岬は大げさに手を振った。
「どんなに念入りに魔法をかけたって、カボチャの馬車に逆戻り、よ」
まさにな喩えに、感心しつつ、唯香は苦笑した。
「もしかして、私、今度こそ彼に復讐できるかもって思ってたのかな。
彼が、私を見直してくれて、惚れ直すって思ってたのかな。今となってはわからないわ」
「未練だよ、未練。執着、とも言うね」「未練、執着・・・・・・か。」「彼って言うよりさ、過去の自分に、復讐したかったんじゃないの」
岬は、サラッと言って、伸びをした。唯香は、なるほど、と思って岬を見る。
「そっか。
嫌いだった過去の自分を、見返したかっただけ・・・・・・?」「そうよ。それなのに不幸の元凶に会うなんて、逆効果。ホント、やめたほうがいいのよ。自分を捨てた男なんか、地雷よ。地雷。いつだって、・・・・・・バーン!」「地雷・・・・・・」「木端微塵!」
2人は顔を見合わせて噴き出した。
「ホントに私、次行くわ。今度こそ、過去の私を知らない男と、もっといい恋をする!」唯香は、すがすがしい顔でそう言って笑った。
地雷男よ、さようなら。もう二度と、会うことはないだろう。過去のみじめな自分を知っている、男なんか・・・・・・。