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ジャック・ドゥミ(監督・脚本)とミシェル・ルグラン(音楽)という、フランス映画界を代表する巨匠たちによって生み出され、1964年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた「シェルブールの雨傘」。傑作の呼び声高いミュージカル映画だけに、日本でも舞台化の例は数多く、これまでに坂本昌行や井上芳雄らの主演により上演されてきた。そして本日11月4日(土)、荻田浩一の演出・上演台本・訳詞のもと、京本大我(SixTONES)が主人公・ギイを演じる新たな舞台が新橋演舞場にて幕を開ける。物語の舞台は1957年、アルジェリア戦争が続くフランスの港町シェルブール。20歳の自動車整備士ギイ(京本)は、雨傘店の娘で17歳のジュヌヴィエーヴ(朝月希和)と将来を誓い合っていた。ふたりが若すぎることを理由に、ジュヌヴィエーヴの母エムリ夫人(春野寿美礼)からは反対を受けるなか、ギイのもとに召集令状が届く。ギイが戦地に赴いてから妊娠に気付いたジュヌヴィエーヴは、ギイからの手紙が次第に減っていくことに不安を募らせていき……。ギイの病気の伯母を献身的に支えるマドレーヌ(井上小百合)や、お腹に子どもがいるのを承知でジュヌヴィエーヴに求婚する宝石商カサール(渡部豪太)も絡む恋模様が、ルグランのせつなく美しい楽曲に乗せて綴られる。最大の注目はやはり、『エリザベート』のルドルフ役や『ニュージーズ』のジャック役でミュージカル俳優としてのあり余るポテンシャルを見せつけた、京本大我の演技と歌だろう。経験本数こそ多くはないが、今回の出演にあたっても、「大作への出演にプレッシャーも感じますが、この作品を令和の時代に上演する意味、そして僕が務めさせていただく意義を、稽古期間を通してよく考え、皆様に自信を持ってお届けすることをお約束します!」と頼もしいコメントを寄せている。誰もが一度は耳にしたことがあるであろうあの主題歌を、果たして京本はどのように響かせてくれるのだろうか。文:熊田音子<公演情報>『シェルブールの雨傘』脚本:ジャック・ドゥミ音楽:ミシェル・ルグラン演出・上演台本・訳詞:荻田浩一出演:京本大我朝月希和井上小百合渡部豪太春野寿美礼他【東京公演】2023年11月4日(土)~11月26日(日)会場:新橋演舞場【大阪公演】12月3日(日)~12月10日(日)会場:大阪松竹座【広島公演】2023年12月14日(木)~12月16日(土)会場:広島文化学園 HBGホール公式サイト:
2023年11月04日2023年度後期連続テレビ小説「ブギウギ」よりメインビジュアルが公開され、さらに歌劇音楽を甲斐正人、舞台演出を荻田浩一、語りを高瀬耕造アナウンサーが担当することが発表された。この度解禁されたメインビジュアルのテーマは「音が聞こえてくる」。戦後の日本、人々を明るく照らすヒロイン・鈴子(趣里)が、長屋前で踊り、歌っている姿が捉えられている。魚を焼く音、子どもたちが遊ぶ音、豆腐屋の笛、赤ちゃんをあやすでんでん太鼓、布団を叩く音…。人々の生活音が、鈴子の歌と踊りと合わさって、まるで楽しい音楽が聞こえてくるようなメインビジュアルが完成した。撮影は、写真集「浅田家」などの浅田政志が担当した。浅田政志また、多数の舞台シーンが登場する本作。ステージを彩る音楽と演出に、歌劇のプロフェッショナルである、甲斐正人(歌劇音楽)と荻田浩一(舞台演出)が参加する。甲斐氏は、1983年日本アカデミー賞最優秀音楽賞(「蒲田行進曲」)のほか様々な賞を受賞。最近の主な作曲作品に、宝塚宙組「王家に捧ぐ歌」、「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~」、スタジオジブリ原作「おもひでぽろぽろ」などがある。荻田氏は、1994~2008年、宝塚歌劇団演出部に在籍し、繊細かつ甘美な独自の美学を持った作風で数々の名作を生み出し、高い評価を得た。現在はミュージカルやストレートプレイの脚本・演出のみならず、ショーやコンサートも多数手掛けている。さらに、語りをNHK大阪放送局アナウンサーの高瀬耕造が務めることも発表された。浅田政志 コメント大掛かりな撮影だったので、朝からとても緊張していました。しかし、趣里さんの太陽のような明るい表情とパワフルなポージングを目の当たりにして、緊張が遥か彼方に飛んでいきました。大勢のスタッフの皆さんと一体感を持って作り上げた渾身の1枚です!ポスターを見てみなさんの心の中にブギウギのメロディーが流れたらうれしいです。高瀬アナウンサー コメント長く朝ドラを応援してきましたが、まさか自分が本編ナレーションを担当する日が来るとは夢にも思いませんでした。ファンとして“越えてはならない一線”を越えるようでドキドキしていますが、毎朝楽しみにしている皆さんと一緒に温かく見守りたいと思います。ここだけの話、ブギウギの台本を読んで何度も泣きました。ヒロイン鈴子を演じる趣里さんはじめ、キャストの皆さんによってどんなすてきな朝ドラになるのか、今からワクワクしています!起用にあたって/制作統括・福岡利武メインビジュアルには、戦後の人々を歌と踊りで明るく照らしたヒロイン鈴子を描きたいと思っていました。浅田政志さんのまなざしの温かさとユーモアあふれるメインビジュアルが誕生しました。歌が聞こえてきそうで、とてもワクワクする仕上がりになったと思います。歌劇音楽の甲斐正人さん、舞台演出の荻田浩一さんには、「ブギウギ」の世界の歌劇をつくっていただきました。実際の歌劇の世界の第一線で活躍するお二人の力で時代を感じながらも新しく魅力的な舞台になっています。ご期待ください。語りの高瀬耕造アナウンサーには、これまで朝ドラ送りで、温かく朝ドラを応援してもらっていました。今回はヒロイン・鈴子の成長を語りとして温かく見守ってほしいと思います。2023年度後期 連続テレビ小説「ブギウギ」は10月2日(月)よりNHK総合ほかにて放送。(シネマカフェ編集部)
2023年07月18日映画『妖獣奇譚 ニンジャ VS シャーク』が、2023年4月14日(金)より公開される。監督は、坂本浩一。“忍者対サメ”の異種格闘戦映画『妖獣奇譚 ニンジャ VS シャーク』は、江戸時代を背景に“忍者対サメ”の、史上最大の異種格闘戦を描く作品。国内外で人気の二大ジャンルを融合させ、忍者、忍術、アクション、ゾンビ、スプラッター、巨大なサメと要素盛りだくさんのノンストップエンターテイメントを提供する。監督は、「パワーレンジャー」「ウルトラマン」「仮面ライダー」『破裏拳ポリマー』等、数多くの特撮ヒーローを世に送り出し、実写映画『文豪ストレイドッグス BEAST』も手掛けた坂本浩⼀が務める。平野宏周&西銘駿がW主演「ウルトラマン Z」の平野宏周が小太郎を演じ、共に戦う信助を演じる「仮面ライダーゴースト」の西銘駿とW主演を果たす。さらにヒロインの沙代を女優、看護師、空手世界一、プロレスラーという数々の肩書きを持つ長野じゅりあが演じる。主人公・潮崎小太郎…平野宏周村外れの寺にいる用心棒。村長から助太刀を頼まれ、村人を救うために鮫士郎と戦う。信助…西銘駿村人の沙代を生贄として鮫士郎に捧げようとする村長に反発。小太郎とともに戦う。沙代…長野じゅりあ百園菊魔…宮原華音小太郎の行く手を遮る女忍者。螭鮫士郎/清丸…中村優一螭鮫士郎は、邪教集団・紅魔衆の首領。不老不死の力を得る為に呪術を使い、鮫を操る事によって村で採れる真珠を強制的に村人から巻き上げていた。映画『妖獣奇譚 ニンジャ VS シャーク』あらすじ刻は江戸時代。人里離れた沖津村の浜に村人の惨殺された死体が上がる。邪教集団・紅魔衆の首領・螭鮫士郎は不老不死の力を得る為に、忍術を使い鮫を操る事によって村で採れる真珠を強制的に村人から巻き上げていたのだ。この状況に業を煮やした村長は、助太刀を頼むべく村外れの寺にいる用心棒の潮崎小太郎に会いに行く。報酬とともにその仕事を⼀旦引き受ける小太郎だが、小太郎の行く手に現れたのは菊魔と名乗る女忍者だった。村人を救う為に鮫士郎に戦いを挑む小太郎だが、その前に現れたのは、この世の物とは思えない巨大な鮫…。遂に実現する、忍者対鮫の究極バトル!生き残るのはどっちだ!【詳細】映画『妖獣奇譚 ニンジャ VS シャーク』公開日:2023年4月14日(金)監督:坂本浩一出演:平野宏周、西銘駿、長野じゅりあ、宮原華音、中村優一配給:エクストリーム
2023年01月29日美しく繊細な世界観に定評のある演出家・荻田浩一が長年温めてきた、知る人ぞ知る手塚治虫の『アラバスター』をベースに、個性豊かなキャストと共におくるオリジナルミュージカル『アラバスター』の上演が決定した。本公演の原作『アラバスター』は、1970年から1971年にかけて『週刊少年チャンピオン』に連載された作品で、美しいものを妬む、人間の深い心の闇を鋭く描いたSF犯罪サスペンスである。手塚治虫自身が“嫌悪する作品”として挙げている一方で、連載時からのファンも根強く存在している異色作だ。【アラバスター】には、自身のソロコンサートのほか、舞台やミュージカルで活躍するLE VELVETSの宮原浩暢が決定。ヒロイン亜美に思いを寄せる少年【ゲン】に、ダンスボーカルユニットLeadのメンバーとして活動しながら、ミュージカル等でも活躍する古屋敬多、アラバスターを追う冷酷無慈悲な捜査官【ロック】に矢田悠祐が抜擢。そのほか、亜美の養い親である元検事の【小沢ひろみ】と【力仁】の親子をAKANE LIV、馬場良馬がそれぞれ演じる。更に、治田敦、田村雄一、遠藤瑠美子、穴沢裕介、岩橋大が名を連ね、歌とダンスに一層深みを与える。そして、ヒロインの【亜美】を、宝塚歌劇団・月組トップスターとして活躍し、退団後も舞台や映像で幅広く活躍する涼風真世が務める。涼風は、「荻田さんWORLD(世界観)を信じ、透明な身体を持つ「亜美」として生きる覚悟です」と意気込みを語った。透明な身体を持つ亜美を、七色の声を持つ涼風がどう表現するのか、新たな表現方法にも注目だ。とある時代の日本。人や動物が透明あるいは半透明にされる奇妙かつ無差別なテロルが蔓延っている。正体不明の、まさに見えない敵であるテロリストは、ただ自ら名乗りを上げて大胆に犯行声明をぶちまける。その名はアラバスター。黒衣の下に半透明の身体を隠す男。アラバスターの仲間には眼球以外は透明な肉体を持つ少女・亜美がいる。謎めいた存在のアラバスターと亜美を中心に、愛憎に翻弄され、運命の渦に巻き込まれていくのは、亜美に思いを寄せる少年ゲン、亜美の養い親である元検事の小沢ひろみと力仁(通称カニ平)の親子、そしてアラバスターを追う冷酷無慈悲な捜査官ロック。まだ偏見と差別に満ちた世界に、「異形」に生まれたが故の懊悩が価値観や美意識に対する反逆となり、やがては苛烈な攻撃へと転じ、狂気に蝕まれた悲劇へと暴走していく。アラバスターの哀感に溢れた挽歌が、いま慟哭のように深く鳴り響く。人間の奥底に潜む“復讐・憎悪の心”と“歪んだ愛”を主題とし、欲望が渦巻く世界で翻弄される人々の運命を描いたミュージカル『アラバスター』。東京公演は6月25日(土)~7月3日(日) 東京芸術劇場プレイハウスにて、大阪公演は7月10日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演される。