くらし情報『“言葉”が紡ぐ、恋に囚われた4人の男女の人間ドラマ 浅利演出事務所『アンドロマック』開幕』

2022年10月24日 15:03

“言葉”が紡ぐ、恋に囚われた4人の男女の人間ドラマ 浅利演出事務所『アンドロマック』開幕

“言葉”が紡ぐ、恋に囚われた4人の男女の人間ドラマ 浅利演出事務所『アンドロマック』開幕

撮影:友澤綾乃


10月22日(土)、浅利演出事務所主催の舞台『アンドロマック』が東京・自由劇場で開幕した。本作は17世紀を代表するフランスの劇作家ジャン・ラシーヌの傑作で、トロイ戦争後のギリシャを舞台に4人の男女の壮絶な恋愛模様を描いた物語。1966年初演で称賛された故浅利慶太氏による演出で、今回が6度目、浅利演出事務所公演としては2018年以来4年ぶり2度目の上演となる。長台詞が特徴的な本作。浅利氏によって確立された「朗誦術」を出演者らが見事に体得し、ともすれば冗長で大仰になりがちな台詞が実に自然に耳に届く。登場人物の心模様が浮き彫りとなり、壮大な人間ドラマが繰り広げられる。

タイトルロールのアンドロマック役は、2002年から同役を演じ本年版演出も手掛ける野村玲子。凛とした佇まいで亡夫への貞節を誓い愛息を守る姿は、どこまでも気品高く、悲しいほどに高潔だ。
トロイ戦争の悲惨さと夫の在りし日の姿を語る長台詞は怒りと愛に満ちていて、圧巻である。そのアンドロマックに心奪われ、ギリシャ中を敵に回しても愛を貫こうとするピリュスを演じる阪本篤は、同事務所公演初参加。自身が主宰する「温泉ドラゴン」の公演でも定評のある持ち前の存在感が一国の王の威厳を感じさせる一方で、アンドロマックに対し真正面から愛の言葉を語るその低い声は時に激しく時に優しく響き、見る者を魅了する。

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