現役ネイリストが知るあのコの恋愛事情ーネイルサロンのないしょ話
あまりにも楽しそうに話す彼女に、つい聞いてみたくなった。「あるわよ。食事に洗剤を1滴混ぜたの。その夜はどきどきしたけど、なーんにも変わらなかった。当たり前よね。」大笑いする彼女の赤い爪先はもうすぐ完成の頃だ。燃えるような赤。戦う色といわれる色だ。
「誰かをずっと恨むとか憎み続けるのって、体力がいるのよ。
難しいの。ほんの少しの優しさで“私も悪かったな”なんて思ったりしてね。」「そんな日もあったんだけど、あの人が今も元気に生きていてくれるから、私はこんな年になっても何の心配もせずに暮らせてるのよ。不思議よねぇ。」何かを思い出すように誰かに向かってそう言った後に、
「自分の手を汚してでも殺したくなったら、その時は離婚しちゃいなさいね。それまでは何とかなるわよ。大丈夫。女は賢いんだから」
にっこり笑って、お孫さんと約束があるからと、パールのネックレスを揺らしながらお店を出て行った。■おわりに
結婚が幸せなものか、不幸なものなのかとよく議論になるのを目にするけれども、どっちも含んでいるからこそ「結婚」なのかもしれないな、と思う。言葉を失うほどに幸福を感じる日もあって、怒りで我を忘れる日もある。
そんな日々を過ごしながら「他人」