小泉今日子らが熱く演じる。ゴツプロ!『向こうの果て』稽古レポ
最初の取り調べで、自らを「淫売女」と言い、めんどくさそうに「保険金のために殺した」と自白する小泉(律子)の姿にショックを覚えながらも、なにか、目を離すことができない感覚に陥った。どこにもヒントを見せないのに、違う理由があるはずだと思わせるなにかが小泉にある。しかし、律子と関わってきた男たち(佐藤正和、かなやす慶行、44北川)は彼女のことを「娼婦」「贅沢な女」「残酷な女」と表し、律子と公平の幼馴染である姫昌(浜谷康幸)は「嘘つきな女」と表す。物語が進むほど、逆にわからなくなるような展開が続いた。
後半、津田口の執念によってこの殺人事件の背景にあるものが少しずつ明らかになっていく。その鍵を握るのは、律子、公平、姫昌、そして律子と公平の父親たち(皆川、関口)だ。彼らの抱える複雑な感情が詳細に解説されるわけでもないのだが、芝居と三味線の音によって不思議なほど繊細に伝わってきた。そうやって律子のことを少し知るたびに、冒頭の殺人シーンから続くどんよりと湿った空気に、いびつだが、光がさすような感覚があり、それは公平が律子を表す言葉にも直結していく。
最後まで思わぬ展開は続いていき、観た後の余韻が長く続く舞台だと感じた。