LITALICO発達ナビがお届けする新着記事一覧 (4/131)
マユユの食べられるものと悩みわが家は私・長女・次女・夫の4人家族で、長女マユユは2歳の時に発達障害の診断を受けています(ASD/自閉スペクトラム症・軽度知的発達症/知的障害)。離乳食はけっきょくあまり食べられないまま終わり、次にはじまったマユユの幼児食。しばらくは目新しいものも口に運んでいましたが、次第に”見慣れないものは口に入れない”ようになっていきました。こだわりや警戒心が強いタイプなので、そこからはなかなか食べられるものは増えず……悩みは増えていきました。Upload By サチコ現在まで安定して食べてきたものは、白ご飯・肉や魚を焼いたもの・果物複数・トマト・スープ2種類など。どろっとした歯応えのないものは総じて苦手な様子なのと、食べ慣れたメニューを繰り返し食べたがります。麺類や粉物などほかにも食べられるものがあるのですが、好んで食べる時期もあれば、まったく食べない時期もあり……こだわりの強さによる波なのかな?と思っています。私自身も今は、苦手なものを克服させたい!という気持ちはあまりなく、その時に食べられるものから栄養がある程度取れればというスタンスではあります。しかし、肝心の「その日食べてくれるもの」が分からないのも大きな悩みです。食べられるものが増えた瞬間そんな食べられるものが増えにくいマユユですが、これまでに何度か「突然食べるようになった瞬間」がありました。Upload By サチコ3歳の頃マユユは、あるアニメを気に入って観るようになったのですが、その中で生野菜を美味しそうに食べるシーンがありました。そしてある日、私がキッチンで野菜を切ろうとしているとそれをちょうだいとマユユが要求してきたのです。(まさかね)と思いながらも少し期待して野菜を渡すと、マユユはパクリと食べてしまいました。初めは「キャラクターの真似をしたい」といった雰囲気でしたが、次第に「食べられるもの」の一つになりました。さらに同じような経緯で、ある日今まで食べなかったハンバーガーにかぶりつき完食。具材とパンが一緒になっているようなものを食べられないと思っていたので驚きました(サンドイッチやホットドッグは、パンだけちぎる、具材だけ食べる感じでまだかぶりつけません)。それからは、ハンバーガーを食べられるようになりました。ハンバーガーについては食べ物の歌でとても気に入っているものがあり、それでとても強い興味を抱いている様子がありました。Upload By サチコ食事が進んでいなかった理由これまで、料理を見た時や料理名を伝えた時はうれしそうなのになぜかあまり食べないな……ということが割とありました。「好きなはずなのにどうして食べないの?」とモヤモヤしながらも、試行錯誤しているうちに分かったことがありました。それは、”手や口が汚れるのを嫌がる”という点でした。マユユは同年齢の子に比べ食具を扱うのが苦手です。焦れてよく手が出てしまうのですが、手が汚れたままでは次にどうして良いか分からず、困ってフリーズしているようでした。Upload By サチコしばらくすると、汚れたらすぐそばのティッシュをとり拭く→食べる→拭く→食べる……と自分で行うようになり、食べ進みが良くなりました。以前は”食具を使えるのになぜ手で食べるのか?”など疑問に感じて、時には叱ってしまうこともありました。しかし今思えば、使えるように見えていてもスムーズに食事ができておらず、本人にとってはストレスだったのだと思います。不器用さを理解してからは”叱っても解決しない”と思い直し、”フォークでぶす!ってしてみる?”のような声かけにして、叱らない、手だろうと食べていること自体をたくさん褒めることに意識を向けました。そうしていると、不思議とマユユが頑張って食具を使ってみる様子や、”最後にもう一口”を頑張ってみたり、反発せずこちらの声かけに耳を傾けてくれることが増えました。成長にともない、褒められてうれしいという感覚も出てきたのかなと思います。最近の様子についてUpload By サチコ現在もまだ外食や給食では”白飯のみ・お肉やポテトのみ”のような具合ではありますが、自宅では見慣れない食材をすすめてみた際に少しかじってみることができる時も。以前であれば「絶対に口に入れない!」という強い意思を感じましたが、本人の内面や人との関わりの面の成長で、ちょっとやってみようかなの気持ちが芽生えたように思います。口にできたからとすぐに食べられるものが増えるわけではありませんが、大きな進歩だと思います。次は、いかに楽しく食具の練習をするか、興味を持ってもらうかを考えているところです。食べること自体は好きな様子なので、マユユにあったやり方で、私も本人もラクな方法で、ご飯を楽しめる道をゆっくり見つけていきたいです。執筆/サチコ(監修:新美先生より)娘さんの偏食問題について詳しく聞かせていただきありがとうございます。サチコさんが本文で説明していただいたように、偏食についてはさまざまな要因が絡んできますね。その一つひとつに丁寧にアプローチして、無理しすぎず食べられるものが増えてきた過程がとてもよく伝わってきました。食事自体を嫌いになったり、警戒モードにしないように、無理強いしすぎず、あきらめずアプローチされる様子が素晴らしいと思いました。しつけ的に厳しく食べさせようとすると、警戒心が増して、かえって拒否が強くなったり、食のこだわりが悪化することもあります。焦らずゆっくり、本人の興味やモチベーションを引き出して、だんだん食べられるものが増えていくというのがよいと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年09月06日勉強についていけない娘。特別支援学級への転学を考えるようになるも……5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けている小学4年生のみき。小学校へ入学する際は、就学相談で知的障害特別支援学級に入るか相談しましたが、IQが入級基準以上だったため通常学級に通っていました。しかし学校の勉強についていけなくなったみきの自己肯定感は下がるばかりで、追い詰められたみきは「学校へ行きたくない」というように。一方母は、学校公開でのみきの様子を見て、少人数で見てもらえる特別支援学級のほうがいいのではと考えるようになったのですが――。マンガ「発達障害の子どもと私たち」みき編第3話Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談教育委員会へ転学希望申請を提出。判定委員会の結果は?Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談ASD(自閉スペクトラム症)小4のみき。希望するも自閉症・情緒障害特別支援学級には入れなくて……発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたストーリー「発達障害の子どもと私たち」みき編第3話をお届けします。ASD(自閉スペクトラム症)のあるみきは、通級指導教室へ通いながら通常学級に所属しています。ですが、小学4年生になり学校の集団授業についていけず、登校渋りが出るようになりました。保護者は少人数で見てもらえる特別支援学級を考え、自閉症・情緒障害特別支援学級を希望したのですが、判定は不可。「クラスが変わればきっと楽になる」と思っていたみきは、その結果を聞いて大泣きしてしまいました。「今のクラスだったらもう学校に行けない」というみき、果たしてこのままみきはつらい思いのまま学校へ行かなければいけないのでしょうか。次回は第4話(最終話)「特別支援学級への転学は白紙に、娘は号泣…しかし「あること」に望みを繋げ教育委員会へ【マンガ発達障害の子どもと私たち/みき編第4話】」ぜひご覧ください。特別支援学級へ転籍するときの留意点は【専門家解説】在学中に通常学級から特別支援学級へ転籍するときには、実際に見学に行き体験してみることが大切になってきます。また、本人の希望や保護者の意見が分かれてしまうのはよくないので、どうしたいか考えを一致させていくことが大切です。通級指導教室は特別支援学級に行くと受けられませんので注意が必要です。一般的には学級を変えるチャンスは年度の始めしかないので、早めに相談を始めておくほうがいいと思います。特別支援学級へ途中で転籍するときには、本人の希望、実際に体験してみることが必要になってきます。もう一つ大事なことは、みきさんの事例のように、特別支援学級の種類に関するところです。一般的に自閉症・情緒の特別支援学級では、通常の学年と同じように学習内容は進行していきますが、知的障害の特別支援学級については、学習の進度は学年相応というようりは本人の発達や学力に合わせて行われます。ただし、みきさんのように自閉症・情緒の学級の条件にも当てはまり、知的の申請条件にも当てはまる場合は、クラスの人数やメンバーとの相性なども考慮してより適切な環境で学習できるように相談していくことが大切です。一般的には学級を変えるチャンスは年度の始めしかないので、早めに相談を始めておくほうがいいと思います。Upload By ユーザー体験談発達が気になるお子さんの就学先、所属クラスなどについて詳しくは以下をご覧ください。【マンガ発達障害の子どもと私たち】ぜひご覧ください。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年09月05日最近の財布事情…Upload By SAKURAUpload By SAKURA中学生になって、自分でお金の管理をしている、ASD(自閉スペクトラム症)の娘。最初は会計の時、金額に合わせて硬貨を選ぶことが苦手で、レジでパニックを起こしていましたが、今は安心して見ていられるようになりました。しかし、財布からお金を出す際……なかなか財布の中の硬貨が何枚あるか、把握できなかったり、さらに指でうまく取り出せなかったりすることが多く、混んでいるレジで時間をかけすぎてしまい、見ていてハラハラすることがあります。『中身が見えて取り出しやすい』のモニターをしてみた!(開発中)Upload By SAKURAUpload By SAKURAUpload By SAKURA今回、LITALICO発達ナビ×フェリシモC.C.Pのコラボ企画で開発中の『中身が見えて取り出しやすいネックウォレット』試作サンプルを使わせていただきました。紐がついていて、首からかけられたり、肩に斜めにかけられるので、ポシェットのような感じ。見た目も可愛いので、ファッションに辛口な娘の評価は◎でした。中の小銭入れやカードケースはスケルトンになっていて、外からでも硬貨がいくらぐらい入っているか分かりやすく、支払い時に慌てなくて済みます。出し入れもやりやすく、紐の調整も簡単でした。また、紐は柔らかいので、小銭を多く入れて、ネックウォレットが重たくなってしまっても、首が痛くなりにくかったです。本が好きな娘は、人からプレゼントで図書カードをもらうことが多く、本屋さんに行く時に図書カードを入れて愛用しています。執筆/SAKURA発達ナビ×フェリシモC.C.Pの、発達が気になるお子さまやご家族が快適に過ごせるための商品づくり第6弾が進行中です。今回SAKURAさんにモニターいただいた『中身が見えて取り出しやすいネックウォレット』について簡単なアンケートを行っていますので、ぜひご協力をお願いします!お寄せいただいた回答を参考に、2025年2月リリースを予定しています。お楽しみに!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年09月04日秋冬は忘れ物の季節…こんにちは!ASD(自閉スペクトラム症)&ADHD(注意欠如多動症)の中1長男、ADHD小3次男、母である自分もADHDグレーゾーンのよいこです。さて、ADHDの特性が強めのわが子たち、そして私には、もうすぐ受難の季節がやってきます……。そう、秋冬は手袋、マフラー、帽子など、防寒のために身につけるものが多くなります。例えばここに座ろうか、ごはんは何にしようか、電車から降りようか……と意識をほかに向けたそのほんの一瞬で、手品のようにモノを失くしてしまうのです……!手袋が片方ない、帽子をどこで脱いだか忘れたなんてのは日常茶飯事。怒るのにも疲れて、失くしたら新しいものを買う、の繰り返しで増える片方の手袋たち……。ため息しか出ません(笑)。Upload By よいこ『忘れ物防止ゴムホルダー』をモニターしてみた!(開発中)そんな中、LITALICO発達ナビ×フェリシモC.C.Pのコラボ企画で開発中の『忘れ物防止ゴムホルダー』の試作サンプルを使わせていただきました。手提げカバンやリュックなどにキーホルダーのように取り付けて1.帽子やマフラーなどを挟んで2.ベルトを引っ張って固定して使用するたった2ステップ、しかも工程がとても簡単なので、手先が不器用な小3次男でもすぐに使いこなすことができました。おかげさまで、注意力散漫でモノを失くしやすい一家が、モノを失くさず秋冬を乗り越えられそうな予感です!Upload By よいこ執筆/よいこ発達ナビ×フェリシモC.C.Pの、発達が気になるお子さまやご家族が快適に過ごせるための商品づくり第6弾が進行中です。今回よいこさんにモニターいただいた『忘れ物防止ゴムホルダー』について簡単なアンケートを行っていますので、ぜひご協力をお願いします!お寄せいただいた回答を参考に、2025年2月リリースを予定しています。お楽しみに!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年09月04日個と環境の相互作用とは「個と環境の相互作用」とは、個人の特性と、場所や人、物といった環境が相互に影響することで、障害や困りごとが現れるという考え方です。また、この考え方のもとでは、それら両方向の視点で働きかけることで、障害や困りごとの軽減を目指していきます。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部LITALICO発達特性検査※でも、この考え方を大切にしています。お子さまの生きづらさや困りごとが「お子さま」と「環境」の相互作用で生まれると考え、監修を担当した検査結果のレポートでも、その立場から環境を調整する方法や、本人のスキルを獲得する方法といったサポートの方法を提案しています。※LITALICO発達特性検査は、お子さまと保護者さまが感じている困りごとに対して、その特性の現れ方や背景、具体的なサポート方法が分かる検査です。オンラインで検査に回答するとすぐに結果が得られ、検査結果によって、お子さまの特性の現れ方の傾向や困っている事柄への対応方法のヒントが得られます。「個と環境の相互作用」の視点で困りごとを捉え、軽減する手段について、いくつか具体例をご紹介します。課題への対応は環境調整や個人のスキルを獲得するなどの方法が考えられます。【個】視力が弱い【困りごと】裸眼で周りのものがよく見えない【環境調整】メガネをかける/文字を大きくする/黒板から近い席にするなど裸眼だと視力が弱くて見えにくい状態でも、メガネをかけて視力矯正したり、見えやすくなる工夫をすることで、困りごとや障害を軽減できます。発達特性に関しても同様の考え方ができます。【個】聴覚過敏があり、ざわざわした音が苦手【困りごと】授業中の周りの音が気になって、教室を飛び出してしまう【環境調整】音が気にならない位置に座席を変える/ノイズキャンセリングイヤホンやイヤーマフを使って苦手な音を軽減する/苦手な音が多い授業では休憩を入れるなど【個人のスキル獲得】苦手な音源から距離を取る/好きなことや集中できることをするなど、苦手な音から気を紛らわす方法を見つけるなど「医学モデル」・「社会モデル」と「個と環境の相互作用」いわゆる障害についてのアプローチには、大きく2つの立場があると言われています。その一つが、本人への治療や働きかけによって困りごとをなくそうという考え方で、これを「医学モデル」と言っています。一方で、障害が周囲の環境によって作り上げられるものと捉え、社会の環境を変えることが障害をなくすことにつながるというのが障害の社会モデルの考え方です。「個と環境の相互作用」は、医学モデルと社会モデルを統合したもので、個人の問題と社会の問題、どちらかだけではないという立場の考え方です。つまり、障害を個人と周囲の環境双方から捉え、状況を全体的に理解することで困りごとや生きづらさを軽減していくということです。これは2001年に世界保健機関(WHO)によって採択されたICF(国際生活機能分類)での主な考え方でもあります。「個と環境の相互作用」を具体的に活かすポイント家庭や園・学校でのお子さまの困りごとに対しても「個と環境の相互作用」の考え方を使って工夫できる場合があります。まずは、個人の特性と環境それぞれを知り、それらの両面から、対応方法を検討します。困りごととなって生じている具体的な行動をピックアップすると、どのように対応するとよいかを考えやすくなります。課題が複数ある場合でも、ある特定の場面の具体的な行動に絞って一つずつ取り組むことをおすすめします。その際のポイントとしては、本人のスキル獲得も合わせて検討することです。前述の聴覚過敏の例のように、環境調整だけでは難しい場合もあるので、双方から考えるといいでしょう。お子さまの特性や状況について、洗い出したり保護者の方が自分で判断したりするのが難しい場合や、対応方法が分からない場合もあるかもしれません。そのような時にはLITALICO発達特性検査を活用すると、理解しやすい情報がまとまって提示されます。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部LITALICO発達特性検査の検査結果レポートを使って、「個と環境の相互作用」の視点で対応を考える方法を具体的にご紹介します。LITALICO発達特性検査では、検査結果の回答から、お子さま一人ひとりに合わせたレポートが出されます。そのレポートも「個と環境の相互作用」の考え方でフィードバックされるものが多くあります。例えば、以下のようなお子さまの困りごとを例に考えてみましょう。・いつもと違うことがあると、パニックになりやすい・スケジュールの変更を受け入れられずに癇癪を起こすなど生活する上では、思い通りにならないことや、予定などの変更が必要になることもあるので、うまく受け入れられるようになってほしい、パニックや癇癪を起こす場面を減らしたいというお悩みのある保護者の方も多いと思います。上記のような困りに対して、LITALICO発達特性検査で表示されるレポートの一例をご紹介します。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部このように、まず、お子さまの特性や、困りごとの現れやすい背景要因が提示されます。ここでは、個の特性と、環境や条件などの相互作用によって困りごとが起きやすいことが分かりやすく紹介されています。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部検査結果レポートでは、単にお子さまの支援目標が提示されるだけでなく、その困りごとが「個と環境の相互作用」によって生じるという基本的な考え方に沿って、お子さま個人のスキルへの働きかけだけでなく、環境調整も視野に入れた対応方法も提案されます。上記のように、環境を調整することで困りごとが起きにくくなる方法など、特性に合わせ、うまくいきやすい対応方法に取り組むヒントが得られます。環境と個の双方向の視点で、お子さまの行動にアプローチ「個と環境の相互作用」の視点で捉えると、お子さまの特性を「いい・悪い」で評価したり、周りの環境を責めたりすることなく、どうしたら困りごとが生じにくくなるかという点に集中して考えやすくなるのではないでしょうか。それが本人と周囲の人、みんなで前向きに考え、困りごとが軽減できるヒントにつながります。お子さまの困りごとについて、実際の場面で具体的に対処法を考える場合、特性と環境のどちらかだけに原因があるかを追及することはあまり意味がないとも言えます。「なぜできないのか?」と責められているように感じたり、お子さま自身も否定されたと感じてやる気や自信を失ったり、逆に頑張りすぎたりして、問題の解決から遠ざかることもあります。それよりも、お子さまにどのような特性があるかを把握し、困っている行動の一つひとつについて、それらの特性と、どのような環境が相互に作用して困りごととして現れるかを考えていくことが、日々の取り組みでは有効です。その際には、環境をお子さまに合うように整えていくことと、お子さまがうまくできるような「個」に働きかけるサポートの両面からのアプローチが大切です。保護者の方が自分で分析するのが難しい場合もありますが、その場合にはLITALICO発達特性検査や専門家への相談などを活用し、できそうなところから少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。
