祝)料金:・S席 9,500円、A席 6,000円(全席指定)・<夜割>A席(平日夜割引) 3,000円(※9日と16日のみ)・U24チケット(24歳以下) 4,750円、高校生以下割引 1,000円、シルバー割引(満65歳以上) 9,000円※U24、高校生以下、シルバー割引チケットは7月24日~取扱いチケット発売日:・一般 7月24日(土)・KAme(かながわメンバーズ)先行発売 7月3日(土)チケット取扱:<チケットかながわ>・TEL:0570-015-415(10:00~18:00)・公式サイト・窓口(KAAT神奈川芸術劇場2階 10:00~18:00)<チケットぴあ>・TEL:0570-02-9999(Pコード 506-578)・公式サイト<イープラス>・公式サイト<ローソンチケット>・公式サイト(Lコード31979)問い合わせ先:チケットかながわTEL:0570-015-415(10:00~18:00)■北九州公演会場:北九州芸術劇場中劇場日程:9月25日(土)14:00/18:30、26日(日)13:00料金:一般 8,500円、ユース(24歳以下) 4,500円一般発売日:8月1日(日)問い合わせ先:北九州芸術劇場TEL:093-562-2655(10:00~18:00)■豊橋公演会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール日程:10月1日(金)18:00、2日(土)13:00、3日(日)13:00料金:S席 10,000円、A席 8,000円、B席 6,000円一般発売日:8月14日(土)10:00~問い合わせ先:プラットチケットセンターTEL:0532-39-3090(休館日を除く10:00~19:00)■兵庫公演会場:兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール日程:10月8日(金)18:00、9日(土)13:00、10日(日)13:00料金:A席8,500円、B席5,500円一般発売日:8月7日(土)問い合わせ先:芸術文化センターチケットオフィスTEL:0798-68-0255(10:00~17:00月曜休み※祝日の場合翌日)■枚方公演会場:枚方市総合文化芸術センター関西医大 大ホール日程:10月13日(水)14:00料金:A席7,000円、B席5,000円一般発売日:一般(電話・ウェブ)8月18日(水)10:00より発売残席がある場合、翌日に窓口販売問い合わせ先:枚方市総合文化芸術センター別館TEL:072-843-5551(9:30~20:00、休館日:火曜日 ※祝日を除く)■松本公演会場:まつもと市民芸術館主ホール日程:10月16日(土)13:00料金:一般 6,500円、U18 4,000円(枚数限定)一般発売日:8月7日(土)10:00~問い合わせ先:まつもと市民芸術館チケットセンター(10:00~18:00)TEL:0263-33-2200※チケットは各地とも全席指定
2021年06月19日