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日本人の死因1位である「悪性新生物(がん)」(厚生労働省・2014年人口動態統計より)。近年、診断や治療の進歩により、がんは治せる病気になってきたともいわれている。しかしながら、発見されたときに既にがんが進行していれば、やはり治癒が見込めないケースが多いことも事実だ。がんを完治するために大事なことは、何より早期発見。そして、手術などでの一次治療を行った後、がんの再発を防ぐことである。そこで今回は、がんの再発予防治療について、瀬田クリニックグループ 統括院長の後藤重則医師に伺った。○抗がん剤による再発予防治療手術や放射線治療は、患部を局所的に治療するもの。それに対して、手術後の再発予防や、がんが進行転移して局所治療で対処できない場合の全身治療として行われるのが、抗がん剤による化学療法だ。抗がん剤にはさまざまな種類あるが、がんの部位ごとに効果が確認されているものがガイドラインで定められており、さらに患者さんの個々の状況に応じて、有効だと思われる抗がん剤を医師の判断によって決定する。なお抗がん剤の治療費は、その種類や使用量(患者の体格に基づく)によって変わってくる。早期がんで転移などが見られない場合、基本的には手術での治療が第一選択肢となる。ただ、手術でがんを取りきったように見えても、それはあくまで肉眼や検査で分かる範囲のことで、目に見えない、検査で検出できないような微小ながん細胞が既に体の他の箇所へ転移してしまっている場合もあり、こうしたがん細胞が後々再発のもととなるのだ。そこで、この見えない微小ながん細胞を排除して再発を予防する目的で、手術後に抗がん剤治療を行うことがある。抗がん剤は、がん細胞を殺傷したり、がんのサイズを小さくしたりすることができる治療法だ。一方で、多くの人にとって不安な点は、その副作用だろう。副作用には個人差があり、使用する薬剤によっても異なるが、髪が抜ける、全身の倦怠(けんたい)感やしびれ、吐き気・嘔吐(おうと)などの症状が起こる場合があるとされている。それらの副作用によって日常生活に支障が出ることを懸念する人もいるはずだ。○抗がん剤の効果や副作用は予測可能か?では、抗がん剤の効果や副作用は治療前から予測できるのだろうか。「抗がん剤を投与することで、投与しない場合に比べて再発率が下がることが研究により証明されている場合、そうした治療が行われます。ただ、そのメリットを享受できるのは何割かの方であって、全員というわけではありません」と後藤医師。「というのは、抗がん剤治療を受けたから再発が防げたという場合もありますが、受けても再発する方もいらっしゃいます。また、もともと受けなくても再発しない方もいるため、そのような方々は副作用のある治療を受けたメリットはありません。患者さんごとに効果を事前に予測することは、なかなか難しいと思います」。また、副作用についても言及し、「どういう副作用がどの程度起きるかは個人差が大きく、投与してみないとわかりません。ただ、副作用を抑える薬なども良くなってきています」と話した。○免疫細胞治療の再発予防効果再発を防ぐという観点では、放射線治療や化学療法といった標準治療とともに、免疫細胞治療を行うことも選択肢の一つとなる。免疫細胞治療とは、患者の体内にあるがんと闘う免疫細胞を取り出して体外で培養し、体内に戻してがん細胞を攻撃するという治療法。自分自身の細胞を使うため、大きな副作用が出ないことが特徴だ。後藤医師は、国内でもっとも早くからこの免疫細胞治療を行っている医師の一人で、豊富な症例経験を有している。「16年前に瀬田クリニックを開院して免疫細胞治療を始めたときは、全ての治療をやり尽くして、他に手だてのない末期の患者さんがほとんどでした。しかし最近では、手術後の再発予防を目的に治療を受ける患者さんは増えています。体に負担をかけずに、微小ながん細胞を駆逐する再発予防治療として、免疫細胞治療は期待できると思います」。さらに、がんの再発リスクについて次のように語った。「抗がん剤にしろ、免疫細胞治療にしろ、治療によって再発を防げるかどうかは、患者さんのがんの状況によります。再発リスクが少ない方は治療をしなくても再発しない可能性は高いですし、もともと再発リスクが高い方は治療をせずに防ぐのは難しいでしょう。信頼できる医師のもと、がんの性質やデータ、ライフスタイルなどにあわせて、最善の治療法を検討してほしいと思います」。がん治療では、いかに情報を集め、信頼できる医師を見つけ、納得のいく治療法を選ぶかが重要だ。しかし実際には、がんを宣告されてから治療法を選択するまで、時間がないことも多い。がんを誰にでもかかる可能性のある病気として捉え、一人ひとりがそのリスクと向き合ってみてはいかがだろうか。※画像と本文は関係ありません○記事監修: 後藤重則(ごとう・しげのり)瀬田クリニックグループ統括院長1981年新潟大学医学部卒業1985年県立がんセンター新潟病院1989年新潟大学医学部助手、同年医学博士号取得1991年帝京大学生物工学研究センター講師、帝京大学医学部講師1995年医療法人社団弘生会霞ヶ関ビル診療所1999年瀬田クリニック(現・瀬田クリニック東京)、2001年より同院長2008年東京医科大学内科学兼任講師2009年より医療法人社団滉志会理事長
2015年12月25日理化学研究所(理研)は12月24日、多様な臓器のがんで異常な発現を示すRNAを多数発見したと発表した。これらのRNA群はがん診断の新たなバイオマーカーとなる可能性があるという。同成果は、理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター ゲノム情報解析チーム ピエロ・カルニンチ チームリーダー、ボグミル・カチコフスキー 国際特別研究員と、オーストラリア・ハリー・パーキンス医療研究所 アリスター・フォレスト 教授らの研究チームによるもので、11月9日付けの米科学誌「Cancer Research」オンライン版に掲載された。同研究チームは、理研が主導する国際研究コンソーシアム「FANTOM5プロジェクト」の一環として、さまざまな臓器・組織のがんに由来する225種の細胞株と、それらに対応する339種の正常細胞を対象に、がん細胞で発現が変化するRNAを解析。この結果、多くのがん細胞株で発現が上昇、もしくは低下する2108種のRNA群を発見した。RNAにはタンパク質を作る情報を持ったメッセンジャーRNA(mRNA)と、タンパク質を作る情報を持たないノンコーディングRNA(ncRNA)があるが、上記2108種のRNA群のうちmRNAについては、米国主導のがんゲノム解析プロジェクト「がんゲノムアトラス計画」の臨床検体解析データと照合し、がん細胞で発現が上昇する76種のRNA群と、発現が減少する52種のRNA群を同定した。また、ncRNAを詳細に解析したところ、がん関連遺伝子近傍のロングノンコーディングRNA(lncRNA)や、特定のエンハンサーの活性化を示すエンハンサーRNA(eRNA)、反復配列由来のRNAの発現が、多くのがん細胞で上昇しており、ncRNAとがん化との関連を示唆する多くのデータが得られた。理研によると、今回同定したmRNAやncRNAは、多様な臓器のがんで汎用的に活用可能なバイオマーカーとしての応用が期待できるという。また、これらのRNA群と発がんとの関係を明らかにすることで、抗がん剤の新たな標的となる可能性もあるとしている。
2015年12月24日今や2人に1人ががんになるといわれる時代。がん治療では、信頼できる医師のもと最善の治療法を選択することになる。日本のがん治療では、手術や放射線治療、化学療法といった標準治療が一般的だが、自分の細胞でがんを治療する方法もあることをご存じだろうか。今回は、"がんの最先端治療"といわれる免疫細胞治療について、瀬田クリニックグループ 統括院長の後藤重則医師にお聞きした。○がん細胞は細胞分裂のコピーミスで起こる!人間の体は毎日、新しい細胞が生まれるとともに古くなったものが死滅している。入れ替わる細胞の数は1日に約8,000億個。新しい細胞は生まれつき持っている細胞情報(DNA)をコピーして作られるが、細胞分裂の過程でコピーミスが起こると異常細胞ができてしまう。その異常細胞の1つが「がん細胞」だ。がん細胞は健康な人の体内でも1日に数千個発生しているといわれているが、免疫細胞の働きによって排除されている。「免疫力を高めてがんを防ぐ」などといわれるのは、こういった理由からだ。では、日頃からどんなことに気をつけて生活をすれば、免疫力を高められるのだろうか。「免疫力を高めるためには、栄養バランスの整った食事、運動や睡眠など規則正しい生活を意識することが大切です。喫煙やストレスは免疫力を下げ、がんのリスクを高めるので注意しましょう」と後藤医師。○がんの最先端治療「免疫細胞治療」とはがんの標準治療は、手術、化学療法、放射線治療の3つが代表的だ。患者のがん細胞の性質や進行度、再発リスクなどによって、医師は適切な治療法を提案する。一方、患者の体内にある免疫細胞を体外で強化したうえで再び体に戻し、がん細胞を攻撃するのが「免疫細胞治療」。つまり、"自分の細胞でがんを治す"という治療法だ。自分の細胞を使うため大きな副作用がないことがメリットの1つで、QOL(生活の質)を下げない全身的な治療法として注目されている。後藤医師が統括院長を務める瀬田クリニックグループは、1999年に国内初のがん免疫細胞治療専門医療機関として東京に開院。