2024年09月03日一生懸命甘えさせても、自己肯定感が育ってくれない娘わが家は姉・弟・弟の3人姉弟、3人共にそれぞれ診断が出ています。一番上の娘は現在中学3年生、11歳直前でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD・SLD(限局性学習症)の診断を受けました。授業中折り紙など別のことに熱中し、気付くとほかの人は別のことをやっていてる……ということが多かった娘。不注意の傾向が強いため、苦手な「ー(マイナス)」がある数学の式は大体間違えます。私が解き方を教えたりして対応しています。私に対してや、信頼している先生にはすごく甘えますが、私が一生懸命甘えさせてもなかなか自己肯定感が育ってくれません。先生たちには「娘はほかの人より愛情で満たしたい器が大きすぎて、いくら頑張ってもいっぱいにならないように感じています」と説明しています。そんな娘は、中学校の一時期学校へ行けなくなる事がありましたが、ある出来事がきっかけで登校できるようになりました。その経験をお話したいと思います。少しずつ積みあがった小学校時代の友だちトラブル。そして娘はストレスで髪を食いちぎるように……娘は、2学年上の近所のお姉さんと一緒に登校していました。こちらは送り出したら一安心でしたが、娘は途中の草花などにいちいち立ち止まるそうで、お姉さんが何度も声をかけて学校に連れて行ってくれたようです。ですので一人で帰る時は寄り道ばかりになり、大人の足で16分の距離を1時間以上かけて帰ってくることもありました。小学1年生の頃、幼稚園の時仲が良かった男の子と一緒に帰るところをほかの男の子たちから「カップルだ」とからかわれ、それ以来男の子が苦手になりました。また休み時間「外で一緒に遊ぼう」と女の子から声をかけてもらった時、「今、本を読んでいるから」と断った娘。それから「女子たちから陰口を言われている気がする」と感じるようになり、クラスで孤立していったようです。仲がいい特定の女友だちの存在が救いでしたが、彼女とは途中でクラスが別れることとなりました。Upload By ユーザー体験談このように、友だち関係でのトラブルが増えて行った娘。小学4年生の時、一緒に学校に行っていたお姉さんが卒業、続いて小学5年生の始めにコロナ禍で休校になった時、限界を迎えました。休校中のある日、末の弟が家のあちこちに髪の毛の束が落ちていることに気づきました。娘がストレスで髪を食いちぎっていたのです。「これはまずい」と思った私は、娘にゆっくりとなにか苦しいことがあるのか話を聞きました。そこでそれまでの友だちトラブル、「もう私、ぼっち確定だ」と嘆くに至った背景を知ることができました。Upload By ユーザー体験談そして、娘は弟が通っていた児童精神科でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)と診断。そこから小学校に相談をして、スクールカウンセラーの先生に話を聞いてもらったり、教頭先生やほかのコーディネーターの先生などにも様子を見てもらいながら、休校開けはどうにか学校へ通うことができました。担任の先生が優しい女性だったのが幸運だったと思います。そこからは仲のいい友だちと同じクラスにしてもらうなどの配慮を受けながら、学校へ通い続けることができました。中学校へ進学。巡回相談、放課後等デイサービスを利用し環境を整え学校へは通えていたけれど……中学校では通常学級へ在籍することになりました。学校との協力、巡回相談、放課後等デイサービスを利用しながら、娘が苦しくない方法を模索し続けました。放課後等デイサービスには中学1年4月から通い始め、学習面のサポートや居場所を作ってもらえました。他校の友だちができたり、料理や裁縫、小物づくりなどで先生に褒めてもらったり、そこにいくと楽しすぎて120%のエネルギーが出るそうです。放課後等デイサービスに行き始めて半年ほどで驚いたことは、爪が伸び始めたことでした。ストレスで爪を嚙むことがある娘は常に深爪で、きれいに爪が伸びた姿を見ることはないと思っていた私。足、手としっかり伸びた美しい爪を見たときは、とても嬉しく、感動しました。担任の先生は巡回相談以外の時間にも細かく娘の状況を教えてくださいました。1年、2年と仲がいい友だちと同じクラスにしてもらえたおかげで、学校にも安心して行けていました。ですが、中学2年生の10月頃から2ヶ月程、急に不登校になりました。中学2年生の秋、突然学校へ行けなくなった娘原因はこれと言い切ることはできませんが、おそらく体育祭を欠席したことだったのかもしれません。体育は苦手ですが頑張って練習をしていた娘。ですが、当日体温が37度になり、喉頭痛もあったことから「新型コロナウイルスかもしれない」と体育祭には行くことができませんでした。それから朝になるとうつっぽくなったり、微熱が出ることが増えました。コロナは陰性だったにも関わらずです。部屋にこもった娘はこのように話していました。・なぜか気分が上がらない。やる気がおきない。自分がだめだと思ってしまう。・友だちがいる学校に行きたいけれど、勉強が全然分からない。・ママに言われて頑張って苦手な数学の通信教育を頑張っても全部バツになってしまう。頑張っても頑張ってもバツになるからとても悲しい。・パパやおばあちゃんにいろいろ言われている。「やらないならもったいないから通信教育をやめろ」「あの子は学校行かないで大丈夫なのか」「また学校休んでる」など1階で話しているのが聞こえる。部屋で動画を見て聞かないようにしている。少しでも娘の気持ちが楽になるようにと、私の姉二人と姉の息子でグループチャットを作り、なにかやったら写真に載せてみんなから褒めてもらったり、AIとおしゃべりできるアプリを利用したりしました。病院でさまざまな検査をしましたが、身体的な病気はありませんでした。心の問題かもしれないということで、かかりつけの精神科と相談し投薬を調整、12月から朝行けそうな様子であれば、1時間や2時間ほどの短い時間、学校に行くようになりました。私が学校まで送り、帰りは自力で帰り、できたら褒めるを繰り返しました。初めて学校へ復帰した日は、仲良しの友だちと休み時間に抱き合って再会を喜んでいたと、当時の担任先生から教えてもらいました。学校へ行きたいのに、さまざまな苦しみを抱えて行けない娘。やっと友だちに会えてよかった……と感無量でした。Upload By ユーザー体験談「学校へ戻らないと」スイッチが入った娘が始めた「あること」中学3年生に進級する前の3月のことです。娘より年上の従兄は高校に進学を控えていました。従兄は雑談の中で娘に「高校に行くには遅刻も欠席もしちゃだめなんだよ」と言ったそうで、これを聞いた娘は「自分で学校へ戻らないと」と、スイッチが入ったようでした。ある日娘は「春休み中、ママのお弁当を作るね」と言い出しました。インターネットでお父さんのお弁当を作る娘の動画を見て、自分もやってみようと思ったそうです。「今まで7時に起きられなかったけど、もっと早く起きることになるよ?」と言うと「やってみる」と娘。朝6時に起きてお弁当を作る日々が始まりました。パパが「いいな~。ママだけ」と言うので、「じゃあパパの分もおまけで作ってあげる」と夫の分も作ってくれる事になりました。そして4月、学校が始まってからも6時になると自分で起きて野菜を切ったり、炒めたりしてしっかりしたお弁当を作り続けてくれています。中学1年になった弟の弁当も加わりました。娘はお弁当の残りを自分の朝ごはんにして、身支度をして7時40分に家を出発。遅刻することなく登校する生活ができるようになりました。「今のところ無遅刻無欠席だからこれからも頑張る!」と言って……。Upload By ユーザー体験談自分で決めて一歩踏み出した娘なにがきっかけになるか分からないですが、本当に嬉しいです。これがさまざまなやる気につながるように、よく褒めて見守っていきたいと思います。ただ、頑張りすぎて疲れてしまうことも当然あると思います。そんなとき、娘の安全基地でいられるよう、娘の様子には目を配っています。これからどんどん大人になっていく娘。自分の力で自分のやりたいこと、なりたいことに真摯に向き合って、夢をかなえて幸せになってほしいです。自分に自信をもってチャレンジする力を持ってほしいです。その一歩に今、立ち合えている気がします。娘のお弁当に私は毎日幸せと元気をもらっています。イラスト/ネコ山エピソード参考/まんまゆうまま(監修:鈴木先生より)ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんはこだわりが強い傾向にあります。そのルーティンをやらないと気が済まないのです。そのために、からかいやいじめのターゲットになりやすいという面があります。今回は従兄との雑談が功を奏したようですね。ちょっとした一言にこだわり、結果登校できたのならばそれで良しとしましょう。そして、お弁当作りもたまたまインターネットを見て自分でやってみようと考えたのは立派なことですね。なお、お弁当作りや無遅刻無欠席もこだわりがあれば継続できますが、ちょっとでも寝坊したり、遅刻したりした場合はその法則が崩れてしまう可能性も秘めています。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんはほかの子同様、自分の思った通りに事が運み、その結果親から褒めてもらうと機嫌よく過ごすことができます。それが継続できるようにお母様は日々娘さんを見守ってあげてくださいね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年09月03日学校に何をどこまでお願いできるの?学校生活や授業でわが子が困っていて学校にお願いしたいことがあるけれど、忙しい先生にどこまでお願いできるのか、どうやって伝えたらよいか悩むこともあるかもしれません。発達ナビのQ&Aコーナーでも、学校での支援や合理的配慮についての質問が複数寄せられています。小学校へ合理的配慮をされた方の学校・担任・校長へのアプローチの仕方等経験談を聞かせていただきたく投稿させて頂きました。うちの息子は、小4男子で、授業中机の上に教科書・ノートは出さない、成績は低い、九九は言えない、テストは受けない、割り算のやり方が時々わからなくなり、勉強の遅れが心配です。公立中学での合理的配慮、どんなことをしてもらっていますか?(略)これから話し合いが行われますが、学校には「前例がない」と何度も言われており、前例がないなら作りましょう、と言っても呆れられている状況です。小学校の先生に、席変えについて配慮をお願いすることは非常識でしょうか?正直、あまり期待できそうにもなくて、、、辛い気持ちです。2年生の男の子で、高機能自閉症の診断済みです。※以前は、自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などいろいろな名称で呼ばれていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断名になりました。小学校に入学すると、これまでの園生活に比べて担任の先生と直接お話しする機会がぐんと減ったという方も多いのではないでしょうか。小学校、中学校、高等学校と学年が上がるにつれて、保護者と学校との直接の接点は少なくなりやすいものです。そんな中で、学校へ支援や配慮のお願いをするというのは、保護者にとっても勇気が要ることかもしれません。今回は、学校との連携がうまくいくコツについて、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生にお伺いしました。学校へお願いしたいことがあるとき、どうしたらいい?A:学校との連携は、保護者から先生に相談するところから始まることが多いと思います。最初に相談する相手は、基本的には担任の先生になるでしょう。ただ担任の先生だけでなく、各学校に配置されている特別支援教育コーディネーターという役割の先生に相談してもよいかもしれません。特別支援教育コーディネーターは、校内の特別支援教育の推進のため、主に以下の役割を担っています。・校内委員会の企画・運営・関係諸機関・学校内関係者との連絡・調整・保護者からの相談窓口学校へ相談をする際には、初めにどんなことに困っているのかをお伝えしつつ「どうすればいいか悩んでいる」旨を率直にお話するとよいかもしれません。そこから話し合いがスタートして、お子さん本人や保護者の願いと、その学校での人的・物的環境において実行可能なこととをすり合わせていく作業になると思います。例えば「国語のノートをとることが難しい」という場合、ユニバーサルな支援として、クラス全体に・穴埋め式プリントを配る・黒板を書き写す量を減らすなどの対応がとられることもあります。また合理的配慮として、「ノートテイカーを置くことは難しいけれど、タブレットで写真を撮るのはどうか」などのように、いくつかの案から学校としても持続可能でお子さんにとってもよい対応に調整していきます。学校での支援や配慮を検討していく際に、最も大切なポイントは、お子さん本人の意志を尊重し、取り入れていくことです。例えば、「国語のノートは、タブレット端末を使う」と学校と保護者の間で合意していても、お子さん本人が「クラスの中で、自分だけタブレットで写真を撮りに行くのは嫌だな」と思うかもしれません。そういった場合には、まずは他の目立ちにくい場面で使ってみて、お子さん自身が良さを体感し「国語のときも使いたい!」と感じてから、国語の場面でも使ってみる、というプロセスもあるかもしれませんね。支援や配慮は「一度決めたらOK」ではなく、[Plan-Do-See(計画、実行、見直し)]の観点で調整していくことも大切です。まず試してみて、あまりうまく行かなかったら次の手を考えていきます。お子さんも成長しますし、周囲も変化する中で、困りごとの内容や深刻度も変わってくるかと思います。その意味でも、定期的に見直し、お互いにより良い形になるよう調整していけるとよいでしょう。学校との話し合いの際に、次回の話し合いをいつにするかを決めておけると、定期的な見直しの機会を持ちやすくなります。Upload By 発達障害のキホンなかなか支援の話が進まないときには?A: 支援や配慮の内容によっては、担任の先生だけでは判断しにくいこともあります。他の先生にも知っておいてもらうほうがよかったり、学年や学校全体で取り組んだりすることもあるでしょう。そのような場合は担任の先生だけでなく、特別支援教育コーディネーターや、学年主任、管理職の先生などと共に話し合いをすることもあります。教室外でのサポートがあるとよい場合には、養護教諭や特別支援学級の先生などと連携していくこともいいと思います。学校外での支援機関を利用している場合には、そのような支援機関のスタッフに入ってもらってもいいかもしれません。保護者側も一人ではなく複数人で出席する場合もあります。保護者と学校側で「一対複数」となると、やはり保護者側の負担が大きく感じられることもあるので、可能であればご両親やご家族で参加されるとよいかと思います。お子さまの祖父母の方が一緒に来られる場合もあります。ほかにも各校を巡回しているスクールカウンセラーや、自治体によっては学校内での支援体制について独自の制度を設けている場合もあります。例えば横浜市では、「児童支援専任」「生徒指導専任」という役割の先生を全校に配置しています。お子さんが学校で困ったときに、安心して話せる先生が複数いると心強いと思います。お子さん・保護者共に、学校で頼れる相手を見つけていけるとよいでしょう。Upload By 発達障害のキホンまとめ学校へ支援や配慮のお願いをするというのは、保護者にとっても心理的負担があるかもしれません。しかし「お子さんがより学びやすく・過ごしやすくなるように」という願いは、きっと保護者と学校で共通の部分だと思います。「保護者が要求する→学校がYES/NOを判断する」というものではなく、あくまで「すりあわせる作業」になるので、保護者からは「何をやってほしいか」だけでなく「何に困っているか」を具体的にお話していくことがポイントです。また個人に対する合理的配慮というよりは、クラス全体へのユニバーサルな支援で解決する場合もあります。お子さん本人の気持ちや意志を大事にしながら、お互いに無理なく継続可能な方法を見つけていけるとよいでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年09月02日夏休み前、幼稚園の面談。ASD(自閉スペクトラム症)の息子には、心配なことがたくさん……!担任の先生との面談を控えていた私は、相談することや質問することをまとめていました。幼稚園の年中に進級したたーちゃんですが、いくつか心配なことがあったからです。・進級してから登園渋りがしばらく続いたこと・友達が遊んでくれないと漏らしていたこと・クラスの活動が難しくなってもついていけているのか・自宅ではわがまま放題だが幼稚園では大丈夫かなどなど……。Upload By みかみかんたーちゃんがASD(自閉スペクトラム症)だということは、年少の頃から幼稚園に伝えていました。診断書を提出したあとも加配はありませんでしたが、年少では大きなトラブルはありませんでした。いよいよ、面談の時間。想像していたより、幼稚園では頑張っているみたいでひと安心……?和やかな雰囲気で始まった面談。担任はベテランの先生です。面談の間は、たーちゃんは幼稚園の体操クラブに行っていたので、本人の前では話題にしづらいことも質問できました。・登園渋りについては、クラスに入って少ししたら泣き止んで、その後は楽しく活動できている・友達が遊んでくれないと言っていたが、最近は仲良しのMくん以外のお友達と遊ぶこともある・クラスの活動も、ワンテンポ遅れることはあるが、気になるほどではない・幼稚園ではしっかりしていて、自分でお支度もできている……とのことで、たーちゃんなりに頑張って適応しているのだなと知ることができました。先生からの質問に、戸惑う。私の叱り方が悪い……?私が心配していたことはとりあえず様子見で大丈夫そうだ、とホッとしたのもつかの間。最後に先生から私への質問が。「ご家庭ではどういうふうに叱ったり注意したりしていますか?」Upload By みかみかん私は質問の意図がすぐには分からず、答えに詰まってしまいました。「強い言葉で叱ってしまったから、お友達に悪い言葉遣いをしている?」「私の叱り方が悪いから、何かトラブルがあったのかも?」と、内心焦ります。「あまりにも言うことを聞いてくれないと、本当は脅しみたいでダメだと思うんですけど、『先にお風呂に入らないと遊べないよ』とか、『嫌なことをする子とは遊びたくありません』とか言ってしまいますね」質問の答えになっているか不安でしたが、嘘偽りなく伝えました。注意されているのが分からない?叱られているのが分からない?「クラスでちょっとしたトラブルがあって、たーちゃんを注意した時なのですが……」と、先生は続けて話してくれます。「注意されているのが分からない、叱られているのが分からないみたいで」「どうやってたーちゃんに伝えたらいいのか、相談させてほしいんです」確かに、自宅でもたーちゃんは注意がなかなか入っていかないことがほとんどでした。叱られている時もへらへら笑ってふざけて、なぜ叱られているのか理解できていない態度をとるのです。怒られていたり、叱られていたり、嫌がられていることが、本人にはあまり伝わっていなさそうだな、と私も気づいていました。それは、特性のせいで、相手の表情や雰囲気を読み取ることが苦手だからかもしれません。それでも、幼稚園で頑張りすぎているから自宅では甘えているだけだと私は思っていました。自宅ではできてないことも外ではできていることが多かったので、この「注意が響かない」ことも、外ではできているものだと、深く考えていませんでした。Upload By みかみかん「そうなんです。なかなか謝れないし、悪いことをしたと自覚できていないみたいで」「自分のデメリットになることではないと、謝れないみたいなんですよね」「だから、『嫌なことをする子とは遊びたくありません』みたいに脅しになってしまって……」と、私は先生に注意の仕方について自宅でもどうしたらいいか悩んでいることを話しました。そして、「短い言葉で分かりやすく、その場で注意することを心がけています。対処法が合っているかは分かりませんが……」「今度発達外来で相談してみるので、アドバイスをいただけたら共有します」と先生に伝え、幼稚園の面談は終わりました。悪いことをしたと自覚できない……?どうやって注意したらいいの?発達外来で教わった対処法。Upload By みかみかんその後発達外来でこの件について相談したところ、・注意されたことについて、本人がどう思っているのか聞いてみる・自分がもし注意されたことをやられたらどう思うのか聞く・どうしてそれが悪いことなのかを教える・人付き合いの方法を本や動画で知識として学ぶという方法もあると教わりました。一朝一夕では解決しない問題かと思いますが、たーちゃんを含め周りの人が嫌な思いをしないためにも、夫や担任の先生、療育の支援員さんにも共有して、じっくり向き合おうと取り組んでいます。執筆/みかみかん(監修:初川先生より)たーちゃんの「なかなか謝れない」エピソードの共有をありがとうございます。まず、幼稚園の先生との面談にあたって、聞きたいことをまとめられ、限られた時間を有効活用できるようご準備されているのがさすがですね。気になっていることを先生に聞いてみると、今回のように園ではうまくやれていたり、すでに解決済であったりします。子どもが日々成長している、先生方もお子さんの様子に対応できているからこそと思います。園の先生から質問されると、どうしても構えてしまうものですね。家庭での対応が間違っているのではと一瞬にして頭をかけめぐる感じ、多くの方が心当たりがあると思います。ただ、実際には、今回のエピソードのように、家庭での様子・対応を聞きながら園や学校での対応に活かしていきたいという主旨で聞かれることが多いと思います。まさに「一緒に考える」ということ。面談でそこがなされるのは何よりです。さて、「注意されているのが分からない」ように見える件ですが、これはさまざまな状態があるように感じました。たーちゃんが状況を正しく認識できていないこと。特性由来で相手の表情や雰囲気が捉えづらいのもありそうですし、そもそも年中さんなので状況の認識自体がまだ未熟な面もあるかもしれません。また、注意されているのが分かっていたとしても、その場に応じた表情や言動、態度を取ることができるかどうかということもあります。困ったときに泣いたり、困った表情、申し訳なさそうな表情をしてくれたりすれば周囲はきっとこの注意は届いているんだなと感じますが、そうとは限らない面もあると感じます。怒られて居心地が悪いけれど、どんな表情をしていいか分からないからへらへらしてしまう、そもそも自分の表情まで意識が向いていないなどあるだろうと感じます。発達外来の先生のご助言のように、まずはたーちゃんの認識や思いを聞いてみることは大事です。ただ、その際に適応的な答えとはずれたものが出てくる可能性があります。よくあるものだと、「ぼくは(同じことをされても)嫌じゃない」のように、自分は嫌だと思わないから、相手が嫌な思いをしていることがよく分からないといったものです。強がりで言っている場合もありますが、本当に「相手の立場に立って考える」のが苦手であったり、本当に「自分にとっては平気」な場合もあったりします。そういうときには、周囲の大人はそれを叱ったり注意したりするのではなく、「相手の子は○○されて嫌な気持ちになったんだよ」「○○されると悲しい気持ちになるんだよ」と教えてあげるといいでしょう。そして、相手が嫌な気持ちになったというときは、「ごめんなさい」と言うんだよということも教えてあげるといいと思います。そうしたことが誰に教わるでもなく、自然と状況を見ながら学び取り身につけていく子もいますが、そうでない場合には一つひとつ教えてあげましょう。そしてそのように行動できたときには、「うまくできたね」「いいね!」と承認します。状況の認識の仕方、状況に応じた言動など、子どもがまだ「知らない」(未学習)ゆえにつまずいている場合には、叱る・怒る必要はなく、教えてあげることが最初の一歩になります。