<上演決定に際してのコメント>●宮原浩暢(LE VELVETS)【アラバスター役】人間の深い闇を描いたSF犯罪サスペンス、手塚治虫原作、そしてオリジナルミュージカル、これを聞いて心が躍らない訳はありません。裏切り、復讐、嫉妬から生まれた自らの歪んだ正義を振りかざし罪を犯していく渦中の人物アラバスター。全身全霊で役を生きたいと思います。そして、魅力溢れる役者達と共に、皆様をアラバスターの暗い影の世界へ誘っていきます。●古屋敬多(Lead) 【ゲン役】ゲン役で出演させていただきます、古屋敬多です。手塚治虫先生の隠れた名作といわれる『アラバスター』そのオリジナルミュージカルに出演出来ることをとても嬉しく、光栄に思います。社会に反発しながらも自分の正義に従い、強い意志で行動を起こすゲンは物語を動かすきっかけとなる人物のひとりです。そんなゲンを演じることは僕にとって新たな挑戦となりますが、魂燃やして全力で頑張りたいと思います。●馬場良馬【力仁役】皆様はじめまして馬場良馬と申します。僕は小学生の時に図書館で手塚治虫先生の漫画を読み漁っていた時代があるので、この作品に出演出来る事とても嬉しく思っています。ミュージカルに出演する機会があまり無いので不安もありますが精一杯努めて、この『アラバスター』の素敵な世界観を皆様にお届け出来る様頑張ります。●矢田悠祐【ロック役】ロック役を演じさせて頂きます。矢田悠祐です。今回演じるロックは美醜に異常な拘りを持った捜査官です。ロックはとんでもないナルシストなので、その発言に負けないように今からお肌のケアなどもしっかりしていこうと思います。皆さんにいい意味で嫌われるように頑張ります。●AKANE LIV【小沢ひろみ役】子供の頃、テレビで放映された「火の鳥」を観て、壮大なスケールで描かれた人間の愛、美、醜を表現したアニメに初めて触れ、凄い衝撃を受けました。今作も、人間の深い内面、闇を描いた作品。素晴らしいスタッフ・キャストの皆様と共に手塚先生ワールドに参加できる事を感慨深く嬉しく思います。●涼風真世 【亜美役】新たな表現舞台にチャレンジできることに感謝の気持ちを忘れず、荻田さんWORLD(世界観)を信じ、透明な身体を持つ「亜美」として生きる覚悟です。皆様、ミュージカル『アラバスター』ご期待ください。▼公演概要【タイトル】 ミュージカル『アラバスター』【原作】 手塚治虫【脚本・演出】 荻田浩一【音楽】 奥村健介【企画協力】 手塚プロダクション【出演】宮原浩暢(LE VELVETS) / 古屋敬多(Lead)馬場良馬 / 治田 敦田村雄一遠藤瑠美子穴沢裕介岩橋 大 / 矢田悠祐AKANE LIV / 涼風真世【日時 / 会場】6月25日(土)〜7月3日(日) 東京芸術劇場プレイハウス7月10日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ【席種】S席(パンフレット付き)13,000円(税込) / S席:11,000円(税込) / A席:7,000円(税込)【チケット発売日】先行発売:5月17日(火)12:00〜一般発売:6月12日(日)10:00~【主催】 ミュージカル『アラバスター』製作委員会【問い合わせ】 東京公演:公演事務局 (営業時間:平日10:00~17:00)大阪公演:キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日・土曜11:00~16:00)【公式HP】 ※手塚治虫と手塚プロダクションの「塚」は、正式には「ヽ」がつく旧字表記
2022年05月16日ダニエル・キイスの傑作小説「五番目のサリー」を、2021年10月に舞台化します。脚本・演出は数々の名作を手がける荻田浩一が担当し、五重人格のヒロイン、サリー・ポーター役には彩吹真央が主演します。共演には、仙名彩世・小野妃香里・藤田奈那中河内雅貴・大山真志・荒井敦史・井澤勇貴・小寺利光、そして駒田一が名を連ねます。今回、作品のメインビジュアルを公開いたしました!あらすじ「わたしの心のなかに隠れているあなたはだれ?」 サリーは漂う・・・舞い降る白い雪のように。サリー・ポーターは、ニューヨークで働く平凡なウエイトレス。だが、人知れず重大な悩みを抱えている。たびたび陥る記憶喪失が、それだ。幼少時から繰り返されてきた空白の時間がサリーを苦しめている。仕事は長続きせず、結婚生活も破綻・・・、今は10歳になる双子の子供を手放して、彼女は孤独に生きている。精神科医のロジャーの治療を受け、彼女は驚くべき事実を知る。サリーの心の中には、他に四つの人格が存在していたのだ-。サリーは困難な状況に遭遇すると、四つの人格のどれかと入れ替わってしまう。そして、別の人格が身体を支配している間、サリー自身の意識はなく、当然記憶もまた無い。ロジャーの指導のもと、サリーは分裂した人格を統合して「本当の自分」になろうとする。彩吹真央が演じるサリー・ポーターの中に存在する四つの別人格を仙名彩世、藤田奈那、中河内雅貴、小寺利光ぞれぞれが象徴的に演じることで、複雑な五重人格を表現します。また、分裂した人格を統合して「本当の自分」になろうとするサリーの心に迫る医師やサリーの現在を支える人物、そして過去に影響を与えるきっかけとなった人物たちを、小野妃香里、大山真志、荒井敦史、井澤勇貴、駒田一が演じます。サリーを主軸に、四つの別人格、そして、現在と過去の出来事が交錯する本作にぜひご注目ください。さらに、アフタートークショーの実施も決定致しました!①10月22日13:00公演終演後彩吹真央、仙名彩世、小野妃香里、藤田奈那MC小寺利光②10月27日13:00公演終演後彩吹真央、中河内雅貴、大山真志、荒井敦史、井澤勇貴MC小寺利光③10月29日13:00公演終演後彩吹真央、中河内雅貴、大山真志、駒田一MC小寺利光チケットの一般発売は9月25日から開始。貴重なアフタートークもお見逃しなく!!公演概要タイトル:「五番目のサリー」~TheFifthSally~原作:ダニエル・キイス著「五番目のサリー」(ハヤカワ文庫)脚本・演出:荻田浩一音楽:TAKA出演者:彩吹真央仙名彩世小野妃香里藤田奈那中河内雅貴大山真志荒井敦史井澤勇貴小寺利光駒田一日程:2021年10月21日(木)~10月30日(土)全14公演会場:よみうり大手町ホールチケット料金:全席指定9,800円(税込)チケット一般発売日:2021年9月25日(土)公式サイト: 公式Twitter: (@The_Fifth_Sally)問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799 (平日11:00〜18:00/土日祝10:00〜18:00)主催・企画製作:M・G・H/ニッポン放送 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年09月25日現在東京・帝国劇場にて上演中のミュージカル『王家の紋章』。開幕2日目の昼に行われたゲネプロを鑑賞した。脚本・作詞・演出を荻田浩一、作曲・編曲をシルヴェスター・リーヴァイが手がける本作は、細川智栄子あんど芙~みんの漫画『王家の紋章』(秋田書店)を原作とするミュージカル。2016年に初演、翌17年に再演され、今回が3度目の上演となる。劇中では、古代エジプトにタイムスリップしてしまったアメリカ人の少女・キャロルと、古代エジプトの少年王・メンフィスのロマンスをはじめ、二人を取り巻く人間模様が描かれる。“暴君”ともいえる傲岸不遜なメンフィスを演じるのは、初演と再演で同役を務めた浦井健治と、今回の上演版で新しく起用された海宝直人。キャロル役は、いずれも新キャストとなる神田沙也加と木下晴香が務める。取材日は“海宝メンフィス”と“木下キャロル”の組み合わせだった。海宝直人(手前左)木下晴香(手前右)当世のエジプトで考古学を学ぶキャロルは、メンフィスが眠るピラミッドの発掘に参加したことで彼の異母姉・アイシス(朝夏まなと / 新妻聖子:Wキャスト)の怒りを買い、彼女の呪術によって古代エジプトへ弾き飛ばされる。金髪碧眼で現代人としてのモラルや知恵を持つキャロルの言動は古代エジプト人の注目を集め、いつしか「ナイルの娘」「黄金の姫」と崇められるように。メンフィスから求愛を受け、反発しながらも心惹かれるようになったキャロルのもとに、隣国ヒッタイトの王子・イズミル(平方元基 / 大貫勇輔:Wキャスト)が現れてーー。奴隷扱いしていたキャロルを「愛(う)いやつ」呼ばわりするなど“ドS”のツンデレキャラとして知られるメンフィスを、海宝は誇り高い人物として造形。伸びやかな高音が力強くも甘く響く歌声はファラオ(王)でありながらも高貴なプリンス然としており、品のあるメンフィス像を印象づける。特に、2幕中盤でキャロルを救うために戦いへ赴く決意を高らかに歌い上げる「Wavering Mind」のラストは必聴だ。木下晴香(左)海宝直人(右)考古学を愛するがゆえに、タイムスリップ先でも旺盛な好奇心で周囲を翻弄していくキャロル。演じる木下は、天真爛漫で“陽キャ”な彼女の魅力を振り撒くだけに留まらない。「I’m not Your Slave」でメンフィスの傍若無人な振る舞いに強く憤ってみせたり、メンフィスと愛を確かめ合う「Love to Give」で恋人と生きる時代を異にする境遇に一瞬ためらったり、観客が劇世界へ没入・共感しやすいフックを設けていた。木下晴香(中央)出色だったのは、このゲネプロでアイシス役を務めていた朝夏による「Unrequited Love」だ。兄弟姉妹間での結婚が当たり前だった古代エジプトにおいて、異母弟と結ばれることだけを念頭に下エジプトを治めてきたアイシスは、キャロルを選んだメンフィスから強く拒絶される。絶望の淵で歌い上げる同ナンバーでは、それでもメンフィスを愛し続ける一途な痛ましさを落ち着いた低音に滲ませた。左からアイシス役:朝香まなとメンフィス役:海宝直人この日、隣国ヒッタイトの王子イズミルに扮していた大貫は、メンフィスの好敵手として妖しい色気を振りまく。特にキャロルの叡智と美しさに惚れ込み、巧みな話術で自国へ連れ去ろうとする艶っぽい表情はオペラグラス持参でチェックされたし。持ち前の高い身体能力を活かしたメンフィスとの決闘シーンや、激情をほとばしらせる歌唱ナンバーなど見どころも多い。左からキャロル役:木下晴香イズミル役:大貫勇輔イズミル役:大貫勇輔新キャストの健闘によって、さらにパワーアップしたミュージカル『王家の紋章』。こうなると浦井メンフィス・平方イズミルをはじめとする続投キャストや、キャロルからアイシスへ役替わりした新妻のパフォーマンスも気になってくる。4年ぶりの復活に、初演・再演を見届けた“王族”(作品ファンの総称)も新たな楽しみ方が加わったのではないだろうか。上演時間は約180分(休憩含む2幕)。取材・文:岡山朋代
