唯香もご多分に漏れず、そんな将のやさしさに心を奪われた。そんな風に、何もかもを受け入れてくれるような男性に会ったことがなかったから。
将とどういう経緯か、付き合うことになって、しばらくは自分でも信じられなかった。ただ、天にも昇るような幸せに浸っていられたのは、最初の1か月間くらいだけのこと。
すぐに、生来のネガティブ思考が顔を出し、唯香は、疑心暗鬼に駆られるようになってしまったのだ。
「こんな幸せが続くと思う?」「きっと、彼の気まぐれだわ」「いや、本命が他にいて、私はその当て馬なんじゃないかしら?」
日に日に気後れが募って行き、手放しで幸せを喜べなくなっていった。そんな中、ある日事件が起こったのだ。
「ねえ、相談してもいい?」
急に職場の派遣社員に声をかけられた。
「え?何?どうしたの?」「あのさ、河野さん、なんだけど」
将の名前を出されて、一瞬緊張する。職場恋愛だったので、親しい人以外には、将とのことは話していないのだ。
「え?将君がどうしたの?」「うん、・・・・・・なんか、河野さん、最近よく声かけてくれて、メールもくれるの。社内メールだけど・・・・・・」
嫌な予感が胸によぎる。