人気声優が日替わりで登場する朗読劇シリーズの最新作
と同時に、モーツァルトという作曲家の才能について改めて感嘆させられるドラマでもある。言葉の検閲だけに止まらず、音楽を学び、楽譜までも検閲することにしたヘーゲリン。だが軽々とその上をいく天才モーツァルトに対し、それまで芸術とは無縁だった彼がこうつぶやくのだ。「モーツァルトの天才に、目眩がしそうだ」と。
ヘーゲリン役の山口は、厳格な検閲官という役どころを、抑揚を抑え、少し硬さのある声で表現。そこにヘーゲリンという男の、仕事に対する信念や自信を伺わせる(だからこそ後半への変化が活きてくる)。その真逆をいくのが、神尾演じるモーツァルト。彼の音楽が讃えるのは、フランス革命のスローガンともなった「自由・平等・友愛」。
だがそれは彼自身を表現した言葉とも言え、神尾の明るく、茶目っ気があり、生命力あふれる声は、まさにモーツァルトそのものだった。
また親モーツァルト派のスヴィーテン男爵を中澤が、『フィガロの結婚』の台本作家のダ・ポンテを竹内が好演。さらにルイーザ、ピアニスト、ヘーゲリンの秘書を演じた小澤含め、複数の役を担当するこの3人の演じ分けも楽しい。さらに本作には全42人もの声優が日替わりで参加しており、その組み合わせの違いも大きな魅力となっている。