忘年会やクリスマスのシーズンに入ると、飲む機会が増えるワイン。その奥深い世界に魅了される人は多いと思いますが、今回ご紹介するのは、ワインで人生を変えた人たちに迫った注目のドキュメンタリーです。『チーム・ジンバブエのソムリエたち』【映画、ときどき私】 vol. 542ワインのない国と言われるジンバブエ共和国から誕生した4人のソムリエが、「世界ブラインドワインテイスティング選手権」に初参戦する珍事が起きた。南アフリカに逃れた難民かつ黒人のみで構成されたチーム・ジンバブエが立ち向かうのは、“神の舌を持つ”23か国の一流ソムリエたち。先進国の白人が多数を占めるスノッブな世界に、故郷の威信をかけて乗り込むことになる。クラウドファンディングの支援を受け、ワインの聖地フランスのブルゴーニュにたどり着いたジョゼフ、ティナシェ、パードン、マールヴィン。限られた経費で雇ったコーチのドゥニ・ガレは、久し振りの晴れ舞台で大暴走してしまう。浮き足立つチーム・ジンバブエが繰り広げるスリリングなワインバトルの結末とは……。ブラインド・テイスティング版のオリンピックとも呼ばれている大会で世界一を目指し、ありえない挑戦とも言われたチーム・ジンバブエ。今回は、そんな彼らの姿を見つめ続けたこちらの方々にお話をうかがってきました。ワーウィック・ロス監督 & ロバート・コー監督2013年の『世界一美しいボルドーの秘密』でも一緒に作品を手掛け、現在は制作会社third man filmsを設立したパートナー同士でもあるロス監督(写真・左)とコー監督(右)。私生活では、ロス監督の娘(本作の脚本家でもある)とコー監督が夫婦であるため、義理の親子でもあります。そこで、撮影時のハプニングやオススメのワイン、そして日本での忘れられない思い出などについて語っていただきました。―まず、チーム・ジンバブエとはどのようにして出会ったのでしょうか。ロス監督映画のなかにも登場する非常に有名なワインの評論家であるジャンシス・ロビンソンさんに、映画の題材になりそうなワイン界の話題があったら知らせてほしいと以前から伝えていました。そんななか、彼女が教えてくれたのが、南アフリカのケープタウンに暮らしているジンバブエ出身の難民でソムリエをしている4人。いろんな苦労をしてきた彼らの物語はサバイバルストーリーでもありますし、夢を形にしているので、素晴らしい映画になるのではないかということでした。そこで、すぐにオンラインで話をしたのがきっかけです。―彼らの最初の印象は、いかがでしたか?ロス監督やる気に満ちていて、すごくチャーミング。大志を抱いている様子が伝わってきたので、僕たちもすぐに惹かれました。そして、その時点でわかっていたのは、映画にするには十分であるということ。ただ、オンラインで話すだけではわからない深い物語もあるのと感じたので、3週間後にはケープタウンに行き、撮影を始めることにしたのです。彼らの素晴らしい物語をとらえたいと思った―そこまで即決だったとは驚きです。実際に会われてみたときは、どのように感じましたか?ロス監督印象としては最初と変わりませんでしたが、ワインテイスティングにすべてを捧げているだけでなく、非常に才能豊かで、高い能力を持っていることもわかりました。しかし、ワインの生産をしていなければ、飲む文化もほとんどないジンバブエ出身の彼らがどのようにしてそうなったのか。彼らが南アフリカに着いたときには、庭の手入れや皿洗いの仕事をしていたにもかかわらず、そこから南アフリカでもトップのレストランでソムリエになり、しかも世界選手権に参加するというのです。そうなるために一体何が必要だったのだろうか、と僕たちは考えるようになりました。白人ばかりの保守的な世界で、4人全員が黒人というチームは初めてのこと。そんな大胆さと勇気の両方を持っている彼らの素晴らしい物語をとらえたいと思うようになりました。―今回は、南アフリカでも治安が悪い地域での撮影もありましたが、撮影中に身の危険を感じたことはありませんでしたか?コー監督ケープタウンとヨハネスブルクで撮影した際、とても危険な街だったので、僕たちも慎重に撮影を進めることにしました。ただ、一緒にいた彼らが街のことをよく知っているので、安心していましたし、僕たちのスタッフも含めてみんな怖い思いをすることはなかったです。とはいえ、貧富の差が非常に激しく、犯罪が多い地域ではあるので、僕たちはいいところだけを見ることができたのだと思います。コーチはユーモアがあって、本当におもしろい人物―では、撮影中のおもしろかった出来事といえばどんなことですか?コー監督笑えるエピソードに関しては、ジンバブエチームのコーチを務めたドゥニ・ガレがすべて持っていきましたね。実は、そのあたりは全部カットしなければならなかったのですが、編集で映像を見返しているときにあまりにも彼がおもしろかったので、ほかのスタッフとも「彼を主役にしたドキュメンタリーを1本作ったほうがいいのでは?」