誰かと一緒にいるから一人になれる/誰に見せるでもない爪
第5回:人がいるから一人になれる
今回は「新婚ですが、夫とは部屋は完全に分けている一人好き」という読者投稿より、イメージした爪をつくった。
誰かと一緒に過ごす時間もあるけど、一人の時間も好きだと綴られていた。
一人の時間に焦点を当てた映画や音楽は多いが、私が印象に残っている作品で「誰かと一緒にいながら一人」を表したものがある。
『EDEN』という映画だ。
これは、90年代のエレクトロやダンスミュージックシーンに翻弄されていくDJの話で、DAFTPUNK結成当初が描かれていることでも話題となった。
以前観て印象的だったのは、主人公がほとんど「一人でいない」ということだ。
時系列が移るにつれて、主人公はその立場や環境が次第に変化していき、やりたい音楽と流行の差が徐々に広がるのを感じ葛藤していく。
そんな彼の傍には常に仲間や恋人、家族がいるにも関わらず、どこか孤独感を漂わせており、周囲から孤立していく様子がハッキリと分かるのだ。
そして、たった一人になるラストのシーン。
彼はようやく、それまでの自分を顧み、先を見据えることができたのだ。
堕落の結果「一人になってしまった」ように見えるが、実は、やっと「一人になれた」