ちらりとのぞくネックレスは、ひっかけたら切れそうなほど華奢なゴールド。昔の唯香だったら多分、選んでいない。
鏡を見ながら、入念に髪と肌をチェックする。
大丈夫、髪は先週美容院に行って、つやの出るカラーをしてもらったし、毎朝パックをして整えた肌は、いつもよりも化粧ノリがいい。
新しい愛されピンクのリップにグロスも重ねて、自然だけどちょっぴりセクシーな絶妙さに仕上がっている。
3年前は、自分で言うのもなんだけど、本当に垢抜けない女子だったと思う。社会に出たてでお金もなかったから、そんなに服や化粧品にお金もかけられず、いつも地味な紺スーツを着て、髪もひっつめにしたままだった。
■罪作りな男
そんな唯香が、将の目になぜ留まったのか、今でも人生の七不思議だ。
将は、いつでもとてもやさしかった。切れ長の目のせいか、一見冷たそうな顔をしているのに、不思議と人の懐にスッと入ってくるところがある男だった。この人、と決めると、急に距離を詰めてきて、とことん相手にやさしくする。初対面ではそんなふうに見えないから、やさしくされた方は、十中八九誤解する。「この人は自分を好きなんじゃないか?」と。
将は、罪作りな男なのだ。