という話が出たほどです(笑)。―映画のなかだけでも、彼のキャラの濃さは十分に伝わってきましたが、どんなことがあったのか教えてください。コー監督ひとつだけエピソードを話すとすると、彼は鳥を撃つのが得意だとずっと自慢していたので、あるときそれを撮影しに行こうという話になりました。とはいえ、本物の鳥ではなくクレー射撃だったのですが、2時間半もの間、彼はすべて撃ち損ねていたのです……。そして、やっと最後に1つだけ成功した瞬間、「やったぜ!」と満足そうに叫んでいて、本当におもしろい人だなと(笑)。おそらく彼の頭のなかでは、ファンタジー的な自分の人生があり、自分の腕がいいと思い込んでいるんでしょうね。でも、そういうところ含めてユーモアがある人物だと感じました。飲み過ぎる彼らが心配になったこともあった―ぜひ、彼のドキュメンタリーも観たいですね。ちなみに、お酒にまつわるハプニングなどはなかったですか?コー監督それもたくさんありましたが、なかでも車でヨーロッパを移動していたときのこと。一瞬たりとも無駄にしたくないと思った彼らは、ずっとテイスティングの練習をしていました。ただ、みなさんもご存じの通り、本来は酔っ払わないように口に含んだワインを吐き出すものですが、途中から普通に飲み始めてしまったんです。どんどん飲んでしまうので、「大丈夫かな?」と思うような状態になったことも。おかげで予定よりもかなり多くトイレ休憩に立ち寄ることになってしまったということはありました(笑)。映画のなかで、マールヴィンが国旗を持ってダンスしているシーンがありますが、それはそのときの一部です。とはいえ、今回一番笑えたのはやっぱりドゥニですね!―観客には、ぜひそのあたりも注目していただけたらと思います。では、日本についてもおうかがいしますが、いらっしゃったことはありますか?ロス監督僕は日本が大好きで、いままでに何度も行ったことがあります。実は戦後に僕の父親は日本で仕事をしていたことがありますし、僕は幼少期を香港で過ごしていて、日本とも近いところに住んでいましたから。父親には、東京や箱根、京都などによく連れて行ってもらいました。僕は日本の山の風景や雰囲気がとても好きなので、15年ほど前には妻と子どもたちを連れて、日本でハイキングをしたこともあるくらい。そのときは奈良や京都など、歴史的な都市を中心に回わりました。ワインは、もっとオープンに楽しんでいい―その際、日本のワインやお酒も堪能されましたか?ロス監督もちろんです。日本といえば、やっぱりライスワインと呼ばれる日本酒ですよね。僕は特に大吟醸が大好きで、あの豊かで複雑な味わいがおいしく感じます。僕の息子もワインに関係する仕事をしていますが、以前日本に交換留学生として滞在していたことがあるので、いまでもお寿司と日本酒を買って、一緒に家で食べることもあるほどです。あとは、ワインを扱っているイギリスの会社と仕事で日本を訪れたときに、日本のソムリエと話す機会があり、日本酒とワインに関する話題で盛り上がったこともあります。そのときに、日本とワインの関係性は深いものだと感じました。コー監督僕も日本には何度も行っていますが、東京のレストランやナイトライフにはいつも楽しませてもらっています。お酒に関して言うと、実は最初は日本酒というのは1種類しかないものだと思っていたんです。でも、ワインと同じようにいろんな種類やニュアンスがあることを知り、そこからお酒の世界がさらに広がるのを感じました。―日本にもワイン好きは多いので、ワインに詳しい監督からオススメがあれば教えてください。ロス監督僕たちが暮らしているオーストラリアのワインがどのくらい日本に入っているのかわからないのですが、まず1つ目はシャルドネの「ジャコンダ」です。あとは、ヘンチキというオーストラリアのワイナリーから出ている「ヒル・オブ・グレース」。これはとても美しいワインですが、値段は高いですし、手に入れるのも難しいかもしれませんがオススメです。―それでは最後に、本作の見どころについてメッセージをお願いします。コー監督ワインが好きな方であれば、ワインの飲み方というのは本で学ぶようなものではなくて、もっとオープンでいいんだ、そして100%主観的なものでいいんだと改めて感じてもらえると思っています。ワインを飲んだときに、子どもの頃の思い出や自分自身のことを考えることもあるかもしれません。でも、他人の解釈を気にする必要はまったくありませんし、それこそがすごく重要なことではないでしょうか。そんなふうにワインを楽しむことができれば、ワインを飲むうえでひとつレベルアップできますし、きっと豊かで深い世界があなたを待っていると思います。奇跡を起こすチーム・ジンバブエに乾杯!ワインを楽しむ極意や知識を学べるだけでなく、自らの力で可能性を切り拓いていくチーム・ジンバブエに酔いしれる本作。どんな困難にも、つねに笑顔で前を向いて戦い続ける彼らの姿からたくさんの勇気をもらえるはずです。取材、文・志村昌美驚きの詰まった予告編はこちら!作品情報『チーム・ジンバブエのソムリエたち』12月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他全国ロードショー配給:アルバトロス・フィルム️©2020 Third Man Films Pty Ltd