2021年08月10日映画化もされたバーナード・スレイドの傑作戯曲『Same Time, Next Year』が、剣幸主演で開幕した。不倫から始まる男女の25年を描く二人芝居。剣の相手役は坂田聡と大沢健という、まったく持ち味の違う二人がダブルキャストで務める。演出は荻田浩一。坂田が出演した回のゲネプロをレポートする。舞台は1951年、北カリフォルニアの海辺のコテージ。大きなダブルベッドには、男と女がいる。偶然の出会いから一夜を過ごしてしまったらしいドリスとジョージだ。甘いピロートークが展開するかと思いきや、会話から次第に判明するのは、お互い所帯持ちであるということ。しかしジョージが抱く罪悪感が、自分には子どもが二人いると言っていたけれど実は三人なんだというようなことだったりと、不倫カップルのわりにどこか憎めない。お互いの家庭の悩みなども打ち明けなんとなく心を通わせ、年に一度、同じ場所で落ち合うことを約束する……。時はとんで1956年。ずいぶん洗練された大人の会話をするようになった二人。1961年、ドリスは8か月の妊娠中。1965年、1970年――年に一度しか会わない彼らは、登場するたびに外見も内面も変化していく。特に、ドリスの変貌はまぶしい。世間を知らず、学もなく、もしかしたら家庭内で抑圧されていたかもしれない女性が、大学に行き、事業を立ち上げるまでになる。ブロードウェイでドリスを演じたエレン・バースティンはトニー賞主演女優賞を受賞したが、日本版ドリス・剣も素晴らしい名演だ。時が経つごとに精神的に成長していくが、ドリスの芯の部分――朗らかさや優しさといったところがぶれずにあるため、外見がいくら変わろうと違和感がなく見ていられる。対する坂田のジョージは逆に、外見は少しずつ変化しながらも、時を経ても変わらない“男のどうしようもなさ”がずっと貫く。自由に羽ばたくドリスを受けの演技で包み込む、そんな坂田ジョージもまた、愛しい。さらに、ここにダンサーの橋本由希子と鈴木凌平が彩を加える。愛を象徴する概念のような存在かと思いきや、ドリスとジョージをいたずらっ子のような表情で見つめたり、小道具を出し入れしたりとシーンにも関与。愛の妖精、もしくはキューピッドのような存在?彼らの存在が作品を一段、洗練されたものに押し上げた。演出の荻田の手腕が光る。それぞれが年をとるごとに変化していくように、二人の愛情の質も、次第に変わっていく。1975年、最終的に行きつく場所は友情のような、同志愛のような、熟年夫婦のような……いや、愛をカテゴライズするのすら無粋かもしれない。コンプライアンスに厳しい昨今だが、不倫カップルの話なんて……と眉を顰めるなかれ。男女の性愛の先にあるその愛は人間臭く美しく、しっかりとした質感を持ってそこにある。この二人の愛が羨ましいとすら思える。ある意味、究極のファンタジーかもしれない。公演は5月23日(日)まで、東京・赤坂RED/THEATERにて。取材・文:平野祥恵
2021年05月14日映画『グレイテスト・ショーマン』の主人公のモデルとしても知られるアメリカの伝説的興行師、フィニアス・テイラー・バーナムの半生を虚実ないまぜにして描き、1980年のブロードウェイで初演されたミュージカル『バーナム』。その初となる日本版が、3月6日より東京芸術劇場プレイハウスで上演されている。演出は荻田浩一、出演は加藤和樹、朝夏まなと、矢田悠祐、フランク莉奈・綿引さやか(Wキャスト)、原嘉孝・内海啓貴(Wキャスト)、中尾ミエほか。フランクと原が登板した、2日目のゲネプロを取材した。荻田演出の舞台では、しばしば現実と虚構がシームレスに共存する。“イカサマ”で人々に夢を与えようとするP.T.バーナムの物語に、そんな荻田のイマジネーション豊かな演出はまさにぴったり。空中ブランコや象を実際に登場させることはなく、もちろんスクリーンにただ実物を映し出すような安易で無粋なこともせず。スクリーンの中では、クラウンのフィリップ・エマールが動き回っていたり、シーンにまつわるイメージ画像がアニメーション化されていたり、スクリーン自体の配置も自在に変わったり……。そうして映像が駆使される一方で、舞台上ではアンサンブルの面々が、ストーリーと直接の関係はなく随時ジャグリングを披露してもいる。この舞台そのものが、華麗な“イカサマ”の様相なのだ。P.T.バーナムとその妻チャイリーの絆を描いてはいるが、ふたりのセリフや歌を通じてストーリーを理解させるというより、様々なイメージの連続によって彼らの日々を感じさせるような作り。それだけにキャスト一人ひとりに要求されるものは多いが、全員がしっかり作品世界の一部となっていた。特にタイトルロールの加藤は、歌って踊ってコミカルな芝居もこなす奮闘ぶり。包容力と茶目っ気を併せ持つチャイリーを造形した朝夏、いくつもの役を的確に演じ分けた矢田、一瞬も気を抜かない原の全力ぶりも印象に残った。トニー賞で装置と衣裳部門を制した事実から想像するに、ブロードウェイ版はおそらく、サーカスをほとんど再現するような豪華でスペクタクルな舞台だったのではないだろうか。日本版が“イカサマ”になったことには、荻田がそもそも持つ特性もさることながら、スペクタクルな演出は物理的にできないというコロナ禍の影響もあったに違いない。P.T.バーナムの興行とも重なるところだが、逆境の中だからこそ生まれる作品というものがある。それもまた、コロナ禍でも演劇の灯を絶やしてはならない理由の一つなのかもしれない。取材・文:町田麻子ミュージカル『BARNUM』翻訳・作詞:高橋亜子演出:荻田浩一出演:加藤和樹 / 朝夏まなと 矢田悠祐/ 綿引さやか・フランク莉奈(ダブルキャスト)/ 内海啓貴 ・原嘉孝(ダブルキャスト)/ 章平 工藤広夢 斎藤准一郎 泰智 福田えり 咲良 米島史子 廣瀬水美/ 中尾ミエ【東京公演】上演中~2021年3月23日(火)会場:東京芸術劇場 プレイハウス【兵庫公演】2021年3月26日(金)~3月28日(日)会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール【神奈川公演】2021年4月2日(金)会場:相模女子大学グリーンホール
2021年03月09日松竹が3月13日(土)の19:00より、桐生麻耶、尾上菊之丞、荻田浩一による一夜限りのトークライブ「桜咲く夜~歌劇家話」を生配信することが決定した。松竹はコロナ禍における自粛生活が続く中、歌舞伎座ギャラリーで好評を博していた「歌舞伎夜話(かぶきやわ)」のステイホーム特別版として、オンライン配信による「“家”話(やわ)」企画を昨年5月より開催し、「歌舞伎家話」や「紀尾井町家話」といった人気企画を生み出してきた。これまでにない顔合せによる貴重なトークに、舞台上では見られない俳優やスタッフの生の声、素顔が垣間見られる特別な空間、真剣に舞台に向き合う姿に熱い支持が集まり、多くの人に注目されている。そして新たな「家話」企画である「桜咲く夜~歌劇家話」は、“華やかなレビューの世界”を、豪華出演陣が存分に語らう一夜限りの特別配信企画。出演は、来年に創立100周年を迎えるOSK日本歌劇団のトップスター・桐生麻耶、日本舞踊尾上流四代家元にして、歌舞伎舞踊からジャンルを超えたコラボレーションなど幅広く活躍する尾上菊之丞。宝塚歌劇団出身で、独特の世界観と美意識で観る者を魅了する人気演出家・荻田浩一。これまで歩んできた道も異なる3人が一堂に会し繰り広げるトークは、歌劇の魅力から、女性が演じる男役の魅力やその楽しみ、日本舞踊家から見る歌劇の世界、レビュー制作の裏側など、ここでしか聞くことができない話題から、コロナ禍における舞台への想いなど、今だからこそ聞きたい想いや制作秘話が展開される予感だ。華麗なるレビューの世界を創り上げる3人による魅惑のトークに期待してほしい。また、コロナ禍での公演中止を経て一年越しの開幕となった「レビュー春のおどり」が、ついに東京・新橋演舞場(3月26日~28日)でファイナルを迎える。31日をもって特別専科へ移籍する「唯一無二の男役・桐生麻耶」のトップスターとしてのラストステージだ。なお、尾上は第1部『ツクヨミ~the moon~』構成・演出・振付を担当、荻田は第2部『Victoria!』作・演出を担当している。さらに、「桜咲く夜~歌劇家話」の配信に合わせ、尾上が演出を務めた2017年上演『桜鏡~夢幻義経譚~』(桐生麻耶出演)舞台映像配信も行う。「春のおどり」のオンライン配信は史上初。こちらも合わせてチェックしよう。●桐生麻耶菊之丞先生、荻田先生と改めて3人でお話しするという機会はあまりなかったので、今から楽しみです。お二人ともこちらが感動するくらいに真摯に舞台や人と向き合ってくださる。こうでなくてはなぁ……と思いました。普段は聞けない事を勇気を出して聞いてみようかなぁと思います。それも踏まえて演舞場でまた一味違う角度からステージをお楽しみいただけると嬉しいです! 楽しみにしていてくださいませませ!!【配信概要】「桜咲く夜~歌劇家話」配信日時:3月13日(土) 19:00開始(70分程度を予定)出演:桐生麻耶、尾上菊之丞、荻田浩一司会:戸部和久(「レビュー 春のおどり」第一部『ツクヨミ~the moon~』脚本)配信場所:イープラス「Streaming⁺」チケット:2,000円(税込) / 3月6日(土) 10:00発売開始※有料配信チケットは、3月20日(金) 20:00 まで発売。※配信開始後、配信終了後に購入の方も3月20日(金) 23:59 までアーカイブ視聴できます 。購入方法:「イープラス 歌劇家話」で検索<視聴価格(税込)>1.トークライブ「桜咲く夜~歌劇家話」: 2,000円2.舞台映像配信『桜鏡~夢幻義経譚~』:1,000円3.トークライブ+舞台映像 セット券:2,700円販売期間:3月6日(土) 10:00発売開始~3月20日(金) 20:00まで発売視聴期間:3月13日(土) 19:00~3月20日(金) 23:59 までアーカイブ視聴可能配信場所:イープラス「Streaming⁺」
2021年03月06日ミュージカル『僕とナターシャと白いロバ』が2/3(水)に浅草九劇にて開幕した。「やあ、君、今帰ったよ」──愛する人との別れから50年、年老いた女性ジャヤの目の前に現れたひとりの男性。彼は若きに深く愛した詩人ペクソク、その人だった。そこから始まる恋人たちの記憶を巡る旅をペクソクの詩を交えた美しい台詞と音楽で綴る韓国国内で高い評価を得た韓国創作ミュージカルの日本版初演となる。オフホワイトの三つ揃えに身を包み、知性と洗練された香りが漂うペクソクにはHoney L Daysでボーカルを務め、本作がミュージカル初主演となる東山光明。“貧しき詩人”は、東山のもつチャーミングな魅力で素朴な愛おしさを放つ。柔らかなナンバーコミカルなナンバー、さらにおしゃれなショーナンバーまで、確かな実力で大役を務め上げる。50年の時を隔てた、若き日と現代のジャヤを行き来するという難役を演じるのは、宝塚歌劇団出身のAKANE LIVと月影瞳(Wキャスト)。AKANE LIVの丸みを帯びたあたたかな声質は包容力を、月影の儚げな佇まいは内に秘めた強さを感じさせる。タイプの異なる二人のジャヤが放つ愛を受け、ペクソクがどう変化するかも楽しみのひとつだ。二人の恋物語に登場する数多のキャラクターを演じるマルチマンにはミュージカル初挑戦の伊藤裕一。ペクソクの親友で恋のキューピットとなる男、二人の交際を反対する父親、冷酷な借金取り、そしてペクソクの詩の朗読も担う。トリッキーな存在に終始しがちなポジションだが、物語との距離感の取り方を絶妙に変化させることで見事に成立させている。日本版初演の脚本・演出を手掛けるのは、繊細で美しい世界を立ち上げる名手・荻田浩一。また、作品の色を担う音楽、振付には福井小百合、港ゆりかという荻田作品ではおなじみのクリエイターが並ぶ。感染防止対策として客席間はパーテーションが施され距離が保たれた状態。また、舞台と客席の間にはビニールシートが配され、観客はビニールシート越しに舞台を見ることになるのだが、まるで夢と現の境界線のように新たなる効果を生み出している点に唸った。光のマジックでふとした瞬間にクリアな視界となり、登場人物が目の前に現れるような驚きも。本作タイトルは、ジャヤへの溢れんばかりの愛が込められたペクソクの代表的な詩だ。「しんしんと降る雪の情景」が美しく描写されている、この一編の詩の世界が眼前に現れるようなラストシーンは秀逸。彼女が「共に生きた」ペクソクと彼の詩の物語が美しく儚く描かれるミュージカル『僕とナターシャと白いロバ』は東京・浅草九劇にて2/28(日)まで上演中。