現在は全国4カ所(東京・神奈川・大阪・福岡)で展開するとともに、同クリニックと同様の免疫細胞治療が受診できる連携医療機関も全国で44カ所存在する(2015年12月時点)。免疫細胞治療は現在のところ、その多くは自由診療として行われている。○免疫細胞治療の種類免疫細胞治療では、一部(HIV抗体陽性の人、臓器・同種骨髄移植を受けた人など)を除くほぼすべてのがん種が治療対象になる。また、早期から再発・転移を伴う状況まで病期にも関わらず治療可能だが、外来通院での治療になるため、無理なく通院できる程度の健康状態が必要としている。瀬田クリニックで行っている免疫細胞治療は次の5つだ(瀬田クリニックホームページより)。■樹状細胞ワクチン療法樹状細胞は、がん細胞を直接攻撃するT細胞にがんの目印(がん抗原)を伝え、攻撃の指示を与える免疫細胞。樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞に体外でがん抗原を取り込ませてから(教育してから)体内へ戻し、T細胞にがんを攻撃するよう指示させる。■アルファ・ベータT細胞療法がんに対する攻撃力が最も強い細胞のひとつであるT細胞を全般的に活性化し、増殖させてから体内へ戻す治療法。T細胞の多くが「アルファ・ベータT細胞」という種類のため、この名前がついている。がん細胞の目印が分からないとき、がん細胞が目印を隠している場合に、早期がんから進行したケースまで幅広く適用。また、免疫の働きにブレーキがかかっている患者のブレーキを外す働きもあり、化学療法や放射線治療の効果が増すことも期待されている。■ガンマ・デルタT細胞療法がん細胞を攻撃する力を持つ免疫細胞(リンパ球)のうち「ガンマ・デルタT細胞」を用いた治療法。ガンマ・デルタT細胞には、細菌やウイルスなどに感染した細胞やがん化をはじめた細胞の変化を素早く感知して攻撃をしかけるといった特徴がある。抗体医薬を使っている場合や、骨腫瘍・骨転移などの治療にゾレドロン酸を使っている場合、併用することで相乗効果を期待できる。■NK細胞療法NK(ナチュラルキラー)細胞は、末梢血中のリンパ球の10~20%を占め、極めて強い細胞殺傷能力を持った細胞の一種。体の中を常時パトロールし、がん細胞やウイルス感染細胞などの異常な細胞をいち早く発見して攻撃する役割を持つ。NK細胞療法では、患者のNK細胞を体外に取り出し、高度に安全管理された環境下で大幅に増殖・活性化して体内に投与する(治療開始前の患者の免疫状態等により、NK細胞の増殖度合いは異なる)。■CTL療法T細胞を活性化・増殖させる際に、患者のがん細胞を使ってT細胞を増殖させ、そのがんのみを攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)を増やしてから、体内に戻す治療法。腹水や胸水などから、患者のがん細胞が入手できる場合に治療が可能。○標準治療と併用が可能これらの免疫細胞治療は、標準治療と併用できる点も重要だ。例えば、手術、放射線治療、抗がん剤などはがん細胞を大きく減らしたり、腫瘍を小さくしたりすることが可能だが、再発のもととなる隠れたがん細胞が残る可能性もある。一方、免疫細胞治療は、サイズの大きながんを縮小させる力は弱いものの、こうした隠れたがん細胞を探し出して攻撃する力を持っており、標準治療と併用することで再発リスクを下げたり、他の標準治療の効果を底上げしたりすることが期待できる。新しい治療法であるため、現状では高齢者よりも、インターネットなどで自ら情報を探すことに長(た)けている若い人に認知される傾向があるとのこと。「若い患者さんは、ご自分でいろいろと調べてから来院されます。また、ご高齢の患者さんの場合、お子さんやお孫さんが調べて連れて来られるケースも多いですね」。なお瀬田クリニックでは、次のような場合に免疫細胞治療を提案している。1. 手術などを行ったが再発の心配があり、体に負担をかけずそのリスクを下げたい場合2. 放射線治療や抗がん剤と併用して、プラスαの効果が期待できそうな場合3. いろいろな治療を試したが、標準的な治療方法が他にないと言われた場合「免疫細胞治療は、体への負担が少ないので、例えば仕事や趣味、食事など、これまでどおりの生活をしながらがんの治療が行えます。多くの人がさまざまながんの治療法があることを知って、ご自分のライフスタイルに合った治療法を選べるとよいですね」。以前と比べて「がんは治る病気」といわれることも多くなったが、やはり自分や家族、友人ががんを患った場合、まず感じるのは恐怖だろう。事前に治療法について知っておけば、いざ治療が必要になったときも、信頼できる医師や病院、治療法を見つける手がかりになる。健康に気をつけてがんを防げることが一番だが、もしものときに備えて、がん治療に関する知識を持っておくとよいだろう。※画像と本文は関係ありません○記事監修: 後藤重則(ごとう・しげのり)瀬田クリニックグループ統括院長1981年新潟大学医学部卒業1985年県立がんセンター新潟病院1989年新潟大学医学部助手、同年医学博士号取得1991年帝京大学生物工学研究センター講師、帝京大学医学部講師1995年医療法人社団弘生会霞ヶ関ビル診療所1999年瀬田クリニック(現・瀬田クリニック東京)、2001年より同院長2008年東京医科大学内科学兼任講師2009年より医療法人社団滉志会理事長
2015年12月24日九州大学と日本医療研究開発機構は12月22日、肝内胆管がんや混合型肝がんの原因遺伝子を特定し、今年ノーベル賞を受賞した抗寄生虫薬イベルメクチンが肝内胆管がんの治療薬となりうることを発見したと発表した。同成果は、九州大学 生体防御医学研究所 西尾美希 助教、鈴木聡 教授ら、および九州大学病院別府病院 三森功士 博士、産業技術総合研究所 新家一男 博士らの研究グループによるもので、12月21日付けの米科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」オンライン版に掲載された。同研究グループは2012年に、「MOB1」ががん抑制遺伝子として作用することを証明するとともに、このシグナルが皮膚がんの原因となることを示している。今回、MOB1をマウスの肝臓で欠損させることで、肝がんの中でも特に肝内胆管がんや混合型肝がんを発症すること、これらがんの発症には、このシグナルの下流で転写共役因子「YAP1」や細胞増殖の調節に関わる分泌タンパク質「TGFβ2/3」が増加することが重要であることを見出した。また、YAP1を標的とする抗がん剤を天然物ライブラリから探索し、抗寄生虫薬「イベルメクチン」や「ミルベマイシン」が実際に肝内胆管がんの治療に有効であることを、MOB1欠損マウスやヒト肝内胆管がん細胞移植マウスを用いて個体レベルで証明した。同研究グループによると、YAP1を標的とする薬剤として、イベルメクチンなどの既存の天然物だけでなく、新規天然物や新規低分子化合物も見出しつつあり、今後肝内胆管がんや混合型肝がんに奏功する治療薬を単離できる可能性が高いとしている。
2015年12月22日国立がん研究センターは16日、これまで生検や手術で採取した組織等を用いて行っていた網羅的なゲノム異常の解析を、血液でも高精度に行える新たな手法を開発し、さらに血液からも進行膵臓がんの約30%に治療標的となり得る遺伝子異常を検出したと発表した。現在、がんにおける治療標的遺伝子異常の探索には、主に外科的に切除した手術材料や内視鏡的もしくは超音波下に採取した組織が用いられているが、がんの占居部位や病状悪化等で生検が困難な場合もある。また、がん組織に針を直接刺して組織を採取する組織生検は患者の負担が大きく、出血などの合併症の危険性も伴っている。そのため、患者への負担が少なく、複数回の検査も可能な血液や体液(尿など)を用いた網羅的ながんゲノム解析は、新しいがん分子診断法として期待されていた。しかし、血液検体から得られる遊離DNA(cell-free DNA、以下cfDNA)は少量で、さらにそのうちがん由来のcfDNAは極めて微量であるため、網羅的なゲノム解析を高精度に行うことは、これまでほとんど実現していなかった。今回発表された同研究では、組織生検等により膵臓がんと診断された患者の血液を用い、膵臓がんに高頻度に異常がみられる遺伝子と、治療標的となり得る遺伝子を含めた膵臓がんのゲノム異常を、低侵襲な検査法である血液(約5ml)から検出する方法について検討。その結果、新たに開発した前処理法を次世代シークエンサーによる解析前に用いることにより、少量(10ng)のcfDNAからも網羅的なゲノム解析を行うことが可能であると確認し、さらに治療標的となり得る遺伝子などの変異14例(約30%)を検出した。同研究で用いた解析方法は、膵臓がんに限らずあらゆる固形がんで可能であり、また、生検が困難な患者や薬剤耐性獲得変異など経時的な複数回の検査が必要な場合にも有用と考えられ、通常の組織生検よりも患者負担が少ない網羅的ゲノム解析手法として臨床応用が期待される。また、これまで分子標的薬の開発が進んでいない膵臓がんにおいても、がんの遺伝子異常に基づいた個別化治療が有効である可能性が示唆され、今後さらに検出感度を向上させることで、治療標的の探索だけでなく、難治がんの早期診断への応用も期待されるという。
