くらし情報『現実と幻想が同居する不思議!新国ペレアスの衝撃』

現実と幻想が同居する不思議!新国ペレアスの衝撃

「何の伏線?」と脳をフル回転させてくれる。メリザンドが塔の上から長い髪を垂らす有名な場面は、(この演出では塔は出てこないが)〝官能〟を超えてかなりエロチックだ。
歌手陣はきわめて高水準。ペレアス役はベルナール・リヒター。ハイ・バリトンが歌うことの多い役だが、彼のように低い音符でも柔軟な響きを失わないテノールは役のキャラクターにもふさわしい。メリザンド役のカレン・ヴルシュも美しい。2016年デュトワ&NHK交響楽団の演奏会形式上演での同役も鮮烈だった彼女。理論物理学の修士資格を持つ異色の理系歌手だ。
ゴロー役のロラン・ナウリは、その二人の題名役を凌駕する存在感。さらに、大野が直接電話して口説き落としたというジュヌヴィエーヴ役の浜田理恵は、歌唱だけでなく、本来出番がない場面での黙役の演技でも重要な役割が与えられている。
全5幕を3幕+2幕に分けた2部構成。「幕」よりも「場」ごとに頻繁に場面が変わる。その場と場を、大野と東京フィルハーモニーの幻想的な響きがつなぐ。上演時間は休憩を含めて約3時間半。
新国立劇場《ペレアスとメリザンド》は7月2日(土)から17日(日)まで全5公演。東京・初台の新国立劇場オペラパレスで。

(宮本明)
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