まずはお子さんがどの段階まで至っているのか(状況の認識ができているか、相手の気持ちを想定できているか、注意されたときに自分がどんな言動を取ったらいいか知っているか、謝り方を知っているか、謝ることができるかなど)の確認からぜひ、と思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年09月02日科学への憧れ身も心もボロボロになるほど受験勉強に明け暮れた私ですが、受験のための勉強以外で、大好きだったものがあります。それが理系の分野の学びです。思い返せば、小学生の頃から科学の本が好きでした。母が毎月とってくれていた学習雑誌の科学編を3学年上の兄のぶんまで奪って読むほど、科学に夢中。科学分野かどうか明記のない学習雑誌でも、より熱心に読んだのは物語よりも科学の分野のものだったように思います。身の回りのちょっとした自然現象にも強い興味を持ち、いつも「なぜだろう」と考えていました。中学校の理科で湿度について学んだ時、「なぜ冷たい飲み物を入れたグラスの表面に水滴がつくのか」「なぜ冬の寒い日、窓に結露が浮かぶのか」について初めて納得のいく答えを得て、ものすごく興奮したことを今でも覚えています。鼻血が出るほど科学が好き科学は、一見バラバラに見える世界が、整然とした、そして途方もなく大きな時間的空間的スパンの法則のもとに動いていることを教えてくれます。ASD(自閉スペクトラム症)の少女だった私にとって世界は、いろいろなことがランダムな脅威に感じられる、怖いところでした。自分のことも、まるで「世界からぽっかり浮いた正体不明の宇宙人※」のようで、とても怖かった。※宇宙人という感覚はASD(自閉スペクトラム症)の人がよく抱くといわれていますが、「世界からぽっかり浮いた」というのは、私の二次障害である解離の傾向と関わっていたのかもしれません。その恐怖から逃れたくて、理解可能な規則に基づく安心や納得感、見通し、コントロール感を強く求めていました。そんな私にとって、科学は救いに近いものだったのです。中学に入って最初の理科の授業で先生がしてくれた、位置エネルギーについての話は今でも強烈に心身に残っていて、思い出すと身体中がゾクゾクします。先生が語ってくれたのは、こんな感じの話でした。(私に物理の専門知識はないですし、細かいところは忘れているので、誤った内容が含まれるかもしれません)今、あなたたちはそこに存在して座っているだけで、大きなエネルギーを抱えているのよ。たとえば、私達は今2階の教室にいるけれど、ここの床が急に抜けたらどうなると思う?あなたたちは1階の床に落ちるわね。床に落ちた瞬間、ドーンと大きな音もするかもしれない。落ちた衝撃で1階の床に傷がつくかもしれない。あなたたちがもし、何トンもある重たい物体だったらどうかしら。クレーターができるかもしれない。衝撃波が出て周りのものが吹っ飛ぶかもしれない。落ちたときの強い摩擦で煙や火が出るかもしれない。これが位置エネルギー。あなたたちがそこに静止していられるのは、床があなたたちの体重を支え続けているからにすぎないのよ。私は、周りからぽっかり浮いた存在だと思っていた自分が、宇宙を貫く大きな大きな物理法則に「縛られて」ここに存在しているのであり、まったくもって「世界と無関係」などではなかったのだ、と思い、たいへんに感激しました。そして、「あなたたちはそこに存在して座っているだけで大きなエネルギーを抱えている」という表現は、単に物理的な話としてだけではなく、比喩的な、詩的な話としても響きました。「私は存在しているだけで大きなエネルギーを抱えているんだ、良くも悪くも世の中に影響しているんだ」と思うと、自己否定感の強かった私は、何か強烈に鼓舞されるような感覚を覚えるのでした。マッドサイエンティストになりたかった学校では理科の実験用にお揃いで白衣を買うことになっていたのですが、私はこの白衣が大好きでした。高校の頃、用もないのにそれを羽織ってノシノシと校内を練り歩き、何をするともなく理科室に入り浸っていました。クラスメートが「異常に似合う!」とか言ってくれて、それで気をよくしていた思い出があります。言い伝えられている強烈なキャラクターも合わせて、相対性理論のアインシュタインが憧れの人。理系雑誌を愛読し、実験器具をインテリアとして集め……そんな自分にある種のアイデンティティを感じていて、いつかマッドサイエンティストになりたいと思っていました。あるとき、愛読していた科学雑誌で「誰でも分かる!特殊相対性理論特集」みたいな記事があり、それを血眼になって読んで特殊相対性理論の概要を理解しました。面白すぎていてもたってもいられなくなって、特に仲がいいわけでもないクラスメートをつかまえて30分間かけて一方的に講義したことがあります。もうこの特殊相対性理論の一方的な講義については、何度思い返しても本当に、ASD(自閉スペクトラム症)の私らしい言動だったなと思います(笑)。当時は「クラスメートは面白いと言ってくれた!よいことをした!」とご満悦でしたが、よく思い返せば彼女は断りきれずに我慢して聞いてくれたんだと思います……。泣く泣く文系へそんな私でしたが、高2の時の文理選択ではなんと文系に進み、大学も文系を選びました。だって、絶望的に数学ができなかったんです。物理、化学、生物……誰よりも前のめりで、目をギラギラさせて、鼻血が出そうなほど興奮して授業を聴いているのに、あまりに数学ができないため、テストでは点がとれない。数学、泣きながら必死で勉強して13点をとったことがあります。こんなことでは、仮になんとか受験では受かっても、その後ついてまわる数学に苦労したり、挫折したりするに違いない。悩んだ末、国語や英語は成績がよかったため、文系に進むことに決めました。進んだのは文学作家になるコースでしたが、授業が始まった瞬間、自分には文学に全く興味がない、ということに気づいてしまって愕然としました。同時に二次障害が悪化したのと、家庭環境の悪化も顕著になったのとで、結局勉強にはほとんど集中できないまま4年間の大学生活を終えてしまいました。私は「どの有名4年制大学に行くか」みたいな話しか出てこないような進学校にいたので、高等専門学校というものを知らなかったのですが、30代になって自分の発達障害を自覚したあと、初めて知ることになりました。文系の大学に進まず、理系の高等専門学校に進むなどしていたら、もしかするともっと社会適応できていたかもしれない、と思うことがあります。それでも、今はこれでいいけれど、人生は効率ばかりではありません。私は理系に進まずに人生を「遠回り」したことで、人生をより深めることができたのではないかと思っています。たまたまですが、結果的に今、文章を書くにしろ日本語を教えるにしろ、「言葉を扱う」という人文的なことを仕事にしていることもあり、私の人生はこれでよかったのかもしれないな、と思っています。理系の世界への憧れは、化学の構造式をモチーフにしたアクセサリーを身に着けてニヤニヤするとか、変わった温度計をしげしげと眺めてしきりに感心する、生成AIの活用に没頭する、化学の知識を家事に活かす、などといったことに残っています。文/宇樹義子(監修鈴木先生より)一般的にASD(自閉スペクトラム症)の方は理系に進む方が多いのが現状です。小学校の時は国語が苦手で算数が得意だというのがASD(自閉スペクトラム症)のお子さんにはよく見られる傾向です。例外は限局性学習症(算数不全を伴う)の計算障がいです。国語が苦手なお子さんは算数の文章題が苦手になりやすいですが、算数が苦手なお子さんは計算自体が苦手なので算数の成績だけが悪くなります。そういうお子さんがIQテストを受けると、知覚推理のところだけ数値が低く出るかもしれません。数学が不要な理系もないこともないのですが、科学が好きなら、科学に関した言葉を扱うような文系の仕事が向いているのかもしれません。大学入試も理系から文転する人も多いですが、その逆は理数系教科の影響のため難しいことが多いです。理系っぽい文系がいても悪くはありません。むしろそういう人だからこそできる仕事もあるのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年09月01日中学校のギャップについていけず、少し落ち込むハルわが家の長男ハルは、小4の時にASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)と診断されています。中学生になったハルが最初に戸惑ったのは「制服」でした。制服がダボダボで重いこと、暑い日でも衣替え前は校則上学ランを着ていかなければならないことへの不快感を、私に訴えていました。また、中学生になって初めて着けたベルトの感覚にも慣れないようでした。重い鞄をロープで荷台にくくりつけての自転車登校も「校則」だったのですが、慣れるのに時間がかかり、よく転んでいました。Upload By 安田ふくこさらに、「部活動」でも戸惑いがありました。スポーツが苦手だったハルですが、わが家が暮らす地域の中学は必ず運動部に入らねばならず、バスケットボール部に入部しました。バリバリ「体育会系」の顧問の先生と相性が良くなく、よく怒られていたようです。・先輩よりも先に水を飲まない・自分が受け持ったノルマや、部活後の掃除が終了してもそのまま終わりにせず、周囲を見渡してほかにやることがないか探すなど、『暗黙の了解』として特に言われなくともほかの部員たちがやっていることが、ハルには分からないことが多かったです。Upload By 安田ふくここれは「どうして良いか分からない」状態なのですが、周囲からは「やる気がない」と捉えられてしまい、本人は苦しんでいました。さらに、「定期テスト」も大きなハードルでした。中学校では一度に全教科、広範囲の内容が出題されます。初めての定期テストで思いのほか点数が低かったことに、少しショックを受けていました。小学校では範囲も単元ごとだし、記憶力だけでそれなりの点数がとれていたので、初めての定期テスト後は自分のできなさに驚きを隠せない様子でした。さらに中学では『順位』という、分かりやすい数字で自分の立ち位置が分かります。中学校生活が始まって早々、数々のギャップに落ち込んでいるようでした。中学生、親はどこまでサポートすべき?迷いつつも私がとった行動は……そんなハルの様子を見ていた親の私は、とりあえず、部活の先生にアポイントを取りつけ、本人の特性について話をすることにしました。すると、入学前にも教頭先生や養護教諭に面談をお願いして話をしておいたのですが、先生内で周知されていなかったことが分かりました(あとから周りの話を聞くと、そのようなケースは多かったようです)。そのため、特に接触の多い部活の顧問や、担任の先生には、改めて入学後にも親から個別面談を申し込むなりしたほうが良かったのだな……と思い知りました。Upload By 安田ふくこ学習面では、中学生になってまで……との考えも頭をかすめましたが、その気持ちは横に置いておいて、日頃の勉強やテスト対策に、最初から「中1の2学期までは」と決めて付き合いました。期限を決めることでこちらも心に余裕ができますし、ハル本人には「あとはなるべく自分で!」という気持ちが持てると思ったからです。一問一答形式を繰り返すことで、記憶力が必要な歴史や地理、国語の漢字などは成績がアップすると、本人も分かってきたようでした。英語はまず親しむことから……と、ポップスで英語のみの歌詞を良く聞くようになりました(コレはそのとき英語に興味があった弟からの提案でした)。親しむ、楽しむという点において、それは大正解でした。数学は元々好きな教科だったので、ノータッチでも自分で勉強を進めていました。そんなふうに、自分の特性や得意と苦手のバランスを見て、いろいろ親子で試行錯誤した結果、主要5教科の成績に関しては学年の中でも上位の成績になり、ハルのやる気もぐんとアップしました(不器用ボーイなので、美術や技術・家庭科など実技4教科の成績は、相変わらず底辺のあたりをさまよっていました……)。中学生になる直前、分かった目の特性ハルが中学校に入学する以前から、よく光を異様に眩しがることがあり、私は気になっていました。本人もつらいと訴えるようになったので病院を受診してみると、これは光過敏という症状で、目で光を感じやすい敏感な体質だということが分かりました。受診結果を持って担任の先生や部活の顧問と相談した上で、帽子をかぶらせてもらう、座席を光の影響が受けづらい場所にしてもらう、屋外練習などで光に当たりすぎてつらくなったら、一時的に休憩をさせてもらう、などの配慮を学校で受けられるようになりました。高校受験の際にも、学校に願い出て校長から話をしてもらい、合理的配慮を受けるための書類を提出して、窓際ではない席で受験させてもらうなどができました。Upload By 安田ふくこ本人に聞くと、「小さな頃は『眩しいのが当たり前』だと思ってずっと我慢していたけれど、周囲と比べてもどうしてもおかしいと思った。中学生になって、やっとどれだけツラいかを言葉で伝えられるようになった」とのことでした。障害というほどではないけれど、人より敏感な部分があり日常的に困っている……そんな言葉で伝えるのが難しかった自分の症状を、12、3歳になってやっと言語化できるようになったのでした。高校に合格し進学した後も、校則上の服装にはない、帽子やサングラスなどを使うため『異装届』を学校側に提出して許可をもらうなど、特性からくる困りごとへの対策は今も続いています。そんなハルですが、困りごとを自分の力で克服したこともあります。中1までは足がとても遅く、協調運動も苦手なことがコンプレックスでしたが、「そんな自分を変えたい!」と中1の秋からランニングを始めました。Upload By 安田ふくこそれからは毎日4キロ走るようになり、中2から駅伝選手にも選ばれるようになりました。これは、「一度決めたら曲げられない、ルーティンにこだわる」というASD(自閉スペクトラム症)の特性が、良いほうへ作用したのかもしれない、と見ていて感じました。特性を理解して自ら強みに変えたり、どうしても困ったときは周囲に助けを求めたりできることも、人としての成長の一つなのかなと、私は感じています。今現在、あくまで見た目ではふつうの高校生。身長は私よりもずっと高くなってとても大人っぽく見えるけれど、コミュニケーションスキルに関しては、やはり周囲の同年代よりもずっと苦手です。「好きなこと」や「趣味」も、まぁほかの子どもと同じような部分もありますが、特定のものにこだわりが強いのは相変わらずです。Upload By 安田ふくこ親の私も忘れがちですが……どうしても譲りたくない自分のこだわりや、ルーティンを大事にするからこその「初めてのこと」への柔軟性のなさ、適応力の乏しさなど、まだハル自身の課題は多くあるのだなと感じます。それをハルが自ら認めて受け入れたり、周囲に理解してもらうためにも、自分もまた周囲を理解しようと努力する……大人になるまでに少しずつでもそうなっていけるよう、今後も見守っていこうと思っています。執筆/安田ふくこ(監修:室伏先生より)ふくこさん、ハルくんの中学生生活における困りごとと、それに対する工夫や支援、その結果について詳しく共有くださり、ありがとうございます。小学生、中学生、高校生と年齢が上がるにつれて、どの程度家族が関わっていくのが望ましいのか、お悩みの親御さんも多くいらっしゃることと思います。ふくこさんが書いてくださった、「特性を理解して自ら強みに変えたり、どうしても困ったときは周囲に助けを求めたりできることも、人としての成長の一つ」というお言葉、多くの親御さんに届いて欲しいと思いました。「自立」という言葉には、「周りからの助けを受けずに自力で生きていくこと」の意味もありますが、福祉の分野では、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」「自分の能力を活用して社会活動に参加すること」と定義づけられています。自分の苦手なこと・不快なことを知ること、自分の得意なこと・好きなことを知ること、そしてそれを周りに向けて表現して必要な支援を求めたり、自分に合ったやり方を模索したりすることは、とても大切な自立への歩みです。全てをこっそりとやってあげてしまうのではなく、どんなことになぜ困っているのかについて話し合うことや、生活しやすくなる方法や支援の求め方を本人にも知ってもらうことは、自立に向けての手助けになるかもしれません。ハルくんは、ご自身の気づき、そして努力と、ご家族のサポートによって、自立への道を着実に歩かれていますね!これからのハルくんを、私も応援しております。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月31日北海道児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報Lii sports studio札幌北4条は、2024年9月1日にオープン予定の児童発達支援施設です。大きく体を動かすことで、動きの「多様化」×「洗練化」を目指し、さらに「脳」「神経系」「体幹」「言語」「ソーシャルスキル」「ボディコントロール」などの発達を促しています。できたことはもちろん「挑戦したこと」をたくさん褒めながら運動すること、そして自分のことを大好きになってもらえるようアプローチしています。ただいま、見学・内覧会も開催しているそうです。にかく明るく楽しいコーチがお待ちしております!北海道の児童発達支援をもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報ヒトツナ河内山本教室は、2024年8月にオープンしました。「人との繋がりを大切に」「人との繋がりをもっと楽しく」豊かな感受性と表現力を育てます。他者とのポジティブな関わりのなかで生まれる「こうなりたい!」「これがやりたい!」というお子さんの気持ちを大切に、成長を一緒に伴走する教室です。スタッフは、みんなで考え、意見を交わしながら質の高い支援者になるための研修を行っています。お子さんが発する思いや、行動の背景に隠れた願いに目を向け、その子の感情表出、自己決定の手助けができるよう関わっているそうです。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる大阪府児童発達支援Upload By 発達ナビ施設情報蒲生四丁目にこにこツリーハウスは、地下鉄 蒲生四丁目駅から徒歩5分のところにあります。発達支援の目標に掲げているのは、1.安心する居場所となる 2.達成する喜びを保護者・子ども・職員と一緒に感じられるように支援する 3.大人になった時に豊かな生活に繋げていけるように社会性を育む です。子どもたちが社会で生きていくための「力」を身につけられるよう発達のサポートを行っています。無理なくお子さんのペースで発達支援を行い、「自分にはできる!」「1人で、できた!」を増やして、自主的に「やりたい」気持ちを育てていきます。大阪府の児童発達支援をもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、Webからお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2024年08月30日子育てアイデアが満載!『子どもが発達障がいだとわかったときパパがやること全部』Upload By 発達ナビBOOKガイド著者の橋謙太さんの娘さんは、3歳のときに発達障害があることが分かりました。本書は、現在22歳になった娘さんを育て上げた橋さんご自身の経験から、父親が主体的に子育てするための「仕事・家事・育児」のアイデアをたっぷり盛り込んだ、発達障害児の父親による育児本です。娘さんの障害が分かった時から就職するまでを振り返りながら、家計のやりくり、保育園・幼稚園・地域との関わり方、母親や祖父母とのコミュニケーションのコツ、小学校選びのポイントまで、具体的に解説しています。橋家の子育ての様子がマンガで紹介されているほか、6つの家庭の体験談も掲載。リアルな子育ての情報を参考にすることができます。園や学校とのやり取り、療育や病院の利用など、まだまだ母親の出番が多くなりがちな発達障害児の子育て。仕事が忙しい父親の育児参加はあきらめている……というご家庭もあるかと思います。しかし、本書をきっかけに、一度立ち止まって「なんのために働くのか?」を考えてみることで、生き方や家族のあり方まで変わるかもしれません。「親なきあと」の課題に向き合う渡部伸先生の新著『Q&Aと事例でわかる障害のある子・引きこもりの子の将来のお金と生活』Upload By 発達ナビBOOKガイド発達ナビでも多くの記事をご執筆・ご監修くださっている渡部伸先生は、行政書士や社会保険労務士などの資格を持つ専門家として、障害のある方やそのご家族を支える”「親なきあと」相談室”を主宰されています。渡部先生のもとには年間100件以上の相談が寄せられると言います。相談者は障害のある子どもを持つ親だけでなく、きょうだいや親族、本人である場合もあるそうです。そんな渡部先生のご経験をもとに書かれた本書は、障害のある子や引きこもりの子の将来を支える制度や仕組みに関するギモン、本人の年代別に取り組んでほしい対策、具体的な親なきあとの相談事例とアドバイスなどを紹介しています。わが子の将来に漠然とした不安を抱えているけれど、どのように動いていったらいいのか分からない……と悩んでいらっしゃる方も多いと思います。そんな不安を和らげる道しるべのような本書を通じて、まずはどんな準備が必要なのか知ることから始めてみてはいかがでしょうか?主役は全員!個性バラバラの7人組が事件に挑むミステリー小説『転ぶ。凸凹探偵チーム』Upload By 発達ナビBOOKガイド個性バラバラの7人組が、それぞれの得意を活かしながら事件を解決していく「凸凹探偵チーム」シリーズの第2作です。ASD(自閉スペクトラム症)のアルトと、朝が弱い理人は同じ中学校に通う、同い年のいとこ同士。アルトには「理人といつも一緒にいる」「毎日同じルーティンで行動する」など、いろいろなルールがあります。そんなアルトのこだわりに困ってしまうこともあるけれど、アルトの記憶力は抜群で、事件を解決に導いてくれることもあるのです。アルトと理人と共に活動する「虹中新聞チーム」の7人のメンバー達も、苦手なことや得意なことはバラバラ。お互いの違いを自然に認め合いながら、力を合わせて身の回りに次々に起こる事件に立ち向かっていきます。個性的で魅力いっぱいの登場人物に自分自身を重ねたり、スリリングな展開にハラハラしたりと、親子で一緒に楽しむことができる作品です。また、本書は『歩く。凸凹探偵チーム』の続編となっています。登場人物たちの成長がより感じられるので、ぜひ合わせてご覧になってみてくださいね。豊富な図解で分かりやすい!『発達障害や身体障害のある子どもへの摂食嚥下サポート 「食べる喜び」を支える!! 園や学校でできる!!』Upload By 発達ナビBOOKガイド私たちが生きるために欠かせない「食べる」という行為。