「このリサイタルは毎回、新しいことに挑戦する緊張感もあって、私自身の1年の節目になっています。今回もほとんどが初めて取り組む作品ばかり。ツェムリンスキー(生誕100年)の《トスカーナ地方の民謡によるワルツの歌》は、コンサートではあまり演奏されないけれど、とても素敵な歌です。
ロシアの音楽は憂いや悲しみがあって、日本人の琴線に触れる魅力があります。あえてヴォカリーズを2曲。有名なラフマニノフの《ヴォカリーズ》とグリエールの《コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲》。グリエールは一度聴いてすっかり惚れ込んでしまいました。旋律だけで聴く方それぞれの情景を浮かべながら、ロシアの音楽の魅力を楽しんでもらえたらと思います。
でもこのプログラム、聴いているぶんには素敵なのですが、全部を歌い切るのはかなり大変なんです(笑)」
コンサートには「虹の彼方に」という副題が付けられている。
「虹は幸運の印。アメイジング・グレイスからストラヴィンスキーまで、虹のように色とりどりのキャラクターの曲を楽しんでいただけると思います」
雨が降るから虹が出る。彼女の歌が美しい祈りの虹を架けてくれるはずだ。
(宮本明)