2021年02月04日OSK日本歌劇団を率いるトップスター桐生麻耶が1月に大阪松竹座で「レビュー 春のおどり」に主演する。当初の予定より9か月遅れでの上演を前に会見が行われた。冒頭で桐生は「またチャンスが巡ってくるとは思わなかった。与えて頂いた機会に全身全霊で向き合い初日を迎えたい」と挨拶した。OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」チケット情報今回のレビューは和洋の2部構成。第1部『ツクヨミ ~the moon~』は尾上流四代目家元、尾上菊之丞の構成・演出・振付。月をテーマに日本の飛鳥、戦国、江戸の3つの時代でドラマを綴る。それぞれの時代で美しき悪役の蘇我入鹿、人気戦国武将の伊達政宗、決闘に挑む武士の堀部安兵衛の3役を演じ分ける桐生は「入鹿の宿命を背負う悲しみ、OSKらしい賑やかな総踊りで魅せる正宗の楽しさ、人のために動ける安兵衛の義理人情、この3つの思いを届けたい」と語る。第2部は宝塚歌劇団出身の荻田浩一作・演出による勝利の女神ヴィクトリアを題材にしたレビュー『Victoria!』。カジノでの決闘や初のボリウッド風群舞など見どころは多いが、桐生の一押しは96期の初舞台生も参加するラインダンス。「何度見ても飽きない素敵な振付です。できれば(自分も)出たいほど!」。自身はラインダンスの導入部分で踊る「応援団のような振付が一番楽しい」と笑顔。フィナーレ前には男役に囲まれながら手ごわい楽曲の歌唱に挑戦することも明かした。いわく「コミカルからシリアスまで盛りだくさんに詰め込まれたレビュー・ショー」に期待が高まる。コロナ禍で舞台に立てない日々が続き、エンタテインメントの存在意義を自問する中、ひとつの答えにたどり着いた。「大げさかもしれませんが、人間が幸せであるためには自分らしくなれるモノやこと、場所が必要だなと。自分を信じて待っていてくださる方がいる限りは存在し続けていいとポジティブに思えました」。あり余る時間を得て、いつも以上に楽譜を深く読み込むなど収穫もあった。「やはり『春のおどり』は年に一度しかできない貴重な公演なので、OSKを選んでよかったと思ってもらえるような舞台にしたいなと思います」。公演は1月28日(木)から31日(日)まで大阪松竹座にて上演。チケットは、大阪松竹座公式サイトにて発売中。取材・文:石橋法子
2021年01月18日今春に上演の中止を余儀なくされていた、ミュージカル『EDGES -エッジズ-』日本初演が12月3日(木)~6日(日)にチームBLUE、12月7日(月)から10日(木)にチームREDと、クリエイティブスタッフ&出演者を2チームに分け、新国立劇場 中劇場にて上演される。本作は、日本でも大変な注目を集めて高い評価を得た、映画『ラ・ラ・ランド』の作詞、『グレイテスト・ショーマン』の楽曲を手がけた作詞・作曲デュオ、パセックポールこと、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが学生時代に生み出したデビュー作。出演者は4人のみで、1つのテーマのもとに1曲1話完結の楽曲をオムニバス形式で綴る「ソングサイクル」という新しい形のミュージカルだ。本来は今年4月から7月にかけての上演を予定していたが、コロナ禍で中止となっていた当公演。この半年間は感染症対策はもとより、公演の実現に向けての最善策を模索してきたという。よりディスタンスの取りやすい広い劇場空間で、出来うる限りの対策をとりながら、客席を約半分に減らして、この度上演に至った。またクリエイティブスタッフ・出演者を2チームに分けた形での連続上演となる。物語に登場するのは、日々を精一杯生きながらもふとした瞬間に、抱えた胸のモヤモヤに懊悩する若者たち。「自分は誰?何になりたい?」「これは愛だと思うからあなたも私を愛して欲しい」などの感情の爆発、周囲の期待からの逃避、人間関係の軋轢。大人になるってどういうこと…?愛、責任、アイデンティティ、人生の意味を正直に問うミュージカルとなっている。若者も、かつての若者も、きっとどこかに共感し、時にさらけ出される感情にニヤニヤし、切なくも美しいメロディに酔いしれる。きらきらしく瑞々しい作品に期待したい。出演者のコメントは以下の通り。<チームBLUE>太田基裕:コロナの影響で中止になってしまった演目が、こんなにも早く上演出来るとは思いませんでした。まだまだ予断を許さないですが、こういった状況の中でもお客様に楽しんでいただけるモノを、寄り添えるモノを少しでも表現出来ればいいなと思っています。劇場でお待ちしています。矢田悠祐:再度上演決定となり、とても嬉しいです。同じ作詞作曲家コンビで、以前自分が出演したミュージカル『DOGFIGHT』や、ブロードウェイで拝見した『Dear Evan Hansen』はどれも楽曲が素晴らしかったので、今回の『EDGES』も、とても素敵な楽曲との出会いとなることを期待しています。皆さんも是非劇場で共に楽しみましょう。増田有華:舞台もなかなか思うように出来ない中、こうした機会を頂けたことを嬉しく思います。共演者の皆さまとも初めましてなのでとっても楽しみです!いまからどんな楽曲に出会えるのか、ドキドキ!ワクワク!しています。見に来てくださる皆さまに少しでも明日を生きる活力をお届けできたらと思っております。是非、楽しみにしていてください!!菜々香:この作品に出演できる事が決まり、とても嬉しいです!作詞作曲家のお二人の名作『ラ・ラ・ランド』も『グレイテスト・ショーマン』も大好きなので、EDGESの楽曲が楽しみでワクワクしています。今年はコロナの影響で久しぶりのミュージカルなので、この機会をいただけた事、歌える事に喜びで溢れています!音楽だけで繰り広げられていくストーリーという事で、曲ごとの登場人物のキャラクターにも注目です。お客様に感動をお届けできるように、キャストの皆様と全身全霊でお届けします!<チームRED>林翔太:今回、中止になっていたEDGESが再度公演できることになり本当に嬉しいです!前回、稽古が進んでいた中で中止が決定した時はとにかく悔しくて残念でした。いつか必ず上演したいと思い、中止になってからもEDGESの曲を聴き口ずさんだりしていました。それがこんなに早く再び上演が決まり、話を聞いた時からすごく楽しみで仕方ありません。2020年の色々な気持ちを全て出し切り、観ていただいている皆さんに何かを伝えられたらと思います!藤岡正明:新型コロナウイルスの影響で世界中が甚大な被害に見舞われている今、EDGESという新たな作品と出会えること、ひとりの表現者としてその舞台に立てること、そして何よりも、この作品をお客様に見ていただけることに心から感謝しております!これはもうひたすら一生懸命に、がむしゃらに作品と、そしてキャストスタッフと向き合いながら、お客様に喜んでいただける作品づくりに取り組んでいきます!!!実咲凜音:『EDGES -エッジズ-』に再び挑める事、とても嬉しく思います!今まで当たり前だったことがそうでなくなった今、舞台に立てること…改めて感謝の気持ちで一杯です。それと同時に、観に来て下さった皆様に少しでも楽しんで頂き、心の栄養となるような時間になればなと思っています!生のエンターテイメントを肌で感じることこそ、自分にとっていかに活力になっていたのかという事を私自身も感じました。歌のエネルギーが皆様に届きますように。梅田彩佳:このお話を最初頂いた時、なんて楽しそうな企画、そしてなんて素敵な曲!絶対出たい!と思いました。そんな中コロナで世界全体が大変になり、EDGESも中止になってしまいました。舞台に立てない事もとても凹みましたが、この作品に出たかった想いが強かった分、EDGES歌いたかったな、やりたかったな、、、そう思いました。今回改めて上演が決定になって、本当に嬉しく思います。出来なかった想いも胸に全力で頑張ります。よろしくお願いします!【公演概要】シーエイティプロデュースミュージカル『EDGES -エッジズ-』チームBLUE:12月3日(木)~6日(日)演出:元吉庸泰音楽監督:園田涼出演:太田基裕矢田悠祐増田有華菜々香チームRED:12月7日(月)~10日(木)演出:荻田浩一音楽監督:奥村健介出演:林翔太藤岡正明実咲凜音梅田彩佳作:Benj Pasek & Justin Paul会場:新国立劇場 中劇場公式HP: 公式Twitter @edges_JP
2020年10月23日ダニエル・キイスの同名小説を原作にしたミュージカル『アルジャーノンに花束を』が10月15日(木)から、東京都中央区の博品館劇場で開幕した。32歳になっても幼児並みの知能しかないパン屋の店員チャーリィ・ゴードン(矢田悠祐)。「賢くなりたい」と願う彼は、アリス・キニアン先生(水夏希)と出会う。そして、ストラウス博士(戸井勝海)、ニーマー教授(大山真志)らの研究チームの目に留まり、人為的に知能を誘発する手術を受けることに。術後、訓練を受けながら、劇的に知的水準が上昇するチャーリィ。周囲と軋轢が生まれたり、新しい感情が芽生えたりするなかで、自分の中にいる「本物の」チャーリィの存在に気がついて……。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子本作は、2006年に初演。まだ宝塚歌劇団に在籍中だった荻田浩一が脚本・作詞・演出、斉藤恒芳が音楽を担当し、浦井健治がチャーリィ役を演じた。その後、14年、17年と再演され、今回は4回目の上演となる。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子17年の上演に引き続き、チャーリィ役を演じる矢田悠祐。初日前の公開舞台稽古では、ひたすらに純粋無垢な姿から、自身の過去や感情に葛藤する姿まで、チャーリィの人生をまさに体当たりに表現した。矢田は「このような状況の中、初日を迎えることが出来まして、ひとまず安心しております。公演日程はかなりハードですが、毎公演この作品で何か一つでも感じていただければと、チャーリィとしての人生を毎回歩んでいます。万全の対策でお待ちしておりますので、是非劇場までお越しください」とコメントしている。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子同じく17年から続投しているアリス役の水夏希は、確かな歌唱力で存在感を放ちながら、チャーリィへの複雑な感情を丁寧に演じていた。水は「アルジャーノンに花束を。いよいよ開幕しました。初演の博品館劇場に戻ってまいりました! やる度にチャーリィの魅力に虜になり、チャーリィの生きる様が胸に刺さります。美しい音楽と、沢山のメッセージが込められた台詞の一言一言に揺さぶられる2時間半。存分に浸っていただきたいと思います」と話している。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子/p>ミュージカル『アルジャーノンに花束を』原作:ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」(ハヤカワ文庫)脚本・作詞・演出:荻田浩一音楽:斉藤恒芳11月1日(日)まで、東京・博品館劇場にて取材・文:五月女菜穂