当たり前のことのように考えがちですが、子どもにこだわりや感覚過敏があってなかなか食べてくれない、スプーンやフォークをうまく使えない……などのお悩みがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。長年障害のある子どもたちの「食」をサポートしてきた島田療育センターの中村由紀子先生と稲田穣先生が書かれた本書には、障害のある子どもの摂食嚥下にまつわるさまざまな課題に関する解説と、実践的なサポート方法が随所に盛り込まれています。摂食嚥下や発達に関する医学的知識のみならず、食事の姿勢や食具の使い方のサポート、栄養のこと、医療的ケアから口腔ケアまで、豊富な図解で分かりやすく解説されている本書。あらゆる方向から障害のある子の「食べる喜び」をサポートするヒントが満載です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月29日勉強についていけず自己肯定感は下がるばかり。ついに「学校へ行きたくない」と言い出した娘発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたマンガ「発達障害の子どもと私たち」。今回はみき編 第2話をお届けします。5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた小学4年生のみきさん。小学3年生から勉強に困難さを感じるようになり、「学校へ行きたくない」というほどに苦しむようになりました。そんなみきさんを見守る保護者は、どうすればいいのか迷っていて――。マンガ「発達障害の子どもと私たち」みき編第2話Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談「授業についていけないのは私だけ」という娘に母は――Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談勉強についていけなくなったASD(自閉スペクトラム症)小4のみき発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたストーリー「発達障害の子どもと私たち」みき編第2話をお届けします。5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けているみきは、就学相談で知的障害特別支援学級に入るか相談しましたが、IQが入級基準以上だったため通常学級と判定されました。今は通級指導教室へ通っています。小学4年生になったみきは学校の勉強にだんだんとついていけなくなり、自己肯定感は下がるばかり。頑張っているのに上手くいかない状況に追い詰められていきます。一方母は、みきの様子を見て、集団授業についていけないなら少人数で見てもらえる特別支援学級を考えるように。次回、第3話では学校との転籍への話し合いが始まります。第3話「「学校がつらい」娘の心が壊れそう…!特別支援学級へ転学希望も、担任は反対で…」ぜひご覧ください。心理面の支援と通常学級の中での特性にあわせた支援【専門家解説】小学校中学年になって学習内容も複雑になり、一部の授業での理解が困難になってしまうことに加え、そのことが大きなストレスや不安につながり、みきさんはとても苦しんでおられます。お母さんは、みきさんの自己肯定感を上げようと社会や理科は頑張れているという話をされていますが、本人はできないところに注目してしまっているようです。お母さんや通級の先生だけでなく、通常学級の担任の先生が普段の授業の中でみきさんの頑張りを認めていくことが重要になっていきます。通常学級の授業の中で、例えば「主人公の気持ちを理解する」という課題は、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにとって難しい課題だと思いますし、グループの話し合いに積極的に参加することはなおさらです。こうした特性を担任の先生が理解し、適切なヒントや援助を出せるかどうかが通常学級の中での本人の学びに大きく影響します。担任の先生だけで困難な場合は、特別支援教育コーディネーターや通級指導教室の先生に親や本人の間に入ってもらうことも考えられると思います。通級指導教室の先生に通常学級での授業を見学してもらったり、担任の先生と情報交換をしてもらうことも一つのアイデアです。Upload By ユーザー体験談発達障害のあるお子さんの学習を含めたサポート方法について詳しくは以下をご覧ください。【マンガ発達障害の子どもと私たち】ぜひご覧ください。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月29日再登校にチャレンジ!…だけどまた行けなくなった中学3年生の春特別支援学校中等部に進学した息子は1年生、2年生と登校できない日々が長く続きました。しかし、3年生の新学期、突然「学校へ行く!」と宣言し登校し始めたのです。2年間、息子の成長を見守ってきてくださった先生方も、この変化に驚きつつもすぐに万全のサポート体制を整えてくれました。久しぶりの学校生活を全力で楽しむ息子の姿は、私たち家族にとっても大きな喜びでした。クラス写真では、恥ずかしがる他の生徒を気遣って自ら中央に立ち、係の仕事にも率先して取り組み、クラス委員に立候補するなど、これまでからは考えられない新たな一歩を踏み出し始めました。きっと3年生は、これまでと違う1年になるかもしれないと誰もが淡い期待を抱きましたが、やはり無理があったようでしばらくすると再び布団から起き上がれなくなりました。Upload By 花森はな息子にとって、体の不調以上につらいものがありました。それは、スクールバスでした。当初は我慢して乗っていましたが、次第に「バスの匂いがキツくて吐きそう」「逃げ場がないからパニックになる」と訴えるようになり、乗ることができなくなってしまいました。スクールバスに乗れない時はタクシーを利用していましたが、こちらも同様の理由で利用を断念せざるを得ませんでした。わが家は普段から車に乗る機会が少ないため、息子は車に慣れていないということもありますが、車が苦手な子どもというのは一定数いるはずです。こういった状況を担任の先生に相談したところ、「車酔いをする子は毎年いるけれど、大抵は1ヶ月ほどで慣れてしまうんですよ」との回答でした。しかし、息子のように長期間にわたって車に強い拒否反応を示す子は、先生の経験上これまでいなかったようです。いっそ就職!?再び立ちはだかる進路選択の壁特別支援学校は高等部まで設置されており、息子も当然のように内部進学を予定していました。しかし、スクールバスへの強い抵抗感から、高等部での学校生活が送れるのかという不安が頭をよぎり始めたのです。そんなある日、息子は思わぬ言葉を口にしました。「高等部に行っても高卒の資格取られへんのやったら、就職したらあかんのかなぁ?」特別支援学校の高等部を卒業した場合、学歴は「高卒」ではなく「特別支援学校高等部卒」となり、制度上は大学入学資格は得られますが(実際に希望する大学の受験が可能かどうかは履修単位などの確認が必要)、一般企業への就職活動など他のことでこの先不利になることがあるのではないかと、息子は入学時からずっと気になっていたようです。そこで夏休みに、特別支援学校内で開催される「福祉事業所合同説明会」に参加してみることにしました。Upload By 花森はな就労継続支援って?福祉事業所合同説明会当日を迎えました。どのような感じか全く想像がつかなかったのですが、体育館のような大きな会場で行われるのではなく、地域別で教室が区切られており、事業所ごとのブースが設けられていました。あらかじめ人が多いことが予想されていたので、混雑しているところではパニックが起きやすい息子の参加は難しいだろうと判断し、今回は私一人で参加することにしました。まず自分が住んでいる地域の教室に行きました。各ブースを回る前に、受付で説明会全体の概要や、就労継続支援A型とB型の違いについて教えていただきました。就労継続支援A型とは、障害のある方が一般企業などでの就職が困難な場合に、一定の支援がある職場で雇用契約を結んだうえで働くことができる障害福祉サービスのことです。働く時間は事業所によりさまざまなパターンがあります。基本的に4時間以上〜6時間未満の事業所が多くなっています。働く日数は「週3~5日程度」という事業所がほとんどで、週の出勤日数を相談しながら決められる事業所もあります。就労継続支援B型とは、障害のある方が一般企業などでの就職、また雇用契約に基づく就労が困難である場合に、雇用契約を結ばずに働くことができる障害福祉サービスです。就労継続支援B型では、福祉的就労の中で障害や体調にあわせて自分のペースで働きながら、就労に必要なスキルなどを習得することも可能です。説明が一通り終わった後、早速、一番近くの事業所のブースへと向かいました。どの事業所の方も、質問に丁寧に答えてくださり、それぞれの事業所の特色や魅力について丁寧に教えてくださいました。グループホーム一体型の事業所では、グループホームで暮らしながらそのまま事業所に通えるというシステムで、母子家庭であるわが家がもしもの時に息子を安心して任せられる手段の一つとして、教えていただいてありがたく思いました。また、別の事業所では、現在心の拠り所に困っている息子に、まず居場所として18歳以上65歳未満の方が利用できる就労移行支援を提案してくださり、将来自立した生活を送るためのサポートについて話をしてくれました。就労移行支援ってなんだろう?障害のある方の社会参加をサポートする、国の支援制度で障害者総合支援法という法律があります。就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスのひとつです。一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートをおこないます。歳に達する前5年間障害福祉サービスを利用された方で、65歳に達する前日において就労移行支援を利用されていた方は引き続き利用することは可能です。また18歳未満の方でも、児童相談所長や自治体の判断によっては利用と認められる場合もあります。 By 花森はなこんなにあるんだ!?多種多様な事業内容地域の事業所は参加されている数が少なく、別の地域のブースも回ってみることにしました。同じ市内でも場所によって事業所の数が全然違います。こちらの会場内は活気にあふれ、通路を歩いているだけでも「チラシだけでもどうぞ!」「SNSあるんでよかったら見てくださーい!」とたくさん声をかけられました。その中でパソコン関係の事業所があったので、説明を聞いてみることにしました。パソコンの修理や解体、組み立てなど、実際に手を動かしながらパソコンの仕組みを学べるというところが、パソコン好きな息子に合いそうだなぁと感じました。「いつでも見学に来てくださいね!」と事業所の方もとても親切でした。ほかにもさまざまな事業所がありました。カブトムシや熱帯魚のお世話を自宅で行うという事業所では「温度管理やルーティンワークが得意な方に向いているんですよ」と、具体的な仕事内容について説明がありました。カフェを運営する事業所では、実際に販売されているメニューや店内の写真を見せてもらい、カフェ運営を通しての地域の人との交流を伺いました。さらに、野菜栽培、ネイルチップ制作、グラフィックデザインなど、多岐にわたる分野の事業所があり、就労支援の幅の広さに本当に驚きました。特に、野菜栽培の事業所のSNSでは、丁寧に野菜を育てる様子が写真や動画で細かく紹介されており、笑顔で楽しそうに仕事に取り組んでいる様子が伝わってきました。Upload By 花森はな福祉事業所合同説明会で開けた未来への扉説明会にいざ参加してみると、高校2年生や3年生の保護者ばかりで、中等部からの参加は少数派でした。特別支援学校高等部では、在学中は就労に向けた実習を積極的に行っているため、高等部を卒業してから就労支援を利用するのが一般的です。就労支援の利用はA型B型共に原則は18歳以上の成人なので、相談支援の方からも、「残念ながら中等部卒業直後の就労支援の事例は聞いたことがないです」と言われてしまいました。このまま高等部に進んで就労支援を目指すのか、この先も就職への道を模索するのか、私たちはもう一度進路についてよく考えてみることになりました。しかし、今回の説明会を通して、就労支援に対する認識が大きく変わりました。就労支援というと軽作業のイメージがありましたが、自分に合った仕事を見つけて「社会参加」できると感じました。自分の子どもが不登校になって、精神障害福祉手帳を取得し、この先どういった未来が待っているんだろうと不透明だったところに、こんな仕事もあるんだ!あんな仕事もあるんだ!とたくさんの可能性を見せていただき、希望の光が見えた気がしました。執筆/花森はな(監修:初川先生より)特別支援学校中等部に適応できず、中3になり進路を考える中で中等部卒業直後に就労する(あるいは就労支援を受ける)選択肢について考えるために福祉事業所合同説明会に参加されたエピソードをありがとうございます。特別支援学校にうまく適応することができなかったり、あるいは障害の種別にうまく合致していなかったり(知的に低くない場合など)すると、中学(中等部)卒業後の進路選択は一筋縄ではいかない面がでてきます。学校の先生や主治医の先生、地域の支援者などと相談しながら検討していかれると良いでしょう。さて、地域の福祉事業所の合同説明会に参加されたとのことですが、就労継続支援A型、B型など地域にある福祉事業所はさまざまな業種、作業を担っています。その地域に長く住んでいても、どの事業所が何をしているのかということはあまり知る機会がないのが実情かもしれません。このように事業所が集まって説明会をしてくださるのはとても素敵で貴重な機会だと感じました。その地域に根差して活発に活動している事業所さんは結構あるというのが私の印象です。息子さんが車やバス移動が苦手となると居住地域に近い事業所がゆくゆくは就労支援をお願いする事業所になるかもしれません。説明会や地域の福祉祭りなど、さまざまな機会に知ることから始めたいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月28日少しずつ増えたり減ったり?コウのお手伝いのこれまでUpload By 丸山さとこ神経発達症(発達障害)がある息子のコウは、現在中学生です。彼には『家事は基本的にみんなで分担するものだ』と伝えています。そのため、「これちょっと手伝って~!」と単発の手伝いをコウに依頼することはありますが、特別にお手伝いとしてお願いしている家事というものはありません。大人になって1人暮らしをするのであれば、その時は『家事』と呼ばれるものを概ね自分で行うことになります。外注したりサポートを受けたりする場合も、それを依頼したり、支援者などの『サービスとの中継をしてくれる人』に助けてもらったりする必要があります。年齢に応じて急に役割が変化することに戸惑うときがあるコウの場合は、子どもの内から『家事は生活の中に当たり前にあるもの』と思っておくと、あとが楽なのではないかと考えました。とはいえ、いきなりコウに家事の分担を任せたわけではありません。保育園から小学校低学年にかけて、コウにはお手伝いの形で少しずつ家事に慣れていってもらいました。その頃は、『私から受け取ったタオルをカゴにしまう』『カーテンを開ける』のように難易度が低く、かつ「これができた」とコウが感じられるような作業をお願いしていました。Upload By 丸山さとこ難易度が低いとはいっても、カーテンを開けるには、レールを傷めないように丁度いい力でカーテンを横に引く必要がありますし、『レースのカーテンは閉めたまま遮光カーテンのみを開ける』という条件を理解する必要があります。タオルをカゴに入れるにしても、カゴの中にキレイに入れるには、ある程度の器用さが必要です。畳んだタオルが崩れないように持ち上げる必要もあります。最初は畳んだタオルが積みあがったところから欲しいタオルだけをとることも難しかったため、私が一つひとつタオルをコウに手渡してカゴに入れてもらっていました。「お手伝い」から「家事の分担」へそうして少しずつお手伝いの幅を広げていったコウが小学校高学年に入る頃、改めて家事の重要性を伝えた上で、「大人になった時に『できて当たり前』とされるのと、今の内から少しずつ練習しておくのと、どっちがいい?」とコウの意見を聞いてみました。「必要に迫られて身が入ることもあるし、今の内からしておいたほうが楽だとも言えるし、どっちもアリだと思う」と伝えると、コウは「僕は今の内から練習したほうが楽なタイプだな」と答えたので、将来の暮らしを視野に入れた家事を少しずつ教えていくことになりました。Upload By 丸山さとこ洗濯物干しも、それまで行っていた『タオルと靴下を干す』というお手伝いの範囲からできることを少しずつ広げて、洗濯から取り込みまで全てを1人でできるようにしていきました。・自分の服を干す(小さいので干しやすい)・大人の服を干す(大きいので少し難しい)・洗濯物をベランダに干す(地面につかないようにするなど気をつけることが多い)・乾いたら取り込む(忘れないようにリマインダーを利用する)このように少しずつできる家事が広がっていく中で、次第にコウは私が家事をしているところに興味を持つようになっていきました。視覚情報の差異によく気がつくコウなので、私とコウの家事の違いに一度興味を持つと、いろいろなことが気になったようです。「僕が干した洗濯物、お母さんが干したときとなんか違う……もちゃっとしてる」「洗濯物全体に風が当たりやすいように干すのか!」「卵を溶くときは、菜箸を少し開いて持つのはどうして?」「お母さんは、卵液をフライパンに流した後にボウルのフチを菜箸でサッと撫でて卵液を切ってる。だから垂れないんだね」などなど……私の作業風景を観察しては何かしらコメントするコウに、「そんな細かいところまで見てるの!?」と驚くことが増えました。Upload By 丸山さとこできないことや苦手なことに気づくことも大切だからこうして少しずつできる家事が増えていくと、たまにしかしないのに上達が早い家事もあれば、「コツコツ続けているけれど、どうも苦手なのかな?」と感じる家事もあります。中学生になった今でも、できるけれど時間がかかる家事や負担を感じやすい家事はあるようです。私からすれば面倒そうに思える水筒洗いに関しては「だんだんと水筒を洗うのが早くなってきた!」と余裕を見せたりするのに、脱いだ衣服をカゴに入れるのはなかなか定着しにくく、向き不向きは本当に人それぞれなのだなと思います。Upload By 丸山さとこまた、家事には時間制限のあるものがたくさんあります。『夕飯までにご飯が炊きあがるようにする』『日が落ちる前に洗濯物を取り込む』など、コウなりにリマインダーを使って時間を意識しているようですが、うっかり忘れてしまうこともしばしばです。苦手はずっと残るかもしれませんが、苦手な作業に対しては『乾燥機能のある洗濯機を使う』『パックご飯を使う』などの対応策をとれることもたくさんあります。できるようになることをコツコツ積み上げていくなかで、コウが「ここは苦手だな」と思うことも見つけていけるといいなと思っています。そして、苦手なことに対しては『対応策はいっぱいあるんだな』と思えるようになれたらいいなと願っています。執筆/丸山さとこ(監修:森先生より)丸山さん、お子さんと家事との関わり方についての貴重な体験談をありがとうございます。年齢に応じて徐々に役割が変わっていくことになかなか順応できないお子さんは少なくありません。そのまま大人になってしまうと、一人暮らしをしてから健康を損なったり、結婚して家庭を持ってから配偶者に負担がかかってしまうことにもなりかねません。幼いうちから家事を自分事として考えられるような教育は、大変素晴らしいですね。さて、一般に、特性がある方は家事があまり得意ではないことがあります。家事には「正解」や「終わり」がないので、「完成図」が分かりにくいのです。また、家事には複雑な作業の同時進行が求められます。発達の特性があると、脳の実行機能に偏りがあるため、家事に苦労することが多いのです。たとえばお料理であれば、作るものをイメージして、材料を買って、野菜を切りながらお鍋を煮込む、といった作業になりますよね。発達の偏りがある方は、重要な食材を買い忘れたりお鍋を焦がしてしまったり、というような失敗をしやすいのです。丸山さんのように、早いうちから家事の大切さを教えて、できることを少しずつ増やして達成感を得られるようにすると、楽しく家事を身に付けていけるのではないでしょうか。これからもお子さんが自立に向かって前向きに取り組んでいけるように願っております。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年08月28日何の疑いもなく迎えた入学式。なぜうちの子に補助の先生が?Upload By もっつんタクは振り返ってみると、幼少期から発達障害の多動や衝動性が強く表れている子でした。しかし3歳児健診での担当医師の言葉、家庭環境、園の先生から指摘を受けたことがなかったなど……いろいろな要因が重なって発達障害の可能性を考えずに、小学校入学を迎えました。就学先は通常学級でした。そして入学式の当日、落ち着きがないタクは補助の先生に手を引かれて入場してきたのです。今まで先生方には、タクの発達や進級について何も言われたことがなかったので、正に青天の霹靂でした。通常の名前順の並びとは違って、明らかに違う列で先生と共に入場する姿を見て……あれ?やっぱりウチの子って何かある?と不安になったのを覚えています。入学式の間は、ずっと先生が横についてくれていて、着席して楽しそうに手遊びをしているようでした。後日、先生に聞いてみると、ほかの子に付いていた支援員の方からタクが離れようとせず付いてくださっていたとの事でした。教室で座っていられない!何でこんなことするんだろう??Upload By もっつん通常学級で学んでいたタクは、入学してしばらくすると、少しずつトラブルが表面化してきました。授業中に何度も教室を脱走したり、放課後の学童でも同じように脱走してしまいました。朝の登校班では「疲れた」と言ってその場に座り込んでしまったり、ランドセルを道端に置いていこうとしたり……。私がそばにいられたら声をかけられますが、四六時中一緒にいることはできません。学校からトラブル報告の電話を受ける度に、精神疲労がどんどん蓄積されていきました。教室から出ていくなんて、当時の私には考えられない事でした。私の小学校時代の記憶では教室から出ていく同級生はおらず、先生に叱られないように「規律は必ず守るもの」と思っていました。なので、まさかわが子が授業中に立ち歩いて教室から出て行っているなんて想像もできなかったのです。