「別れ」の2文字は、禁断の蜜だ。この言葉で、大概男は取り乱す。
祐二は、少しだけめんどくさそうに、夏花のそばにやってきた。そして、頭をポンポンと叩く。
「そんなこと言ってないだろ。夏花と別れたいなんて言ってないよ」「じゃあ、約束して」
夏花は、キッとして手を振り払う。
「もう彼女とは会わないって」「それは・・・・・・」
祐二は言いよどんだ。
「今度、話してみるよ・・・・・・」
「ダメだよ、もう会わないで!メールして。
それから彼女の連絡先を消して。私の目の前で!」
夏花は、わめきたてた。祐二は、自分のスマホを握りしめ、ちょっと考えていた。
「夏花、・・・・・・俺のこと、信じられないの?」
祐二は、少し情けなさそうな声を出した。
「信じてほしいなら、まずは彼女を切ってからにして」
夏花は冷徹に言い放った。祐二は、信じられない、という目で夏花を見た。
「・・・・・・彼女は、・・・何1つ文句言わずに別れてくれた。彼女のせいじゃないのに。
そのあとも、俺のことを気遣ってくれて、会っても何ひとつ要求しなかった。会うだけでいいって・・・・・・。そんな彼女を、これ以上傷つけろって言うのか・・・・・・?」