ぬかるみの悪路でスタックしたときには、ラオス人と共にトラックバスを押したこともあった。それでも少数民族の集落を抜け、尾根づたいに続く赤土の国道をゆく旅は今でも深く心に残っている。
そんな道路状況ゆえ、長距離の移動は船の移動が多かった。小さな船にラオス人と乗り込み、悠々と流れるメコンを船で旅するのは楽しかった。ラオス人が持ってきたカオニャオや肉を分けてもらい一緒に食べたりもした。カタコトのラオス語を話すと嬉しそうに笑ってくれるおばちゃん、日が暮れメコン沿いの集落で泊まった時、一緒にラオラオ(ラオスの米焼酎)を飲んだおっちゃん。そんな出会いもラオスの旅だった。
今では道路も整備され定期船は消え、移動は大型バスになった。
辛いラオスの旅も今は昔話になってしまった。
著者撮影 メコン川にかかる5本目の橋。
完成すると艀で渡る事もない
著者撮影 かつてメコンを行き来した船は今は観光用として活躍している
著者撮影 山で仕事をしてたゾウは観光客相手に仕事をするようになった
著者撮影 開発の進む首都ビエンチャン
(text & photo : 中島貴義)
熱帯写真家フォトエッセイ「アジアの街角から」
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