「何で立ってしまうの?皆と同じようにできないの?」と当時の私には知識も余裕もなくて、つい質問責めにしてしまっていました。スクールカウンセラーとの出会いで支援の道へUpload By もっつんタクの問題行動の連絡を受けるたびに、私はタクに注意したり怒ったり話をきいたり気分転換させたり……試行錯誤をしました。しかし繰り返される教室脱走。教室内でトラブルを起こす日々が続いて、別の子に付いていたはずの支援員の方に負担をかけることが増えていきました。私は、先生やクラスメイトに対して申し訳ない気持ちが大きくなっていくけど、行動改善ができずに日々焦りと苛立ちが積もっていきました。そんなある日、担任の先生から「スクールカウンセリング」について教えてもらいました。学校に配置された公認心理師などの資格を持つスクールカウンセラーの方のカウンセリングを受けたり、アドバイスをもらえたりするというものです。私がお世話になったスクールカウンセラーの先生は月に2回ほど学校に来てくれて、子どもだけ・親だけ・子どもと親などさまざまな形でお話してくれました。物腰が柔らかく、とても優しい先生でした。当時の私は子育てだけではなく、仕事や義実家同居のストレスがとても大きくて……!それを踏まえて私のメンタルが安定するように親身になってたくさんの話を聞いてもらえました。タクだけではなく、私も救ってくれた恩人であり、今でも感謝しています。特別支援学級という選択Upload By もっつん面談を重ねていくうちに、私もタクと落ち着いて話せるようになっていきました。そして、「なんで教室を出ていきたくなるの?」と聞いてみると、タクには聴覚過敏の傾向があり、「教室がうるさい」と感じて出ていきたくなるのだと分かりました。今までずっとワガママで出ていきたくなっているんだと、ルールを破ることに罪悪感がないんだと思い込んでいた私。タクなりにきちんと理由があったことを知りました。それが分かった時はショックでしたが、より一層タクの学校生活に向き合っていかなくてはと思いました。そしてついに小1の秋ごろ、「次年度から特別支援学級への転籍を考えてみてください」とお話がありました。Upload By もっつん正直なところ、転籍を打診されてすぐはマイナス思考のほうが大きかったです。しかしWISC知能検査、小児神経科の受診を進めるうちにだんだんと私の心に変化がありました。教室にいるだけでストレスを感じてしまう通常学級よりも、タクの特性を把握してくれている支援の先生に見てもらうほうがタクにとって良いんじゃないのか……?と。読み取る力が弱いタクは、国語や算数の文章問題が苦手なようでした。でも、横に付いて問題を声に出して読んであげると理解できるのです。通常学級では横に付いてここまで細かく指導してもらうことはできないけど、特別支援学級であればそれが可能です。特別支援級を見学をして説明を受けるうちに、今のタクにとって必要な手厚い指導が受けられるありがたい場所なんだという意識が芽生えていきました。実際に発達障害の診断を受けるまでには、大変な思いやトラブルもありましたが、あの期間と向き合ったからこそタクにとって良いと思える選択ができたんだと思います。仕事を休んでスクールカウンセリングに向かうのは罪悪感もあって、時間的に負担を感じることもありましたが、何よりも大切な時間だったと思います。スクールカウンセラーの方が担任の先生と保護者の中間に立ってくれて、的確な助言をくださったおかげでうちの家族は支援に繋がれたのだと思います。こうしてタクは小2の進級のタイミングで特別支援学級に転籍することになり、中3の現在も特別支援学級で学んでいます。将来のことを考えると不安になる時もありますが、あの時に特別支援学級に転籍するという決断は正しかったと胸を張って言えます。これからもタクの良さが生きる環境で、輝いていってほしいと願います。執筆/もっつん(監修:初川先生より)タクくんが小学校入学後、教室から出てしまうことなどが続き、スクールカウンセリングを通して特別支援学級に転籍されたエピソードをありがとうございます。小学校に入学してみたら、できるだろうと思っていたのに集団生活や学習に困難さが表れ、どうしてと困惑されること、ありますね。それまでの家庭での様子、園での様子からはそこまで不適応になると思わなかったと語られる保護者の方は結構いらしゃいます。小学校という枠組み、例えば多ければ35人で一クラスで過ごすこと、45分間着席していることが基本であること、時間割が決まっていて気分が乗らなくともその時間に決められた学習に取り組むことなど、それまで経験してきたこととは多かれ少なかれ異なる環境への適応が求められます。だからこそ、「小学校に入ってから問題行動が」ということが起きる場合があるのです。お子さんが学校でうまく過ごせていないとなれば、保護者としては困惑や焦り、怒り、不安が湧き立つことがあるでしょう。学校からの電話や連絡帳が恐怖に感じられる方もいらっしゃいます。もっつんさんは当初「何で立ってしまうの?」と責めてしまったとのこと。ここに心当たりがある保護者の方は多いと思います。初期はそうして「なんで」と疑問と怒りとが入り混じることがあると思います。もっつんさんの場合には、担任の先生からスクールカウンセラー(以下SCと表記)に相談することを勧められたのですね。相談しようと思っていただけたのは、SCとしてとてもうれしく感じました。担任にSCへの相談を紹介されると、人によっては「担任に見放された」「うちの子は相当ひどいってことなんだ」と傷つかれる方もいらっしゃいますが、担任の先生方はお子さんが学校で健やかに学べることを願っていて、心理の立場からの助言があればもっとお子さんに良い支援や対応ができるかもしれないと考えられてSCへ繋ぐことをされています。校内のリソースとして、SCを気軽にご活用いただければと思います。SCとの相談では、保護者の混乱する思い、不安、怒りなどもうかがい、保護者の方がまずは落ち着いてお子さんの今のつまずきや苦戦を考えられるように整えたり、保護者の方からお子さんのこれまでの育ちや家庭での様子を聞き取りながら「何でつまずいているか」を一緒に考えたり、またSC自身がお子さんの様子を観察して見取り、どんなつまずきがありそうか、そしてどんな手立てがあると良さそうかとお伝えして一緒に考えていく。そんなことをやっていきます。担任の先生と相談することでも同じようなことは達成できますが、担任の先生は直接お子さんに対応されていて、保護者からすると担任の先生の疲れた様子や表情に自責的になってしまうこともあり、そういう意味でも違う立場のSCと話すことが、話しやすく感じられる場合もあります。SCとの相談の中で、タクくんが音に過敏な面があることに気がつくなど教室の環境につらさがあると見えてきたのは何よりです。また、今はお仕事をされている保護者の方も多いので、SCへの相談が保護者の勤務時間と重なることもあります。お仕事を休んでお越しいただくことは恐縮ではありますが、だからこそ有意義な時間、心の荷下ろしになる時間、さまざまな問題や状況を整理する時間、一緒に作戦会議する時間として機能できればと思います。タクくんは特別支援学級への転籍されたとのことですが、そこにあたってもっつんさんが検討されたポイントも書かれていますね。タクくんの苦手さとそれをふまえた対応ができる環境としての特別支援学級。特別支援学級の種別にもよりますが、知的発達の水準やお子さんの特性・苦手さとその学級で提供できるものとを合わせて考えてみることは大事です。その準備として発達検査の受検であったり、見学・体験であったりということもあるでしょう。そうした1つひとつの検討点にしても、そこにまつわる保護者の思いの逡巡にしても、SCは一緒に考えていく存在だと思っています。うまく活用していただければと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月27日療育ってどんなことをするの?ドキドキしながら見学へUpload By よいこASD(自閉スペクトラム症)の長男あー、3歳の夏。当時はまだ診断前ではありましたが、療育に通うことにしました。地元で有名な児童精神科には予約を入れたものの、診察まで半年待ち。そこにお世話になる予定ではあるけれど、はよ療育は受けたいよ!てなわけで、近所の小児科で意見書を書いてもらい、通所受給者証を申請し、お目当ての療育施設へ見学に行きました。療育というもの自体に無知で、若干緊張している母子を職員さんは温かく迎えてくれました。そして療育施設に一歩踏み入れて驚いたのが、その表示の多さです。文字が読めない小さな子どもでも分かりやすいように、一つひとつ丁寧に表示があるんですよね。例えば玄関一つとっても、ここで挨拶できるようにという足マーク。靴箱には一人ひとりの顔写真。荷物を入れるロッカーにはお手本の写真が掲示してあって、それに沿って片づけることができるようになっている……など。Upload By よいこあとで先生にお話を聞くと、あーのように発達に特性がある場合、耳から得られる情報よりも目から得られる情報のほうが入りやすい、「視覚優位」であることも多いそうで……!!そーなの!?あとは、パーテーションで区切られた個室とオープンスペースがあるのも印象的でした。余計な情報を遮断したほうがやるべきことに集中できるから……という理由でつくられた個室と、小集団で行う療育用のオープンスペース。そうかー、何かするとき絵本やテレビやおもちゃがあったら気が散るよね……!と言う根源的な気づき。たしかに大人だってそうだよね……と終始驚きの連続の療育見学。見学した一部の場所だけでも、至るところに発達に特性がある子の育児ヒントが散りばめられてる……!実際に療育へ通うことになった後も、こんなふうに初めて知ることや気づきを得ることがたくさんありました。無意識のうちに抱いていた「発達障害」へのネガティブなイメージを変えた、療育の先生の言葉Upload By よいこ療育に通い始める前に、療育の先生に聞かれたことがあります。「ご両親は発達障害についてどうお考えですか?」と。 私たちは答えられませんでした。そんなこと聞かれても、どう考えてるんだろう……どうとも考えていないような気がしました。しいて言えば、目の前にある取り払いたい、それが無理なら飛び越えたい大きな壁。強敵。ラスボス。そんな、よくないイメージ……。先生は言いました。「僕は、発達障害はその人の個性と捉えています。みんなと同じじゃなくていい、合わせなくていい。その子の良いところをもっと伸ばして、苦手なことのお手伝いをしていけたらなあと思っているんです」ハッ……と、目が覚めた思いでした。その当時の私にとって発達障害は「悪」で、取り除きたい何かでしかありませんでした。あーとコミュニケーションが取れないことに歯痒さを感じ、あーが友達の輪に入れずみんなと仲良く遊べないことに悲しみを抱き、アニメのあるセリフを延々と繰り返す様に苛立っていた私。個性……。そうか、そんな捉え方が……?思えば療育施設との出合いが、私の発達障害育児人生の扉が開いた瞬間だったように思います。執筆/よいこ(監修:室伏先生より)よいこさん、療育見学でのご感想や、療育での工夫の様子、発達障害へのイメージの変化の契機などについて共有してくださり、ありがとうございました。効果的な視覚情報の示し方、今すべきことに対して不要な情報のシャットアウトなどは、知識として知っているとご自宅での生活にも活かせる部分がありそうですね。療育施設への通所は、その施設での療育ももちろん重要ですが、その施設での工夫、スタッフの方々のお子さんへの関わり方とその時のお子さんの反応などから、親御さんに学んでいただくこともとても重要なことの一つと考えています。療育を受けたいけれど、通所受給者証の発行には医療機関での診断書や意見書が必要で(医療機関での発行が必要かどうかは地域によります)、でも専門の医療機関の受診はあと1年先で……なんて途方にくれていらっしゃる親御さんもいらっしゃることと思います。あーくんの場合は、小児科の先生が意見書を書いてくださったのですね。小児科のクリニックの先生で書いてくださる先生は多くはないかもしれないですが、かかりつけの先生に聞いてみていただくこともよいかもしれませんね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月26日幼稚園から療育園へ転園?療育の先生からの提案わが家の長男りーは、3歳を過ぎても発語がなく、指差しをしないなど発達に遅れが見られたものの、加配の先生のサポートを受けながら幼稚園に通っていました。幼稚園年少の終わり頃、並行して通っていた児童発達支援施設の先生から、「りーくん、療育園へ転園しませんか?」と提案を受けました。Upload By かし りりあ先生が療育園への転園を勧めた理由――それは、療育時間が足りないことでした。当時りーが通っていた児童発達支援施設は月に15日利用していました。1日の療育時間は幼稚園が終わってからの14時から17時の3時間です。一方、幼稚園から療育園に転園すると、療育時間は10時から14時の4時間、利用日数も25日と増えます。さらに療育園では先生の数も多く、少人数(多くても3人)にそれぞれ担当の先生がつき、その子に応じた対応をしてくれるということでした。児童発達支援施設の先生の「療育時間を増やせば、りーくんはきっともっと伸びる」「りーくんの成長をそばで見守りたいけれど、療育園に通えばもっとできることが増えるはず」という言葉を受け、療育園へ転園する方針を固めました。療育編への転園を決意!しかし簡単にはいかず……とはいえ、私たちの住んでいる地域は”療育園激戦区”でした。今申し込んでも定員はいっぱいのため、すぐには入れないこと、申し込んだとしても人数や障害の程度によっては入れない場合もあることを知った私たちは、すぐに行動にうつすことになりました。Upload By かし りりあまずは療育園の見学に行きました。そこでは最初に療育内容についての説明を受けました。クラス編成は年齢順ではなく、それぞれの課題や発達段階に応じて分かれているとのことでした。そして部屋や療育で使う運動器具などを見せてもらいました。そこにはりーの好きそうな跳躍器具やブランコなどもあり、りーもうれしそう。「ここに通えたら、りーらしく楽しく過ごせるのかな」と希望は膨らんでいきました。診断を受けに児童精神科を受診次に、療育園へ通うためには医師の診断が必要だったため、診察を受けることになりました。診断名は中度知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)。りーを診察した医師は、決して育て方が悪かったからなったわけではないということを強調して言ってくれました。ある程度予想はしていましたが、診断名を聞くとなんだかホッとしたのを覚えています。それから診断書を作成してもらい、療育手帳と特別児童扶養手当の対象となることを教えてもらいました。手帳や手当、療育園へ転園する旨を伝えに役所に行きましたが、ここは夫が書類の作成や申請に行ってくれました。そして結果が出る冬。1年間だけですが療育園へ通えることになりました。いよいよ療育園へ転園。温かく迎え入れてくれた先生方療育園の入園説明会があり、りーと一緒に向かうと先生方が温かく迎え入れてくれました。そして「よく来てくれたね」「上手に靴が脱げたね」と、りーのすることを一つひとつ褒めてくれました。最初は警戒していたりーも優しい先生方を見て安心したようで、帰る頃には手を繋いで仲良くなったようでした。Upload By かし りりあそして3月、幼稚園を退園しました。児童発達支援の先生から転園を勧められた時、もっと早く行動できなかったのか、最初から療育園のほうが良かったのかと思うこともありました。でも、幼稚園ではりーのことを気にかけてくれるお友だちができました。今でも会う機会があると、りーのほっぺをむにむにと触ってくれ、りーもうれしそうです。幼稚園で過ごしたことは無駄ではなかった、と思っています。りーの療育園での様子については、また別の機会に書かせていただきます。Upload By かし りりあ執筆/かしりりあ(監修:室伏先生より)療育園への転園の契機や手続き、幼稚園と療育園の違いなどについて詳細を共有いただき、ありがとうございました。外来でも、幼稚園と療育園のどちらに入園するか、というご相談はよくいただきます。療育園では、一人ひとりに合った支援を受けられる可能性が高いですが、帰宅時間が早いので共働きの場合には勤務の調整が必要なこともあります。また、保護者同士のつながりができることもメリットと思います。一方で、幼稚園では、先生のマンパワーが療育園に比較して少なく、個別の支援が受けにくい可能性が高いですが、ほかのお子さんからのさまざまな刺激を受けることが期待できます。また、りーくんのように、児童発達支援への通所と組み合わせて通園することが可能な場合もあります。現在は、療育園を含む、どの療育施設も混み合っていて希望してすぐに入れるわけではないこともありますので、私たちも親御さんへの情報を、どのタイミングで、どのように伝えていったら良いか、試行錯誤しています。どちらが適しているかということは、お子さんの知的発達の程度や、お困りの内容だけでなく、地域のリソースによっても異なりますので、お子さんをよく知っている医師・心理士、療育先のスタッフ、園の先生方や、市区町村の担当部署などとも相談できるといいですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月24日共通テストでは、合理的配慮を「制度上」申請できるが…こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回のコラムでは、発達障害のある子が大学入学共通テストで合理的配慮を受けるために必要な申請について、受験生の現実と「なんとかしてあげてほしい」という私の意見を 述べたいと思います。なお、私は昨年度、ASD(自閉スペクトラム症)の診断と、LD、ADHDの傾向がある長男の大学受験を見守りましたが、長男は配慮申請や共通テスト受験をしていないため、一般公開されている情報から私が読み取れたことをまとめています。今年も大学入試センターから、令和7年度大学入学共通テストの「障害等のある方への配慮案内」が公開されました。独立行政法人 大学入試センター|令和7年度 受験上の配慮案内大学入学共通テスト(以降、共通テスト)では、発達障害を含む障害等のために受験に際して配慮を希望する志願者に対して、個々の症状や状態等に応じた受験上の配慮を行っており、例えば、LD(SLD/局所性学習症)があり、読み書きに困難さがある場合には、代読・代筆や、拡大文字の問題冊子配布、試験時間の延長などの配慮を受けることが制度上可能です。ですが、現時点では、発達障害のある子が配慮を受けて共通テストに挑戦するのは、私にはあまり現実的な選択肢だとは思えません。なぜなら、配慮を受けるために必要な申請書類を、発達障害のある子が揃え、必要な手続きを行うことのハードルが非常に高くて、非現実的だと感じるからです。発達障害区分での配慮決定者数は約500名まず、配慮申請に必要な手続きについて、大まかに解説します(詳細は大学入試センターの公式の配慮案内をご確認ください)。共通テストで、発達障害のある子が配慮申請をする場合、以下の3つの書類が必要です。・受験上の配慮申請書・診断書(発達障害関係)・状況報告書(発達障害関係)これを、現役生の場合、高1・高2の頃から学校や医療機関等と連携して下準備し、高3の申請時期(8月または9月)までに揃え、その「結果の通知書」で配慮の可否や受けられる配慮内容を確認。9月下旬〜10月上旬に共通テストの出願、配慮事項の再確認等の手続き(場合によっては、「問い合わせ大学」と打ち合わせ)を踏まえて、1月に共通テストの受験。それから各大学の一般入試等の出願と受験……というのが大まかなスケジュールです。これらは、発達障害のある子にとって、かなり困難なことなのではないでしょうか。実際、昨年度(令和6年)では、配慮ありで共通テストを受けた発達障害のある子は、志願者全体の僅か0.1%でした(令和6年度発達障害区分での受験上の配慮決定者数:507人/共通テストの志願者数:491,914人。大学入試センターHPの公開データを元に筆者算出)。では、どれほど、この3つの申請書類を揃えるのが現実的には難しいことなのか、具体的に詳しくお伝えします。独立行政法人 大学入試センター|令和6年度大学入学共通テスト受験上の配慮決定者数独立行政法人 大学入試センター|共通テスト 志願者数・受験者数等の推移まず、「診断書」について。共通テストの場合、申請には"所定の形式の"医師の診断書が必要です。もちろん、対応する側にも限度があるでしょうし、公的な試験ですから、医学的に客観的な根拠資料を求められるのはやむを得ない部分もあると思います(ただし、法律上、合理的配慮の提供に医師の診断書等は必須ではありません)。ですが、例えば、以下のようなケースでは、受験生が診断書を準備できない、または、申請に間に合わない場合があります。<医療機関の受診に、保護者の理解が得られない>「医師の診断書が必要」となれば、当然、医療機関を受診する必要があります。しかし、高校生が「自分は発達障害かもしれない」と思っても、保護者の理解が得られなければ、未成年が一人で専門の医療機関の受診をするのは困難です。発達障害の診断には、養育者から乳幼児期や小さな頃のエピソードなどの聞き取りを行うことも多く、自治体の子どもの医療費無料化政策なども大抵は高校生は対象外で、診断書の文書料や各種検査も自費となる場合も多く、保護者が協力的でないと難しいでしょう。<医療機関の初診/再診・診断までに時間がかかる>現在、発達障害専門の医師・医療機関の数が十分ではなく、初診までにかなり時間がかかることが多いようです。さらに、発達障害の正確な診断に必要な検査や経過観察などにも時間がかかり、診断書もお願いして即日発行できるとは限りません。うちの長男が小学1年生でASDの診断を受けた時の場合も、予約から初診まで3-4ヶ月待ち、知能検査も事前説明〜結果まで1ヶ月程度かかり、経過観察も含め、診断までに最低半年以上は必要でした。その後の診察も1-3ヶ月に一度、一回10分程度で、必要に応じて予約を取ることは難しかったです。また、児童精神科や発達小児科の診療対象は15歳まで(初診時)のことも多く、初診の時点で15歳以上の子の場合は、主に成人向けの精神科や心療内科等での受診となります。医療機関自体の数は増えるものの専門医は少なく、発達障害に詳しい医師でないと、必要な検査を行ったり、配慮等への意見を詳細に記入するのは難しいかもしれません。「小さな頃、専門病院で診断されたけど、しばらく受診していない」などの場合、再診の予約がすぐに取れない、成人向けの医療機関への移行がスムーズに行かない……などの諸問題が起こる可能性もあります。