2015年12月17日アイリックコーポレーションが運営する保険クリニックはこのほど、20~60歳の働く女性を対象に「女性のがん」について調査を実施し、結果を発表した。同調査は11月10日~13日にかけて行い、500人から有効回答を得た。がんは怖いと思うか聞いたところ、97.4%が「怖い」と回答した。女性がかかる「がん」として怖いと思うものは何か尋ねたところ、1位は「乳がん」、2位は「子宮頸がん」、3位は「卵巣がん」という結果になった。「乳がん・子宮がん・卵巣がん」が怖いと思う理由を聞いたところ、一番多かった回答は「がんは全て怖い」だった。2位は「女性特有のがんだから」、3位は「最近話題になっているから」となっている。怖いと思うがん5位だった「大腸がん」が怖い理由としては、「女性がかかる割合が高い」「便秘の人が多いから」が上位に挙げられた。子宮頸がん、乳がんの検診を受けているか尋ねたところ、「不定期に受けている」(31.4%)が最も多く、次いで「定期的に受けている」(28.6%)が続いた。「受けたことがない」は25.4%となっている。各年代別の受診率を見ると年代ごとに受診率が高くなるが、30歳代でも約3人に1人が受けていないのが現実のようだ。身近に「がん」にかかった人がいるか聞くと、68.4%が「いる」と回答した。その内訳を見ると、「父、義父 」が42.1%と最も多い。次いで「母、義母」(24.3%)、「友人、知人」(14.9%)となった。自分は「がん」にかかると思うか尋ねると、60.0%が「わからない」と回答した。「思う」は28.4%で、「思わない」(11.6%)の約3倍いる事がわかった。「思う」と答えた人に、がんを経験した人が身近にいるか聞くと、80.3%が「身近にいる」と答えた。
2015年12月10日「All About」を運営するオールアバウトは12月9日、2013年から実施しているというアワード企画である「国民の決断」において、全9部門のランキングを発表した。これによると、1位は「がん検診を受ける決断」、2位は「地方移住する決断」、3位は「パパが育休を取る決断」だった。同企画は、その年に生活者の身の回りで特徴的だったと思われる事柄とそれに対する決断について、住まい/マネー/転職・起業/妊娠・出産/老後/消費・購買/健康/進学・就職/結婚・離婚・再婚の計9部門において、約900名のガイド(専門家)のアンケート結果をもとにAll Aboutの編集部が審議し、総合ランキングと部門別ランキングを発表するというもの。1位のがん検診(健康部門)は、有名人のがん報道が相次いだことによるという。同社が2015年11月に20代から50代の女性を対象として行ったインターネット・リサーチ(有効サンプル数は2,200人)の結果、タレントの北斗晶が乳がんであることを告白した報道を見て「乳がん検診をすぐ予約した」と回答した女性の割合は7.9%だったとのこと。「検診を受けようと思った」と回答した女性(21.0%)と合わせると3割近くの女性がこの報道に影響され、乳がん検診を受ける決断をしたという。年齢別では30代の意識が34.0%と最も高く、20代が31.8%で続き、これまで危機感が薄かった若い世代の意識を変えるきっかけとなったようだと同社は分析する。2位の地方移住する決断(住まい部門)に関しては、都市から田舎へ移住したい人が内閣府調べによると9年前に比べ11ポイント増加したという。年齢別に見ると、若者は田舎暮らしに憧れ、高齢者ほど医療機関へのアクセスなどの利便性を求めて都市部に住みたがる傾向にあるとのこと。また、徳島県や長野県、高知県などが、企業のサテライト・オフィスを積極的に誘致しているという。このような動きについて「最新住宅キーワード」ガイドの山本久美子氏は、「若い子育て層が、豊かな自然の中で子育てをしたいとか、ストレスの無い生活をしたいなどの理由で地方移住を選ぶ傾向があります。一方、平日は都市部に勤務し、週末は田舎で家族とゆっくりと過ごす『ニ地域居住』といった移住スタイルもあり、多様なライフスタイルを実現する手段も増えています」とコメントしている。3位のパパが育休を取る決断(妊娠・出産部門)に関して、厚生労働省が2014年に実施した調査によると、男性の育児休暇取得率は2013年度の調査と比べ0.27ポイント高い2.30%だったとのこと。一方、同社が11月中旬に実施した調査では、2014年10月以降に配偶者が出産した男性291人の育休取得率は10.65%に上ったという。政府が目標に掲げる「2020年の男性の育休取得率13%」に一歩近付いた半面、会社に遠慮して育児休暇ではなく有給休暇を取得する「隠れ育休」という言葉も登場しているとのこと。このような状況に対して「男の子育て」ガイドのおおたとしまさ氏は、「男性の育休取得率の向上には、企業による福利厚生ではなく、国による社会保障の範疇であるという認識のもとで議論を深めていく必要があります。目標数字だけが企業に押し付けられれば、イクメンになりそうな男性をそもそも雇用しないという動きが強まる可能性だってあります。つまり企業へのサポートも必要ということです」とコメントしている。
2015年12月10日国立がん研究センター(国立がん研)は12月9日、肺小細胞がんや悪性リンパ腫などさまざまながんで不活性化変異がみられるCBP遺伝子について、p300遺伝子と相互に補い合い機能する関係があり、両方の遺伝子が機能しなくなるとがん細胞が死滅する「合成致死」の関係にあることを発見し、そのメカニズムを解明したと発表した。同成果は、同研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野 河野隆志 分野長、荻原秀明 研究員と、第一三共との研究グループによるもので、11月24日付けの米科学誌「Cancer Discovery」オンライン版に掲載された。同研究グループは、CBPタンパク質とp300タンパク質の両方がなくなると、細胞の生存に必要なMYCタンパク質の発現がなくなってしまい、細胞死に至ることを突き止めた。CBPタンパク質とp300タンパク質は、染色体を構成するヒストンタンパク質をアセチル化する酵素であり、アセチル化は、がん細胞を含めたすべての細胞が生きていくために必要な反応となっている。そこで同研究グループらは、p300タンパク質の機能を阻害する薬剤を用いることで、CBP変異がん細胞を効率よく細胞死に導くことができると考えた。つまり、p300タンパク質の機能を阻害する薬剤が抗がん剤の候補であるとしている。今回の治療法の提案は、CBP遺伝子とp300遺伝子が、その両方が失われると細胞は生きていけないという「合成致死」の関係に基づいたもの。同分野ではこれまでも、肺腺がんに対して別の染色体制御遺伝子であるBRG1/SMARCA4について、合成致死に基づく治療法を見出し、抗がん剤の開発を進めている。
2015年12月09日塩野義製薬はこのほど、がん患者や家族を対象にした「STOP! がんのつらさ」キャンペーンを開始した。同時に、患者・家族・医療従事者のコミュニケーションを活性化させるアプリ「つたえるアプリ」もリリースした。同キャンペーンでは、より多くの患者や家族に「がんのつらさを周囲に伝える大切さ」を知ってもらうために、YouTubeなどで啓発活動を行っていく。同時に、どんな時にでもがまんしてしまう「がまん侍」をキャラクターにしたサイトも公開。「がんのつらさとは」「つらさを伝える」「がんの痛みをとる治療」などのコンテンツや、海外クリエイターによるコンテスト受賞作品を閲覧できる。また、がん治療中の身体とこころに起こるつらさについて、患者が正しい知識を学び、医療従事者に適切につたえることをサポートするためのコミュニケーションツールアプリもリリースした。聖隷三方原病院の森田達也副院長が監修を務めている。アプリでは、毎日の「痛み」「だるさ」「眠気」などの症状の記録や「気になることのメモ」を登録でき、記録した症状とメモは、スマートフォン内でグラフや表で表示できる。グラフなどは印刷も可能なため、印刷したデータを診察時にもっていくことで医師に症状を伝えやすくなるという。アプリの価格は無料。
2015年12月08日タカラバイオは11月30日、がん関連遺伝子を網羅的に解析するクリニカルシーケンスサービス「Oncomine Cancer Research Panel解析サービス」を12月1日より開始すると発表した。「Oncomine Cancer Research Panel解析サービス」は、国内外の大規模臨床研究でも採用実績がある次世代シーケンサーを用いる解析プラットフォームOncomine Cancer Research Panelを用いて、がん関連遺伝子の変異を網羅的に解析するもので、解析する遺伝子の種類に応じて「Oncomine Comprehensive Assay(143種類)」「Oncomine Focus Assay(52種類)」という2種類のサービスが用意されている。同サービスは主にがん分野の臨床研究や創薬研究を行う大学、医療機関、製薬企業などが対象となる。同社は研究分野で培われた遺伝子解析の技術やノウハウを法人向けの産業支援サービスへ展開することで、バイオ産業支援事業の拡大を図っていくとしている。
