じつはこのコンサート、5月9日に開催される予定だったのが、新型コロナウイルス感染拡大のせいで延期された公演。お待たせしたお詫びの、5人からのプレゼントという趣向。金子の《トロイメライ》が圧巻。
演奏の合間に司会の高橋がピアニストたちから引き出すさまざまなエピソードも楽しい。(三勇士=みゅうじという名前で、ミュージシャンになる宿命を意識したかと問われ、)「ないです!今日が初めてかも」(金子)
「イスの高さ?僕はなんでもいいんです。段ボール箱だっていい」(松永)
「(チャイコフスキー・コンクールのとき)体力を維持するために舞台袖でバナナを食べていたのですが、時間がなくて残したバナナのことが忘れられません」(上原)
などなど、トークの個性もそれぞれ。
最後は5人全員が交代しながら最大10手3台ピアノ編成になる《戦場のメリー・クリスマス》。互いが近づくので、このときだけ全員マスクをつけて登場した。
上原の、ドレスと同柄のマスクが可愛い。
演奏の美しい余韻に、前席のご婦人から思わず「うーん」とため息がもれた。いまはブラヴォーなどの掛け声は控えなければならないときだが、これは仕方がないだろう。真夏の夜の夢のようなぜいたくな競演。