若くて美しくて、自信に満ち溢れている女が、嫣然とこちらに向かってほほ笑んだ。
■向こう側の彼女
祐二が、4年ほど付き合っていた2歳年上の彼女と別れたと聞いたのは、それから3週間後のことだった。
「意外とあっさりしてて助かったよ」
仕立てのいいスーツに身を包み、よく手入れされた爽やかな笑顔で、祐二は晴れ晴れと言った。
「泣いたりされなかったの?もう倦怠期だったのかな?」
意外だった。こういう時は大概、向こう側では修羅場になっていることが多い。相手の彼女が大泣きしたり、「死ぬ」と言って脅したり・・・・・・。
でも、修羅場になってくれた方が、本当は好都合だったりする。新しい女に目が移っている時の男は、追いかけ回すと余計逃げるものだから。
半狂乱になって、「別れない!」と女が泣くほどに、男の心は冷めていく。新しい女の勝ち目は実はそこにあるのだ。じわじわと、男の心を虜にして、彼女の焦りを掻き立てて、自爆させる。そのほうが、狙う獲物は確実に手に入る・・・・・・。
「泣いたりしなかったなー。もともと、おとなしい子なんだ。夏花ちゃんとは全然違って。でも、もっとショック受けるかと思ったけど・・・・・・」