2015年12月01日アカデミストは11月26日、同社が運営する学術系クラウドファンディングサイト「academist」にて、がん予防薬開発のためのプロジェクト「正常細胞ががん細胞を駆逐するメカニズムを解明したい!」を開始したと発表した。同プロジェクトは、北海道大学 遺伝子病制御研究所 藤田恭之 教授によるもので、2016年2月26日までにacademist内プロジェクトの過去最高金額となる500万円を集めることを目標とする。藤田教授は、見かけ上は正常で現在では病理診断の対象外となっている「がんの超初期段階」において、正常細胞が隣接するがん細胞の存在を認識し、それらを駆逐していることをこれまでの研究で明らかにしてきた。しかし、このがん排除機構にどのような分子が関わっているのかということについてはまだ解明されていない。そこで同プロジェクトの研究では、さまざまなスクリーニング(ふるい分け)という手法を用いて、正常細胞とがん細胞の境界でどのような分子が細胞間の認識機構やがん細胞の排除に関係しているのかを明らかにすることを目指す。これにより、がん研究のブラックボックスであった、がんの超初期段階で何が起こっているのかという謎に迫ることが期待できる。さらに、それらの分子の機能を制御する薬剤を開発することで、正常細胞ががん細胞を排除するメカニズムを活性化する、あるいはがん細胞が正常細胞からの排除を免れるメカニズムを不活性化するという、がんを取り巻く細胞の社会性を利用した、世界初となるがん予防薬の開発を目指すという。クラウドファンディングで集めた研究費は、細胞を培養するための試薬費・各種スクリーニングにかかる費用や同定したタンパク質に対する抗体の作成費用として使われる予定。支援者への見返りとして「オリジナル画像、学会講演資料(3000円)」や「オリジナル白衣、研究室特製Tシャツ、オリジナル画像、学会講演資料(3万円)」などといったコースが用意されている(価格はすべて税抜)。藤田教授は今回のクラウドファンディングのチャレンジについて「欧米では、国からの研究費のほかに一般の方のドネーション(寄付)が大きな比重を占めている。残念ながら我が国には、サイエンスに興味を持ってドネーションするという文化がないが、その理由としてどんな研究をしているのかということが国民に伝わっていないからというのがあるかもしれない。今回のプロジェクトで、一般の方々と“がんを撲滅したい”という夢を共有して前進していければ」としている。
2015年11月26日金原出版は11月25日、がん患者およびがん患者の家族、放射線治療に携わる医師や看護師、医療関係者に向けた書籍『患者さんと家族のための放射線治療Q&A2015年版』(2,200円・税別)を発刊する。「放射線治療」は手術、薬物療法と並ぶがん治療の3本柱の1つ。手術や化学療法が困難な高齢者や、合併症により手術や化学療法が行えない患者にも適応できる治療法だという。また、通院による治療のため、「がん就労」を可能にする方法としても注目されている。国立がん研究センターがん対策情報センターによると、2015年の予測がん罹患(りかん)数は98万人、予測がん死亡数は37万人まで増加している。このうち放射線治療を受ける患者は約3割とのこと。この数は、"切らないがん治療"として放射線治療を選ぶ人が多い欧米と比べると半分程度だという。同社は、放射線治療を選ぶ人が少ない一因として「放射線治療の良さを知らずにいること」を挙げ、「放射線」という言葉だけで悪影響が出るのではないかと心配する患者や家族も多いことに着目。そこで、放射線治療に関する正しい知識を解説した同書を発刊することとなった。同書はQ&A方式で、さまざまな疑問に答える形で構成している。放射線治療のしくみ、手術や薬物療法との違い、放射線治療の費用、治療にかかる日数、併用療法、各部位別の治療法、治療の進め方などを解説。編集には日本放射線腫瘍学会が携わっており、学会初の公式本であるという。
2015年11月20日国立がん研究センター(国がん)とアストラゼネカは11月16日、国がんが開発中の質量分析イメージング法(Mass Spectrometry Imaging:MSI)を用いて、アストラゼネカの新規抗がん剤の腫瘍組織への局在を解析する非臨床共同研究契約を2015年9月10日に締結したと発表した。国がんが開発中のMSIは腫瘍組織で起こる抗がん剤の複雑な相互作用を放射性同位体を使用せずに直接分析できる技術。同センターは、MSIによりこれまで判らなかった腫瘍組織・細胞への抗がん剤集積を画像として確認することができるようになったとする。今回の共同研究では、坦がん動物モデルを用いて、新規抗がん剤の腫瘍組織分布を解析するMSI技法を開発・確立することを目指す。また、国がんとアストラゼネカは、同共同研究の成果を今後、新規抗がん剤を用いた早期臨床試験(第I相臨床試験)において、生体組織検査により腫瘍組織中の薬物分布濃度と効果の関連を評価し、投与量の設定、作用の評価に役立てるとしている。さらに、同技術を用いて最適な投与量を速やかに決定することによる臨床試験の短縮や、がん治療以外で生体組織検査を行う分野での当該薬剤の組織中の薬物分布濃度と効果の関連を評価することへの応用も期待される。
2015年11月16日国立がん研究センター(国がん)は11月13日、シスメックスと共同で次世代シークエンサー(NGS)を用いた網羅的遺伝子検査を行う「Sysmex Cancer Innovation Laboratory(SCI-Lab)」を同センター中央病院内に開設し、同検査を実臨床に導入することでがん患者の遺伝子情報を治療選択に活用することを目指す臨床研究「TOP-GEARプロジェクト」第2段(TOPICS-2試験)を2016年1月より開始すると発表した。がん診療における遺伝子解析には、正常な細胞から個人の体質を調べる生殖細胞系列遺伝子検査と、がん細胞の中の変化を調べる体細胞遺伝子検査がある。前者では個人の体質を対象としているため発見された異常が遺伝性のものである場合があるが、後者の場合はがん細胞の中で起こる変化であるため発見される異常は遺伝性ではない。SCI-Labが対象とするのはがん細胞の中の変化を調べる体細胞遺伝子検査で、遺伝子異常を解析することによって最適な治療薬の選択につなげることができる。同研究センター中央病院 病理・臨床検査科の角南久仁子 医員は「遺伝子異常に対する薬剤治療は、比較的副作用が少なく、治療効果が高い」と語り、適切な治療を行うためには正しい遺伝子診断が重要であると説明する。従来の検査法では、一度につき1つの遺伝子しか解析できず、結果が出るまでに2週間かかっていた。これに対し、SCI-Labでは国がんが開発した遺伝子パネルを用いて一度に約100種類の遺伝子を網羅的に調べることができるため、効率的に遺伝子診断を行い各患者の遺伝子情報に基づく個別化医療を実現できると考えられている。同センターは2013年から2014年にかけて同プロジェクトの第1段試験(TOPICS-1)を実施しており、そこで専門チームの設置など体制づくりを含めた網羅的遺伝子検査システムを構築し、有用性を検証した。その結果、網羅的遺伝子検査システムの有用性は確認された一方で、診断結果を患者にフィードバックし治療選択に導入するためには検査の品質保証が必要であることがわかった。来年1月より実施されるTOPICS-2では、TOPICS-1で構築した体制をベースに、実臨床で使える検査としての信頼性を確保するため、国際基準レベルの品質保証のもと、網羅的遺伝子検査システムを運用する。SCI-Labはシスメックスとの共同運営になるが、品質保証の面では、日本で初めて米国臨床検査室改善法(CLIA)を所得した理研ジェネシスの支援を受けるという。同臨床研究は、同センター中央病院と東病院において治療中で、担当医が網羅的遺伝子検査が治療選択に有用と判断した患者を対象に行う。具体的には、標準的な抗がん剤治療が終了、もしくは終了することが予想される患者や希少がん患者、15~39歳を含めた若年の患者などを想定しており、1年間で約200症例の検査を行うことを目標としている。
2015年11月13日国立がん研究センター(国立がん研)は11月9日、膵がん早期診断の血液バイオマーカーを発見したと発表した。同成果は、国立がん研 創薬臨床研究分野 本田一文 ユニット長の研究グループらによるもので、11月9日付の英オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載された。同研究グループはこれまでに、血液中に存在するタンパク質「apoA2 アイソフォーム」が膵がんや膵がんリスク疾患の患者で低下することを質量分析の結果から発見・報告していたが、今回、米国国立がん研究所(NCI)との共同研究においても、健常者に比べ早期膵がん患者でapoA2 アイソフォームが低下していることが確認された。また、既存の膵がんバイオマーカーである「CA19-9」と比べて高い精度でI期、II期膵がんを検出できることも確認。この結果からNCIは、apoA2 アイソフォームが膵がんにおける信頼性の高い血液バイオマーカーになりうる可能性があると評価している。また従来、apoA2 アイソフォーム濃度を計測するためには高価な機器を必要とする質量分析を用いた測定法しかなかったが、今回、同研究グループは、apoA2 アイソフォーム検査を実用化するために簡便な検査法の開発に取り組み、検査キット「Human APOA2 C-terminal ELISA kit(研究用試薬)」の作製に成功した。同検査キットで国内多施設共同研究で集められた膵がんを含む消化器疾患患者と健常者の血液検体を測定し、その判別性能を検討したところ、CA19-9に比べ、より高精度に早期膵がんを検出できたという。また、CA19-9が反応しない膵管内乳頭粘液性腫瘍や慢性膵炎などの膵がんリスク疾患も高い精度で検出。さらにapoA2 アイソフォームとCA19-9との組み合わせにより、早期膵がんの検出率はさらに向上した。今後、国立がん研と神戸大学などが協力し「apoA2 アイソフォームを用いた膵がん模擬検診」が開始予定。この模擬検診を含めたさらなる研究により、apoA2 アイソフォームの検査が本当に早期膵がんや膵がんリスク疾患を適切にスクリーニングでき、検診に実用化できるかどうかを確認していくという。また、同検査キットは研究用試薬であるため、体外診断薬としての承認を得ることも目指していく。
