完璧よりも「まんざらでもない」人生を目指そう東京大学教授・玄田有史さんインタビュー(後編)
悔しいときは悔しいって叫んでいいし、嬉しいときは興奮して人に見られたら恥ずかしいようなことをしてもいい。そうやって自分の感情を常に磨いておかないと、いざというときに心が動かなくなっちゃう。
2つめは“勘所”の“勘”。「こんなことしたら危ないな」とか、「こうすればバレないな」っていう、言語化できないさじ加減。これを身につけるためには、「あの一杯でやめときゃ二日酔いにならなかったな」みたいな痛い失敗経験も必要になる。
そして、最後の3つめが“人生観”の“観”。「あなたはどう生きていきたいの?」って急に聞かれても、誰も簡単には答えられないだろうけど、“感情”を磨いて、“勘所”を身につけていくと、だんだん「私はこういう風に生きていくんじゃないかな」っていうのが見えてくると思う。この“3つのカン”は、常に意識して磨いていった方がいいと思う。
――その3つは、“感”→“勘”→“観”の順番に、ピラミッド型の構造になっているのでしょうか?
玄田:そうかもしれません。“感情”が磨かれていないと、“勘所”が身につかない。“勘所”がそなわって、初めて“人生観”もはっきりしてくるのかもしれない。
――でも、ネット上で知り合って、オンラインだけでやりとりしているような関係では、“3つのカン”を磨いたり、“ウィーク・タイズ”を結んだりすることはできないんですか?
玄田:オンラインでのつながりって、案外“ストロング・タイズ”になっちゃうんじゃないですか。