ミュージカル『僕とナターシャと白いロバ』日本版初演開幕!
二人の恋物語に登場する数多のキャラクターを演じるマルチマンにはミュージカル初挑戦の伊藤裕一。ペクソクの親友で恋のキューピットとなる男、二人の交際を反対する父親、冷酷な借金取り、そしてペクソクの詩の朗読も担う。トリッキーな存在に終始しがちなポジションだが、物語との距離感の取り方を絶妙に変化させることで見事に成立させている。
日本版初演の脚本・演出を手掛けるのは、繊細で美しい世界を立ち上げる名手・荻田浩一。また、作品の色を担う音楽、振付には福井小百合、港ゆりかという荻田作品ではおなじみのクリエイターが並ぶ。
感染防止対策として客席間はパーテーションが施され距離が保たれた状態。また、舞台と客席の間にはビニールシートが配され、観客はビニールシート越しに舞台を見ることになるのだが、まるで夢と現の境界線のように新たなる効果を生み出している点に唸った。光のマジックでふとした瞬間にクリアな視界となり、登場人物が目の前に現れるような驚きも。
本作タイトルは、ジャヤへの溢れんばかりの愛が込められたペクソクの代表的な詩だ。「しんしんと降る雪の情景」が美しく描写されている、この一編の詩の世界が眼前に現れるようなラストシーンは秀逸。