2020年10月16日シェイクスピア四大悲劇のひとつとして圧倒的な知名度を誇り、日本でもさまざまな演出で毎年のように上演されている『ハムレット』。本日11月8日に東京・博品館劇場で開幕するのは、独自の美学で個性的な舞台を創出し続ける宝塚歌劇団出身の演出家、荻田浩一が脚本・演出を手がけるミュージカルバージョンだ。『ハムレット』のモデルとなった北欧伝説「アムレート」のイメージを盛り込み、また原作では登場シーンの少ない隣国ノルウェーの王子フォーティンブラスの存在を強調したストーリーになるという。タイトルロールのデンマーク王子に挑むのは、荻田とはミュージカル『アルジャーノンに花束を』でもタッグを組んだ矢田悠祐。今年だけでも岡田将生、松井珠理奈、菊池風磨らが演じてきたこの世界一有名な主人公を、その歌唱力とみずみずしい感性でどう造形するかに注目が集まる。ハムレットに想いを寄せながら悲しい結末を迎えるオフィーリア役は、荻田の前作『イヴ・サンローラン』での好演が記憶に新しい皆本麻帆。ハムレットの母ガートルードと伯父クローディアス/先王ハムレットの亡霊(2役)にはそれぞれ、ベテランの彩輝なおと舘形比呂一が扮するほか、総勢10名のキャストがさまざまな役を演じ分ける。荻田らしい、イマジネーション豊かなミュージカル『ハムレット』になりそうだ。11月18日(月)まで。文:町田麻子
2019年11月08日荻田浩一が脚本・演出を手掛け、水夏希が主演する『カリソメノカタビラ~奇説デオン・ド・ボーモン~』が9月12日、東京・浅草九劇で開幕する。実在したスパイ、シュヴァリエ・デオンを主人公に、虚実織り交ぜ作り上げるミュージカル。11日、初日に先駆け行われた最終舞台稽古を取材した。チケット情報はこちらデオン・ド・ボーモン(シュヴァリエ・デオン)は、18世紀フランスに生きた実在の人物。フランス国王ルイ15世の私的スパイ機関で働き、マリー・アントワネットとも交流があったこの人物は、生涯の前半を男性として、後半を女性として生きたと言われている。女装してロシアへわたり女帝エリザベータの女官として働いたと思えば、今度は男性としてロンドン特命全権大使の任務に就く……史実自体がドラマチックだが、荻田浩一はここにさらにひとひねり加え、デオンを“女性の肉体をもって生まれた男性”として創作。豪華な歴史絵巻の中、“自分とは”という現代的テーマが貫く作品になった。出演者は5人のみ。デオンを演じる水は、元宝塚歌劇団トップスターならではの男装の凛々しさ、マントさばきや剣さばきの美しさでこの宮廷絵巻の豪華な世界を作り上げると同時に、デオンの持つ複雑な内面をぶれることなく丁寧に演じている。このミュージカル、あらすじから想像する以上にコミカルなシーンも多いのだが、水のデオンがぶれることなく存在することで、物語に一本の芯が通った。また、共演の4名は実力派揃い。ボーマルシェ役の坂元健児はストーリーテラーとして物語を支えるとともに、軽妙な存在感で作品にシニカルな味を加える。ロシア女帝エリザベータからルイ15世・16世など様々な役に扮する植本純米の怪演は圧倒的だし、植本とともに八面六臂の活躍をしつつ、デオンとは別の角度から女性の自立というテーマにもスポットをあてる笠松はるの柔軟さも見事。ジュゼッペ役の溝口琢矢は爽やかな風を吹かせながらも、ベテラン勢と対等にわたりあい頼もしい。何よりもこのキャストを、浅草九劇という客席100人超の緊密なスペースで観る贅沢さ。特に坂元、笠松らミュージカル界でも屈指の歌唱力を持つキャストの歌声がこの空間に響きわたる興奮は、なかなかほかでは味わえないだろう。ミュージカルの世界では様々な物語が生まれているフランス革命期だが、作演出の荻田が新たな主人公に光を当て、スリリングなミュージカルが誕生した。ゴージャスな世界観を持つ作品ではあるが、どこか浅草らしい雑多さもある。笑いながらも考えさせられ、知的好奇心もくすぐられるミュージカルだ。この不思議な感覚、ぜひ劇場で味わってほしい。公演は9月23日(月・祝)まで、同劇場にて。
2019年09月12日神秘の聖剣エクスガリバー、これを引き抜いた者は王となるだろう――。神話時代のヨーロッパで生まれた有名なアーサー王伝説を元に紡ぎだす、新たな英雄譚。OSK日本歌劇団の最新作「円卓の騎士」が12月21日、大阪・近鉄アート館で開幕した。OSK日本歌劇団チケット情報王の息子として生まれながらも魔法使いマーリンに育てられた青年アーサーが、様々な試練を糧に真の王として覚醒していく様は、明快にして痛快。裏切りや隠された真実といったドラマや、聖剣を手にしたものが実力に関係なく最強になるという構図もゲーム的で面白い。ともすれば子供向けのおとぎ話に終始しそうな題材だが、そこはファンタジーの旗手、作・演出の荻田浩一。子供には痛快なヒーロー物語として、大人には示唆に富んだ奥深い作品として楽しめるよう手腕を発揮する。登場人物が出揃う1幕はテンポよく要点をまとめつつ、台詞では語りきれない役の心情やムードを歌やダンスが補い効果的。2幕では各キャラクターが真価を発揮する見せ場もあり、小気味良いエンターテイメントに仕上がっている。「僕はダメなんだ…」と両親の愛を知らず、どこか魔法使いマーリンに言われるがまま盲目的に人生を送る青年アーサー。王の証である聖剣エクスガリバーを手にした後も不安げな表情をのぞかせる。そんな揺れる主人公の心情を、主演の楊琳は澄んだ瞳で繊細かつ雄弁に物語る。なかでも、愛を知り加速度的に感情を解き放っていく2幕での変化は人が変わったよう。抜群の集中力で感情の振れ幅を表現している。ヒロインの王妃グウィネヴィアには舞美りら。アーサーの目を開かせる重要な役どころだ。舞美は登場から光を得たような存在感で場の空気を変えていく。愛嬌たっぷりのヒロインがアーサーと終盤、どんな愛の旅路を辿るのかも見所のひとつ。また、愛ゆえに混乱を招く好敵手ランスロットには翼和希。陽気で逞しい剣士ぶりが甘いマスクによくハマる。そして、アーサーの人生を左右するキーマンとして、魔法使いマーリンと湖の乙女の存在も外せない。マーリン役の愛瀬光は抑えた演技にも威厳を漂わせ、黒幕的キャラクターを造形。湖の乙女は作品の良心的ポジション。演じる朝香櫻子は、確かな表現力で観る者をファンタジックな劇世界へと誘う。人ならざるものの佇まいと幻想的な歌声はさすがのひとことだ。例えば、他国から異なる価値観を持ち込むヒロインや、魔術で生み出された騎士モードレッドには、移民問題や共生が進むAIの存在など、極めて今日的なテーマを深読みすることができる。と同時に「愛とは」「生きるとは」といった普遍的なテーマも届けられ、語り継がれる名作の所以を思わずにはいられない。とりわけ、アーサー王最後の台詞に託された、タイトルにも通じるメッセージは、あまりの純粋さに心洗われる思いだ。本編後にはプチショーも付いてお得感満載。家族での観劇にもぴったりの作品といえそうだ。公演は、12月27日(木)まで大阪・近鉄アート館にて、2019年1月24日(木)から27日(金)まで東京・博品館劇場にて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2018年12月25日木曜日連載、アート・ブックショップ「NADiff(ナディッフ)」各店による今読むべき1冊。今週は、田幡浩一の展覧会「マルメロと表裏」(2017年12月2日~2018年1月27日)に合わせ刊行されたアートブック『one way or another』。NADiffの書籍バイヤーによるご紹介です。■『one way or another』田幡浩一本書は、六本木のギャラリー、Yutaka Kikutake Galleryで開催された田幡浩一の展覧会「マルメロと表裏」(2017年12月2日~2018年1月27日)に合わせ刊行されたアートブック。田幡浩一はこれまで油彩とドローイングによる新たな試みとして「one way or another」シリーズを展開してきた。植物やフルーツ、ティーカップやケーキなどのどこにでもあるような静物画を分割することにより、単純な視覚的「ズレ」を平面に表すことにより、2次元と3次元を行き来させる。内側に織り込まれたページをめくる運動のなかで、分割された絵画の間をアニメーションが浮かびあがり、時間感覚を刺激し、目に見えるもののイメージと認識を脅すことで失読症的な感覚に襲われ、絵画とは何かを問いかける。本書は田幡浩一のこれまで絵画、アニメーションを立体的、本質的に捉える制作スタイルと地続きにあり、独特な空気感を帯びたアートブックだ。ページをめくって何も感じないか、何かを感じるかは常に委ねられている。【書籍情報】『one way or another』著者:田幡浩一出版社:Yutaka Kikutake Gallery刊テキスト執筆:兼平彦太郎、中尾拓哉ソフトカバー/56ページ/12作品掲載言語:日本語発売日:2017年12月1日価格:3,000円(限定300部)
2018年02月01日少女漫画界屈指の大ヒット作『王家の紋章』が現在ミュージカルとなって上演されている。昨夏の初演の好評を経て早くもこの春には再演。5月7日に幕を閉じた東京公演に続き、今週末には大阪公演が開幕する。主人公であるエジプト王メンフィスを演じる浦井健治、ヒロイン・キャロルを演じる新妻聖子に、役作りのこだわりから再演版のみどころまで、話を訊いた。チケット情報はこちら現代アメリカから不思議な力で古代エジプトへタイムスリップしてしまったキャロルと、古代エジプトの若き王・メンフィスの愛を軸に、国同士の争いや陰謀といったドラマを描いていく壮大な物語。ふたりはともに「王族」(原作漫画ファン)を公言しているが、再演にあたっては「稽古場で“メンフィスとキャロルはこうだ!”というものを、どんどん提示していきました」と浦井。具体的な例を新妻に聞くと「初演はメンフィスとキャロルが恋に落ちる展開がわりとスピーディでした。その“一体、いつ好きになったのよ”という感じも王族としてはたまらなかったのですが(笑)、今回はふたりが惹かれあう過程をもっと丁寧に描こうと試行錯誤しました。それによって、原作を知らない方でもスムーズに観ていただけるようになったと思います」。彼らをはじめカンパニーの努力が実を結び、再演は物語としてのまとまりがより増し、ミュージカルとしての完成度も高まった。役作りについても、「今回僕が意識しているのは、メンフィスは“王子”ではなく“王”だということ。初演では原作に忠実に、綺麗に立ち上げようとしたのですが、ちょっと“王子様感”が強かったと思うんです。今回は“王”である説得力を増すために、キーを低めにしたりしています。また宿命のライバル・ヒッタイトのイズミル王子(宮野真守、平方元基のWキャスト)との関係性を深めたくて、どうしてもイズミルと直接剣を交えたいとお願いしたら、演出の荻田浩一さんが採用してくださった。激しい殺陣がつきましたが、そのシーンはとても血がたぎります」と再演版・メンフィスのポイントを浦井が熱く語る。ちなみに新妻は原作愛が深すぎて「いたるところで誰も気付かないような仕掛けをしている」そうで、浦井が「先日、舞台上でキャロルを抱きしめたら、身長差があるので聖ちゃん(新妻)が浮いちゃった!でもそのサイズ感もたまらなく可愛いよね」と話したところ「計算、計算! 自ら浮きにいったの(笑)」。そんなユニークなやり取りの中には、作品愛とともに、ふたりの信頼関係も垣間見れる。「再演で、ミュージカル『王家の紋章』が、初演から目指していたひとつの完成形に到達したと思います。その状態のものを大阪に持っていけるのは光栄です」(浦井)、「大阪で有終の美を飾れるよう、日々進化して、大阪公演はお祭り状態になればいいですね」(新妻)。なお、キャロル役は宮澤佐江とWキャスト。大阪公演は5月13日(土)から31日(水)にかけて、梅田芸術劇場メインホールで上演される。
