くらし情報『無垢な「愚者」をどう演じる?二期会パルジファル』

無垢な「愚者」をどう演じる?二期会パルジファル

無垢な「愚者」をどう演じる?二期会パルジファル

福井敬


二期会の創立70周年記念公演《パルジファル》(ワーグナー)は、宮本亞門のワーグナー初挑戦(ラン歌劇場との共同制作)のジャパン・プレミエ、バイロイト音楽祭でも評価を得ているドイツ・オペラの名匠セバスティアン・ヴァイグレの指揮と、注目ポイントが山盛りだ。題名役を歌うのが日本のエース・テノール福井敬。

「私の演じるパルジファルは〝聖なる愚者〟です。ワーグナーのオペラのほとんどは、理想的な男性像の、強いヒーローが主役ですから、かなり特殊な主人公です。最初は自分の名前すら知らない、本当に無垢な、人としてゼロの存在。そのゼロ=透明さを表現するのが難しいところです」
純粋無垢なパルジファルが、さまざまな「智」を獲得しながら人として成長し、最後には救済者となる。
「人間として覚醒する瞬間を経て、成長の前後の表現の変化が見どころになると思います。どう演じるのか、自分でもまだわかりません。
自分だけで意図的に作るのではなく、これからの稽古の中で、他の役の作るドラマとともに出来上がっていくことになるわけです」
「面白いのは、オペラのテノールにはこういう〝覚醒〟を体験する役が結構多いんです。《愛の妙薬》のネモリーノ、《魔笛》のタミーノ……。

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