<グレーゾーン等で、診断名がつかない>「診断書が必要」ならば、当然「その子に診断名があること」が前提でしょう。ところが、「発達障害」はその子の個性と周囲の環境との関係次第で、困難さが強く出たり出なかったりもし、また、思春期から青年期にかけて子どもは不安定になりやすく、次々と直面する課題も変化していきます。診断があっても環境次第であまり支障を感じない場合もあれば、逆に、グレーゾーンで診断がない子でも、例えば、いじめや不登校、虐待やハラスメント、過剰に不安を煽る情報社会の影響など、置かれた環境や直面する課題によっては、いつも以上に困難さが強くなる可能性もあります(そういう子ほど、環境を変えるチャンスを必要としています)。特に、「受験生」は、子どもの心身に大きな負担やプレッシャーが長期的にかかりがちなので、「通常の状態ではない」ことも、十分考慮する必要があると思います。共通テストに限らず、さまざまな場面で「合理的配慮の提供には、医師の診断書を」と線引きされることも多いのですが、このような事情などから、現実的には診断書の提出が難しい子たちもいるのです。次に「状況報告書」について。これは、高校等で受けた配慮について、高校の先生などに具体的に記入してもらう書類です(校長と担任等の記載者の署名が必要)。つまり「申請時期までに高校等での配慮実績が必要」なのです(ちなみに、高校等に在籍していない子の場合は、塾などの教育機関での配慮の状況や、専門家の意見を保護者が記入しても良いようです)。ですから、高3の8月よりの申請時期に間に合うには、高1・高2から遅くとも高3の1学期までに、定期テスト等で試験時間を延長してもらったり、別室で受けたり、拡大した問題用紙を用意してもらったり、あるいは独自の配慮を実施して、それを学校側にも「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」等にできるだけ記録してもらう必要があります。……こうしたことにスムーズに対応できる学校は、現状どれだけあるでしょうか。今年(2024年)4月より、通称「障害者差別解消法」が改正され、公立校だけでなく、私立学校等でも合理的配慮の提供は、法的義務となりました。ですから、本来、すべての高校で生徒からの要望があれば、学校側は可能な範囲での合理的配慮を提供する必要があります。ただし、現在、高校には特別支援学級はなく、一部の自治体で通級指導教室の設置が少しずつ増えている……という中で、発達障害対応の知識・経験の豊富な高校の先生は、まだまだ少ないのが現状のようです(大学の教員免許取得の必修科目に特別支援教育が組み込まれたのは2019年度から)。大学入学後は、未診断も含めた障害学生への理解・配慮などもかなり進んでいる印象なので、特に高校時代は「支援のエアポケット」状態にあると思います。そんな中、現実的には、一部の先進的な取り組みをしている国公立高や、発達障害の生徒を積極的に受け入れている私立高等でなければ、大部分の高校で現場の先生方が手探りをしている中、配慮実績を作ることはそんなにスムーズに行かないことも多いでしょう。受験勉強だけでも大変なのに、定期テスト等での配慮を受けるために、根気強く学校側と交渉する必要があるのなら(ここでも「診断書」等が必要な場合も)、受験生の心身の負担は過大になってしまいます。また、高校側が生徒全員に柔軟に対応している、自然な形で配慮している……等の場合も、書面化しなければ「配慮実績」にはなりません。例えば、長男が通っていた私立中高一貫校では、柔軟な教科担任の先生が「課題の提出は、自筆でもワープロでも、どっちでもいいですよ」など、口頭でクラス全員に言ってくれ、発達障害の有無にかかわらず、字を書くのが苦手な子はみんな助かりましたが、それだけでは書類上、実績とはなりません。自然な形で先生がさり気なく配慮してくれても、友だちが板書のノートを写させてくれても、書類に書ける配慮実績にはならないのです。あるいは、例えば「文字が全く読めない訳ではないけど、文章を読むのに少々時間がかかる」などのLDグレーゾーンの子も、例えば、読字ガイド代わりに定規を当てるなど自分でちょっとした工夫をしながら定期テストなどを乗り切ってきた場合でも、同じことを「定規の持参使用」の配慮申請なしに共通テストで行うと、定規の使用は全科目禁止なので「失格」となります。もちろん、不正のないよう持ち物等のチェックを厳しくする必要もあり、「診断書」同様、「配慮実績が必要」という線引きがあるのも理解できます。でも、理解者や周りの教育環境に恵まれているかどうかにかかわらず、共通テストでは、どんな子にも公平・公正に大学入学のチャンスを与えてあげてほしいと私は思います。そして、「配慮申請書」について。基本的な個人情報や希望する配慮等を志願者本人と、保護者・担当教員等(校長・担任等の署名が必要)で相談の上記入する書類です。したがって、当然ながら、受験生自身が受験上の合理的配慮を希望していることが大前提となります(保護者や担任の先生が「よかれ」と思って勝手に申請しないこと)。そのためには、受験生が「自分は発達障害である」と受け容れ、「このような配慮があれば、受験できる」と理解していることが必要です。このように、障害者本人が主体となって配慮等を求め、相手側と建設的な対話をしていく姿勢を「セルフアドボカシー」と言い、理念としては大変素晴らしいのですが、現実的には発達障害のある子が周囲の理解と協力なしに実行するのはハードルが高いように思います。障害受容や自己理解には時間がかかり、特に思春期・青年期の子には「自分だけ特別扱い」などと思う/思われることは、デリケートな問題でもあります。うちの長男も高校時代、クラスメイトに発達障害があると知られることをとても不安に思っていました。なぜなら、発達障害に対する偏見やよくないイメージ、差別的な言葉など、さまざまな情報に囲まれながら、今の子どもたちは育ってきているのが現実だからです。そんな中、「自分は発達障害があるので、共通テストで配慮を受けて受験したい」と、自ら堂々とお願いすることはハードルが高いのではないでしょうか。発達障害をオープンにする人が増えて、世間の理解も合理的配慮も進めば理想的かもしれませんが、それを人一倍多感な高校生に求めるのは酷だと感じます。そして、私には、16〜18才の子が、周囲の協力なしに受験勉強と同時進行で、こうした煩雑な段取りを数年がかりで計画的にこなし、難しい書類の内容を正確に読み取った上で事務作業を粛々と進め、高校・医療機関・志望大学に自ら相談し配慮を求めるコミュニケーション力や根気強く交渉する強靭なメンタル、審査結果次第で短期間に臨機応変に動く力などがあったなら……「本当に発達障害があるのだろうか」と感じてしまいます。多くの「例外的」な受験生に、柔軟な対応を…このような現実の壁に直面する中、そもそも「例外」として扱われがちな発達障害のある子たちから、診断書や配慮実績を準備できない子や、発達障害をオープンにできない子、周囲の協力を得られない子などを、さらに「例外中の例外」として想定していたら、配慮を希望しても実際に申請できる子はごく僅かになってしまいます。障害のある子にも平等に受験機会を確保するのが、合理的配慮実施の本来の目的だと思いますが、実際のところ、人にも環境にも恵まれた"選ばれし子"しか申請できないのでは本末転倒になってしまいます。そして、さらに課題だと思うのが、共通テストでの配慮申請の結果を、大学独自の一般入試等でも合理的配慮実施の可否や配慮内容の判断基準としている大学もあることです(大学独自の申請書類だけで、受験時の合理的配慮が可能な大学もあります)。逆に言えば、共通テストの申請ハードルが下がれば、各大学の入試や、高校での合理的配慮も理解が進んでいくのではないでしょうか。とはいえ、繰り返し述べたように、対応する側にも限度があり、申請には客観的な根拠資料が必要、という事情も理解できます。これを少しでも解決するために、希望者の多い配慮については、すべての受験生に向けて、UD(ユニバーサルデザイン)化や、選択肢を増やす工夫等で全体のハードルを下げて頂けると、診断や障害の有無を問わず、負担が減る子はたくさんいると思います。例えば、大学入試センターでは、令和6年度大学入学共通テストより、配慮が許可された障害のある受験生に配布する「拡大文字問題冊子」のうち、22ポイントの問題冊子では、UD(ユニバーサルデザイン)フォントのゴシック体が使用されています。UDフォントは誰もが読みやすい字体を意識してデザインされており、ディスレクシア等の子でも誤読しにくいようです。このUDゴシック体のフォントを、一般向けのすべての問題冊子でも、使用していただけないでしょうか。独立行政法人 大学入試センター|拡大文字問題冊子のサンプルあるいは、例えば図書館で「どなたでも、ご自由にお使いください」と貸し出している老眼鏡等と同じように、当日の会場入口等でも、必要な受験生は理由を問わず誰でも使えるように、(不正利用できないアナログの)イヤーマフ、リーディングトラッカー、置き型ルーペ等の公認グッズを貸出す……などは、できないでしょうか(障害がなくても、当日急に、過度の緊張や寝不足で音に過敏になったり、文字が見づらくなる子もいるでしょう)。すべての受験生や、困難さが比較的小さめの"多くの「例外的」な受験生"に柔軟に対応することで、より困難さが大きな受験生にも個別に丁寧に対応しやすくなるのではないでしょうか。まずは、発達障害のある受験生の置かれている現実を、みなさんに知っていただければ幸いです。文/大場美鈴(楽々かあさん)(監修:井上先生より)楽々かあさんがご指摘のように、大学入学共通テストの配慮申請に必要となる書類一式を受験生自らが一人で準備するのは難しく、もともとそこまでは想定されていないように思います。しかしながら、大学入学後は多くの大学で合理的配慮申請は基本的にご本人からの申請が必要となります。また、楽々かあさんが指摘されているように、ユニバーサルな受験環境を整えることは必要性も高く現実的だと思います。現状では、発達が気になるお子さんで配慮申請をお考えの場合は、高校入学の時点から高校卒業後の進路を見据えて、保護者の方とお子さんが共に準備を始めることが大切です。共通テストの受験についても、合理的配慮の内容や、申請に必要となる書類などの確認をしておくことをおすすめします。基本的に、高校で合理的配慮を受けている場合に、共通テストでも申請できると考えられます。なお、高校1、2年生の頃は合理的配慮が必要なかったけれど、何かしらの事情で高校3年生から必要になった場合は、その理由も含めて診断などの客観的な証明を求められる可能性があると思います。ユニバーサルな支援を行っている高校に通っている場合は、高校に相談し、「状況報告書」を作成する必要がありますので、早めに相談をしましょう。独立行政法人 大学入試センター|受験上の配慮事項独立行政法人 大学入試センター|受験上の配慮内容前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年08月23日新章「みき」編がスタートします!マンガ「発達障害の子どもと私たち」は、発達ナビユーザーから寄せられた体験談を元にしたセミフィクションストーリーです。はるき編に続いて、今回から新章みき編がスタートします。5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた小学4年生のみきさん。就学相談では通常学級判定となり、通級指導教室に通いながらトラブルもなく学校へ通っていました。ですが、小学校3年生から勉強に困難さが見られるようになってきて……。マンガ「発達障害の子どもと私たち」みき編 第1話Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談宿題が終わらず、毎晩親子関係は険悪に。配慮を受けるも漢字テストの点数は……Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談勉強について行けなくなったASD(自閉スペクトラム症)小4のみき発達ナビユーザーからの体験談を元にしたストーリーマンガ「発達障害の子どもと私たち」第2章みき編がスタートしました。みきは、5歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けています。小学校入学の就学相談の際、通常学級へ進学するか知的障害特別支援学級に入るか相談しましたが、IQが入級基準以上だったため通級指導教室へ通いながらの通常学級と判定されました。小学校2年生まではつまづきもなく学校へ通えていたのですが、小学校3年生から勉強に困難さを感じるようになり、小学校4年生になると「学校へ行きたくない」というほどに……。今は学校へ行くように促している保護者さんも、葛藤があるようです。勉強についていけないと訴えられた場合、保護者はどうすればいいのか――。次回第2話「授業についていけないのは私だけ。自信をなくす娘、担任からもまさかの言葉が…」ではみきの気持ち、そして学校での様子に迫ります。勉強の苦手さの背景にある書字困難【専門家解説】学校へ行きたくなくなるほど勉強のつらさがでてきたということについて、本人も親御さんも非常につらいと思います。知能検査で通常の知的発達の程度という判定を受けた場合も認知能力の凹凸があるお子さんも多いと思います。また、ASD(自閉スペクトラム症)のある人はかなりの割合でDCD(発達性協調運動症)の併存もあることが最近の研究結果で指摘されています。ASD(自閉スペクトラム症)という側面からの支援だけでなく、書字の苦手さを本人の特性として共通理解し、必要であれば合理的配慮を検討することも考えられます。参考: By ユーザー体験談発達障害のあるお子さんの学習を含めたサポート方法について詳しくは以下をご覧ください。【マンガ発達障害の子どもと私たち】是非ご覧ください。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月22日ある時突然、水族館で逃げ出すようになったUpload By ゆきみ特別支援学級の情緒クラスに在籍している長男けんとは、現在小学3年生。ASD(自閉スペクトラム症)と3歳の時に診断を受けました。けんとが赤ちゃんの頃から、動物園や水族館など、いろいろなところに遊びに行っていました。生き物に興味がある様子ではなかったのですが、いつか興味を持つのではないか……と、期待を込めてのことでした。しかし3歳の頃に水族館へ行った時、興味を持つどころか水族館を怖がりだし、声をあげながら暗闇の中を光のあるほうへとダッシュしたのです。抱っこして連れ戻してもすり抜け、光のほうへとダッシュ。それ以来、水族館を怖がるようになりました。大ピンチ!親子遠足の行き先が水族館…水族館から足が遠のいていたのですが、年少の時にけんとが通っていた発達支援施設の親子遠足の行先が、まさかの水族館!けんとが遠足を楽しむ姿を思い描くことができず、心配で先生に相談しましたが、とりあえず参加することにしました。遠足前、下見をしにその水族館へ家族で行くことに。すると、けんとは、外の展示エリアにはいられましたが、屋内の暗いエリアは怖がって早歩き。当時、エレベーターにハマっていたこともあり、エレベーターを見つけてはそこから動かなくなってしまいました。Upload By ゆきみ遠足当日……。どうなるのだろうと心配していましたが、下見をしたことや、お友達や先生方と一緒だったこともあるのか、家族で行った時よりは落ち着いて過ごしているように感じました。暗いエリアは私と早歩き。下見で気に入ったエレベーターや、けんとが大丈夫な場所で友達が来るまで待機。水族館を楽しんではいないようでしたが、遠足は楽しそうに過ごし、何とかみんなとほぼ同じスケジュールで見て回ることができました。年に1度ペースで行く水族館の過ごし方次男ゆうきは、動物園や水族館が大好きです。ゆうきに大好きなものを我慢させるのも可哀そうだなと思い、年に1回程度、水族館に行くことにしています。けんとは水族館に入場したら、親の1人と明るいエントランスや、外の展示エリアなど、けんとが安心して過ごせる場所を探し、そこにいてもらいました。ゆうきともう1人の親が屋内エリアへ行き、1周したら親が交代(弟は2回見る)。けんとは水族館へはそもそも行かない……ということもできるのですが、いつか兄弟で一緒に回れたらという希望を込めて、水族館の中のけんとのいられる場所で楽しく過ごしてもらい、大丈夫なエリアを広げていきたいと願っていました。そもそもなぜ、水族館が怖いのか理由が知りたかったのですが、けんとは構音障害がある上に、お話しがほぼできなかったので、親が推測するしかありません。大きな音や初めての音が苦手なので、ショーなどを見る際はイヤーマフを持っていきました。ステージからは遠く、すぐに抜け出せる場所に座り、怖そうだと感じたらすぐに一緒に会場を出ました(小3現在。最近は本人に確認して「ショーは観ない」と言ったら観覧しないようにしています)。そして毎回、帰り際に家族みんなで一緒に売店へ行き、子どもたちの食べたいもの(アイスやかき氷など)を食べて帰ります。がんばった少しのご褒美として、「楽しかった記憶」を残せるように……と願ってのことです。Upload By ゆきみイベントで遂に水族館を克服!?Upload By ゆきみ小学1年生の夏、家族旅行で、初めての水族館へ行きました。すると、イベントでスタンプラリーをやっていました。けんとは魚に興味……という訳ではなく、スタンプラリーに興味をもったのでやってみることに。楽しそうに自らすすんで水族館の中をスタンプを探して歩きました。さすがに一番真っ暗な展示エリアには入れませんでしたが、ほぼ制覇!本人も満足そうでした。そして小学2年生の夏に行った水族館では、ついに!全部のエリアを見てまわれるようになったのです。しかも、魚によっては自分から興味を持って水槽の近くに行き、観察する姿も。帰りはもちろん、楽しみにしているご褒美デザートタイム!食べたがっていたかき氷をうれしそうほおばっていました。8歳になった今…水族館を楽しめるようにUpload By ゆきみ小学3年生の7月。初めての水族館へ行ってきました。結果は……今回も全部のエリアを制覇!しかも、たくさんの水槽を、食い入るように観察し、楽しむ様子が見られました。けんとは今も言葉で上手く説明できないので、水族館のどんな部分が苦手なのか……細かいところまでは分からないのですが、年齢が上がるにつれ、いろいろな経験を重ね、「水族館は怖い場所ではない」ということを感じ始めたのかもしれません。水族館を怖がっていた3歳の頃は、普段よりも過敏さが増し、出口が見えない暗闇の施設が怖くなり、パニックを起こしたのかなと、今となっては思ったりします(あくまで予想ですが)。水族館が大丈夫になった決定的な出来事は、やはりスタンプラリーだったと私は感じています。スタンプラリーを通して、本人が自ら行きたい!と思えたのが、何よりの克服方法だったのだと思います。私にとっても貴重な経験の1つとなりました。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)けんとくんが水族館を楽しめるようになるまでの歴史のシェアをありがとうございます。水族館を好むお子さんが多いですが、けんとくんのペースを大事にされ、そして少しずつ慣れるように、また楽しい思い出となるように「ご褒美」のアイスなどを設定するなどゆきみさんの心遣いがとても素敵だなと感じました。水族館は改めて考えてみるに薄暗いエリアが多いところではありますね。幼い頃はあまり気づかなかったとしても、自分で動けるようになってからは、あえて薄暗いほうへと進む意味がよく分からない(むしろ怖さが勝る)ということがあったのかなと感じます。魚そのものへの興味、薄暗くても安全だという環境自体への安心感、またスタンプラリーなどコンプリートしたいと思う強いモチベーションなどによって徐々に薄暗さや先の見えない(見通しの立ちにくい)不安感が相対的に小さくなったのだろうと思いました。ところで、スタンプラリーやクイズラリーというものが子どもに与える魅力ってすさまじいものがあるなと感じます(笑)。難しめの博物館(何から見ていいか分かりにくい、ちゃんと見ようとするならちゃんと解説を読まねばならず興味関心が薄い場合には解説読む前に心が折れそうになる)でも、そうしたラリーがあると子どもは嬉々として取り組むことが多いなと感じます。宝探し感といいますか、過ごし方が分かりやすいのもよいのだろうと想像しています。そんなちょっとした工夫でその環境へのコミット具合が大きく変わるということがとても示唆に富んでいる(日常生活や学業でも応用したくなる)と感じます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月21日漢方薬「柴胡加竜骨牡蛎湯」は不眠やイライラに処方?特徴、効果、副作用や子どもへの処方についても解説柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、不眠や不安、ストレスによるイライラ、子どもの夜泣きなどがある際に用いられる漢方薬です。柴胡加竜骨牡蛎湯には身体の炎症を鎮める柴胡(さいこ)や気分を落ち着ける竜骨、牡蛎などが配合されています。漢方医学には体内をめぐる「気」と呼ばれる生命エネルギーの概念があり、気が乱れることで神経が過敏になり、不安やイライラなどの症状が表れるとされています。漢方薬を服用することで気の流れに作用し、自律神経を整え症状を落ち着ける効果があると考えられています。柴胡加竜骨牡蛎湯は子どもから大人まで服用できる漢方薬で、場合によっては0歳児から処方されることがあります。しかし、子どもへの市販薬の使用を考えている場合には、医師や薬剤師にあらかじめ相談するようにしましょう。柴胡加竜骨牡蛎湯は即効性のある漢方薬ではないため、効果を実感するまでにある程度の期間が必要です。一般的には1ヶ月程度で効果が表れてくると言われており、子どもの夜泣きや便秘に用いられる場合は1週間程度で効果が表れるとされています。個人差はありますが、上記の期間服用を続けても症状が緩和されない場合は医師や薬剤師に相談してみるといいでしょう。柴胡加竜骨牡蛎湯の用法、容量は?病院で処方してもらえる?柴胡加竜骨牡蛎湯は薬局やドラッグストアなどで市販されていますが、病院で処方されることもあります。15歳以上(成人)の場合は7.5gを一日2~3回に分けて服用します。年齢によって用法・用量は異なり、以下の基準が厚生労働省から示されています。