2017年05月12日ダニエル・キイスの同名小説が原作のミュージカル『アルジャーノンに花束を』が3月2日に開幕。それに先がけ公開ゲネプロと囲み取材が行われ、主演の矢田悠祐、水夏希が登壇した。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』チケット情報原作は1959年に発表された名作小説。世界3か国で映画化され、日本でも2度テレビドラマ化されている。ミュージカル版は、2006年に浦井健治主演で日本初演され、2014年にも同じく浦井主演で再演。今作でキャストが一新され、矢田が自身初となる主演に抜擢された。脚本・作詞・演出は、矢田が出演したミュージカル『王家の紋章』(2016年)の荻田浩一が初演から手掛けている。物語は、32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリィ・ゴードン(矢田)に、ある話が舞い込むことから始まる。それは、大学の先生が「頭を良くしてくれる」というものだった。この申し出に飛びついた彼は、白ネズミのアルジャーノン(長澤風海)を競争相手に連日検査を受ける事に。やがて手術によりチャーリィは天才に変貌したが――。ゲネプロ前に行われた囲み取材で、初主演の心境を聞かれた矢田は「正直どうなるかわからなくて。終わったときにどういう気持ちになるんだろうなっていうのが今の心境です」と緊張の滲む発言。本作の魅力について「SFなんですけどリアリティがあって、どの瞬間もどの関係も誰もが体験したことがあるようなエピソードが詰まっています。身につまされたり、嬉しかったり、悲しかったり、励まされたり…その瞬間瞬間が一人ひとりのお客さまの心を揺さぶる」と水。自身の役柄について矢田は「シーンによって全然違う人になった気分。すごいスピードでどんどん階段を上っていくので、その成長の段階や心の動きに自分が追いつかないときがあって。そこに食らいついていくのが今も大変です」。前作との違いを問われ「演じる人間が違うし、荻田さんは演じる人の個性に合わせて演出をしてくださるので、自然と違う形になってるかなと思います」(矢田)と話した。幕が開き、幼児並みの知能のチャーリィとして登場した矢田は、ピュアな魅力を纏い美しい歌声で物語の世界に誘い込む。全てひらがなで話していたような言葉は、知能が高まるにつれ少しずつ漢字が混じって聞こえ、あっという間に容易に理解できない言葉になる。しかし、言葉の成長スピードに追い付けない情緒面の成長。そんな特殊な状況にあるチャーリィの戸惑いや苦しさを、矢田の芝居と歌が一つひとつ真っ直ぐに届けた。アルジャーノンが踊る美しい世界に登場人物の生々しい感情が浮かび上がる本作は、3月12日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、3月16日(木)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。取材・文:中川實穗
2017年03月07日2016年8月に東京でのみ上演されチケットは即日完売に沸いた世界初演ミュージカル『王家の紋章』が、熱烈なアンコールに応え早くも再演が決定した。再演では初の大阪公演が実現する。原作は「月刊プリンセス」(秋田書店)にて1976年から現在まで連載を続け、累計発行部数4000万部を誇る同名の歴史大作少女漫画。古代エジプトを舞台にタイムスリップした現代アメリカ人少女キャロルと時の少年王メンフィス、そして恋敵のイズミルを軸とした愛とロマンの物語だ。音楽は『エリザベート』『モーツァルト!』などを手掛ける巨匠シルヴェスター・リーヴァイ、演出は荻田浩一。浦井健治ら華やかなキャストが再び集結する。「王家の紋章」チケット情報初演に引き続き、宮澤佐江とダブルキャストでヒロインのキャロルを演じるのが、新妻聖子。「冗談半分で役作り30年と言ってるんです」と笑う根っからの原作マニアだ。ほぼすべての台詞を反芻できるほど原作を読み込み、15歳で旅したエジプトでは「メンフィスいないかな?」とピラミッド内に足を踏み入れた経験もある。嬉しさと興奮で「ニヤニヤが止まらなかった」という初演を振り返り、改めて再演への思いを語った。「生粋の“王族(原作ファンの通称)”として、神聖な部分へ足を踏み入れる恐ろしさもありました。でも他の方が演じている姿を、ただ指をくわえて観ているだけというのは悔しいだろうな」とオファーを快諾。初演では完全に役が憑依し、共演者もキャラクターとして認識していた。そのため、「打ち上げの席で浦井さんに話しかけられた時は、愕然としました。(笑)今までメンフィスだったのに!?『私のメンフィスを返して!』って(笑)」。そこまで熱狂させる作品の魅力とは?「やはりエジプトという土地や遺跡が持つパワーとロマン、神秘さがすごいので。それが物語のスケール感をアップさせ、飽きさせない。40年間ファンを引き付けて離さない理由だと思います」各キャラクターも感情豊かで、キャロルは華奢な金髪碧眼の美少女なのに、ヒーローのような勇敢さもあるという。「それでいて、腕を捕まれたら簡単に連れ去られてしまうあの感じ。とにかくモテるしリード家の令嬢としての気品もあり、ヒロインとしての魅力が全部詰まったようなキャラクターです」。浦井が演じたメンフィスは「見目麗しく、荒々しさの中にも優しさが」あり、色気がポイントというイズミルは「ダブルキャストの宮野真守さん、平方元基さんがともに絵に描いたような長身のイケメンで、女性客をキュンキュンさせるというお仕事を存分になさったと思います」。再演ではさらに各自が精度を上げる。「前回は世界中の“王族”の方に東京まで足をお運びいただいたんですけど、今回近畿地方の王族の方には、もう少し近い距離で観ていただけるのかなと非常に嬉しいですね。お祭りは続いているんだぞ!というテンションのまま、第二章に突入したいなと思います」公演は、2017年4月8日(土)から5月7日(日)まで東京・帝国劇場、5月13日(土)から31日(水)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。取材・文:石橋法子
2017年01月26日ドラマ『牙狼』で脚光を浴び、現在CX系ドラマ『お義父さんと呼ばせて』にレギュラー出演するなど、注目の若手俳優・栗山航の初主演舞台『リビング』が3月2日、東京・赤坂RED/THEATERで開幕した。舞台『リビング』チケット情報主人公の青年・マタロウは自宅のリビングで生活する、いわゆるひきこもり。ただし、周囲はおとなしく彼をひきこもらせてはくれない。父親に愛想をつかして家出していた母が突然帰宅し、なぜか同居している母親の愛人は何かとマタロウの面倒を見、幼馴染以上・恋人未満の彼女も入りびたり、そしてアル中の父親はマタロウ同様に2階でひきこもっている。さらに、マタロウの元上司がクレーマーだった客を連れやってきて……。個性的すぎるキャラクターが好き勝手に感情を爆発させ、リビングは大混乱。ドタバタコメディの様相を呈す物語に、客席からは絶え間なく笑いが起こるも、結末は意外な方向へ……。作・演出は、宝塚歌劇団出身で、大作ミュージカルも数多く手がける荻田浩一。耽美的な作風で知られる荻田が、そのパブリックイメージを覆す、アットホームでハートウォームな愛らしい舞台を作り上げた。さらに、7名という少数精鋭の出演者も芸達者揃い。舞台初主演の栗山は、ひきこもり青年という難しい役どころを、どこかしら母性本能をくすぐる可愛さと素直さで好演。その彼女役の舞羽美海は、オタクな少女を思い切りのよい演技で楽しげに演じていたのが印象的だ。初日開幕前には、栗山と舞羽の会見も行われた。初座長となる栗山は「不安と楽しみが半々。客席が近く、お客さまがどんな表情をしているのかが、たぶん全部わかってしまう。皆さんが笑顔であることを祈ります。ほかの6人の共演者が大先輩ばかりなので、僕が引っ張っていこうなどとは思わず、学ぶところは学んでいきたい」と謙虚に意気込みを。その後は、劇中キュートなコスプレ姿を披露する舞羽が「台本を見てびっくりしました。セーラー服を着るのも初めて」と話したところ、栗山から「どのコスプレがお気に入りですか?」と質問が飛び、舞羽が「私は意外と戦隊モノのコスプレが好きなんですが、初めて衣裳を着た時に、栗山さんが私を見て笑ったんです、ひどい!」と苦言を呈すなど、劇中同様の息のあったやりとりで記者たちを笑わせていた。公演は3月7日(月)まで同所にて。チケットは発売中。
2016年03月03日3月に東京・赤坂RED/THEATERにて上演される、荻田浩一演出・脚本によるO-Parts公演 コメディプレイ『リビング』の主演が発表された。主演を務めるのは、栗山航。2013年にテレビドラマ『牙狼〈GARO〉~闇を照らす者~』の主演・道外流牙役にて俳優デビューし、テレビドラマ『婚活刑事』(2015年)、映画『L・DK』(2014年)などに出演。現在放送中のテレビドラマ『お義父さんと呼ばせて』に水嶋拓也役として出演中だが、舞台は『BIOHAZARD THE STAGE』(2015年)に続き、今作が2作目となり、舞台初主演を務める。舞台『リビング』チケット情報本作は、家庭のダイニングルームを舞台にしたドタバタのワンシチュエーションコメディ。栗山が演じるのは、仕事中に客のクレームに耐えきれず逃亡し、家に引き籠る主人公・マタロウ。しかし、その家でも無職で呑んだくれの父親や長年付き合っていた恋人、出て行った母とその愛人などに振り回されるという役どころだ。コメディ作品には初挑戦となる栗山は「僕はコメディが好きなんですよ。なのでコメディと聞いて嬉しくてワクワクしています。荻田さんならではの間の取り方などを一つひとつ自分に染み込ませていきたいなって思いますね」と期待を膨らませる。テレビや映画など映像の世界でも活躍している栗山だが、舞台の魅力をチーム感だと語る。「時間をかけてみんなで詰めていく作業が楽しいです。チームプレイが好きなんですよ。カンパニーみんなでコミュニケーションをとりながら、ここの芝居がこうだからこっちでこうしたい、とかそういう話し合いができるのはいいなって思いますね」荻田は『牙狼―』を見て、栗山を主役に抜擢したという。「うれしい限りです。ただ、『牙狼―』のイメージを持った方はみんな『全然違うね』って言います。全然クールじゃないんですよ(笑)」その端正な容姿から男前の役が多い栗山だが、今回演じるマタロウは“ささくれて荒れ放題”という今までにない役柄。「マタロウは演じていて気持ちいいだろうなって思います。かっこつけてる人じゃないので。僕自身は穏やかなほうですし引きこもりでもないですが、(役を)作るっていう感覚はあまり好きじゃないので、自分の中にあるものを信じてやりたいですね」共演は元・宝塚歌劇団雪組トップ娘役の舞羽美海や元・劇団スタジオライフの三上俊、*pnish*の佐野大樹、俳優でダンサーの大野幸人などバラエティ豊か。このキャスト陣で描かれるコメディの世界は期待大だ。「コメディですけど、きっと深い作品になると思います。観てくれる方になにか残せる作品にしたいです」(栗山)O-Parts公演 コメディプレイ『リビング』は、3月2日(水)から7日(月)まで東京・赤坂RED/THEATERにて公演。なお、チケットぴあでは先行抽選「プレリザーブ」を2月1日(月)18:00より受付開始。一般発売は2月6日(土)より。取材・文中川實穗
