本には感情をとかす力がある!震災から1ヶ月の心のケアに物語を
と語ります。
■本の主人公にふれることの大切さ
“物語の力”は、子どもひとりひとりが生活のなかで直面する試練にもはたらきかけます。
2008年12月16日に紙面に掲載されたインタビュー記事。東京子ども図書館理事長で翻訳家の松岡享子さんは、いじめに苦しむ子どもに向けてこう語りかけます。
「いましか視野に入っていないと、とてもつらい。友だちのひと言で心が埋め尽くされてしまう。
乗り越えるには、ちょっと離れて自分を見ることが必要です。さまざまな本の主人公の生き方にふれることで、自分に降りかかったことを複眼的に見られるようになってきます」
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人生には、さまざまな試練が訪れます。
多くの人が一度に巻き込まれる災害時はとくに、飢えや怪我など生命に直接かかわる被害へのいち早い対応が第一です。
そして1ヶ月という時間が経ったいま、今度は目に見えない心の傷にも思いをいたすことが求められるのではないでしょうか。
本書のタイトルは、児童文学の評論家で『ゲド戦記』などの翻訳でも知られる清水真砂子さんが2009年、34年間勤めた青山学院女子短大での最終講義で語った、「すぐれた子どもの本は『大きくなるって楽しいことだよ。