2015年11月10日国立がん研究センター(国立がん研)は11月4日、18歳未満の子供をもつがん患者とその子どもについて調査し、国内で1年間に新たに発生する患者とその子どもの人数などの全国推定値を明らかにしたと発表した。同調査では、2009年1月~2013年12月までの5年間に、初めて国立がん研中央病院に入院した20歳~59歳までのすべての患者を対象に、同居する18歳未満の子どもの有無と人数、子どもの年齢・性別、および患者自身の罹患したがんの種類について、電子カルテ上より集計された。さらに、これを2010年地域がん登録データおよび2011年院内がん登録データと突合させ、国内で1年間に新たに発生する患者とその子どもの人数などを推定した。この結果、国内全体では、1年間に新たに発生する18歳未満の子どものいるがん患者の数は5万6143人、またその子どもたちの数は8万7017人と推定された。これを2010年の人口構成データに当てはめると、1年間に自分の親が新たにがんと診断された子どもの割合は全体の約0.38%となる。また、ひとつのがん診療連携拠点病院においては、1年間におおよそ82人の18歳未満の子どもを持つがん患者と128人の子どもたちが新たに発生していることがわかった。18歳未満の子どものいるがん患者ががんと診断された平均年齢は、男性46.6歳に対して、女性43.7歳。がんの種類は、男性では胃がん(15.6%)、肺がん(13.2%)の順に多く、女性では乳がん(40.1%)、子宮がん(10.4%)の順に多いという結果になった。また、親ががんと診断された子どもの平均年齢は11.2歳であり、子どもの年齢の上昇とともに人数が増えていくことがわかった。
2015年11月04日熊本大学は11月2日、皮膚がんの一種である血管肉腫のがん細胞では、本来は別々であるはずの遺伝子が融合していて、その融合遺伝子ががんの発生に関わっていることを発見したと発表した。同成果は熊本大学生命科学研究部・皮膚病態治療再建学分野の神人正寿 准教授らの研究グループと、北里大学の共同研究によるもので、11月1日に科学誌「Cancer Research」に掲載された。血管肉腫は血管やリンパ管の細胞から発生し、皮膚上では年配の人の頭部にできることが多い。発見されづらく、リンパ節や内蔵に転移していってしまうが、放射線療法や化学療法などの治療が効きづらいため、新しい診断法と治療法の開発が必要とされている。がんの主な原因としてがん遺伝子の変異があるが、今回の研究では、血管肉腫のがん細胞では通常の遺伝子変異とは異なり、NUP160とSLC43A3という本来とは別々の遺伝子が異常に融合してしまっていることを発見。この「NUP160-SLC43A3融合遺伝子」は染色体の一部が切り取られ、別の染色体にくっついた結果2つの遺伝子が融合して作られると考えられており、融合遺伝子が陰性の患者と比べて、がんの進行が早い可能性があるという。また、NUP160-SLC43A3融合遺伝子をマウスに注射したところ、がん化したため、がんの発生との確認が確認されたほか、NUP160-SLC43A3融合遺伝子を血管肉腫の細胞から除去すると血管肉腫の細胞の数が減少したため、治療につながる可能性も確認された。融合遺伝子はこれまで白血病や悪性リンパ腫などのがんでも発見されており、融合遺伝子を検出することで高精度・高感度の診断が可能となる。肺がんの一部ではすでに遺伝子検査が保険適応となっており、融合遺伝子の働きを阻害する薬剤が高い治療効果を発揮していることから、今回の血管肉腫における融合遺伝子の発見は、皮膚がんの原因の解明だけでなく、簡単な診断や特効薬の開発にもつながることが期待される。
2015年11月02日国立がん研究センター(国立がん研)は10月29日、「国際がん研究組織(IARC)」が、ソーセージなどの加工肉や豚や牛などの肉(赤肉)などに発がん性がある、との報告を10月26日に行ったのを踏まえ、日本人における赤肉および加工肉の摂取量と大腸がん罹患リスクについての見解を公開した。IARCの実施した今回の評価は、10カ国、22人の専門家によるもので、その評価は全世界地域の人を対象とした疫学研究(エビデンス)、動物実験研究、メカニズム研究からなる科学的証拠に基づく総合的な判定となっている。結果としては、加工肉について「人に対して発がん性がある(Group1)」と、主に大腸がんに対する疫学研究の十分な証拠に基づいて判定されたほか、赤肉については疫学研究からの証拠は限定的ながら、メカニズムを裏付ける相応の証拠があることから、「おそらく人に対して発がん性がある(Group2A)」との判定がなされた。こうした判定は2007年にも世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)が、赤肉、加工肉の摂取が確実に大腸がんのリスクを上げるとの評価報告を行っており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるように、と勧告していた。IARCの評価の基となった全世界地域の論文の赤肉摂取の範囲はおおむね1日あたり50~100gで、中には200g以上と高い地域もあったが、2013年の国民健康・栄養調査による日本人の赤肉・加工肉の摂取量は1日あたり63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)で、世界的に見ても摂取量の低い国の1つにあたるという。同センターでも2011年に、国内の45~74歳の男女約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて追跡調査を行った結果を発表している。結果の内容としては、例えば、女性では毎日赤肉を80g(調理前の重量。調理後は20%程度重量が減少)以上食べるグループで結腸がんのリスクが高く、それ以下の摂取量ではリスク上昇はみられなかったほか、男性では鶏肉も含む肉全体では摂取量の最も高いグループでリスク上昇がみられましたものの、赤肉では特に関連はみられなかったとしている。また、加工肉については男女ともに関連はみられなかったともしており、結論として、大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さいと言えるとしている。また、同センターにて、さまざまな生活習慣とがんとの関連について日本人を対象とした研究を基にIARCやWCRF/AICRによる報告書の手法を準用して評価を行ったところ、加工肉と大腸がんとの関連については、「可能性あり」との判定であり、海外に比べて弱い判定結果となるとする。今回のIARCの判定は、あくまで大腸がんを主体としたものであり、健康全般を考慮した場合、赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛といった健康維持にとって有用な成分をたくさん含んでいるほか、飽和脂肪酸も摂りすぎは動脈硬化、その結果としての心筋梗塞のリスクを高めるものの、少なすぎると脳卒中(特に、出血性)のリスクを高めることも分かっており、日本においては心筋梗塞より脳卒中の罹患率の方が高いことから、総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はないと言えると同センターではコメントしている。なお、同センターでは、生活習慣要因の判定結果を基に、現状において推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法「日本人のためのがん予防法」を提示しており、そこで定められた健康習慣全般に気を配ることが大切であり、食事要因については「塩蔵品を控えること」「野菜・果物不足にならないこと」「熱い飲食物をとらないこと」を目標に定めている。
2015年10月29日国立がん研究センター(国がん)は10月19日、腹腔鏡手術支援ロボットの開発を行うA-Tractionを国立がん研究センター発ベンチャーとして認定したと発表した。国がんでは、同センターの役職員が得た知的財産権や研究成果などを活用するために設立したベンチャー企業からの申請に対し、研究成果の活用が期待できると判断した企業を国立がん研究センター発ベンチャーとして認定している。初めて認定されたのはがん免疫療法の研究開発を行うノイルイミューン・バイオテックで、A-Tractionは2社目となる。腹腔鏡手術支援ロボットは米Intuitive Surgicalのda Vinciがほぼ独占している状況にある。日本でも研究開発が進んでいたが、製品化までのハードルが高く大手企業が参入しにくいことなどから、製品化という点で世界から後れをとっているのが現状だ。2015年8月に設立されたA-Tractionはベンチャーというフットワークの軽さを生かして世界に対抗できる手術支援ロボットを製品化し、より質の高い手術を実現することを目的とする。今回の認定を受けて同社は「手術支援ロボットの開発を通じて、日本の腹腔鏡手術の精度と安全性を向上させ、より多くの患者さんに質の高い手術を受けていただけるよう、邁進してまいります」とコメントしている。
