30歳が近付いたら、「自分のことが書いてある!」本を探そう
とつぶやいてしまうレベルで共感してしまうヤツらだと思うんですよね。
で、じゃあそういうあんたの「お前は俺か小説」は何かといいますと、私の場合はフランツ・カフカの『断食芸人』です。一転して「暗っ!」というかんじになってしまったと思うのですが、心の底から共感できて、自分はこの本の思想と共に生きていくんだと決めている1冊ですから、嘘はつけません。
『断食芸人』の主人公はタイトルのとおり、食事を取らないことを見世物にしている芸人なのですが、この人物がなぜ断食芸人になったのかという理由が、物語の最後の最後で語られるんです。いわく、自分は断食なしではいられないのだ、ほかのことはできないのだ、なぜできないのかというと、うまいと思う食べものを見つけることができなかったからだというんですね。もしうまいと思うものを見つけられていたら、きっとほかの人と同じように、腹いっぱいになるまで食べものを口に運んでいただろうと。この最後の最後の部分が、私にとっては涙ちょちょ切れる共感の嵐なわけですが、おそらくみなさんは「はっ?」と思いながらポカーンとしていることでしょう。いいんです、それが「お前は俺か小説」なのですから。