2016年02月01日チャールズ・チャップリン晩年の傑作映画『ライムライト』が、世界で初めて舞台化される。往年の名喜劇役者・カルヴェロが若きバレリーナ・テリーと出会い、生きる意味や本物の愛を知ってゆく感動の物語。7月5日(日)の初日に向け稽古に励む、テリー役の元宝塚歌劇団宙組トップ娘役・野々すみ花に話を聞いた。音楽劇「ライムライト」チケット情報チャップリンの原作小説『フットライト』もベースに、日本チャップリン協会会長の大野裕之が上演台本を執筆。有名な名曲『エターナリー』などの他に、荻野清子の楽曲も盛り込み、新たなオリジナル音楽劇に仕上がっているという。「舞台の上では“音楽隊”が生演奏をする予定。演出家・荻田浩一先生の甘美で繊細な世界観が、作品ととてもマッチしているんですよ。映画の良さを感じながら、舞台ならではの立体的に迫ってくる感動を味わって頂けると思います」。「こんなに普遍的で美しい物語があるなんて!」と映画を観て驚いたという野々。チャップリンの哲学的な台詞にも勇気を与えてもらった。「好きな台詞は…たくさんありすぎて選べないです(笑)。英語と日本語で微妙にニュアンスが違うので、稽古場では大野さんや荻田先生、キャストのみんなでひとつの台詞について話し合ったりもします」。出演者は8人、少人数で丁寧にチャップリンの世界を紡いでゆく。そんな中でカルヴェロを演じる石丸幹二が、「大スターさんなのにどんどん愛くるしく、役とリンクして見えてきます」と微笑む。野々演じるテリーは失意の中、ガス自殺を図るが、偶然通りかかったカルヴェロに助けられる。彼もまた世間から忘れられた喜劇役者として苦しんでいた。「年の離れたふたりだけど、孤独な者同士が出会い共感し、勇気をもって人生の一歩を進めたことが“愛”という形につながったんだと思います。テリーは夢があるからこそ勢い余った行動もする、生命力ある女性として作っていきたいです。チャップリンの自伝に書かれている慈愛に満ちた母親にも通じるところがあります」。また映画でも印象的な音楽を使ったバレエシーンも大きな見せ場に。「かなり本格的に踊るんです。高いリフトのシーンも!トゥシューズを履いて踊るのは10年ぶりなのでとても不安です。この半年、時間の許す限りレッスンに通いました。バレエは大好きですが…新たな挑戦です」。宝塚時代から演技派として知られ、退団後は舞台はもちろんドラマや『世界ふしぎ発見!』(TBS)のミステリーハンターなど、幅広く活躍してきた。「いまだに日常でも役との切り替えができなくて、自分にあきれます(笑)。そんな中でミステリーハンターのお仕事は自らの言葉で表現するという新しい経験で、とても鍛えられました」。何でも柔軟に対応し、長く今の仕事を続けたいという野々が、伸び伸びと舞台の上でテリーを演じる日は近い。公演は7月5日(日)から15日(水)まで東京・シアタークリエ、7月18日(土)から20日(月・祝)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、その後、福岡、佐世保、鹿児島、名古屋、富山、長野でも上演。チケットは発売中。取材・文:小野寺亜紀
2015年07月03日世紀の喜劇王・チャップリンの晩年の傑作映画『ライムライト』が世界で初めて舞台化される。チャップリンが扮した老芸人カルヴェロを演じるのは石丸幹二。演出は宝塚歌劇団出身、繊細な中にもペーソスやアイロニーを描き出す独特な美的センスを持つ荻田浩一だ。6月中旬、この稽古場を取材した。チケット情報はこちら物語は、かつて大きな名声を得ていたものの、現在は落ちぶれ仕事もろくに来ない老芸人カルヴェロが、足が動かなくなったことを悲観し自殺を図った若きバレリーナ・テリーを助けたところから始まる。カルヴェロはテリーをふたたび舞台に立たせようと支え、テリーもまたカルヴェロに心を開いていくが…。ふたりの心の交流が、第一次世界大戦勃発前夜のロンドンの暗い世相や、舞台人が舞台へ賭ける思いとともに描かれていく。出演者は石丸と、テリーを演じる野々すみ花を含め、たった8人。しかし良知真次、吉野圭吾、植本潤、保坂知寿ら演技巧者ぞろいの精鋭が次々と多数の登場人物を演じていき、鮮やかに1910年代のロンドンの町が生まれていく。くるくると表情を変える彼らの姿は、紙芝居や人形劇が持つようなノスタルジックな効果をも生んでいるようで、面白い。また石丸は劇中劇のシーンでは、コミカルな芸で稽古場を沸かす。眼をギョロリと剥き、口も大きく開ける、戯画的な表情がいかにもで楽しい。チャップリンを彷彿とさせるような部分もありそうで、チャップリンファン、映画ファンも必見のシーンになりそうだ。一方で成功の裏の転落、というシビアさも描かれ、石丸の陽気な笑顔とシリアスな表情の落差にはっとさせられる。荻田の演出はことさら“チャップリン”から想起させられるイメージに寄せすぎず、物語の本質を追求し、新たな『ライムライト』の世界を一から構築しているようだ。そしてカルヴェロとテリーが心を通わせていく過程がとても良い。カルヴェロはテリーを助けたもののどう接していいのか戸惑い、テリーもまた素直に心を開かず、殻に閉じこもる。石丸カルヴェロの屈折、野々テリーの硬質さが、すんなりはいかない不器用な人間たちの姿をうまく描き出す。そんなふたりだからこそ、ちょっとした会話で見せる笑顔が光り、この後ふたりの関係がどうなっていくのか…という期待感を抱かせた。公演は7月5日(日)から15日(水)まで、東京・シアタークリエにて。その後大阪、福岡、長崎、鹿児島、愛知、富山、長野公演もあり。チケットは発売中。
2015年07月01日世界的ポップグループABBAが音楽を手がけ、『ライオンキング』などのティム・ライスが原案・作詞。1986年にロンドンで開幕して以来、世界中で上演されてきた伝説のミュージカル『CHESS THE MUSICAL』がついに日本初演される。ヒロインのフローレンスを演じる安蘭けいが作品の魅力と意気込みを語った。「CHESS THE MUSICAL」チケット情報『CHESS THE MUSICAL』は、その楽曲のすばらしさから、コンサートとしても世界で何度も上演されてきた作品だ。日本でも2012年にコンサート版を上演。リピーターが続出し、再演が熱望され、翌年にセカンドバージョンが開催された。その熱狂の渦の真ん中にいたのが、この人、安蘭けいである。「海外でもミュージカル版よりコンサート版の上演のほうが多いと聞いていたのですが、日本でもすごく好評をいただきました。楽曲は本当に魅力的で、すべてシングルカットしてもいいぐらい。しかも、人物の個性とかストーリーを見事に曲で表現しているんです」。だからこそ、ついに上演が決まったミュージカル版にも思いは募る。舞台となっているのは、1980年代、米ソ冷戦の時代。チェスの世界チャンピオンである米国のフレディ(中川晃教)のセコンドでありながら、対戦相手のソ連のアナトリー(石井一孝)と恋に落ちるヒロインを安蘭が演じ、国家の思惑と3人の人生が交錯しながら、緊迫の物語が展開していく。「当時の国際情勢など、一見難しい内容だと思われるかもしれないですが、そこは、演出の荻田浩一さんが日本人にもわかりやすく作ってくださるはずですし。時代に翻弄されて生きなければならないからこそのしなやかな強さが、フローレンスにはあると思うので、観てくださる方にも、何かエネルギーみたいなものをお届けできるのではないかと思っています」。フローレンスに扮する安蘭の心を揺さぶることになる石井一孝と中川晃教は、コンサート版でも共演したふたりだ。「かずさん(石井)と一緒に歌うときは、安心して合わせられるんですね。そしてアッキー(中川)は、一緒に歌っててワクワクしてくる。そんなおふたりの個性が、役にすごく合っているので。違う魅力を持つふたりに惹かれていくフローレンスも演じやすいと思います。音楽で悲しみとか喜びを表現できるのがミュージカルの素敵なところ。その魅力を存分に感じていただける作品になると思います」。音楽の力で描かれる人間ドラマ。その迫力に身を委ねたい。公演は9月27日(日)から10月12日(月・祝)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、10月19日(月)から10月25日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。6月27日(土)のチケット一般発売に先駆け、5月24日(日)11:00まで最速抽選「いち早プレリザーブ」受付中。5月23日(土)11:00からは先行抽選「プレリザーブ」の受付が開始。取材・文:大内弓子
2015年05月22日浦井健治が主演するミュージカル『ボンベイドリームス』が1月31日、東京国際フォーラム ホールCにて開幕した。インドのモーツァルトと称され『ムトゥ・踊るマハラジャ』『スラムドッグ$ミリオネア』などの音楽を手掛けたA.R.ラフマーンが作曲、ロンドンやブロードウェイでヒットを飛ばした作品の日本初演である。ミュージカル『ボンベイドリームス』チケット情報主人公アカーシュはボリウッドの映画スターを夢見るスラム育ちの青年。彼は幼なじみのスウィーティに連れていかれた美女コンテストがきっかけで、映画スターへの道を掴む。そこで映画監督志望の美女プリヤに恋に落ちるも、彼女には敏腕弁護士の婚約者がいた。その弁護士ヴィクラムは、アカーシュが生まれ育ったスラム街の再開発に関わっている。スラムを追い出されることになる住人たちだが、彼らにはなすすべもない。そんな中、スラム出身との噂が立ったアカーシュは自らその噂を否定する……。インド音楽特有のリフレインの多いメロディや独特の節回しなどは中毒性が高く、耳に残る名曲揃い。キラーチューン『Shakalaka Baby』などの華やかなダンスシーンは、ボリウッドらしいきらびやかさだ。だが演出の荻田浩一は、虚構=ボリウッド(映画)の世界の対比として、リアル=インドの格差社会をシビアに丁寧に描き出す。さらにアカーシュのスター性とまっすぐな思いを持ち前の朗らかさで演じた浦井健治はじめ、キャストの熱演で、登場人物それぞれが信念を抱くがゆえのすれ違いや、ままならない恋心がしっかりと浮かび上がり、日本人の心情にも寄り添う、繊細で心に染みる作品になった。初日前日にあたる1月30日には、メインキャストである浦井、すみれ、加藤和樹、川久保拓司、朝海ひかるの5名が報道陣の前で意気込みを語った。「ダンスや歌もボリウッドの世界に入り込める感じで、すごく楽しいミュージカル。ストーリーがとても素敵です。本当に(人の心は)思ったとおりにいかないのかなと…。共感できるところがいっぱいあります」とヒロイン・プリヤ役のすみれが語れば、浦井は「このカンパニーならではの『ボンベイドリームス』に仕上がっていると思います。格差社会や差別というものが少し浮き彫りになりますが、最後には希望、一筋の光のようなメッセージがこめられます」とアピール。ノリノリの楽しさと、切ない思いが同居するミュージカル。隅から隅まで味わってほしい。公演は2月8日(日)まで同劇場にて。2月14日(土)・15日(日)には大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも上演される。チケットは発売中。