・2歳未満:成人用量の1/4以下・2歳以上4歳未満:成人用量の1/3・4歳以上7歳未満:成人用量の1/2・7歳以上15歳未満:成人用量の2/3実際には体重や症状、そのほかの要素によっても変わってきますので、病院で処方された場合は医者の指示に従って服用するようにしましょう。柴胡加竜骨牡蛎湯は食前または食間に水か白湯(さゆ)で服用します。なお、「食前」とは食事の30分~1時間前で胃の中に食べ物が入っていない状態を指し、「食間」とは食事と食事の間のことで、前の食事から2時間後が目安です。食間と言っても食事の最中ではありません。また、漢方薬を服用するのが苦手な子どももいると思います。そういったときは、オブラートで包む、医療補助ゼリーに混ぜる、白湯で溶くなど工夫してみましょう。どうしても嫌がる場合は、子どもが好きなジュースやヨーグルトなどに混ぜる方法もありますが、成分に影響が出る可能性もあるため、あらかじめ医師と相談してから試してみてください。参考:都道府県知事が承認する漢方製剤の製造販売承認事務の取扱いについて|厚生労働省柴胡加竜骨牡蛎湯は発達障害の症状に効果があるの?柴胡加竜骨牡蛎湯は発達障害(発達神経症)のある方へ処方されることもあります。発達障害は生まれつきの脳機能の偏りによるもので、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などの種類があります。なお、柴胡加竜骨牡蛎湯は発達障害そのものの治療ではなく、発達障害に付随した不安や不眠、夜泣き、神経過敏などの周辺症状の緩和を目的に使われます。また、発達障害のある方に処方される漢方薬は柴胡加竜骨牡蛎湯だけではありません。困りごとに合わせて、抑肝散(よくかくさん)などが処方されることもあります。発達障害による困りごとの緩和には、環境調整や療育などさまざまな取り組みがあり、薬の服用だけでなくほかの方法も合わせて行っていくことが大切です。医師や支援機関などと連携しながら、それぞれに合った取り組みを行っていくといいでしょう。参考:発達障害(神経発達症)|国立精神・神経医療研究センター柴胡加竜骨牡蛎湯の使用はハイリスク?副作用について漢方は副作用が比較的少ないと言われていますが、全くないわけではありません。柴胡加竜骨牡蛎湯にもいくつか副作用が報告されています。柴胡加竜骨牡蛎湯の副作用としては、・発疹、発赤・かゆみ・腹痛や下痢・胃の不快感などが表れることがあります。また、重大な副作用として肝機能障害と間質性肺炎が生じる可能性があるとされており、それぞれ・肝機能障害:身体のだるさ、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、茶褐色の尿・間質性肺炎:から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱などの症状が表れることがあります。重大な副作用が出るのはまれであり、柴胡加竜骨牡蛎湯が特別ハイリスクな薬というわけではありませんが、自身や子どもが服用して気になる様子があれば直ちに医師に相談するようにしましょう。まとめ柴胡加竜骨牡蛎湯は不眠や不安、イライラ、子どもの夜泣きなどに用いられる漢方薬です。薬局やドラッグストアなどで市販されているほか、医師から処方されることもあります。子どもから大人まで服用することができ、発達障害の周辺症状の緩和のために使用されることもあります。まれにですが、重大な副作用が生じることもあるため、気になることがあればすぐに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。参考文献:柴胡加竜骨牡蛎湯|おくすり110番(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月20日楽しみだった夏休みASD(自閉スペクトラム症)のあるスバルの困りごとのほとんどが集団の中で起こります。細かく言えばもっとありますが、メインの困りごとは人とのコミュニケーションの難しさと、DCD(発達性協調運動症)によるスーパー不器用です。それでもスバル本人の努力や学習、周囲のサポートで日々できる事が増え、目に見える成長をしています。それと同時に年齢が上がるにつれて求められる「年相応の能力」も高くなるため、成長しても成長しても常に「難あり」状態なのです。スバルは小学校が大好きで行き渋りはありませんが、それでも毎日のように「自分だけできない」を目の当たりすることで心が疲れて自信をなくしてしまうのでした。逆に言えば家での困りごとはそんなにありません。不器用によるできないことはありますが、まあ家ですし。友達と比べて落ち込む必要もないですし。スバルにとってはノンストレスな空間です。そもそも2歳の春にプレ幼稚園に入園し、集団の中での困りごとが露見するまでは「言葉が遅い以外に困りごとはない」と思っていたくらいなので、スバルとおうち時間の相性は良いのです。小学校生活最初の夏休みは、感染症対策で外出自粛が呼びかけられていました。元気が有り余る小学生が1日中家にいる状況に周囲は戦々恐々としていましたが、わが家は夏休みドンと来い!なのです。……そう思っていました。夏休みが始まるまでは。一日中「お母さん」の夏休み「朝から晩までよく喋るな……」夏休み中、目が覚めた瞬間から寝る瞬間までスバルが喋り続けているのです。もともとスバルはよく喋る子で、3歳で言葉が溢れてから今までずっと喋っています。話す内容はその時ハマっているものの丸暗記した知識のアウトプットだったり、一人ごっこ遊びだったりしました。小学生になってもそれは変わらないのですが、この夏休みはなぜがほんの少しだけ変化がありました。話す文章と文章の間に「お母さん」を挟んでくるのです。「OEM車なんだけどね、お母さん。他社と共同で開発した車でね、お母さん」「ブーン『海までドライブに行くぜ』お母さん。『楽しみだわ』お母さん」1日中喋っているのはいつものことなのに、「お母さん」を挟まれるだけでここまでストレスになるのかと思いました。いつもは右耳から左耳へふわっと抜けて行く言葉たちが「お母さん」の部分で急ブレーキを踏み、頭の中にとどまるイメージです。Upload By 星あかりなぜ「お母さん」を挟むのかは分かっていません。学校の友達と会えなくて寂しいのかな?と思いましたが「そうでもない」とのこと。どうしても私に話の内容を聞いてほしいのかな?と思いましたが「別に聞いていなくていい」とのことです。私が同じ部屋にいなくても始めた話は終わりまで喋り続けています。結局対処法も分からないまま、最初の夏を乗り切りました。2学期が始まった時の開放感といったら!「小学生の子のお母さんやってるわ!」と思いました。一日中バスに乗る夏休み外出自粛ではなくなった年の夏休みはスバルはバスに興味を持ちあっという間にバスマニアになっていました。路線図を穴が開くほど読み込んで、市内のバス停のほとんどを暗記していました。そうなると「どこに行きたい?」の質問に当たり前のように「バスに乗りに行きたい」と答えます。私にとってバスは移動手段であり、スバルのようにレジャーとしてバスに乗る感覚にはイマイチ共感できません。しかし家で「お母さん」を浴び続けるよりマシかと出かけることにしました。家からバスを乗り継いで、市内の端のバス営業所まで行き始発のバス停から終点まで乗車。その場所からまた別の僻地のバス停へ。家の近くを通り過ぎてまた遠くのバス停へ。スバルはバスに乗る事を楽しんでいますが、私はバスに乗っている間「無」の時間なのです。家で「お母さん」を浴び続けるか、バスで「無」を味わうか究極の2択。なんとかバランスを取りながら、それでもものすごい数のバスに乗った夏休みでした。あれから数年後の夏休み今でも「お母さん」を挟むしバスにも乗りに行きます。ただある時「本当にお母さんに用事があるときは良いんだけど、私が仕事をしている時に『お母さん』って言われると気になって仕事が進まなくなっちゃうから用事がないときには言わないことってできるかな?」とお願いしたところ、「お母さん」を挟まずに喋ってくれるようになりました。おそらく最初の年には同じお願いをしてもコントロールできなかったと思います。ソファに並んでくつろいでいる時には「今年入った新型のバスなんだけどね、お母さん。未発表だけど〇〇営業所の所属になる気がするよ、お母さん」と話していますが、やはり聞いていても聞いていなくても良いそうです。最近のバスの乗り方は、今年導入されたばかりの新型車が通りそうなバス停で朝から待ち伏せし、予想通り新型車がきたら乗る。予想が外れ来ないと踏んだら、別の候補地へ移動してまた待ち伏せする。そんな遊びをしています。まだ今年導入された新型車を制覇していないので、今年の夏、私たちはどこかのバス停で新型車を待ち伏せしている事でしょう。Upload By 星あかり執筆/星あかり(監修:新美先生より)面白大変すぎる夏休みのエピソードを聞かせてくれてありがとうございます。自分がその立場だったらけっこう疲れるだろうなと思うものの、めちゃめちゃかわいくて面白すぎるエピソードに昇華されてる星さん素敵です。多少の苦労もかわいいわが子の面白ネタに昇華できるのって才能ですね。わたし自身も自分のことも家族のこともそんな感じで乗り切るようにしているので共感して読ませていただきました。集団生活自体がメインの困りごとの場合、学校ある時期に必死にサポートしていて、長期休みになるとほっとして、普段できない緩やかな時間が過ごせるのがすごく貴重な時間だったりしますよね。スバル君の興味に合わせて、無になりながらおしゃべりに付き合ったり、バスの趣味に付き合ったりする星さん、ステキなお母さんだなぁと尊敬します。十分に本人の興味につきあってくれるようなお母さんだからこそ、数年後には理由を説明してお願いすれば、お母さんの言い分も受け入れて折り合いをつけられるようにもなったんだろうなとも思いました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月19日わが家が放課後等デイサービスを探し始めたきっかけわが家が放課後等デイサービスを探し始めた理由は、息子が小学2年生の頃学校で過ごすのがつらくなってしまったからでした。当時、息子はまだ通常学級に在籍していました。授業の間おとなしく座っていることが難しく、立ち歩いたり、大きな声を出したりしていました。その頃は新型コロナが流行し始めていて、息子にとってもストレスが大きかったのか、常に何かにイライラしたり怒ったりしている状態でした。Upload By メイ学校で対応してもらうのにも限界があり、だんだん学校に行くのがつらくなってきているようでした。そこで、学校以外にどこか息子の安心できる居場所があればいいなぁと思って、放課後等デイサービスを探すことに決めたのでした。最初に施設を選んだポイントは「自宅からの近さ」最初は心配も大きかったので、何かあったときにすぐに帰ってこられるように、家から近いというのを1番の条件にして施設を探していました。そこで、まずは息子の通う小学校の学区内にある唯一の放課後等デイサービスに見学に行くことにしました。実際に見学に行ってみると、職員の皆さんが子どもたちと全力で遊んだり、関わったりしていて、ここなら安心して預けられるかもしれないなと思いました。Upload By メイしかし、スタッフの方に詳しく話を聞いてみると、こちらの施設には主に知的障害(知的発達症)のお子さんが多く通っているということでした。そこで初めて、放課後等デイサービスは事業所ごとに特色があり、違いが大きいということが分かりました。施設を探し始めた当初は、とにかく息子が安心して過ごせる居場所になればとしか考えていませんでした。でも、やっぱりせっかく通うのだから、安心だけではなく、少しでもお友だちとの関わりや生活習慣を身につけてくれたらいいなぁと考えるようになりました。次第にはっきりしてきた「放課後等デイサービス」に求めることそこでもう1件見学に行ってみることにしました。次に見学に行った施設も、職員さんたちはとても誠実に対応してくれました。部屋の中にはいろんな工夫がしてありました。入り口から連絡ファイルを提出するまでの流れがイラストになって書かれていて、行動の導線が分かりやすくなっているのは、さすがだなぁと思いました。あまり広くない部屋でしたが、お勉強をするスペースと遊ぶスペースがきちんと区切られていたし、一人になりたい時はなれるようなそんな工夫もされていました。Upload By メイそのような工夫を見て、1件目の施設よりも、こちらの施設のほうが息子にとって学びが大きいかもしれないと感じました。そこで、2件目に見学に行った放課後等デイサービスでお世話になることに決めたのでした。放課後等デイサービスに通い始めて4年。現在の様子は?小学2年生の秋から通い始めて小学6年生になった今でも、息子はとても楽しく放課後等デイサービスに通っています。外遊びは好きではない息子ですが、デイサービスでみんなと公園に行くときには「あんまり行きたくないなぁ」と言いながらも、年下の子と手をつないで歩いて行っているそうです。職員さんが公園のゴミ拾いをしようと声をかけてくれると、息子は喜んでたくさんのゴミを拾っているみたいです。Upload By メイ初めて施設を探すときには何を目的にどんなところを探したらいいのかよく分からずに悩んでしまいましたが、実際に行ってみることで、どんなことを求めたいのか自分の中ではっきりしたような気がします。デイサービスの職員さんはみんな子どものことよく見てくれていて、私が家で関わっているだけでは気づけないような息子の改善点なども共有してくれて、とてもありがたいと思っています。執筆/メイ(監修:新美先生より)放課後等デイサービス探しについて具体的に聞かせていただきありがとうございます。メイさんの息子さんは、学校で過ごすのがつらくなったのをきっかけに放課後等デイサービスを探し始めたのですね。このようなニーズの場合は、放課後等デイサービスではとにかく居心地よく安心して楽しく遊べるかどうかを大事に探されるとよいですね。学校で頑張ったあとの気分転換、ストレス発散ができたり、もし学校に行きづらくなったとしても、家以外に他者とつながって自宅でできない活動ができる居場所があることはお子さんにとって大きいメリットになると思います。メイさんの息子さんは2年生から6年生までずっと同じ放課後等デイサービスに通っているとのことですので、きっと息子さんにとって居心地の良い大事な居場所になっているのですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月17日主治医からの勧めで児童発達支援センターに通うことに2歳の誕生日を迎えた頃、早産児発達外来を受診した際に主治医から「ねこ太くんは運動発達の遅れを主とする発達遅滞です。児童発達支援事業所に通って発達をサポートしませんか?」と提案がありました。前々から発達の遅れが気になっていたので私はその場で通うことを決めました。この時の私は、児童発達支援は通いたいと思ったらすぐに通えるものだと思っていたのですが、それは大間違い!たくさんの手続きが私を待ち構えているのでした……。療育手帳もしくは受給者証が必要?知らないことだらけの公的手続きまず医師の意見書を持って市の福祉医療課窓口へ。たくさんある書類に記入して提出したのですが、ここで担当さんが「いつもなら1ヶ月ほどで受給者証発行できるのですが、今大変混みあっているので3ヶ月はかかると思います」と……。「ええええええええ!そんなにかかるんですか⁉」と思わず窓口で言ってしまいました。私はてっきりすぐ発行してもらえると勘違いしていたのです。そしてもう一つ誤算が。それは事業所選びは自分でしなければいけないということ。市の窓口である程度おすすめの事業所を教えてもらえるのかと思いきや、事業所一覧の用紙を渡され「ここからホームページを見て条件的に通える所に問い合わせてください」と(自治体によると思います)。療育というものに関して右も左も分からない私はどう調べていいか分からずなかなか大変でしたが、ホームページを見て2歳でも受け入れてくれる近場の事業所をあたってみることにしました。Upload By 鳥野とり子最初に問い合わせた児童発達支援事業所がとても良い感じで見学に行くも……比較的近くの児童発達支援事業所のホームページを見たところ、とても良さそうだったので問い合わせをして見学に行きました。清潔な施設内に、充実した支援内容、経験豊富な先生たち。私は即「こちらに通わせたいです!」とお願いしました。すると先生が「大変申し訳ないのですが、今最低でも1年待ちでして……」と。ここでも予想外の待ち時間が!1年待ちなんて大人の私からすると大した期間ではないのですが、2歳のねこ太にとってはとても貴重な期間です。でも空きがないものはどうしようもないので、待機リストに登録をして帰ってきました。Upload By 鳥野とり子私が重視した児童発達支援事業所選びのポイントは?とりあえず近場で探したという風に書きましたが、ちゃんと支援内容はおさえて事業所を選びました。私が重視した内容はこちらです。・PT(理学療法士)やOT(作業療法士)が在籍していて、運動発達の遅れをフォローする支援をしてもらえるか・しっかりと体を動かせるスペースが確保されているか・母子分離での療育が可能かねこ太は全体的に発達が遅かったのですが、特に運動発達が遅れていたのでそこを重点的にフォローしてもらえる事業所を探しました。事業所によって設備や療育方針はさまざまなので、子どもの特性に合わせた事業所選びはとても重要だなと思います。Upload By 鳥野とり子児童発達支援に関わる施設はとにかくどこもいっぱい!ほかにもいくつか事業所をあたってみましたが、すぐに入れる所はありませんでした。どこの事業所も待機児童がいて、いつ空きがでるか分からないとのこと。どこに空きが出るか分からないので、入所したいと思った事業所3ヶ所で待機リストに登録してもらいました。そして登録から1ヶ月、1本の電話がかかってきました。一番最初に見学に行った第一希望の事業所からでした。なんと、3ヶ月後に引っ越しの為に1人退所されるとのことで週に3日でよければ通えると!本当にラッキーだったと思います。大喜びでこの事業所と契約をし、3ヶ月後に療育を開始したのでした。息子の療育探しで感じたことは、療育関係の受診や申請の手続きや入所はとにかく時間がかかるということ。「療育に行きたい!」と思ったとしてもすぐに通えるものではないので、先延ばしにせずにとにかく早目に動くのが良いなと思いました。執筆/鳥野とり子(監修:新美先生より)児童発達支援事業所に通うまでのエピソードについて聞かせてくださりありがとうございます。記事でも言及していただいているように地域・自治体による差は大きいですが、それにしても想像以上に時間と手間がかかったという方はどこでも多いようです。鳥野さんはもともと「早産児発達外来」に通われていたとのことで、初めの関門、「医師の意見書」をもらうプロセスはスムーズだった方といえるかもしれません。見学は面倒でも実際に足を運んでみないと分からないことはいっぱいあります。通える可能性のあるところはぜひ見学・相談に行ってみてください。そこで保護者の方が感じる相性の直感って意外とあっていることが多いように感じています。またどこも混んでいるので待機は仕方ないですが、ダメ元でも待機リストにエントリーしておくのも重要ですね。具体的なお話を聞かせていただきありがとうございました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月16日「とにかく学校へ行かせなくては」焦った私現在14歳(中3)の息子がいます。7歳(小学1年生の3学期)のときにADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。聴覚過敏、偏食があります。幼稚園に通っている時から「あれ?」と思うことがあり、児童発達支援センターへ通っていました。特別支援学級の見学もしましたが、就学相談の結果通常学級で大丈夫と言われ、小学校へは児童発達支援センターから連絡が入っていた状態での入学でした。入学式、初めての班登校など心配だらけで始まった小学校生活。でも、息子は駄々をこねることも周りを困らせることもふざけることもなく、静かに淡々とこなしていきました。今思えば、本人は相当頑張っていたのだと思います。春の運動会の練習が始まる頃に、行き渋りが始まりました。その時の私は『とにかく学校へ行かせなくては』と必死で、なだめたり、ひどい時には登校班の集合場所が家の前だったこともあり、息子に行くように告げドアを閉めてしまったりしたこともありました。そしてある朝、学校から電話がかかってきたのです。Upload By ユーザー体験談「近所の人から通報された」担任の先生から電話が朝、息子を送り出してしばらくしたあと、担任の先生から電話がかかってきました。先生はイライラした様子で「息子さんが登校途中で動けなくなってしまったと、近所の人から通報がありまして……」と告げました。登校途中で動かなくなってしまった息子は、登校班において行かれ(仕方がなかったと思います)、近所の方に発見されて学校に連絡が入ったとのことでした。Upload By ユーザー体験談わが家は、学区の端のほうなのですが、動かなくなった場所は学校のほど近くのところ。息子は、もうどうしても学校へ行きたくなかったのでしょう。2日後に先生と面談をしたのですが、「これからは班登校ではなく、保護者と一緒に登校してください」と有無を言わさない様子で言われたため、この日から息子が小学3年生になるまで、私は幼稚園児の下の子を連れて毎日一緒に登校することになりました。弟も連れた母子登校。つらいことが多かったけれど、幸せな思い出も保護者も一緒に登校するようにと言われた私には、正直(困ったな……)という思いがありました。息子より3歳下の弟は、幼稚園が始まったばかり。息子の送り迎えをすると幼稚園バスの時間に間に合いません。でも、仕方がありません。バス送迎を辞め、私が車で下の子を連れて行くことでそこは解決しました。また、学校が少し遠かったので、弟は一緒に歩くことはできないだろうと思いました。そこで、少し遠回りになりますが、まず私の両親の家まで行き、下の子を預けてから小学校まで息子と歩きました。息子は、登校中何度か止まってしまったことがありましたが、対処できないようなことはありませんでした。また、途中までとはいえ弟が一緒だったので、お兄ちゃんとして頑張れた部分もあると思います。小学1年生の時は、校門まで行けばそこから一人で行ける日もあったり、教室まで一緒に行く日もありました。また、一度連れて行っても再度学校に戻って下校時刻まで待機したり、学童を使っていたので、夕方にお迎えに行くなどしていました。家→両親の家→学校→両親の家→幼稚園→学校で待機という日が続きました。