2015年10月19日年々、若い女性の発症率が上がっているといわれる子宮頸(けい)がん。定期的な検診を受けることで、早期の発見・治療が可能とされる病気ですが、「検査の内容がわからない」「恥ずかしい思いをするのでは? 」といった不安から、検診に足を運べずにいる女性も多いのではないでしょうか。そこで今回、マイナビニュース会員である20~39歳の女性300名を対象に子宮頸がん検診に関するアンケートを実施しました。○子宮頸がん検診の受診率は約6割まず、「子宮頸がんというがんの存在を知っているか」という質問に対して、「知っている」と回答した女性は89.3%でした。次に、知っていると回答した人に「子宮頸がんがどのようながんか、具体的に知っているか」を尋ねたところ、「詳しく知っている」と回答した人は約3割にとどまりました。がんの存在は広く知られていても、詳しく知っている女性は少ないようです。続いて、「子宮頸がん検診を受けたことがあるかどうか」を聞いてみると、39.0%の女性が未受診であることが判明。子宮頸がん検診の認知度は上がってきている一方で、まだ検診の受診にまで至っていない人が4割近くいるというのが現状のようです。では、子宮頸がんは具体的にどんな病気で、どうして検診が必要なのでしょうか?子宮がんには、子宮の奥(子宮体部)にできる「子宮体がん」と、子宮の入り口(子宮頸部)にできる「子宮頸がん」の2つがあります。子宮体がんが閉経後の50代以降の女性に多く発症するのに対し、子宮頸がんは20~30代の若い女性に増えている病気です。現代の日本では、1日におよそ10人もの人が子宮頸がんで命を落としているというデータも報告されています。子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染であることが明らかになっています。HPVは主に性交渉によって感染するウイルスですが、1回でも性交渉の経験がある女性であれば感染するリスクはあるといわれています。ただしHPVは、感染しても自然に排除される人と、長期間の持続感染を経てがん化する人にわかれます。そのため、定期的な検診を受けて、がん化する前の状態、がん化しても早期の段階で見つけることが重要といわれているのです。早期発見であれば子宮を温存できる可能性も高まりますので、女性にとって大切な臓器を守るためにも、ぜひ検診に行ってみましょう。○子宮頸がん検診って、どうやって受けるの?それでは、実際に子宮頸がん検診を受診した女性たちは、どのようなきっかけで検診を受けたのでしょうか?詳しく聞いてみたところ、もっとも多かったのは「市区町村でのがん検診時に申し込んだ」(65.0%)という回答でした。続いて、「職場のがん検診時に申し込んだ」(32.2%)、「自発的に医療機関に申し込んだ」(15.3%)という回答があがっています。気になる検診結果に関しては、「異常なしだった」人が97.3%を占め、「異常ありだった」人はわずか2.7%でした。そして、「異常あり」という結果が出た女性からは、次のようなコメントが寄せられています。・「3カ月に一度ずつ経過観察をしてもらっています。診てもらえている安心感があるため、不安なく日常生活を送っています」(26歳/学校・教育関連/事務系専門職)このように、子宮頸がん検診をきちんと受けることは日々の安心感にもつながるようです。なお最近では、自治体ごとに子宮頸がん検診の無料クーポンも配布されています。しかしアンケートの結果から、クーポンの存在を「知らなかった」という女性が33.7%もいることが分かりました。まだ検査を受けていないという人は、ぜひ一度、お住まいの市区町村のがん検診の担当窓口に問い合わせをしてみることをお勧めします。○子宮頸がん検診の方法は?最後に、子宮頸がん検診の内容について説明したいと思います。検診は、大きくわけて次の4つの手順で行います。1.問診健康状態、既往歴(これまでにかかった病気)や家族歴、月経の周期や状態、妊娠・出産の有無、自覚症状などを問診票に記入します。問診票をもとに、診察室で医師からの質問に回答します。2.視診膣鏡という器具を膣内に挿入して子宮頸部を目で観察し、おりものの状態や炎症・裂傷の有無などを調べます。3.内診医師が手で触れて膣の状態を確かめます。片方の手の指を膣に入れ、もう片方の手でおなかを押さえる方法で、子宮や卵巣、子宮周辺を触診します。4.細胞診子宮頸部や膣部の粘膜細胞をブラシなどでこすり、痛みが伴わないように採取します。その後、採取した細胞を顕微鏡で観察します。アンケートの結果から、検診の必要性を感じていても、痛みや恥ずかしさが気になって受診をためらう人が半数以上いることがわかりました。しかし、子宮頸がん検診について正しい知識を持てば、安心して検診を受けられるはずです。大切な自分の体を守るために、まずは子宮頸がん検診についてよく知ることから始めてみてはいかがでしょうか。写真と本文は関係ありません調査時期: 2015年9月2日~9月5日調査対象: 20~39歳のマイナビニュース女性会員調査数: 300名調査方法: インターネットログイン式アンケート
2015年09月16日国立がん研究センター(国がん)は9月14日、全国のがん診療拠点病院の177施設約17万症例を対象とした、主要5部位のがんの5年相対生存率を公表した。相対生存率とは、がんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。5年相対生存率であれば、あるがんのうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどの程度低いかで表される。今回発表されたのは2007年にがん診療拠点病院で治療を開始した患者の5年相対生存率。発表によると、全がんの5年相対生存率は64.3%、各部位で見ると胃が71.2%、大腸が72.1%、肝臓が35.9%、肺が39.4%、女性乳房が92.2%だった。合わせて都道府県別のデータも発表されたが、データの安定性を高めるために、予後把握率90%以上かつ集計対象が50例以上の施設が2施設以上ある都道府県のデータのみ公表しており、単純に比較することはできない。また、年齢分布や病期なども集計しており、国がんは「年齢の分布、病期、手術の割合などで生存率は変わってくる。そうした要素を見ながら分析していただくことに今回のデータの意義がある。各都道府県が分析を通じて、例えば検診の受診率を上げるための取り組みを検討するなど、対策を立てるためのベースとしてほしい」としている。集計するにあたっての課題もあり、生存状況も把握するために地方自治体に外部照会が必要となった際に、個人情報保護などを理由に協力を拒む自治体もあったという。この点については2016年診断例からは全国がん登録が実施され、各施設での生存確認調査がより円滑になると期待されている。なお、2016年診断例の集計結果が公表されるのは2023年の予定で、2022年の発表までは現状の課題を抱えることになる。2008年症例分以降は、都道府県別では主要5部位以外も集計・公表をする方向で検討を進めているほか、施設別生存率を公表する方針だが、国がんは「施設別相対生存率では数字のばらつきがより顕著になる。数字の安定性・相対生存率の意義に関する理解を深める必要がある」としている。
2015年09月15日国立がん研究センター(国立がん研)は9月2日、多目的コホート(JPHC)研究から10年間で胃がんに罹患する確率について予測モデルを作成したと発表した。同研究では、研究開始時(1993年)に血液を提供してもらった約1万9000名を、2009年まで追跡調査を実施。同予測モデルはその結果を元に作成されたもので、具体的には胃がんのリスク因子としてよく知られるヘリコバクター・ピロリ(H.p.)の感染の有無と萎縮性胃炎(AG)の有無についてそれぞれ血液の測定値から判定し組み合わせた「ABC分類(A群からD群に分けられ、H.p.とAGなしがA、H.p.有りでAGなしがB、H.p.なしでAG有りがC、両方有りがDとなっている)」や、H.p.感染以外のリスク要因として知られる喫煙や高塩分食品、胃がんの家族歴などを基に構築されたもの。この結果、男性の10年間で胃がんに罹患する確率は0.04%(40歳、ABC分類:A群、他のリスク因子すべて無し)から14.87%(70歳、ABC分類:D群、他のリスク因子すべて有り)と計算されたほか、女性での同様の確率は0.03%(40歳、A群、他のリスク因子すべて無し)から4.91%(70歳、D群、他のリスク因子すべて有り)の範囲であり、ABC分類のBCD群ではA群に比べて胃がんのリスクが高いこと、ならびに B群からD群までは、その他のリスクの有無により胃がんリスクに幅がみられましたが、 A群では、その他のリスクの有無に関わらず、一貫して胃がんリスクが低いことが示されたという。この結果を受けて研究グループでは、BCD群の場合は生活習慣の見直しや必要な検診を受けるなどの望ましい予防行動や保健行動をこころがける必要があると言えるとコメントしている。また、モデルの精度について、今回の研究の中では確認済みではあるとしているものの、独立した別の研究における検討は行われていないことから、その妥当性の確認と実用化が今後望まれるともコメントしている。
