「ゾンダーコマンド」を描いた映画にあなた独自の解釈を加えてみよう
この映画のいちばんの特徴は、なんといってもカメラワーク。カメラは基本的にサウルの背中を映し出し、見えるのは彼の頭や肩、そしてその前方にあるぼやけた強制収容所内の映像です。ガス室から出てきた裸の遺体が、ただモノのように積み上げられていく光景はなんともおぞましいですが、はっきりと映るわけではないので、映像的にはそれほどショッキングでもありません。
強制収容所の凄惨な光景を、申し訳程度にあるストーリーと一緒に延々と映し出していくというのがこの作品なのですが、監督のネメシュ・ラースローは、これが長編デビュー作だそうです。おそらくラースローの狙いは、「ユダヤ人が遭遇した強制収容所の悲劇」というわかりやすい物語を観客に提示することではありません。強制収容所内の映像をただ流すことで、「ここに映っているものはいったいなんなのか?」「サウルという男はいったいどんな人間だったのか?」と、そういったことを観客自身の頭で考えさせたかったのではないかと、私は思ったんですよね。
もっともっと、多様な視点を獲得しよう
まあ、というわけでテーマは重いのに物語性が弱く、盛り上がる場面もなく平坦でという、なかなか楽しみづらい作品ではあります。