苦しげに、祐二が、うめいた。
いま、祐二が、目の前の自分のことではなく、ここにはいない彼女のことを心配していることが耐えられなかった。「私が好きなら、できるでしょ。私と別れるか、彼女を切るか、どっちか選んで」
夏花は、言い放った。そうよ、女は、スッパリ強いほうが勝つの。未練なんかでズルズル男を甘やかしたって、都合のいい女にしかならないのよ。恋に勝つのは、いつだって、私なの。
夏花は強い目で祐二をにらみつけた。
その向こう側の彼女の影をにらみつけるように。
■敗北の味
蒸し暑い夏が過ぎ、ようやく涼しい風が季節の移り変わりを告げるようになった。夏花は、その日、知人の自宅屋上で催されたBBQパーティーを早々に抜け出し、近くの住宅地を駅に向かってブラブラ歩いていた。
今日は、マスコミ関係の業界人が来ると言うから期待して出かけたけれど、いい男は既婚者か、すでに若い女が黄色い声を上げて群がっていて、つまらないから黙って出てきた。
たぶん、今頃は、夏花と入れ替わりに現れた学生モデルの女子に、男たちは色めき立って自己アピールをしているところだろう。
くだらない。くだらないけど、そんな場所でも呼ばれればありがたく顔を出しに行ってしまう自分が悲しい。