正直、私もつらかったですし、学校でつらそうにしている息子を見るのも苦しく、もうどうしたらいいのか分からない日々でした。Upload By ユーザー体験談でも、つらいことばかりではありませんでした。息子は、学校で先生にいろいろ言われると扉を閉じたように何も話さなくなると言われていたので、語彙が足りないからうまく話せないのかと思った私は、弟と3人で歩きながらしりとりをしたり、簡単な看板を読んだりしながら歩きました。幸いにも子どもたちはそれを楽しんでくれました。1番楽しかったのは、雪が積もった日にみんなで歩いたことです。雪というだけで子どもたちはテンションが高く、雪を触りながら楽しく通学できました。学校にはいつもより遅れて着きましたが、今となればいい思い出です。また、学校の側に住んでいる方が、きっと登校渋りの子どもを何度も見ているのでしょう、「おはよう!いってらっしゃい!頑張ってるね!」など毎朝優しく声をかけてくれて、1度はお庭のお花までいただいたりしました。優しさが本当にありがたかったです。Upload By ユーザー体験談そして小学3年生になった息子は……小学1年生の3学期、息子はADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断が出て、2年生からは通級指導教室に通うようになりました。また2年生の時の担任の先生は、息子のことをよく見てくれ、さまざまな配慮をしてくださり、息子自身少しずつ自信がついてきたようでした。また、息子も学校という新しい環境に、やっと慣れきたのかもしれません。おそらく当時の私は、学校にいる時間が一番長い保護者でした。教育相談の際「いろいろな先生に挨拶したほうがいい」とアドバイスをいただいたので、先生たち、図書室の司書さんや事務の先生など皆さんに「見守りをお願いします」「ありがとうございます」と挨拶をしました。それほど息子は学校で目立つ生徒だったとも言えますが、たくさんの先生方から、温かく見守ってもらえたと感じています。そして息子が小学3年生になった初日のことです。突然「登校班で行く」と本人が言いました。そうは言うも心配だった私は、登校班から少し離れてついて行きました。それから少しずつ、私が班との距離をとるようになり、とうとう本人が「一緒に来ないで」と言うまでになったのです。こうして1年半を超える母子登校が終わったのです。やがて小学6年生になった息子は登校班の班長になり、うしろを歩く新1年生に気を配りながらゆっくり歩き、お休みの子の連絡帳を職員室に届けたり、しっかり務めを果たすまでになりました。現在は中学生。今は今で大変だけれど、あの頃を振り返ると、成長したと思えます中学校への進学の際は、本人と話し合い特別支援学級を選んだのですが、息子にはフィットしなかったようで中学2年生からは不登校を選んでいます。心の健康が1番と考え、今は無理な登校刺激はしていません。学校に行っていない間は、英検などに挑戦しています。息子は高校進学を希望しているので、次こそ息子に合う場所をと高校探しの真っ最中です。今は今なりの悩みがありますが、小学校の頃のことを振り返ると、あの頃も大変だったけれどこうして成長したのだ……と思います。手伝えるうちは私たち親が手伝って、いずれ(できれば近い将来)は、自分で自分に合った環境を見つけて、そこで頑張れるようになってほしいなと思っています。イラスト/マミヤエピソード参考/エマ(監修:森先生より)母子登校をされていた期間の体験談をありがとうございます。下のお子さんもいて大変な中、お子さんの学校生活を支えてこられたのですね。実際、お子さんの登校がスムーズにいかずに悩まれる保護者の方は少なくありません。発達障害の傾向があるお子さんは、感覚過敏があって疲れやすかったり、同級生と行き違いが起きてしまったり、見通しが立てにくくて不安になってしまったりといったことで、学校に行くときに気が重くなってしまうことがあります。行き渋りが出た時、「学校に行きなさい!」と頭ごなしに叱っても、お子さんの不安は解消されません。保護者の方と一緒になら安心して登校できるというケースは多いのです。お仕事や下のお子さんの育児など、保護者の方にもいろいろな事情があるので、大変なことも多いでしょう。でも、母子登校は悪いことばかりではありません。学校のお友達との様子や、近所の方、いろいろな先生方の様子も知ることができます。お子さんがどんなことに不安を感じているか、肌で感じて気持ちに寄り添うことができるようになるというメリットは大きいのではないでしょうか。今回のケースでは、1年半の母子登校を経て、お子さんは自分で登校したいと思うまでに自立しましたね。また、登校がつらいときにお母さんが寄り添ってくれた経験があったからこそ、お子さん自身が最高学年になったときには、下級生たちにも気を配る優しい班長さんになれたのではないでしょうか。お子さんの登校渋りでは、保護者の方も先が見えない不安で頭がいっぱいになってしまうかもしれませんが、お子さんの不安に寄り添って今できることをしていきましょう。これからも、お子さんが自分に合った環境で頑張れるよう、応援しております。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月15日わが子の就学先、選択のポイントは?進路選択にまつわるコラム子どもの幼児期に発達障害や発達に特性があることが分かった場合、多くの保護者が小学校入学前から悩み始める「わが子の進路」問題。先輩保護者の皆さんが、迷いながらも就学先を決断したポイントはどんなものだったのでしょうか?また、わが子の障害について周囲の理解を得ることに苦労した……という方も。発達ナビライター陣や読者の皆さんから寄せられた体験談をご紹介します。4歳でASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)と診断を受けた息子さん。小学校入学後「特別扱いや配慮はできない」と言われ、小学1年生の2学期に自閉症・情緒障害特別支援学級のある学校へ転校する決断をしました。不安もあったものの、そこで転機が訪れて……。中高一貫校に通う中学2年生の息子さん。幼稚園年中の時にASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。おだやかでおっとりした性格の彼が中学受験にチャレンジしたきっかけ、勉強の様子や進学先選びについて教えていただきました。現在6歳の息子さんは、3歳9ヶ月でDQが80で境界域といわれました。就学相談の結果、小学校では特別支援学級へ就学することを伝えると、実母に反対されてしまい……。小さい頃からの困りが、やがて勉強のつまずきに繋がって……。中高生の勉強にまつわるコラム子どもが成長するにしたがって、困りごとの性質も変わってくるもの。ご紹介するコラムは、小さい頃からの困りごとが、中学生・高校生になった時に勉強のつまずきとして表れたというエピソードです。高校1年生でASD(自閉スペクトラム症)と診断された息子さん。診断の時期が遅かったため、合理的配慮のない中で学校生活を過ごしてきました。中学から勉強につまずき、高校3年生になって就職を目標に頑張ることにしましたが……。寺島ヒロさんの長女・いっちゃんは、小学5年生から中学時代まで不登校でした。発達障害と睡眠障害(非24時間睡眠覚醒症候群)があり、朝決まった時間に登校することが難しかったため、通信制の高校に進学しました。大学受験にチャレンジしたいと決意を新たにしましたが、小学4年生の学習範囲からの遅れはいかんともしがたく……。子どもが「園や学校に行きたくない」きっかけは?行き渋り・不登校にまつわるコラムわが子の行き渋り・不登校にお悩みの方も多いのではないでしょうか。園や学校に行きたくない理由はお子さんによってさまざまですが、発達ナビライターや読者の体験談がお子さんの気持ちを知る手掛かりになるかもしれません。keikoさんの息子・しのくんは発達障害グレーゾーンの男の子です。しのくんが5歳頃、突然保育園に行き渋るようになりました。行き渋りの原因はなんと「ゲーム」?毎朝トイレに立てこもり号泣するしのくんに、keikoさんは「与えるのが早すぎた?」と後悔しますが……。スパ山さんの長女・姉子さんは、小学2年生の時にASD(自閉スペクトラム症)と母子分離不安と診断され、小学4年生の時に知的ボーダー、場面緘黙と医師から言われました。姉子さんの発達の凸凹が分かったきっかけは、小学校に入学したと同時に始まった行き渋りでした。10歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けた息子さんは、現在14歳の中学2年生。小学校、中学校と不登校、行き渋りを経験していますが、不登校の理由はそれぞれの時期で違ったそうで……。ケガをさせて謝罪、受け入れ先なし、家庭内暴力も……他害にまつわるコラムお友達や周囲の人たちを傷つけてしまう「他害」。傷つけてしまった相手への申し訳なさはもちろん、わが子が加害者となったショックで、保護者もつらい気持ちになりますよね。実際にわが子の他害行動に悩んだ連載ライターや読者の体験談をご紹介します。星河ばよさんの息子さんは発達障害グレーゾーンで、現在は中学校の特別支援学級に通っています。小学生の頃は切り替えが苦手で、癇癪を起こすことも多かったそうです。ある日、通っている放課後等デイサービスで大きなトラブルを起こしてしまい……。6歳でADHD(注意欠如多動症)、軽度知的障害(知的発達症)と診断を受けた息子さん。小学校入学後は、癇癪が激しく学校では対応できないと言われ、ごく限られた時間のみ登校するような毎日でした。小学1年生のときADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けた息子さん。小学5年生の終わりから昼夜逆転生活、家庭内暴力が始まりました。中学1年生で不登校になり、ますます生活は荒れ、児童相談所へ相談した結果……。まだまだあります!そのほかのヒットコラムはこちらから!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月14日いくら待っても発語がなく悩んでいた日々……知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の次男Pは、3歳になるまで意味のある発語はほとんどありませんでした。Pの幼少期には周りから「男の子はしゃべるのが遅いよ」「いつかしゃべれるようになるよ」などと励まされて、私も希望を持つようにしていました。しかし2歳を過ぎ、PがASD(自閉スペクトラム症)と診断されてからは、言葉が遅いのは障害があるのが原因だし、たとえ言葉が出たからといって、Pの障害が治るわけでもないと思うようになったので、Pの言葉が出ないことに対して私が悩むことは徐々に減っていきました。Upload By みんそんなPも3歳を過ぎたあたりからエコラリア(他人が言った言葉をそのまま繰り返すこと)などで言葉を発することが多くなり、話せる単語も少しずつ増えてきました。4歳頃には初めて「お母さん」と言えるようにもなり、好きな物やキャラクターの名前、2語文なども出るようになりました。5〜6歳頃には、トイレを言葉で伝えてくれるようになり、暑い・冷たい・痛いなどの感覚的な言葉も出るようになりました。それまで要求がある時には、クレーンで伝えることが多かったPも、現在ではある程度言葉で伝えてくれるようになり、意思疎通もかなりできるようになってきました。Upload By みん言葉は出るようになったけれど、新たな問題も!?でも、Pの場合は言葉が出たからといって喜んでばかりもいられなかったのです。現在も、自発的に発する言葉は、一方的な要求の場合のみしか出ず会話になりません。こちらの問いに対して返事をすることはないけれど、Pの問いに対してはすぐに返事をしないと怒るなど、他者との言葉のコミュニケーションはかなり自己中心的なのです。Pが気に入った言葉は、時と場所を考えず自分が言いたい時に何度も繰り返し言いますし、発音が悪いので相手が聞き取れず正しく伝わらなかった場合には癇癪を起こすようにもなりました。Upload By みんコミュニケーションを取るための手段として言葉を発しているわけではない!?私はPの言葉が出ることをずっと望んでいたし、言葉が増えたことには成長を感じ、もちろん喜んではいるのですが、言葉が出たらゴールというわけではなく、その子の特性によっては、その言葉自体が困りごとへと変わってしまう場合もあるんだと痛感しています。Pは言葉を発する時に、誰かとコミュニケーションを取ろうとしているのではなく、自分の頭に浮かんだことをただ発しているだけなのかもしれませんし、自分の考えていることを声に出し整理しているだけなのかもしれません。また不安やストレスを感じたときに同じ言葉を繰り返し言って安心しているのかもしれません。私はPがなぜそのような言葉を発しているのか?を理解すると同時に、静かにする場所や場面を絵カード等で提示し、声のボリュームの練習をしてみたり、ルールを決めたりすることが必要だと思っています。また、聞いてもらう相手に少しでも正しく伝わるように、家だけではなく特別支援学校や放課後等デイサービスなどでも発音や発声の練習を実践してもらい、言語療法の先生にも相談して、言葉に関することをいろいろ教えてもらいたいです。P自身が自分の言いたいことが伝わらないことにイライラし、ストレスを感じないように、できる限りサポートしていけたらと思っています。Upload By みん執筆/みん(監修:新美先生より)P君の言葉の発達の変化と保護者としてどのように感じて考えてきたかについて、聞かせて下さりありがとうございます。ASD(自閉スペクトラム症)や知的な発達の遅れがあると、言葉が出るのが遅かったり、言葉が出るようになってもコミュニケーションがうまくとれなかったりして、保護者の方としてはやきもきしたり、心配になったりすることが多いと思います。みんさんがおっしゃられているように、「言葉が出たからゴール」というわけではないというのもありますね。一般的に自閉傾向のある方は、知的な遅れがあってもなくても、音声言語によるコミュニケーションよりも、視覚的な情報のやりとりのほうが、より意思疎通がスムーズにいくことが少なくありません。みんさんもご紹介くださっているように、言葉が出ていても、絵カードなどの視覚情報のやり取りも活用するのはとてもいいと思います。音声の言葉だけにこだわり過ぎずに、ご本人に合った形式でご本人に伝えられるーーご本人の思いを表出できる手段を取り入れていけるとよいと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月13日特別支援学級にいることを疑問に思っている子どもへどう伝える?私の息子(現在23歳)は、知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)です。同じく知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の子どもを育てている知人から、こんな相談を受けたことがありました。「特別支援学級に在籍していることを本人は疑問に感じているようで、なんでみんなと同じクラスに行けないの?と聞かれてしまう。どう説明したらよいのか困ってるので教えてほしい」と……。特別支援学級とは、障害のある子どもが、学習または生活上に困りごとを克服するために設置されている少人数制の学級のことで、小学校、中学校に設置されています。なかよし学級、わかば学級など、数字ではない学級名だったり、1組~5組が通常学級、6組が特別支援学級としている学校もあったりと、さまざまです。もちろん特別支援学級と通常学級の違いについて詳しく知らないまま通っている子どもいるでしょう。ですが「通常学級は児童35名に対して担任1名、特別支援学級は8名に対して担任1名の少人数」という状況にだんだんと気づき、自分が通っているクラスはほかのクラスとは違うんだと分かるようになるでしょう。ですから、曖昧に答えないで「人には得意不得意があるので、個別の学習が得意な子や、少人数の方が適している子は特別支援学級、特別支援学級はスペシャルな教育『特別支援教育』を受けられる場なんだよ」とそのまま答えてあげればいいのではと伝えました。さらに可能であれば、雑談の中で軽く伝えるのではなく、一対一の面談で第三者(医師や支援者など)から伝えたほうがいいと思っています。この自分に障害があることを理解しているか、またそれを説明できるかは、とても大事なことだからです。息子の場合は息子は中度知的障害(知的発達症)があるASD(自閉スペクトラム症)ですので、このようなことを聞かれたことは今までありません。ですが、特別支援学級がない中学校の前を通った時「僕は障害があるからこの学校には行ってない。特別支援学級のある学校に通ってる」と淡々と独り言のように言ってました。決して自分を卑下しているわけではありません。事実を事実として捉えているようでした。小学校の頃、放課後等デイサービスのヘルパーさんが毎日学校に迎えにきてくれて、18時までデイで過ごす生活をしていた息子。学校まで迎えに来てもらっているのはもちろん少人数です。息子はそうした状況も理解していたと思います。就職活動で息子は現在、一般企業で障害者雇用として働いています。障害を開示して働く場合、まず面接官に聞かれることがあります。「あなたの障害名を言ってください」また「あなたの得意なこと苦手なことを言ってください」とも聞かれます。この質問の意図について聞いたところ、自分の苦手を隠そうとしたり、自分の障害を受け止めていなかったり、変なプライドがあったりすると、アドバイスや指示を受けられなくて困るから、本人が自分のことを分かっているかを聞いているとのことでした。本人告知という大それたものではなく、特性をきちんと自覚させ、その結果、通常学級に在籍していないとか通級指導教室を利用している理由を分かっておくことはとても大事です。子どもから質問を受けた時は、いい機会だととらえ、答えたほうが良いと思います。息子は現在就労していますが「あなたの障害名は?」と聞かれたとき、「自閉症と知的障害と強迫性障害です。不得意なことは計算です」と答えているようです。これは、聞かれたときに正しく伝わるようにと、特別支援学校高等部卒業後に通っていた就労移行支援事業所での面接練習で、バッチリ訓練してもらった成果です。就職活動をしないにしろ、自分のことをしっかり認識していることが大切だと思います。執筆/立石美津子(監修:鈴木先生より)デンマークにある自閉スペクトラム症(ASD)専門の学校では、例えば「自分は自閉スペクトラム症であり、感覚に敏感なことから、急に触られることが苦手です」などと自己紹介が言えるようにすることから教育が始まるようです。ASDは、障がいというよりは特性と考えた方がいいようです。自分の特性を理解し、周りにもその特性を理解してもらい、合理的配慮の下で働ければ問題は起きない可能性が高まると思われます。日本の特別支援学校はASDだけではなく、肢体不自由児や重度の知的障がい児なども混在しており、ASDに特化した教育がなされていないのが現状です。これからは診断のついている個々の障がいに向き合った、きめ細かな教育が望まれるのではないでしょうか。前の記事はこちらUpload By 立石美津子Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年08月12日『マンガ発達障害の子どもと私たち』はるき編が完結!「親なきあと」に備えて今からできることや幼少期の「もしかして発達障害?」など【2024年7月】発達ナビでは、発達ナビ読者の困った経験、こうしたら良かったといった経験を読者体験談としてお届けしています。今月も、読者の皆さんからさまざまなエピソードが集まりました。そのエピソードをもとに漫画コラム化!7月は障害のある保護者の方なら皆さん気になる「親なきあと」に備えて今からできることについてや、幼少期に「もしかして発達障害かも?」と悩んだ双子の息子さんのコラムを公開しました。また、『マンガ発達障害の子どもと私たち』シリーズはるき編が完結!子どもの不登校、保護者の苦悩……保護者である「私」の決断は必見です。RINRINさんの息子さんは現在33歳。4歳で知的障害(知的発達症)と診断されました。中学生からレスパイトを利用し、20歳でショートステイに登録、現在はグループホームで暮らしているとのことです。「親なきあと」に備えて今からできることのヒントが詰まったコラムです。現在小学校5年生の一卵性双生児(男の子)の母くまごろうさん。診断はありませんが、二人ともADHD(注意欠如多動症)、さらに次男の方にはASD(自閉スペクトラム症)の傾向があると感じているそうです。1歳の頃から集団行動を全拒否の息子さんたちに、「もしかして発達障害?」と不安を感じ……。運動会が終わった5月の下旬頃から学校への行き渋りが始まったはるきさん。お母さんは「不登校を責めずに受け入れる」対応をとりました。ですが、完全な不登校になってしまったらどうしようと焦りは募る一方で……。学校への行き渋りが始まったはるきさん。頑張って久しぶりに学校へ行ってみたら身体症状が出てしまいます。学校の先生と相談してもはるきさんが学校へ行けない理由や、どうすれば学校へ行けるのか、はっきりした答えは分からずで……。不登校になってしまった小学校2年生のはるき。不登校のはっきりした理由は分からないまま、母は一人悩み、苦しんでいました。そして家族で出した答えは――。はるき編、最終回です!『マンガ発達障害の子どもと私たち』プロローグと1話は以下からご覧いただけます。8月下旬からは新シリーズ「みき編」が連載スタート。お楽しみに!ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』はみなさんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントをつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児しているみなさんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。みなさまのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知・パートナー(夫婦) 関係・両親(義両親)、親族関係・進学・受験関係・冠婚葬祭関連・反抗期、思春期・自傷・学習関係・不登校、行き渋り・ゲームとの関わり・不器用さについて・ママ友や、ほかの保護者の方とのエピソード・ご近所関係(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年08月10日