2022年12月14日ワインのない国・ジンバブエ共和国から逃れた難民4人が、世界最高峰のブラインドテイスティング大会で世界一を目指すドキュメンタリー映画『チーム・ジンバブエのソムリエたち』。いわばワイン版『クール・ランニング』ともいえる本作に登場する、ジンバブエ出身のワインソムリエ4人が働くケープタウンにある格付けレストラン4軒を紹介する。ジンバブエから難民として南アフリカ共和国にやってきた若者たち。彼らが職を得たのは格式高いレストランの下働き。彼らはそこでワインの味に初めて触れ、その才能を開花、南アフリカの最高峰のレストランソムリエにまで上り詰めていく。南アフリカ共和国は、17、18世紀はオランダ領、19、20世紀まではイギリス領だったことから欧米の食文化の影響を受けており、伝統的な料理からシーフード、エスニック、イタリアン、フレンチと多国籍料理が並ぶ。彼らが働くリゾート地ケープタウンでは、洒落たレストランや格付けランク上位のレストランが数多く存在する。その中で彼らはトップソムリエとして働いている。ジョゼフが働く「ラ・コロンブ」南アフリカを代表する、老舗レストラン。ケープタウンのダウンタウンから車で30分の山間に佇む、ワイナリーのメインダイニング。ダイニングエリアは葡萄畑を見下ろし、まるで劇場のごとく設定され、美しく洗練された料理が提供される。世界各国の食文化を取り入れた、多国籍な料理とマリアージュされたワイン。1皿に多くのアイディアと食材が幾重にも詰め込まれている。「ラ・コロンブ」©La Colombeティナシュが働く「ザ・テストキッチン」レストラン開業と同時にいきなり世界ベスト50レストランに選ばれ、それが何年にもわたり続く世界のトップレストラン。予約は3か月先までいっぱいで、オバマ元大統領の妻・ミシェル夫人が南アを訪れた際に予約を間違えてしまい訪れることができず、後悔したといわれる。フュージョン料理でありつつ、韓国料理や和食の影響も多大に受けた繊細な味わいを提供する、南アが誇るレストラン。パードンが働く「オーベルジーヌ」600以上ものワインリストをもつ、南アフリカ最高峰のレストラン。ドイツ人のオーナーシェフが経営、季節の味と地元の食材により、東洋と西洋の味を融合、時代を超越した料理を提供している。初代ケープ州長官ジョン・ワイルド卿が1830年代に建てた歴史ある邸宅を改装、エレガントでロマンティックなたたずまいのレストラン。「オーベルジーヌ」©Aubergineマールヴィンが働く「ケープ・グレースホテル」テーブルマウンテンの山裾にある、水辺のホテル。マーヴィンの働くホテル内のシグナル・レストランはマリーナを見下ろし、そのゴージャスでエレガントな装いとともに、最高級の味を提供する。マリアージュされた南アフリカワインのチョイスも群を抜く(写真はブラインドテイスティング大会中のもの)。『チーム・ジンバブエのソムリエたち』は12月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかにて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:チーム・ジンバブエのソムリエたち 2022年12月16日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国にて公開© 2020 Third Man Films Pty Ltd
2022年12月10日売春婦としてやってきたのは実の娘アフリカはジンバブエでとんでもない事件が起きた。ある一人のジンバブエ人の男性が、自分のホテルに売春婦のデリバリーを頼んだ。なんと驚いたことにホテルにやってきたのは男の「実の娘」。20才の娘とその父親はぼう然と立ちすくみ、娘は泣き出してしまったという。(Photo:Phone, Prostitute, Spaceman By indi.ca)反省した父親と家族のその後報道によると、父親は夫婦間の問題が原因でストレスがたまっていたといい、夫婦間に問題があったことを妻も認めている。父親は家族に謝り「家族が元のようにひとつに戻ってほしい」と願っているそうだ。このショッキングなできことをうけて家族会議が行われ、娘は売春婦としての仕事をやめ来年には学校に戻るようだ。しかし夫婦間の問題はまだ未解決なようで「子どもがいなければ、とっくの昔に離婚している」と妻は語る。現在二人はカウンセリングを受けてこの試練を乗り越えようとしているが、壁は高そうだ。編集部鈴木真美元の記事を読む
2012年02月08日