恋愛情報『【小説】向こう側の彼女/恋愛部長』

2019年8月29日 22:00

【小説】向こう側の彼女/恋愛部長

祐二がそんな風に、めんどくさそうに言うのも、癇に障る。

夏花は、手に持っていた小さなクッションを祐二に投げつける。前は、こんな風に夏花が怒ったら、祐二はやさしく抱きしめてくれた。ポカポカ胸を叩いて怒る夏花を、「かわいい」と言いながら、笑ってなだめてくれた。

だけど、最近は、夏花が怒ると、心の扉をぱたんと閉じるように、目を伏せてしまう。コミュニケーションを絶たれると、余計夏花の怒りは行き場を失って燃え上がってしまう。

悪循環だ。自分でもどうしていいかわからない。
こんなふうに、誰かに乱されるのは初めてだから。

「だって、おかしいよ。もう半年以上だよ。最初だけって言ってたよね?なんで別れた男にそんなに会いに来るの?私がいるってわかってるくせに、彼女面して、なんなの?図々しくない?」

夏花は、見たこともない元カノの姿を思い浮かべ悪態をつく。それを聞いて祐二も、やや苦笑気味になる。

たしかに、自分で言っていても、めちゃくちゃな理屈だ。そもそも、彼と出会った時に、彼の正式な恋人は、彼女のほうだったのだから。

祐二も、そんなことを思っているのだろうか、何も言わずため息をつく。
ここ最近は、誰と会ったという報告がなくなった。

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