現役ネイリストが知るあのコの恋愛事情ーネイルサロンのないしょ話
アイロンをかけることを忘れた彼女を、ご主人は強く責めたのだろうか?小言のように囁いたのかもしれないそのたった一言が「死んで欲しい」と思う感情に火をつけてしまうなんてなんだかイメージが結びつかなかった。
でもきっと、自分すらも気付かない間に、導火線はどんどん短くなってきていたのだ。心の導火線は、日々の積み重ねでゆっくりゆっくり短くなってゆく。ある日、急に長さが継ぎ足される日もあれば、一気に短くなって火が付いてしまうこともある。単なるタイミングなのかもしれない。その日から彼女は、自分が犯人だとはバレずに夫を殺す方法をずっと考えていたそうだ。
包丁で刺すなんて、刺し損ねたら大変なことになる。薬はどうだろう?平凡な主婦でも買えるような人を殺せる薬はあるのだろうか?自然に事故で死なせる為に、バレない細工はないだろうか?食事に洗剤を混ぜるのはどうだろう?毎日毎日、ご主人の世話を焼き、笑顔で食事を作り、パンツを洗って干し、夜の生活も営みながら、ずっとずっと考えた「夫の殺し方」。
ふと、私はまだ、そこまで夫を憎んだことがないな、と思った。いや、夫だけではなく誰のことさえも。「試しに何かを試してみたことはあるんですか?」