一方の主役とも言えるヨハナーン役はこちらも新国立劇場初登場のトマス・トマソン。話題を呼んだ昨秋の東京交響楽団の演奏会形式の《サロメ》でも同役を好演していたが、やはり舞台上演の面白さは格別。井戸から声だけが聴こえていた彼が姿を現して歌う時の威厳や精悍さには、サロメならずとも魅了されるはず。
アメリカのスター歌手ジェニファー・ラーモアがサロメの母ヘロディアスを歌っているのにも注目だ。いかにも憎々しい悪女ぶりを見せつける。
なお、このプロダクションではヨハナーンの生首の造形がとてもリアルで怖いのだが、今回は客席からはあまり見えないような演技プランに変わっていたのでちょっと安心。
演奏はシュトラウスなどドイツ・オペラを得意とするコンスタンティン・トリンクス指揮の東京フィルハーモニー。4管超の巨大オーケストラを3管編成に縮小した版での上演。
音楽が濃厚なので、一度聴くとなかなか抜けない。帰り道、作品に登場するいくつもの動機が、頭の中にヘビロテで渦巻き続けた。新国立劇場の《サロメ》は6月4日(日)まで全4公演。新国立劇場オペラパレスで。
文:宮本明
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