「お稽古で、ザックス役のトーマス・ヨハネス・マイヤーさんが本当に泣いていて。それを見たら、彼の気持ちに応えないエーファが申し訳なくて、私も何度歌っても心が痛みます。この場面は見どころにしていただけるとうれしいです」
ワーグナーを歌う時はいつも、圧倒的なオーケストラの力を感じて、まずその流れを邪魔せず歌うことに腐心するという。しかし。
「《マイスタージンガー》では、あまりそれを考えないのです。歌がオケを凌駕するように書かれた作品だと思います」
聴衆はもちろん、出演者たちにとっても待望の上演だ。ザルツブルク・イースター音楽祭とザクセン州立歌劇場、そして東京文化会館との国際共同制作。昨年、及び今年8月の上演予定もコロナ禍で中止となった。
「今回、夏と完全に同じキャストではないので、乗れなかった人たちの気持ちも全部胸に抱いて歌いたいと思います。4時間半の長丁場ですが、私自身、自分が出ていないシーンにもこんなに感情移入できるのかと驚くぐらい楽しいプロダクション。今までにない《マイスタージンガー》現代演出の決定版だと思います。絶対に損はさせませんのでぜひ!」
新国立劇場オペラ「ニュルンベルクのマイスタージンガー」