「ゾンダーコマンド」を描いた映画にあなた独自の解釈を加えてみよう
だけど、この映画から私たちが得ることができる教訓も、もちろんあります。それは、一方的に提示されるわかりやすい物語を信じなくても良い、ということです。戦争映画というと、どうしても重苦しい悲劇を連想してしまいますが、実際はどうだったのか。
たとえば、これとは別に『厳重に監視された列車』という、ナチス占領下のチェコを描いた戦争映画があるんですけど、この作品の主人公である青年の最大の悩みは、自分が童貞であること! です。おまけに映画に出てくる駅員は、勤務中におしりにスタンプを押したりしながら呑気に遊んでいたりするので、ちょっと「悲劇」ってかんじの映画じゃありません。そして、今回紹介した映画に登場するサウルは、強制収容所を扱った戦争映画の主人公としては、おそらくちょっと異例の存在です。彼は英雄ではないし、それほど賢くも、特別心優しくもない。これを観ることによって、従来の、いわゆる戦争の映画とは、少々異なる体験ができるはずです。
それらしき言葉で語られる真実らしきもの、というのは世の中に無数にあります。仕事はこういう姿勢で臨むべきとか、女性はこうしたほうが幸せになれる、とか。とはいえ、みなさんだって、それを頭ごなしに信じて悩んでいるわけではないでしょう。