2015年09月03日DeNAは8月27日、同社の子会社であるDeNAライフサイエンスが提供する遺伝子検査サービス「MYCODE」の新たなメニューとしてがんに特化した「がんパック」を追加し、同日より提供開始すると発表した。また、説明会では、提供開始から1周年を向かえた同サービスのこれまでのあゆみを振り返るとともに、今後の展望を明らかにした。「がんパック」は「MYCODE」で提供されている全てのがん38項目を対象としており、「項目数が多くて見きれない。もっと特化したものがほしい」とうユーザーの要望を実現したものとなっている。通常価格は14800円(税別)だが、9月30日までの期間限定で9800円(税別)の特別価格で販売される。なお「がんパック」を購入すれば、「MYCODE」で提供している生活習慣病をはじめとするその他の項目についても、検査後に追加購入することが可能だ。「MYCODE」では、他にもユーザーの声をきっかけとしたサービスを追加していく予定で、「結果をどう捉え、結果を踏まえてどう行動すればいいのかわからない」という意見を受けて、検査後に管理栄養士とTV電話を通じて50分の詳しいアドバイスを受けられるサービスを2980円で9月下旬から提供開始する。さらに、最新の遺伝研究に関する論文に基づいた検査結果のアップデートが今秋に予定されているほか、自分の祖先を調べることができる「ディスカバリー」の検査結果から提供しているオリジナルキャラクター「ゲノミー」を活用したエンターテイメントコンテンツの充実や、遺伝子に関わる研究を幅広く紹介する、ユーザー参加型の新コンテンツを9月中旬から提供するなど、サービス内容の拡充を今後も続けていくとした。2014年8月12日にサービスを開始しして以来、最大280項目の検査結果を提供する「ヘルスケア」をメイン商品として、その簡易版である「ヘルスケアLite」、上述の「ディスカバリー」を展開し、このラインアップに今回「がんパック」が加えられたわけだが、同サービスはまだこれからといった段階にある。そもそも、遺伝子検査市場というのは法整備の面を含めて未成熟で、その点についてDeNAライフサイエンスの大井潤社長は「今は市場の立ち上げに向けて頑張っている。競合各社と『競争』ではなく『共創』をしている段階だ」と説明する。一方、サービスそのものの品質には大きな手応えを感じており、「(検査を受ける前と受けた後で)半分くらいの人が食事を気にするようになったとアンケートに答えている。また、タバコでも10%の人が禁煙を始めた。この10%は結構高い数値で、我々の検査の意義を表している数値といえる。」(大井社長)。実際、「MYCODE」で高リスクと判定されたことがきっかけで、食道がんが見つかった例もあるという。ユーザーに気づきを与えることで健康意識を高め、さまざまな病気の予防につなげるという同サービスのコンセプトが実現しているだけに、ビジネスとして成長していくためには認知度と信頼性が重要になってくる。認知度向上のための取り組みとしては、神奈川県で来年1月末まで20歳以上の県民を対象に「ヘルスケア」と「がんパック」が4割引で購入できる事業を開始しているほか、DeNAベイスターズと連携したプロモーションを展開する。また、医療機関・スポーツクラブとの連携を通じて販売チャネルを増やすと同時に、ユーザー側の遺伝子リテラシーの向上を促進する。一方、信頼性の面ではプライバシーや分析の質、結果の科学的根拠、情報提供の方法など、消費者が安心して遺伝子検査を受けられるような環境整備が必要となる。国内では2004年に個人遺伝情報保護ガイドラインが経済産業省により制定されているほか、2006年に発足し、DeNAライフサイエンスも参画しているNPO法人個人遺伝情報取扱協議会(CPGI)が今年の秋ごろに自主基準認定制度の運用を開始する予定だ。
2015年08月28日味の素は8月7日、同社のがんリスクスクリーニング検査「アミノインデックス(AICS)」が、膵臓がんの早期発見に対応したと発表した。AICSは、味の素と臨床検査会社であるエスアールエルが2011年より共同で提供している検査で、血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析・指標化し、胃がんや肺がんなどのリスクを調べることができる。検査に要する血がわずか5mlと少量なことから、体に負担の少ないスクリーニング検査となっており、2015年7月現在で956の医療機関で受診可能となっているほか、地方自治体の住民検診に採用されるなど普及が進んでいる。これまでは胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん(男性のみ)、乳がん(女性のみ)、子宮・卵巣がん(女性のみ)という6種類のがんを対象としていたが、膵臓がんが新たに加えられた。これは、味の素と大阪府立成人病センターの片山和宏 副院長を中心としたグループとの多施設共同研究による成果で、膵臓がん患者360名と健康な人8372名の血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析した結果、膵臓がん患者の血中アミノ酸濃度バランスが有意に変化していることがわかった。また、手術可能な段階の患者でも進行がん患者と同様の変化を示すことが判明し、その変化を解析する事で、膵臓がんの早期発見技術の開発が可能となった。膵臓がんは早期の発見が難しく、切除手術も長時間となり患者への負担が大きいだけでなく、腫瘍が2cmを超えると周囲へ浸潤して取りきれないことがあるなど、治療が極めて難しいがんとして知られているだけに、AICSによる膵臓がんの早期発見が可能となり、より効果的な治療につながることが期待される。
2015年08月07日国立がん研究センターはこのほど、全国のがん診療連携拠点病院409施設で2013年の1年間にがんと診断された患者の診療情報を集計し、その結果を明らかにした。同集計は2007年分から開始し、今回で7回目の集計となる。今回は、全国のがん診療連携拠点病院で2013年1月1日~12月31日までの1年間、院内がん登録された診療情報を集計した。自施設で診断または他の病院で診断された後、自施設に初めて受診した、すべてのがんおよび脳腫瘍の患者数を示す「全登録数」は、409施設で65万6,272例だった。これは日本全体のがん罹患(りかん)数の約70%にあたる。全登録数は、2009年からは毎年増加している。男女計の部位別の登録割合を見ると、最も多いのは「大腸」(14%)で、次いで「胃」(12%)、「肺」(11%)、「乳房」(10%)、「前立腺」(8%)と続いた。男女別で見ると、男性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、前立腺)は、2007年の集計以来、初めて大腸が胃を上回り最多となった。女性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)では、乳房と大腸が胃と肺の登録数に比べて増加の傾きが急になっている。上位10部位の登録数においては、子宮頸部と膵臓(すいぞう)が順位を上げ、肝臓と子宮頸部の順位が逆転した。また、膀胱(ぼうこう)がランク外になり膵臓が9位(前回11位)に順位を上げている。同調査の集計結果は、ウェブサイト「がん情報サービスがん登録・がん統計」でも公開している。
2015年08月06日日本人の三大疾病のひとつである、“がん”。死因の第1位になり、日本国民の3人に1人は、がんで死亡すると言われていますよね。しかし、日本の医療技術は目覚ましい進歩を続けています。抗がん剤よりも負担が少ない治療法が出ているのです。■高齢化でがん患者が10万人も増加がんに罹患する人は年々増加傾向にあり、国立がん研究センターのがん対策情報センターによると、2015年に新たにがんと診断される数は推定98万2,100人。これは2014年に出された予測よりも約10万人も増加しており、その原因は高齢化によるものだそうです。身近な病気となってしまったがんですが、昔と違い必ず死ぬというわけではなく、早期発見、早期治療により、完治できるようになりました。それでも、やはりがんにはなりたくないものです。もし、自分ががんになったり、身近な人がなったりしたらどうしますか?医学が進んだ現代。その治療法はさまざまで、内科的処置、外科的処置などの他にも、選択肢はありますが、保険が適用されるものはごく一部に限られています。世界中でがんに対する研究はされているものの、日本の治療は欧米諸国からは「ずいぶん遅れている」とかねてから言われており、患者にとっては歯がゆい状況です。■欧米と日本の一般的ながん治療の違い現在、欧米では“放射線治療”がファーストステップと言われている中で、日本での治療は手術、抗がん剤治療がまだまだポピュラー。一言でがんと言っても、できる部位は異なり、欧米では、皮膚がん、肺がん、前立腺がん、乳がんが多く、日本は胃がんがトップです。そのため、放射線治療よりも手術をする方が早いとされてきたことが、放射線治療を第一に考えなかったのも原因のひとつと考えられます。手術は痛みもあり、傷跡も残り、見た目にもよくありません。抗がん剤は、髪の毛が抜けたり、副作用があったり、全身への負担が大変大きく、なるべく使いたくないと思われる方がほとんどでしょう。しかし最近では、食生活の欧米化、生活スタイルの変化により、胃がん以外のがんにかかる人が増え、あらゆるがん治療が検討されるようになり、放射線治療への関心が高まり導入も進んできています。■放射線治療と従来の治療の大きな違いそれでは、この放射線治療は、手術や抗がん剤と比べてどんなメリットあるのでしょうか?簡単にまとめると以下の通り。