夏花は、祐二の唇に、そっと指先をあてる。
「ふふ・・・・・・どうかな~。まずは、別れてきてからだよ。彼女とホントに別れたら、考える」彼女がいる男を落とすのは、案外簡単。
彼女のタイプを聞き出して、その彼女にはない魅力的な部分を見せつければいい。がっつかず、押し過ぎず。その彼女より高値の女に見せること。
夏花は、去っていく祐二に手をヒラヒラ振りながら、特上の笑顔を送った。
あまりに、彼女持ちの男ばかりを相手にしているせいで、いつからか、彼女持ち以外には心が動かなくなってしまった気がする。
何人彼女がいるかわからないような、フラフラしている遊び人はそもそも論外。本命の彼女がちゃんといてもなお、よその女にも目配せを忘れないような、野心的な男たち(大抵は、スペックが高くて自信もある)がターゲットだ。
彼らの向こう側にいる“彼女たち”に、申し訳ないと思ったことはない。せっかく捕まえた男をしっかりつなぎとめておけなかった女にも責任がある、と思うだけだ。出会う順番がたまたまこっちのほうが遅かっただけ。私が目をつけたのが、後だっただけ。
夏花は、ショーウィンドウに写った自分の容姿を満足げに眺めた。