2015年02月03日インド音楽の魅力に溢れたミュージカル『ボンベイドリームス』が来年1・2月に日本初上陸する。12月16日、都内にてこの作品の制作発表が行われ、出演する浦井健治、すみれ、加藤和樹、朝海ひかる、川久保拓司、演出の荻田浩一が意気込みと見どころを語った。ミュージカル『ボンベイドリームス』チケット情報作品は、ミュージカル界の巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーのプロデュースで、映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』『スラムドッグ$ミリオネア』の音楽を手掛けたA.R.ラフマーンが音楽を担当、2002年にロンドンで初演されたもの。ボリウッドスターになることを夢見る下層階級の青年の成功と代償を描く物語だ。日本版の演出を手掛ける荻田は「ロンドンで作られた、インド人のスタッフによるインドミュージカル。それを日本人スタッフ、キャストで作ります。美しい西洋絵皿に盛られた和風カレーといった感じ(笑)。味わい深く、スパイシーな気持ちになっていただければ」と解説。この日の会見では劇中歌のパフォーマンスもあったが、インド音楽特有の、リフレインの多い耳に残るフレーズが印象的。出演者たちも「起承転結がはっきりしていて豪華。歌ありダンスありなんでもありのゴッチャ煮です」(浦井)、「全体的にキラキラしています」(川久保)と作品の楽しさを口々に語った。衣裳も華やか、さらに日本人にしては濃い顔のメンバーが集まっていることもあり、インドらしさも充分アピールできそう。ヒロイン役のすみれは「小さい頃からインドのハーフと間違われたりもしていました。鼻の形が特徴的なんです。見た目でのキャスティングだったのかしら(笑)」、加藤は「もともと地黒で、以前「お前はインド人みたいな顔だ」と言われたこともある。この役を頂いた時、ついに来た! と思いました」と話し、会場内を笑わせていた。また麗しい女装姿で登場した川久保は「女性になりたい男性の役。いわゆる下層階級の、押さえつけられて噴出しそうなパワーを表現したい」と役どころへの意気込みを真面目に語りつつも「昨日、わき毛を剃りました!」と告白し会場を沸かせていた。最後に浦井が「ノリノリで、お客さんが元気を持ち帰っていただけるエネルギーを全力で放出したいと思います。ぜひ劇場に踊りに、楽しみにきていただけたら」とアピール。公演は1月31日(土)から2月8日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、2月14日(土)・15日(日)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演。チケットは発売中。
2014年12月17日東京二期会の2015/16シーズンラインナップが発表された。「東京二期会オペラ劇場」のチケット情報2015年2月『リゴレット』~パルマ王立歌劇場との提携公演~【新制作】2015年5月『ジューリオ・チェーザレ』~二期会ニューウェーブ・オペラ劇場公演~【新制作】2015年7月『魔笛』~リンツ州立劇場との共同制作~2015年10月『ダナエの愛』【新制作】2015年11月『ウィーン気質』【新制作】日本語訳詞上演2016年2月『イル・トロヴァトーレ』【新制作】2016年7月『フィガロの結婚』~二期会名作オペラ祭~【再演】ラインナップの特徴は大きく3点。1点目は、オペラ初演出の演出家の起用。映画監督・脚本家の深作健太が『ダナエの愛』、長年、宝塚歌劇団で活躍した荻田浩一が『ウィーン気質』の演出を手がける。従来からあるオペラ演出の慣例に捉われない才能を起用することで、新しいファンの獲得を狙う。2点目は、海外の歌劇場との提携。パルマ王立歌劇場との『リゴレット』、リンツ州立劇場との『魔笛』などで、国際的なコラボレーションやグローバル・スタンダード化を目指す。3点目は、海外アーティストとの共演。世界の一流歌劇場で活躍する指揮者の準・メルクルが『ダナエの愛』を指揮。2012年の東京二期会『ナブッコ』で大成功をおさめたアンドレア・バッティストーニが、『リゴレット』、『イル・トロヴァトーレ』など継続的な共演を予定している。その他、バッハ・コレギウム・ジャパンなどで活躍する鈴木秀美の本格的なオペラ指揮初挑戦となる『ジューリオ・チェーザレ』。日本語によるオペレッタ『ウィーン気質』など、ラインナップは多彩だ。都内で行われたラインナップ発表会には、『魔笛』でパミーノ役を歌う幸田浩子、『リゴレット』でマントヴァ公爵を歌うテノールの山本耕平と、二期会を代表する人気歌手ふたりが登壇。「『魔笛』はこれまでにクナーベ、パパゲーナ、パミーナ、夜の女王と、女性役は全部歌う機会があって、どこをとっても大好きな作品」(幸田浩子)、「いまマントヴァに留学中で、現地でマントヴァ公爵役の修行に励んでいます」(山本耕平)とそれぞれ意気込みを語った。また特別ゲストとして、全幕上演は日本初演となる『ダナエの愛』(指揮者の故・若杉弘が演奏会形式で日本初演)で指揮を担当する準・メルクル、演出を担当する深作健太が登壇。「『ダナエの愛』は上演機会が少ない作品なので、日本で一から作り上げることが出来て嬉しい。尊敬する若杉先生にご縁がある作品に参加できることは光栄です。」(準・メルクル)、「オペラの演出は若い頃からの夢でした。決して二足のわらじではなく、オペラ演出家として一本立ちできるように励みたい」(深作健太)と抱負を語った。
2014年10月31日実話をベースに、レオナルド・ディカプリオ&トム・ハンクスの出演でスピルバーグ監督が映画化した『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』。このハリウッド映画が、さらにミュージカルになった。2011年にブロードウェイで上演された話題作がこの夏、日本初演を迎える。本作に挑む松岡充、福井晶一、演出の荻田浩一に話を聞いた。チケット情報はこちら映画ではディカプリオが扮したフランク・アバグネイルJr.を演じるのは主演・松岡充。「最初の3公演以外は別の人が演じますから!」「歌も口パクです!」と次々と軽口を叩いていく彼は、パイロット、医者、弁護士…と様々な職業に成りすました天才詐欺師がすでに乗り移っているかのようだ。だが「フランクは詐欺師ですが、人を傷つけたりはしない。自分が人気者になり、お金もうけがしたいわけではない、騙すにしても誇りがある」とその信念に思いをはせ、「フランクが化けたのはプロフェッショナルな職業ばかり。それは専門的すぎてその専門家にしかわからないから、大勢の一般の人たちが騙されるってことだと思う」と分析、茶目っ気ある笑顔の中にも冷静な知性を垣間見せる。そんなところにも、頭脳戦を渡り歩くフランクらしさが漂う。松岡フランクにすでに翻弄され、この日の“嘘”もいくつか信じてしまったと笑うのが、FBI捜査官カール・ハンラティ役、福井晶一。「フランクをひたすら追い続ける中で、彼がなぜ犯罪に手を染めたのかという人間らしい部分を照らしていければ」と意気込みを語り、「ハンラティとフランクは追う・追われる、という関係ですが、最終的にはその中で友情が生まれる。松岡さんと自分が稽古のあいだに築き上げるものが、舞台上の関係性にも繋がっていくと思う」と話した。「犯罪の話をここまでフィーチャーしてエンターテインメントにもっていくというのは凄い。アメリカ的ですよね」と福井が語るように、物語のテーマになっている“詐欺”は、言うまでもなく犯罪だ。だが荻田によれば「このミュージカルは、そこを“フランクの冒険”とでも言うようなファンタジーに作り変えてしまった」のだという。「これは実話で、現実のフランクの話も充分面白いですが、そのままだとワイドショー的になるところを、最後にハッピーになれる“いい話”に作り変えたのは、舞台の魔法です」と荻田。松岡も「夢が見られる嘘は、いいですよね」とポツリ。ブロードウェイ・ミュージカルらしい華やかさも満載とのこと、彼らが舞台で見せる“嘘”は、客席に幸せを届けてくれるに違いない。公演は6月21日(土)から7月13日(日)まで東京・シアタークリエにて。チケットは4月12日(土)に一般発売を開始する。チケットぴあでは4月10日(木)18:00まで、インターネット先着先行「プリセール」を受付中。その後7月16日(水)に愛知県芸術劇場 大ホール、7月18日(金)から20日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでも上演される。
2014年04月09日4人の出演者によるミュージカル『トゥモロー・モーニング』が、東京・シアタークリエにて4月18日(木)から上演される。開幕を前に、4月10日、都内で公開稽古が行われた。日本でまだ紹介されていない、小さいながらも新鮮な驚きや感動に満ちた作品をラインナップする〈シアタークリエ Excellent ミュージカル シリーズ〉の第1弾。ローレンス・マーク・ワイスが脚本・作詞・作曲を手がけた『トゥモロー・モーニング』は、2006年にロンドンの小劇場で初演され、2011年にはNYのオフ・ブロードウェイに渡ったほか、アメリカのシカゴとコネティカット、オーストラリアのメルボルンでも上演されている。離婚前夜の夫婦、そして結婚を翌日に控えた恋人同士という対照的な2組のドラマを同時に描いていく。しかもそれが、あるカップルの現在と10年前の姿だとわかると、両者の対比から新たな意味が見えてきて面白い。浮き彫りになるのは、愛を保ち続けることの難しさと大切さだ。ひとり息子がありながら別居している30代の夫婦、ジャックとキャサリンに扮するのは、石井一孝と島田歌穂。「怒られたり、にらまれたりしながら、キャサリンと対峙する毎日です」と石井が言うと、島田は「『レ・ミゼラブル』ではふられ続け、『ゾロ』では背中を撃たれた石井さんと、離婚前夜ではありますが初めてじっくり向き合います」と返し、笑いを誘う。一方、新しい一歩を踏み出す気持ちの高揚を抑えきれない20代のカップル、ジョンとキャットには、田代万里生と新妻聖子が扮する。「脚本も音楽も良い。誰も死なないし、最後はほっこり幸せな気持ちになれるミュージカルです」(田代)、「大人が楽しめる上質な作品。新年度の始まりなので、いい1年になるような春らしいミュージカルにしたい」(新妻)、とそれぞれ作品の魅力を言葉にした。この日は、ピアノの伴奏にのせてミュージカル・ナンバー3曲が披露された。曲調が多彩で、ひとつの楽曲の中でも次々と色を変えていく。人に言えない胸の内やデリケートな人間関係を歌で表現するというのは、ミュージカルの特権だ。歌唱力の豊かなキャストが揃うとその効果は何倍にもなるということが、『トゥモロー・モーニング』で実感できるに違いない。荻田浩一の翻訳・訳詞・演出で、4月24日(水)までシアタークリエ、4月26日(金)・27日(土)に名古屋・中日劇場で上演される。
2013年04月12日