・ピンポイントで照射するため正常な細胞を壊すことが少なく体への負担が少ない・治療期間、治療時間が短いため、入院しなくても良い・抗がん剤のような副作用の心配が少ない・手術をしたあとの傷跡が残ることがないもちろんメリットだけでなく、がんの部位、病変によっては対応できない場合や、保険治療できないこともあり、デメリットがないわけではありません。それでも、今後のがん治療として、放射線治療が主流になっていき、選ぶ人が増えていくことは間違いないでしょう。■注目の放射線治療は“トモセラピー”!さらに、放射線治療の中でも注目したいのが、トモセラピー。これは、元巨人軍・角盈男氏が前立腺がんで取り入れた治療法で、新聞に掲載されたあとに問い合わせが殺到したほどです。放射線治療とトモセラピーの違いは、複数のがんに対しても、対応可能であることの他に、他の放射線治療機で対応できない部位でも対応できる可能性があるということ。(適応外もあります)誰もが、健康で長生きしたいと考えます。もし、がんになって、手術をして入院になり、長期療養を余儀なくされる、抗がん剤を使用して苦しい思いをする、というのは、生きていても楽しいと思えるでしょうか?仕事をしながら、美味しいものを食べて、普通の生活をしながら、体への負担が少なく治療ができたらそちらの方が絶対にいいですよね。放射線の治療が注目され、増えつつある今、新たな治療法としてトモセラピーも増えていくはず。がんになったとき、女性が辛いのは頭髪が抜ける、手術跡が残る、といった副作用。負担はできるだけ少なくしたいもの。ひとつの治療法として、頭に入れておきたいですね。(文/Jeana)【参考】※トモセラピー-日本アキュレイ株式会社
2015年07月27日国立がん研究センターは7月16日、肺がんの中でも特に難治性が高い肺小細胞がん110例の全ゲノム解読を実施したと発表した。同成果は同センターが愛知県がんセンターの研究グループとともに参画した、独ケルン大学が主導する16カ国の研究機関からなる国際共同プロジェクトによるもので、英科学誌「Nature」に研究成果に関する論文が掲載された。肺小細胞がんはほとんどが進行がんとして発見され、ゲノム解析に適する手術試料が得られにくい。そのため、今回の研究では、各国の研究機関からこれまでに集めた肺小細胞がんの試料を集結させて解析。肺小細胞がんで高頻度に不活性化している遺伝子群を同定するなどの成果が得られたという。今後、同研究で得られたデータを活用することで肺小細胞がんの新たな治療・診断法の開発につながることが期待される。
2015年07月17日いまや、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代。しかし、実はその半分近くが予防できることもまた事実。そう明かしているのは、『がんにならないのはどっち?』(秋津壽男著、あさ出版)の著者。これまでにも『長生きするのはどっち?』(あさ出版)などのベストセラーを送り出してきた医師ですが、今回はがんをテーマに、知っておきたいことを二択の質問形式でまとめているわけです。最大のポイントは、正しい情報に基づいた予防法に取り組めば、がんの9割は予防できるということ。そのためにおぼえておきたい2つのことを、第3章「『がん習慣』のどっち」から引き出してみたいと思います。■1:「日傘をさす」と「日焼け止めを塗る」皮膚がんになる習慣はどっち?「太陽からの紫外線を浴びると、皮膚がんになる」、これは正しい情報だそうです。理由は、紫外線を浴びると、皮膚の遺伝子が傷つくから。遺伝子の傷は通常2日ほどで修復されますが、このとき遺伝子のプログラムが誤って修復され、皮膚がんになることがあるというのです。また美容面では、「肌の色が黒くなる」「長年大量に浴び続けることによってメラニンが過剰につくられ、シミやソバカスとなる」といったことも懸念されるとか。そこで美容面を気にして、日傘をさす、帽子をかぶる、日焼け止めクリームを塗るなどの対策をしている女性も多いことでしょう。しかし、これらのなかで「日焼け止めクリーム」はオススメできないと著者。なぜならほとんどの日焼け止めクリームは、それ自体に皮膚がんを起こす「酸化チタン」という成分が含まれるから。最近はこの問題が知られるようになり、自然化粧品のメーカーなどで酸化チタンや化学化合物を使用しないUVケア製品が販売されるようになったといいます。どんな成分が使われているか、しっかりチェックしたいところです。■2:「ランニング」と「ウォーキング」がんに対する免疫を下げるのはどっち?健康のため、習慣的に運動やスポーツを行なっている人も多いと思いますが、意外なことにランニングやテニスなどのスポーツは、がんを抑制するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を低下させる恐れがあるのだそうです。免疫細胞の仲間であるNK細胞は、体内をパトロールしながら、がん細胞やウイスルに感染した細胞を見つけると攻撃してくれる優秀なボディーガード。しかしその働きは、激しい運動のストレスによって低下してしまうのだというのです。たとえば、2時間半のランニング後にNK細胞の活性が50~60%低下したという報告もあるとか。つまり、激しい運動はからだの免疫力を低下させるということです。ただし、まったく運動をしない場合もNK細胞の活性は下がるので注意が必要。自分にとって無理のない適度なペースで、楽しみながらウォーキングする程度が、もっともNK細胞を活性化させるといいます。*このように、がんについての知識がわかりやすく解説されています。予防の意味でも、ぜひ目を通しておきたい一冊です。(文/印南敦史)【参考】※秋津壽男(2015)『がんにならないのはどっち?』あさ出版
2015年07月16日MSDは6月22日、国立がん研究センター(国がん)と「SCRUM-Japan(Cancer Genome Screening Project for Individualized Medicine in Japan:産学連携全国がんゲノムスクリーニング)」に基づく遺伝子変異スクリーニングに関する共同研究契約を締結したと発表した。「SCRUM-Japan」は、国立がん研究センターが、個々のがん患者に最適な医療を提供することを目的に、全国の医療機関、製薬企業と協力して実施するがん遺伝子異常スクリーニング事業。大規模な遺伝子異常のスクリーニングにより、希少頻度の遺伝子異常をもつがん患者を見つけ出し、遺伝子解析の結果に基づいた有効な治療薬を届けること、ならびに複数の遺伝子異常が同時に検出できるマルチプレックス診断薬を臨床応用することをミッションとしており、特定の異常が見つかった患者は、対応する治療薬の臨床試験へ参加できる可能性がある。また、患者の遺伝子情報と診療情報は、治療選択の参考として用いられるほか、匿名化処理された後にデータベースに登録され、新たながん診断・治療薬の研究開発のために2次利用される。なお、MSDでは、今回の事業参加を通じて、個別のがん患者に最適な治療薬の開発が期待されることを踏まえ、がん領域における研究・開発を推進していきたいとしている。
2015年06月23日京都大学は6月22日、大腸炎に伴い大腸がんを発症するマウスモデルを用いて、腸がん形成進展を促進する大腸での炎症反応がPGE2-EP2経路によって制御されることと、EP2を阻害することが大腸がんの治療につながることを解明したと発表した。同成果は京都大学 大学院医学研究科・次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点(AKプロジェクト)の青木友浩 特定准教授、成宮 周 特任教授らの研究グループによるもので、米国学会誌「Cancer Research」に掲載された。大腸がんの発生・進展には炎症が関係しており、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がリスクを低下させることが知られている。しかし、NSAIDsには副作用があり投与に慎重を要するほか、代替として開発されたCOX-2阻害薬も心血管障害の副作用があるため使用には制限がある。NSAIDsとCOX-2阻害薬はいずれも生理活性脂質である一連のプロスタグランジン(PG)の合成を阻害して効果を発揮する。これはPG経路が大腸がんの発生・進展に関与していることを示しているが、その機序については詳しくわかっていなかった。同研究グループは今回、大腸炎に伴い大腸がんを発症するモデルマウスを用いて、炎症性大腸がんの形成に寄与するPG受容体として、PGの一種であるPGE2の受容体の1つEP2を同定。続いて、がん組織内のEP2発現細胞を検討したところ、腸組織内に浸潤する主要な炎症細胞である好中球と、腫瘍細胞を取り囲むように存在している線維芽細胞(腫瘍関連線維芽細胞)がEP2を発現しており、この2つの細胞種でPGE2-EP2経路が周囲の細胞に刺激を与えるさまざまなタンパク質や細胞の増殖を助ける成長因子の発現を増加させることで大腸がん形成を促進すること、これらの細胞は自らPGを産生してこの経路をさらに増幅していることを突き止めた。また、選択的EP2阻害薬を投与することで、大腸での炎症とがん形成を抑制できることを確認した。今回の研究で大腸がんの促進に働くPGの種類とその作用機構が明らかになったことで、現在使用されているNSAIDsやCOX-2阻害薬を超えた、副作用の少なく、より安全な新規の大腸がんの予防・進展抑制薬の開発につながることが期待される。
2015年06月22日