恋愛情報『現役ネイリストが知るあのコの恋愛事情ーネイルサロンのないしょ話』

現役ネイリストが知るあのコの恋愛事情ーネイルサロンのないしょ話

仕事中、主人の顔をふと思い出す度にうんざりする。その日も、私の怒りはその程度には尾を引いていた。愛して結婚したはずの相手が、こんなに自分をうんざりさせる存在になるなんて。結婚というものがそうさせるのか、選んだ自分が悪いのか?顔も見たくない。話もしたくない。食事なんか作りたくない。子供と二人で生きていけたらどんなにいいか。
その日も、そんな話をしていたら、お客様が「ふっ」と笑った。
品よくまとめられた真っ白な銀髪と、見るだけで上質とわかるタートルネックに揺れる大ぶりのパールのネックレス。レンズに少し色のついたメガネの、その奥の大きな瞳までは笑っていなかったろうと思う。
「あいこさん。ご主人を殺そうと思ったことある?」
私の母よりずっと年上の女性が悪戯っぽい声を出す。いつもとは少し違う「女」としてずっとずっと生きてきたのだと感じさせる声だった。色気とか、知性とか、成熟とか、エロさとか、全て乗り越えたかのような艶のある声は、女性であることを強く感じさせる。
「私はね、あるの。理由なんて忘れてしまったけど。
浮気とか、借金とかそんな理由じゃないわね。きっと些細なことよ。アイロンかけを忘れたとか、靴を磨くのを忘れたとかそんなことを言われた日だったと思う。」

関連記事
新着まとめ
もっと見る
記事配信社一覧 上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.