完璧よりも「まんざらでもない」人生を目指そう東京大学教授・玄田有史さんインタビュー(後編)
僕は“まんざらじゃない”って言葉が好きなんです。死ぬときに「私の人生、幸せだった」と言い切って死んでいけたらそりゃいいけど、そんなこと本当にあるのかなって思うんですよね。
「まあ悪くなかったな、まんざらじゃなかったかな」くらいの生き方でいいんじゃない?人生の勝ち負けなんて、だいたい五分五分だし。
――そう考えたら、少し楽に生きられるかもしれませんね。
玄田:知り合いの老人に「夢を持ったまま死んでいくのが夢だ」と言った方がいて、すごくいいなと思ったことがあります。たとえば、芸術家が「これが自分の最高傑作!やりきった!」なんて言ってたら、生きているけど“終わってる”人なんだなって思う。それだったら、無念だった、叶わなかった、もっとできたのに……って思いながら死んでいくほうが、よっぽど素敵だと思うんです。
――幸せにしろ、成功にしろ、達成しちゃったと思ったら終わりですもんね。
常に“まだ途中だ”と思い続けるからこそ意味があるというか。
玄田:そうそう。もちろん、孤立化というのは、国が政策や制度によって対応していかないといけない問題ではあるんです。親が死んだ後に食っていけなくなって生活保護を受ける人や、今では高齢者の引きこもりもとても多い。