完璧よりも「まんざらでもない」人生を目指そう東京大学教授・玄田有史さんインタビュー(後編)
以前、一年に何度も佐渡ヶ島へ行く女性に、「なんでそんなによく佐渡ヶ島に行くの?」って聞いたら、「季節ごとに違う佐渡の匂いがするから」みたいなことを言ってました。なんか素敵な人だな、と思っちゃった(笑)。
――いいですね、詩的な感性です(笑)。
玄田:今は、現地に行かなくても映像や音は疑似体験ができる。でも、言われてみれば確かに“匂い”だけは、実際にその場にいないと体感できない。
おいしいけどどうしても空気が合わないお店とか、性格や価値観が違うのにどうしても離れられない恋人とか、そういうのって、言葉やデータでは絶対に表せない雰囲気やニュアンスでしか判断できない。それって結局、生身でしか味わえない匂いや肌触りのことだったりするわけです。そういう感覚を大切にできる人って、幸せだと思う。
そういう“カンを磨く”っていうのは大事でしょう。引きこもり当事者を支援している人に教えてもらったんだけど、人間には“3つのカン”が大事なんだそうです。
――なんですかそれは?ぜひ教えてください。
玄田:ひとつめは、“感情”の“感”。嬉しい、悲しい、楽しい、悔しい……といった喜怒哀楽を、しっかりと自分の中で自覚すること。